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森の道
しおりを挟む……あのね、きっと私は家から出ちゃいけなかったんだと思う。
たぶん、家から出たらモンスターに襲われる呪いでもかけられてたんじゃないかな。
そう思っても無理はないよね?!
だって──この状況だもの!!!
「ぎいゃぁぁあぁぁぁ!!」
「リアナ!」
ルナさんの姿がどんどん遠ざかっていく。手を伸ばしたところで届かない。それどころか、もう傍の木々の背を追い越しそうなくらい上がってしまっている。
私をいきなり捕まえた怪鳥は、呑気に「ギィッギィッ」と鳴きながら飛んでいる。
ジタバタしたけど、なんのその。鳥は全く動じない。真っ直ぐどこかを目指して飛んでいる。これって絶対巣に向かってるんだよね。
このままじゃ、その巣で食べられるのがオチ。
そんなの……!!
「いやだぁぁぁぁ!!」
* * *
ミゼンを出て、森の近くまでは同じように出てきた人たちと歩いていた。それが別れ道の度にバラバラと分かれていき、森に入る頃にはほとんどいなくなっていた。
わずかに残った人たちも、古びた停車場の看板を見て、そこから乗り合い馬車を使うと話しながら留まった。
私たちは、と言えば、そこからさらに森を進んだ。
時間的に隣町アリシアへの馬車は、出発済みでもうなかった。次に来るのが明日になるらしい。さほど離れていないから、このまま歩いていった方が早い、とルナさんは言った。
歩き出す彼の背を見ながら、溜め息を吐く。本当だったらもう、とっくに家についているはずなのに、と。
「……」
ちょっと王都でお金をもらって帰るつもりが、気付けば全く逆の方向へ向かっている。魔王討伐なんてしたくないのに、足が勝手に動いてる感じ。
そもそもミゼンを出るのに、ルナさんの冒険者資格を担保にしちゃったから、戻ってくるまでは付いていくしかないのだけど。
聞いたところによると、あの資格は犯人が捕まり次第、別の町でも返却可能だそうだ。
早く返ってこないかな。なんて考えながら、歩き続ける。そんな中、ふと目の前の窪地に気づいた。広さはつい先日お世話になった領主様のお屋敷より、少し上くらい。思わず足を止めて声をかける。
「あの……」
「うん?」
ルナさんも足を止めて振り返る。私はその窪地へ視線を向けた。
「こういう開けた場所はモンスターに襲われやすいと思いますが」
広い窪地にうっすら生えている草花は枯れかけている。へこんでいる部分は乾燥していて、ひび割れが多くあった。
そのまま上を見上げる。そこだけぽっかり開いている。
こういう開けた場所はモンスターに襲われやすい、と前にオババが言っていた気がする。ルナさんも「そうだな」と同意して、でもまた歩き出す。
慌てて追いかけた。
「え! あの! 行くんですか?」
「ああ」
「危険じゃありませんか?」
「通常であればな。だが今は乾季だ」
「乾季……」
私が繰り返すと、彼は一瞥して答えた。
「通常であれば確かに、こうして身を隠す場がないような道は避けて通るべきだ。だがちょうど雨季の前で、この地域には動物たちが水場を求めて移動している」
「つまり」
「オレたちを襲ってくるようなモンスターは、すでに獲物と共に移動しているはずだ。自然の周期を外れた、相当奇怪な個体でなければな」
それに、と続ける。
「今の時期は逆に、蛇よりも毒を持つスネークバイラーや蛭に似たダンパスの繁殖時期に当たる。そっちを警戒するためにも、出来るだけ森からは離れたい」
「でも、スネークバイラーは確かに怖いですが……出現率はそこまで高くなかったのでは?」
理由は分かる。けどすぐには納得しがたい。そういうのが出てしまったのだろうか。ルナさんはおもむろに地図を取り出した。
腰のポーチから出したそれを、立ち止まって私の前に出す。四つ折りになっていたけど、見せたかった場所は上になっていたようだ。赤い丸でミゼンの横、アリシアと書かれた町の名前が囲われている。
そして小さなバツがいくつか。不思議に思って視線を上げたら、ルナさんが言う。
「ミゼンでも聞いてきたが、向こうは倒木で道が途切れてる場所もある。迂回した場合、結局こっちに出てくることになるだろう。それに次の町へ到着するのも遅くなる……できれば夜営の回数は増やしたくない」
「そういうことでしたか。分かりました」
なるほどなるほど、と頷きながら返す。結局時間がかかるなら、仕方がない。と、思ったけど何より夜営の回数が増えるのは私も嫌だ。
早めに宿で休めるなら、絶対にその方がいい。
そんなこんなで「では行きましょう」とキリッと歩き始めたのだけど……。
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