引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月るるな

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探し人

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 日が沈みかけ空に橙が広がる頃、今夜の夜営場所はここにしようと少し前にルナさんが言った。ちょうど湖の畔で風通しがいい場所だ。

 チョベラスカルーにさらわれて災難だと思っていたけど、目的地には近づいていたようで思わぬ短縮になった。

 私は鞄を置きながら、傍の切り株に座るバルさんに声をかける。

「明日にはアリシアに入れるんですよね」

 ここからそう遠くない場所に、アリシアの町があるらしい。確認がてら声をかけたら「そうだよ」と返ってくる。

「ここまで来れば後は街道に出て、真っ直ぐ歩けばアリシアだよ。ちなみにそこから馬車に乗ると、大きな都市スフラギドがあるけどね」
「スフラギドって、結界都市って呼ばれてるんですよね」
「そうだね。君なら良く見えるだろうから、楽しみにしているといい」

 そんな話をしながら、私は自分の鞄の横へ下げているカップを取り外した。そのあと、近くに置かれたままになってるルナさんの荷物入れからもカップを取り出す。

 当の本人は少し先の様子を見てくると森へ入っていったばかり。その間に私とバルさんはお茶の準備をすることにした。

「そういえばバルさんのカップはありますか? 予備はなくて……」

 言いながら振り返ると、ポンッと何もない空間からカップを出した。つい目を瞬いてしまう。彼は何事もないようにそれを差し出した。

「こっちに淹れてくれるかい?」
「あ、あの。チョベラスカルーの時も思いましたけど、無詠唱で魔法が使えるんですか……? もしかして名高い魔術師様とか」

 ズケズケ聞くのも、と思いつつも気になって聞いてしまう。するとバルさんは、ふわりと微笑みながら言った。

「そういうリアナも魔力を感知出来るなら、私と同じ類いだろう? 君は何かな? 魔術師ではないのだろう?」
「私は魔導師です。言葉ではなく、文字で魔力を動かすので」

 言いながら手も動かす。地面にしゃがみこんで、手頃な石を組み合わせて種火を作る。上手くいかないのを見て、バルさんがまた無詠唱で小さな火をつけた。

 さすがに二回目ともなると、慣れてくる。その火を大きくして小さな鉄のポットを火にかける。バルさんが「なるほど」と言う。

「文字か。私はまだ人の言語がうまく操れないから羨ましいな」
「人の言語?」
「そうだ、何か一つ見せてくれないかい? 炎を操るのはどうだろうか。魔を使うなら一般的だろう?」

 期待した視線を向けられて動揺する。この間、リヴァイアサンと戦ったときにパッとしないのを出したばかりだ。

「そ、そういう強いのはあまり得意じゃなくて……すぐに出来るのは人探しとか物探しくらいしか」
「人探し?」
「あ、でもおおよそですよ? 北の方とか、南の方とかそういうの」
「へえ。それは面白そうだね。ぜひ見せて欲しい」

 ニコニコされて、今さら出来ないとは言いづらい雰囲気。大した労力ではないから構わないのだけれど。念のため「本当にだいたいの位置しか分かりませんからね」と繰り返しておいた。
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