引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月 瑠々奈

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結果

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「ちなみに探す人はどうしますか?  結果が分かりやすいように、近くにいる人が良いと思いますが」
「なら、ルナはどうだい? その辺にいるだろう?」
「そうですね。ルナさんなら……持ち物はこのカップを使いましょうか」
「持ち物で分かるのかい?」

 私の手元に視線を向けるバルさん。その疑問に頷く。

「はい。探す人の持ち物、もしくは良く使うものの一部。それか魔術師や騎士などであれば紋章でも出来ますよ」
「紋章でも……それなら」

 私の言葉を聞いた彼は、私の手を押さえて止めると、ポケットから折り畳まれた地図を取り出した。

 広げた地図は私たちが使うものと少し違っていた。なぜか魔王城が中心に来ている。しかも重ねて大きく紋章が描かれていた。

 これは……。

 明らかに魔王の紋章ってことになる。なんでこんなものを持ってるの、とギョッとしてバルさんの顔を見る。彼はなんでもないことのないように、首をかしげた。

「こっちで試してくれないかい?」
「え……」

 いやいやいや……この人、本気で言ってる?

 これだと魔王を探すことになるんだけど。さすがに冗談よね。

「まさか魔王を探すつもりじゃないですよね。さすがに」

 あまりに動揺しすぎて、自分でも何を言っていいか分からなくなる。でも彼は至って本気のようだ。

「君たちの目的はこれだろう? わざわざ教えてくれたじゃないか。もし移動してたら徒労に終わる。ならその確認がてら。どうだろう?」
「なる……ほど……?」

 たしかにバルさんの言葉も一理ある。魔王が城に必ずいるとは限らないし、もしいると分かれば問題なく目指せる。

 私は「分かりました」と答え、早速準備に取り掛かった。

「とりあえずやってみますね」
「ん、頼むよ」

 鞄から取り出した麻紙に、近くの切り株をテーブルにしていつも通りオババの紋章を描いていく。それに魔王の紋章を重ねて描いていく。その様子を見ていたバルさんは、合間にいろいろと訊いてきていた。

 書く紙は決まっているのか、とか、紋章は必ず必要なのかとか。

 答えられる範囲で答えながら、紙に描く二つの紋章の後にφロクセを入れた。

 ────瞬間、ポヒュッと小さな空気音を立てて麻紙が消える。

 代わりに宙に現れたのが、蒼白い二つ紋章とその中心に浮く、真っ赤なルビー色をした三角形。それがフルフルと揺れている。

「この先に探し人がいるはずです」

 三角の長い方がバルさんの方を示している。私は、彼から借りた地図と自身のポケットから出したコンパスを見比べ、魔導術を確認した。

 けど、おかしなことに気付いて頭をかしげる。

「あれ?」

 地図に合わせて、コンパスも正しい方向を示している。だけど、私の魔導術だけが変な方向を向いていた。

 魔王城のある方向と真逆をずっと示している。というより、バルさんをずっと追っている?

 何度か見比べて、でもずっと彼を示すから、ちょっとズレてくださいとお願いした。けど体を動かしても、三角も同じように動いてしまう。私が眉間にシワを寄せたタイミングで目が合うと、バルさんは緩やかに笑みを作った。

「私が探し人なのかい?」
「あ、いえ……違うと思うんですけど。あの、このあたりを一周してもらっていいですか?」
「いいよ」

 そう言って歩き出す。でも、バルさんを指す魔導術は、別の場所に行ってもずっとそのまま。バルさんが離れていっても、周りを一周しても、それは変わらなかった。

「……?」

 どこを移動しても変わらない結果に、失敗ですね、と告げようとした。けど、それよりも早く隣でバルさんがククッと笑う。

「バルさん?」
「本当に凄いな、魔導術。まさかここまでハッキリした結果が出るとは思わなかったよ」
「いや、これはたぶん間違いかと」
「そんなことはないよ」
「どういう意味ですか?」

 私の疑問にバルさんは、意味ありげな微笑みを浮かべたあと身を正した。

「私が、魔の国に君臨し統治する王──イブリース・マラーク・モルサス・バルファイト三世。以後、お見知りおきを。リアナ嬢」

 華麗な仕草で片手を胸元へ持っていく彼は、静かに頭を下げた。
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