引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月 瑠々奈

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馬車

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「ここから馬車に乗る。各々、荷物の確認はしておいてくれ」

 ルナさんの言葉に自分の荷物を見る。肩掛け鞄と、腰に下げてる小さなポーチ。他は特にない。

 チラっとバルさんを見たら、彼は最初から手ぶらだった。そのため、今はただ町並みを見ている。

 ルナさんは自分の荷物を地面に置いて、地図を取り出す。バルさんが気付いて近づくと横から覗き込んだ。

「ここから馬車に乗れたら、スフラギドまで行けるんだったね。今の時間から乗るなら、早めに着けそうかな?」
「あれ、結局バルさんもついてくるんですか?」

 最初はアリシアまでの雰囲気だった。けど言葉的に、その先のスフラギドまで来るみたい。私が聞くと彼はニコッと笑う。

「もちろん。君たちについていくと楽しいことが起きそうだからね」
「……なるほど」

 行き先が選べるなら、そりゃついてくるはず。だってルナさんの目的は魔王討伐で、そしてその魔王がバルさんなんだもの。魔王城に到着して、『敵はどこだ!?』と言った後ろから、ババーンと『私が魔王だ!』って教えたら、そりゃ面白いことになるはず。

 それを期待しているのかは知らないけど、バルさんはニコニコしてるし、ルナさんは「それは心強いな」なんて言ってる。

 前に助けてもらったからか、そう思うみたい。

「そろそろ馬車が来るな」

 雑談をしている間に、乗る予定の馬車が停車場へ入ってこようと向きを変えていた。目印にしているのは、だいぶ年季の入った木製の看板。ところどころ、ささくれ立っているその看板にはアリシアからスフラギドと示す文字が上から何段か下に書かれていた。

 他の地方にも行くみたいだけど、今回の目的地はスフラギト。

 当然、ルナさんは魔王城のある古の森へ向かうために経由する。けど私は真逆。そこから出ている船に乗るのが狙い。

 ここまで大人しくついてきたのは、それが最大の目的だった。

 この経由地スフラギトから、私の住んでいる町の方に向かう船が出ているのを知ったから。前の買い出しの時ふらっと入った本屋で、偶然『船の繋がり』なるものを見つけた。

 近隣諸国で運行されている船の種類と、簡単な行き先が乗っている。それなりにお高かったけど、買って損はない。いそいそと購入した。

 それが今も、胸元を暖かくしている。これさえあれば、家に帰れる。

 ソワソワしていたら、不意に手を引かれた。

「っ! おい! 馬車が来るぞ」
「わ!?」

 ルナさんに引っ張られて、反射的に後ろに下がる。あまりに考え事をしすぎて、いつの間にか馬車道まで出てしまっていたようだ。

 下がったタイミングで馬が入ってくる。カッ、カッ、と直前まで私がいた場所に滑りこんでくる。数歩通り過ぎて馬は止まった。

 六頭の立派な馬が引く幌馬車。大きな車輪に支えられた荷台には、湾曲したカバーが覆っている。中にはすでに人が数人いるようだ。

「行こう」

 ルナさんが荷物を肩に担いで歩き出す。前の方に近づいて、御者に声をかけた。

「三人いるんだが、席はあるか?」
「ああ、あるよ。どこまでだい?」
「この先のスフラギトまで」
「ならお代は一人15000SRサルだ。払ったら乗っとくれ」

 その声にバルさんの後ろにいた私は、金貨を入れている革袋をそっと開いた。

 すでに宿代で同じくらい使ってる。まだ金貨はあるものの銀貨や銅貨も混じり始めた。このあと船に乗るとして、最終的に残る金額に不安が出てくる。

 どこかで節約しないと、と思っているとバルさんに声をかけられた。

「リアナ、行けるかい?」
「あ、はい」

 バルさんが先に払って馬車に乗り込む。その後ろに並んでいた私も渋々金貨を二枚取り出す。御者がおつりの銀貨を渡してくる。それを受け取ってから、ルナさんの手を借りて幌馬車に乗り込んだ。
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