引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月るるな

文字の大きさ
29 / 64

結界都市スフラギト

しおりを挟む

 大きな門の手前で入国審査を受ける。一人一人、入国の理由や身分証の確認を受けて、許諾の有無が出された。

 事前に厳しいと言われていたけど、私たちは魔王討伐のお触れを出したギラロッシュ王国の書状があったから、すんなり入れた。

 ちなみにバルさんはルナさんの書状に便乗しただけ。名前も何も書いてないから一人くらい増えてもバレないみたい。

 入国許可を得て、私たちは幌馬車に戻りみんなで門を通る。他のみんなも問題なく入れたらしい。ローブの男性も相変わらずフードを目深にかぶっていて、見るからに怪しいのにすんなり入れたらしい。

 何はともあれ、揃ったところで門の中に入る。門を通る瞬間、その景色が歪んだ気がした。入れ物に水が張ってある、その表面が揺れるのに似ていた。

 これが結界なのだろうか。不思議な感覚に通りすぎた後も後ろを見ていたら、御者さんから声がかかる。

「もうすぐ停車場へ向かうよ。降りる準備をしてくれ」

 その言葉に、みんなが動き出す。私も荷物の確認を始めた。

 少しして馬車が止まり、一人一人降りていく。ローブの男性は無言のまま一番に人混みへ消えて、次に降りたマリーさんとベンナンさんは私たちを待っていてくれた。

「リアナちゃん、短い間だったけどありがとうね。話せてよかったわ」
「はい、マリーさんもお元気で」

 そんな挨拶を交わす頃、ルナさんたちもベンナンさんと別れの挨拶をしていた。そして最後に御者さんにお礼を言ってその場を後にした。

 宿を探そうと歩き始めるルナさんについていく。その間際、街を見上げる。

「……」

 スフラギドは、結界都市といわれるほど見事な結界に護られているらしい。けど、見上げた先に変化はない。どういう仕組みで結界が展開されているのかは分からない。けれど、魔の国に一番近くて、世界の盾と呼ばれている都市だった。

 とはいえ、危険が隣り合わせといった雰囲気はなくて、大通りを歩く人たちの表情は明るい。様々な地域から人が集まってるのだろう。服装もいろいろで、店もたくさんある。

 ここで人が連れ去られたり、夜な夜な怪しい儀式の生贄にされたり……人体実験を施される、なんてあるとは思えない。

「この先に宿屋街があるらしい」

 ルナさんの声に顔を向ける。二人についていくうちに、知らずに緩やかな坂へと差し掛かっていた。彼は地図を見ながら正面に視線を向ける。

「少し歩くが選択肢は増えるから行こう」
「そうだね」

 バルさんが同意して歩き出す。私はふと、さらに坂上の高台にある神殿のようなものに目を留めた。

 遠目からでも分かる、屋根がドーム状の真っ白な神殿。入り口と見られる二本の支柱には、それを支えるのような格好をした男性の像が彫られている。

 つい見ていたら、バルさんに呼ばれた。

「リアナ、行くよ」
「あ、はい!」

 慌てて歩き出す。ふと、すれ違った親子が楽し気に笑っている声が聞こえた。なんだか穏やかでホッとする。

 先を歩いていたバルさんの隣に並ぶと、ルナさんがいくつか宿の候補を絞ったと教えてくれた。

 歩き出しながら、また周囲を眺める。海も近いし、店も多いし、人の出入りもすごく多い。ギラロッシュの王都もそれなりに広いけど、それ以上かもしれない。

 思わず素直な言葉が出てしまう。

「すごく大きな町ですね。迷子になりそう」
「都市と呼ばれるくらいだからね。リアナは初めて?」
「はい。結界はちょっと分からないけど」
「日が暮れると見えるようになるかもしれないよ。けど……」

 空を見上げた彼の表情が一瞬変わった気がした。眉根を寄せたような。けどすぐフイッと顔を戻してニコッと笑う。

「今は宿を見つける方が先だからね。今の時期は特に理由もない。混んではいないと思うけど早いに越したことはない」

 直後、ルナさんが足を止めた。私の隣にいたバルさんへ声をかける。
 
「バル、お前が言っていた食事処が無いんだが」
「ん? あれ、おかしいな。この間来たばかりだと……ああ、そういえば月日の感覚が違うんだったね。ごめん、ルナ。記憶違いだ」
「なら、道自体が違うのか?」

 さりげなく気になる言葉が入っていたけど、ルナさんは何事もなく再度地図に視線を落とす。

 バルさんが言うには道自体に違いはなく、古くから続いている店や宿は残ってるそう。そのうちの一つに行ってみることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...