引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月るるな

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犯人

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「まさか……あの時の」

 扉から現れたローブの人物に、ルナさんも気付いたようだ。相手が低い声で言う。

「早く戻れ。今なら見逃してやる」

 それは幸運!とばかりにルナさんとバルさんを見る。けどやっぱり二人は何も言わない。当たり前だけど、その言葉に乗るわけないよね。

 ただ、シンと静まり返った室内の奥は行き止まり。唯一の出入り口にはローブの人が立っている。

 つまり部屋を出る為には退いてもらわないと。

 ルナさんが剣に手を添え、私も思わず鞄のベルトを握りしめた。するとバルさんが前に出る。

「まだバレていないつもりなのかい?」
「……」
「それともリアナがいるから顔を出したくないのかな」
「え?」

 いきなり名前を出されて戸惑う。幌馬車で同乗しただけで知り合いではないのだけれど。ついバルさんを見て、次にローブの人を見るとどこか迷うような雰囲気を感じた。

「顔を出してくれた方が、話がすんなり済むと思うけどね」

 その言葉に少ししてから相手がフードを下ろす。その顔にびっくりしてしまった。

「……マリーさん」

 見覚えのある茶髪の髪と顔立ちの女性は、同じく幌馬車で同乗していたマリーさんだった。

 彼女は、ばつが悪そうに視線を逸らす。

 どういうことか理解できずに混乱する。すると、バルさんがフッと笑った。

「わざわざあなたの迎えを受けたのに、あなたの望みは叶ったのかな?」
「……いいえ」
「迎え? 気づいてたのか」

 ルナさんの言葉に彼は頷く。

「そう。ローブの人物になりすまして私を追っていたようだからね」
「だから散歩などと」
「ああ。面白そうだったから」

 夜営のときも、ローブの人が怪しいと言ったのは、自分のことを警戒されないためだったのだろうか。

 こうしてバルさんを誘拐するために?

 仲良くなったのもこの為だったのかもしれない、と考えが掠めた直後、マリーさんは真っ先に私の方へと来る。そして私の両手を取って強く握った。

「リアナ! こんな再開になって残念だけど、聞いてほしいことがあるの」
「それは何の言い訳かな?」

 口を挟むバルさんをキッと睨み付けて、「違うわ」と答える。

「言い訳なんてないわ。この国の窮状についてよ。あなたにも話したはずよね? 今この国は救いを求めてるの。結界が薄らいでいて、魔獣に似たものが出るようになったのよ」
「魔獣に似たもの?」

 ルナさんが聞く。マリーさんが頷いた。

「そう。魔獣ではないの。地面から突然、黒い煙が出て四足の獣のような影になるの。そして人を襲う。襲われて食べられた人はすぐに獣とともに消えてしまうわ。だから実体のある魔獣とは違うと……きっとあの子も……」
「それで結界を強めるために人柱を立てていたのか」
「それは……!!」

 責められているような言葉にマリーさんが反応する。けどすぐさま視線を逸らした。

「理解してくれとは言わないわ。でも邪魔はしないで」

 そしてまた私を見る。

「彼らは適合者じゃなかったの! だからもうすぐ解放する予定だった。このまま穏便に済ませた方が互いの為でしょう? ね、リアナ」
「それは……」

 それは暗に騒ぎにしないでくれ、と言っているように聞こえた。

 けどそれより、知り合いが誘拐事件に荷担していた方がショックで、咄嗟にバルさんを見る。彼はニコリと笑って、でも厳しい言葉を返した。

「彼女なら丸め込めると思ったようだけど、無理だよ。すでに隣国も巻き込んでいる」
「そうだ。我が国はこの国を許さない。すぐに戻って……」
「ならば戻れなくすればいいものよ」

 いきなり入ってきた声に驚いて、聞こえた入り口に目を向ける。そこには恰幅のいいおじさんと、白い服の男女が数名いた。

 マリーさんがハッとして「長様」と頭を下げて、スッと離れる。

 恰幅のいいおじさんが、私たちを見て「ほほほ」と笑った。
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