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元楼院
しおりを挟む「皆を揃えて……よくやったマリー」
褒め言葉のように聞こえるのに、マリーさんは顔を真っ青にして返した。
「ドロース様、申し訳ありませんっ……!! この者たちは全員、不適合者です。新たな魔術師を連れて来ますので、もうしばらくお待ちください」
ぐっと表情を固くして、深々と頭を下げる。絞り出すような声だったけど、ドロースと呼ばれたおじさんは首を横に振った。
「いやいや、お前はしっかり仕事をしたぞ。マリー」
「どういう意味ですか……?」
「我々の必要としている人物は、そこにいるではないか」
そう言ってドロースは私を指差す。みんなの視線が集まってドキッとした。そして続ける。
「そこのお嬢さんが魔導師だったのだよ。……いやはや何とも愛らしい」
「!?」
舌なめずりしながら言われて、ゾクゾクっと何かが背中を這い上がる。
その品定めされるような視線に怯えて一歩下がると、ルナさんが妨げるように前に立った。
見えなくなって、少しホッとする。
「お前が首謀者か。よくも堂々と姿を現せたものだな」
「いかにも。我がこの元楼院を率いる長である。だが、貴様の方こそよく現れたものよ。コソコソ嗅ぎ回っているのを知らぬはずがないではないか。わざわざ泳がせて、目当ての人物まで残しておいたんだ。さっさと拾って逃げ帰らぬか」
まるで見逃してやると言わんばかりのセリフ。ルナさんが不快感を露にする。
「何を言っているんだ? お前たちは我が国の魔術師を拐った。それだけでも外交問題になる。にもかかわらず開き直るつもりか?」
「その証拠はあるのかね?」
「いくらでも出てくるはずだ。証言だって……」
「結界より外に出て、記憶を保持出来るのならな」
「なに……?」
ドロースがサッと手を上げる。付き人たちが前に出た。彼らは杖を握る。
「話は終いだ。貴様らには我が国の外で、再開の続きをしてもらおう。さあ、お帰り願おうか」
その言葉に付き人たちは反応するように杖を掲げた。
「「フォティア≠ヤフタレク!」」
「!!」
あれが魔術の詠唱……! バルさんは無詠唱だから久々に聞いた。
言葉と共に周りにバチバチと稲妻が走る。咄嗟にルナさんが私の手を引いて、バルさんは無言のまま前に出ると手をかざした。
瞬間、強い風が渦を巻くように私たちを包んで稲妻から守る。すぐに音が静まり返った。
ドロースがここに来てようやく表情を変える。スッと瞳を細めて、笑みを消した。
「なるほど。貴殿がいるなら厳しくなりそうだ」
「おや、私のことを知っているのかな?」
「名を口にするつもりはないがね。お前たち! あの男を先にやれ!!」
その指示に向かってくる二人が腰の剣に手を伸ばす。一直線に武器を持たないバルさんへ斬りかかった。さすがに無詠唱でも反応出来ない!
焦った私とは反対にルナさんが飛び出す。
「っ!!」
刃が当たる寸前でそれを剣でルナさんが受け止めた。そしてガンッと響いて、一気に払いのける。
「バル、ここを切り抜けよう」
「そうだね。君のお友だちも待っているだろうから」
ルナさんがそのまま剣を構える。バルさんも前を見据えた。
「君たちの願い通り、そろそろお暇しよう。そこをどいてくれるかな?」
「貴殿には我々の術が効かぬ。故に逃すことは出来ぬ。このまま我々に従うか、死あるのみ。どちらを選ぶ」
「私が前者を選ぶとでも?」
「ならば致し方あるまい。行け!!」
白い服の片方が剣を振りかぶる。バルさんが風を起こした。その隙にルナさんが間合いを詰める。
けど残った一人が声を出す。
「アスピダ≠アニムス!」
突然、ルナさんの前で炎が上がり、すぐさま後ろに引く。そこをすかさず相手が斬りかかる。
「……」
両者一歩も引かず、といった状況の中でドロースのおじさんが静かなことに違和感を覚えた。
そもそもどこに、と探したら扉の傍にいる。それもすぐ出られるような位置。一人逃げるつもりか!?と思った瞬間だった。
「──っ!?」
いきなり背後からガバッと体と口を押さえられて、持ち上げられる。わずかに足が床から離れた。
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