引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月 瑠々奈

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「つまり結局のところ……それは偽物だったってことですよね?」
「いや、正式ではあるんだが」
「けど使えないんですよね? やっぱり偽物じゃないですか」

 ルナさんに詰め寄っているのは、スフラギトで滞在していた宿に併設されている食事処。そのテーブルを挟んで座っていたけど、突然出してきた冒険者資格の銀製のネックレスに抗議していた。

 彼はそれも含めて、私に同行した経緯を改めて説明したかったようだ。

 自分が王国の騎士で私についてきたのも、たまたま目がついたからで、最初は期待してなかったとか。

 おまけに必要な小道具は全部、国から支給されていて、私のせいで奪われたと思っていたこの冒険者資格も全く関係なかったとか。

 そんなこと聞かされたら怒るに決まってる。ルナさんは驚いた様子で、たじたじになっていた。

 だって魔術師誘拐事件の囮にされたことより、私のせいで冒険者資格を奪われてしまったって、しばらく罪悪感を感じていたんだもの。なんだか損した気分。

 いまだ怒りの収まらない私にバルさんが笑いながら、宥めようとしてくる。

「そろそろ許してあげたらどうだい? ほら、人も増えてきたし。ね?」
「そうですけど……」

 その言葉に不満はあれど、しぶしぶ椅子に座った。確かに数日前より明らかに人も増えている。

 恐らくそのきっかけとなったのは、ヤド王国からギラロッシュ王国へ出した『魔王討伐の即時停止』を求める通告だ。スフラギトの結界が消えて、ヤド王国は慌てたらしい。

 結界の無い状態で魔王様を刺激して攻め込まれたら、たまったもんじゃないとね。

 それで調査をする人は送り込むし、そんな通告を出して、逆に興味を引かれた人を集めたりで周りはちょっと騒がしい。

 実際、魔王様は攻め込んだりしないと思うけど、とバルさんを見たら不思議そうに首をかしげられた。

 正面ではルナさんが軽く腰を上げる。すると、テーブルの上に置いてあったネックレスを取って私の首にかけた。鷲と炎が描かれているギラロッシュ王国のギルドの紋章。

 ビックリして、つい顔を上げた。

「え?」
「それはお前が持っていてくれ」
「でも」
「オレは登録された冒険者じゃないからな。使い道はないかもしれないが、お守り代わりだ」
「……お守り」
「おや、私にも何か無いのかい?」

 急に入ってきて、茶化すように言うバルさんへルナさんは「残念だが、何もないな」と返す。

 そんなやり取りをしている二人。私は首にかかるネックレスを改めて見ていた。

 偽物だけど、どこか力強い鷲と炎の紋章。見ていたらなんとなく、胸が温かくなった気がした。
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