142 / 225
二、螢華国
百四十二、螢華国(3)
しおりを挟む「私がアスアド様と交代しても構いませんが。そうすると、後宮に入るには、女性でなくてはならないようで……。私自身もそのお役目は難しいとは感じております。どうにかして分担しましょう」
「書類を貸してみろ」
ざっとひととおり目を通したアルは、軽く息を吐き、後頭部を擦った。
「まだイスハークが柚付きの方が、潜入には希望が持てそうだ。下男はどうやら、肉体労働もあるらしい。文官のお前には不向きだな」
イスハークは拱手した。
「大変恐れ入ります」
「流石に俺だって、柚付きの女官として潜り込めるとは思っていない。適材適所だな。仕方ない。螢華国の下男として、こき使われるか」
「アル! 大丈夫……? 何とか出来ないのかな」
アルと離れ離れになるのは不安だ。
僕が問いかけると、アルは鷹揚に笑った。
「万難を排してでも、会いに行く。柚は、逢引きの準備をしておけ」
「あいび……っ!?」
目を白黒させていると、アルは笑い声を上げる。
「そう思えば、なぁに、下男といってもなかなか楽しい旅路かもしれぬな」
急に生き生きとし出したアルに、イスハークは少々呆れた風だ。
「あまり無茶はなさいませんよう」
「さぁ、どうかな。それは螢華国次第だろう」
本人に言っても無駄だと悟ったのか、イスハークは僕へと向き直る。
「柚様。どうかアスアド様をよろしくお願い致します。私も付いておりますが、このバハル国を継ぐ御方であること、くれぐれも、御承知おきください。アスアド様の御身に危険のないよう、監視をお願いします」
監視は何かの冗談かと思ったが、イスハークの目は真剣だ。
僕は頷いた。
「僕も、出来ることを精一杯する。皆で一緒に、またここに帰って来ようね」
34
あなたにおすすめの小説
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
発情薬
寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。
製薬会社で開発された、通称『発情薬』。
業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。
社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる