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第四章
三、当主の座
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次に上島が目を覚ますと、側には誰もいなかった。
ただ黄昏の空が、部屋を淡く照らしているだけだ。上島は痛みを訴える身体の言うことを何とか無視して、上半身を起こした。
やけにベッドにしては、やけに高い位置だ。そう思い、辺りを見回すと、どうやら廟だということが分かる。
生贄を差し出すかのように作られた寝台は、高さ一メートルはあるかと思われた。
周りには、そこここに赤い石楠花が生けられている。上島の寝ていた頭上には、神棚があった。金色で作られたそれは、長い年月を経て酸化していた。長い間誰も手入れをしなかったのだろうか。
そう思い、ふと、それはおかしいと考え直す。サンユエとユエの廟は、いつも誰かが掃除しているはずだ。
それに頻繁に使用されているので、手入れもされずに、派手に酸化することなどないはずなのだ。
――ここはどこだ? こんな廟は見たことがない。
上島は、サンユエとユエの廟には入ったことがある。サンユエの廟は優しい色合いの木で出来た、素朴な廟だ。
明るい陽の日差しを思わせるようなつくりになっていて、居心地が良かった。
それに対して、ユエの廟は、黒曜石がふんだんに使われた廟で、高価そうではあったが、冷たい感じがした。これは、上島がサンユエの属性だったからだろうか。
しかし、本来ならサンユエの――いつもの廟に居るはずなのだが、何故。ここは何の廟だ?
廟の扉が遠慮がちに開けられた。キィと油を差していない、高い金属の音がする。
夕暮れの光に逆光になっていて、誰なのか、表情は見えない。
けれど、上島はシルエットで気付くことが出来た。
「チセイ?」
神楽は返事をしない。
「チセイだな? ここはどこだ? 何の廟なんだ?」
神楽は小刻みに震えているように見えた。一体どうしたというのか。
「チセイ?」
もう一度呼ぶ。すると、神楽は蚊の鳴くような声で、ぽつりと言った。
「『朔』の――廟だよ。勇朔」
神楽は泣いているように見えた。
「上島さん、本当に大丈夫ですか。もう無理せんとって下さいね」
玄天は言った。上島は華山家人々に挨拶をして、総本山を後にした。今も神楽が付き添ってくれている。
「神楽……すまなかった。結局お前に迷惑をかける形になっちまったな」
「いや? 迷惑だと思ったら最初から一緒になんかいないよ」
神楽は穏やかにそう受け流しているが、神楽の体には、まだ上島が怪我をさせた痕が残っている。
上島は、心底神楽に申し訳ないと思っていた。謝るだけでは済まないようなことをした場合、人はどうやって許しを請えばいいのだろうか?
そもそも許されようということ事態が間違いなのか。
「勇朔……本当にあれで良かったのかい?」
神楽は上島の顔を覗きこむ。何のことを言っているのか、上島はすぐに分かった。
上島は、結局二週間近く華山家で療養しなくてはならなかった。体はまだ本調子ではなかったが、どこか今までの体と違うようだと感じていた。体が軽い。
身体の内側からエネルギーが湧き出してくるようだった。自分でも俄かには信じ難い。
あれほどの幽鬼を相手にしながら、五体満足でいられるとは。
そんな中、もう少しで普通の生活に戻れるかというときだった。玄天が正式に話があると言って上島を呼び出したのだ。
何かと思えば、華山家総本山の者たちも、ぴりぴりとした雰囲気を纏っている。一同がずらりと並ぶ中で、玄天は切り出した。
「上島さん。今や貴方は、現在存在する中で最強の霊媒師です。華山家総本山の当主は、世襲制ではありません。それは貴方もご存知ですね。霊媒能力の強い者が、当主になる。その倣いに従い、俺は、当主の座を貴方に譲ろうと思います。どうか――この華山家総本山を、治める当主になって頂けませんか?」
玄天は土下座に近い形で頭を下げた。現当主が、正式に頭を下げるなどということは、まずないことだ。
だが、上島はそれをあっさりと辞退した。いとも簡単に、何のしがらみも無く、こう言ったのだった。
「阿相さん、有り難いですが、俺には当主など無理ですよ。俺は、貴方のような当主にはなれない。勿論、貴方のような考え方をしなくては、ここを統括していけないことは充分分かっています。けれど、俺には、実践出来そうにない」
どんなに困っている人が居ても、何百人もの人が死んでいても、勝てない幽鬼の依頼は引き受けない。
最優先すべき事項は、霊媒師の保存。それは当たり前のことだ。
しかし、上島はそのように考えることは、己には出来ないと断言したのだ。
当主に必要なものは、冷静な判断力。ときに酷薄な決断を下さなくてはならないこともある。
上島は、自分はそれを持ち合わせていないのだと、高らかに宣言した。
玄天は、それでも、と食い下がったが、上島は頑として、首を縦に振らなかった。
しかし、玄天を除く華山家総本山の者たちの顔は、一様に安堵の表情を浮かべていた。勢力争いの厳しいところに、また新たな勢力が加われば、今まで築いてきたものが一夜にして消えてしまう。
それは玄天側の人間も、また玄水側の人間も同じだった。玄天だけは納得がいかないようで、ずっと上島を説得し続けていたが、上島は困ったように笑うだけだった。
「俺は、当主の器ではない」
横に居る神楽に向かって、上島は呟いた。そんなことはない、と反論しようとする神楽を遮って、上島は続ける。
「本当だ。俺には、玄天のように、派閥の中で華山家を上手く統括出来るなどとは到底思わない。大体そういう面倒なことは苦手だ」
上島は権力などには興味はない。
勿論、当主になれば、毎年政府からの寄付金は数十億にも登るだろう。依頼主からの多額の謝礼金もある。
しかし、上島はそんなことに頓着する人物ではなかったし、華山家総本山は玄天が治めていくのがいいと思っている。
「それに……」
上島はぽつりと言った。神楽が首を傾げる。
「それに、俺が当主になったとしても、じきにまた玄天が治めなければならなくなる。そんな無用な混乱は避けるべきだろう?」
神楽は瞠目した。咄嗟のことで声が出ない。
「俺は朔になった。けど、朔は寿命が短い。それは神楽も知っている通りだ。だったら、最初から玄天に治めて貰ったほうがいい。そうだろう?」
上島は微笑っていた。屈託もなく。
上島は、間違いなく自分が早死にすることを知っている。
もう、彼はサンユエではなく、怖ろしく寿命の短い、『朔』なのだ。
「そんな顔をするな、神楽。別に自棄で言ってるんじゃない。ただの事実だ。それに――――」
上島は言いよどんだ。
「それに?」
「いや、何でもない。また後で――そうだな、全て終わったら話すよ」
俄かに沈黙が降りた。上島の発言が意味深で、神楽は意味を図りかねた。
「けれど、勇朔。不思議だったんだが、何故勇朔は今まで朔にならなかったんだろう。今まではずっとサンユエの属性だったんだろう? どうして、今になってそんな属性が発覚したんだろうと思っていたんだ。玄天さんも千春も、よく分からないと言っていた。君は……何か心当たりが……?」
二人の間を分かつように、何かが降ってきた。淡い、薄紅の花びら。桜の花だ。
上島と神楽の視線は、落ちていく花びらに注がれていた。
花びらが地面に触れると同時に、上島は神楽を見つめた。淡く笑んでいる。今にも消えそうな笑い方だった。
慈愛に満ちた、母のような笑みだ。全てを赦す者の微笑。今にも壊れて消えてしまいそうだ。
「行こうか」
神楽は言うと、歩き出した。上島は、先を歩く神楽の背を見ながら、目を閉じた。
「全て終わったら話すよ――――」
殆ど息の音だけで、その背に呟く。きっと、もうすぐ終わろうとしている何かが、確実に終われば。それまでは今暫く、このままで居て欲しいのだと、上島は願った。
「勇朔。これでいいのかい?」
神楽は、車の助手席に乗り込むなり、小さな瓶を振って見せた。中は、土が入っている。
元は焦げ茶色だったのかもしれないが、今は既に乾燥して、白っぽく変色していた。触れれば粉になってしまうだろう。
「チセイ、有難う。どうだった? 誰にも見つからなかったか?」
「上々だったよ。元々、今日は香乃さん一人しかいないみたいだったし、置いてある場所もすぐ分かった」
「そりゃ良かった。これでやっと真相が判明する」
華山家総本山から帰ってきて、三日と立たない日のことだった。
上島は、小笠原香乃を訪ねていた。とりあえず、預かっていた遺体の返却が目的だ。
現在、鋭意調査中であると香乃に伝えると、香乃は涙ぐみながら、よろしくお願いしますと頭を下げていた。
だが居小笠原家を訪ねたのは、それだけが目的ではない。上島は、着々と真相に迫りつつあった。
ただ黄昏の空が、部屋を淡く照らしているだけだ。上島は痛みを訴える身体の言うことを何とか無視して、上半身を起こした。
やけにベッドにしては、やけに高い位置だ。そう思い、辺りを見回すと、どうやら廟だということが分かる。
生贄を差し出すかのように作られた寝台は、高さ一メートルはあるかと思われた。
周りには、そこここに赤い石楠花が生けられている。上島の寝ていた頭上には、神棚があった。金色で作られたそれは、長い年月を経て酸化していた。長い間誰も手入れをしなかったのだろうか。
そう思い、ふと、それはおかしいと考え直す。サンユエとユエの廟は、いつも誰かが掃除しているはずだ。
それに頻繁に使用されているので、手入れもされずに、派手に酸化することなどないはずなのだ。
――ここはどこだ? こんな廟は見たことがない。
上島は、サンユエとユエの廟には入ったことがある。サンユエの廟は優しい色合いの木で出来た、素朴な廟だ。
明るい陽の日差しを思わせるようなつくりになっていて、居心地が良かった。
それに対して、ユエの廟は、黒曜石がふんだんに使われた廟で、高価そうではあったが、冷たい感じがした。これは、上島がサンユエの属性だったからだろうか。
しかし、本来ならサンユエの――いつもの廟に居るはずなのだが、何故。ここは何の廟だ?
廟の扉が遠慮がちに開けられた。キィと油を差していない、高い金属の音がする。
夕暮れの光に逆光になっていて、誰なのか、表情は見えない。
けれど、上島はシルエットで気付くことが出来た。
「チセイ?」
神楽は返事をしない。
「チセイだな? ここはどこだ? 何の廟なんだ?」
神楽は小刻みに震えているように見えた。一体どうしたというのか。
「チセイ?」
もう一度呼ぶ。すると、神楽は蚊の鳴くような声で、ぽつりと言った。
「『朔』の――廟だよ。勇朔」
神楽は泣いているように見えた。
「上島さん、本当に大丈夫ですか。もう無理せんとって下さいね」
玄天は言った。上島は華山家人々に挨拶をして、総本山を後にした。今も神楽が付き添ってくれている。
「神楽……すまなかった。結局お前に迷惑をかける形になっちまったな」
「いや? 迷惑だと思ったら最初から一緒になんかいないよ」
神楽は穏やかにそう受け流しているが、神楽の体には、まだ上島が怪我をさせた痕が残っている。
上島は、心底神楽に申し訳ないと思っていた。謝るだけでは済まないようなことをした場合、人はどうやって許しを請えばいいのだろうか?
そもそも許されようということ事態が間違いなのか。
「勇朔……本当にあれで良かったのかい?」
神楽は上島の顔を覗きこむ。何のことを言っているのか、上島はすぐに分かった。
上島は、結局二週間近く華山家で療養しなくてはならなかった。体はまだ本調子ではなかったが、どこか今までの体と違うようだと感じていた。体が軽い。
身体の内側からエネルギーが湧き出してくるようだった。自分でも俄かには信じ難い。
あれほどの幽鬼を相手にしながら、五体満足でいられるとは。
そんな中、もう少しで普通の生活に戻れるかというときだった。玄天が正式に話があると言って上島を呼び出したのだ。
何かと思えば、華山家総本山の者たちも、ぴりぴりとした雰囲気を纏っている。一同がずらりと並ぶ中で、玄天は切り出した。
「上島さん。今や貴方は、現在存在する中で最強の霊媒師です。華山家総本山の当主は、世襲制ではありません。それは貴方もご存知ですね。霊媒能力の強い者が、当主になる。その倣いに従い、俺は、当主の座を貴方に譲ろうと思います。どうか――この華山家総本山を、治める当主になって頂けませんか?」
玄天は土下座に近い形で頭を下げた。現当主が、正式に頭を下げるなどということは、まずないことだ。
だが、上島はそれをあっさりと辞退した。いとも簡単に、何のしがらみも無く、こう言ったのだった。
「阿相さん、有り難いですが、俺には当主など無理ですよ。俺は、貴方のような当主にはなれない。勿論、貴方のような考え方をしなくては、ここを統括していけないことは充分分かっています。けれど、俺には、実践出来そうにない」
どんなに困っている人が居ても、何百人もの人が死んでいても、勝てない幽鬼の依頼は引き受けない。
最優先すべき事項は、霊媒師の保存。それは当たり前のことだ。
しかし、上島はそのように考えることは、己には出来ないと断言したのだ。
当主に必要なものは、冷静な判断力。ときに酷薄な決断を下さなくてはならないこともある。
上島は、自分はそれを持ち合わせていないのだと、高らかに宣言した。
玄天は、それでも、と食い下がったが、上島は頑として、首を縦に振らなかった。
しかし、玄天を除く華山家総本山の者たちの顔は、一様に安堵の表情を浮かべていた。勢力争いの厳しいところに、また新たな勢力が加われば、今まで築いてきたものが一夜にして消えてしまう。
それは玄天側の人間も、また玄水側の人間も同じだった。玄天だけは納得がいかないようで、ずっと上島を説得し続けていたが、上島は困ったように笑うだけだった。
「俺は、当主の器ではない」
横に居る神楽に向かって、上島は呟いた。そんなことはない、と反論しようとする神楽を遮って、上島は続ける。
「本当だ。俺には、玄天のように、派閥の中で華山家を上手く統括出来るなどとは到底思わない。大体そういう面倒なことは苦手だ」
上島は権力などには興味はない。
勿論、当主になれば、毎年政府からの寄付金は数十億にも登るだろう。依頼主からの多額の謝礼金もある。
しかし、上島はそんなことに頓着する人物ではなかったし、華山家総本山は玄天が治めていくのがいいと思っている。
「それに……」
上島はぽつりと言った。神楽が首を傾げる。
「それに、俺が当主になったとしても、じきにまた玄天が治めなければならなくなる。そんな無用な混乱は避けるべきだろう?」
神楽は瞠目した。咄嗟のことで声が出ない。
「俺は朔になった。けど、朔は寿命が短い。それは神楽も知っている通りだ。だったら、最初から玄天に治めて貰ったほうがいい。そうだろう?」
上島は微笑っていた。屈託もなく。
上島は、間違いなく自分が早死にすることを知っている。
もう、彼はサンユエではなく、怖ろしく寿命の短い、『朔』なのだ。
「そんな顔をするな、神楽。別に自棄で言ってるんじゃない。ただの事実だ。それに――――」
上島は言いよどんだ。
「それに?」
「いや、何でもない。また後で――そうだな、全て終わったら話すよ」
俄かに沈黙が降りた。上島の発言が意味深で、神楽は意味を図りかねた。
「けれど、勇朔。不思議だったんだが、何故勇朔は今まで朔にならなかったんだろう。今まではずっとサンユエの属性だったんだろう? どうして、今になってそんな属性が発覚したんだろうと思っていたんだ。玄天さんも千春も、よく分からないと言っていた。君は……何か心当たりが……?」
二人の間を分かつように、何かが降ってきた。淡い、薄紅の花びら。桜の花だ。
上島と神楽の視線は、落ちていく花びらに注がれていた。
花びらが地面に触れると同時に、上島は神楽を見つめた。淡く笑んでいる。今にも消えそうな笑い方だった。
慈愛に満ちた、母のような笑みだ。全てを赦す者の微笑。今にも壊れて消えてしまいそうだ。
「行こうか」
神楽は言うと、歩き出した。上島は、先を歩く神楽の背を見ながら、目を閉じた。
「全て終わったら話すよ――――」
殆ど息の音だけで、その背に呟く。きっと、もうすぐ終わろうとしている何かが、確実に終われば。それまでは今暫く、このままで居て欲しいのだと、上島は願った。
「勇朔。これでいいのかい?」
神楽は、車の助手席に乗り込むなり、小さな瓶を振って見せた。中は、土が入っている。
元は焦げ茶色だったのかもしれないが、今は既に乾燥して、白っぽく変色していた。触れれば粉になってしまうだろう。
「チセイ、有難う。どうだった? 誰にも見つからなかったか?」
「上々だったよ。元々、今日は香乃さん一人しかいないみたいだったし、置いてある場所もすぐ分かった」
「そりゃ良かった。これでやっと真相が判明する」
華山家総本山から帰ってきて、三日と立たない日のことだった。
上島は、小笠原香乃を訪ねていた。とりあえず、預かっていた遺体の返却が目的だ。
現在、鋭意調査中であると香乃に伝えると、香乃は涙ぐみながら、よろしくお願いしますと頭を下げていた。
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