【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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08 本部の構造ってどうなってんの?

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 幹部の執務室は本部の一つの階層にあるわけじゃなく、怪人の特性に合わせた場所に用意されているらしい。
 蜘蛛怪人の母さんなら暗くて湿度が高い階層、蠍怪人のレクセの親父さんなら乾燥したあたたかい階層といった感じだ。
 それぞれの幹部が一番能力を発揮できる、居心地のよい環境を選ばれているのだそうだ。
 というわけで、蛸怪人である父さんの執務室はというと――

「え!? 何ここ、どういうこと? 窓の外が海の中なんだけど」

 部屋に入るなり、おれは思わずテンションが上がってしまった。
 でも、しょうがないと思う。
 本部の中央昇降機エレベータでかなり深くまで降りた先が、こんなふうになっているなんて知らなかったんだもん。
 父さんの執務室の窓から見える景色は、深海そのものだった。

 ――この本部って、どういう構造の建物なんだろ……外から見た感じと中の広さが全然違うし、階層がいくつあるのかとか全然想像つかないよ。

 本部の中で迷子になったら間違いなく詰む。それだけは断言できる。
 執務室は中も驚くほど広かった。
 部屋っていうより広間って感じの広さだ。

 ――幹部は全員、こんな広い部屋が割り当てられてるってこと?

 もちろん、一人で使うための部屋じゃないけど。
 執務室は幹部を支える幹部付きや幹部候補生、いわゆる上級戦闘員が業務をこなすための部屋でもある。
 でも、今日は父さんが先に人払いをしてくれていたのか、机に書類や荷物は置かれているのに、部屋の中に人の気配はなかった。
 
「マスク外して、楽にしていいぞ」
「あ、その前にちょっといい? おれ、父さんにちゃんと敬礼したくてさ。ほら、さっきは中途半端な感じになっちゃったし……だめ?」

 おれの言葉を聞いて、父さんは一瞬驚いたように目を見開いた。すぐに表情を戻す。

「いい心がけだな」

 空気が一瞬にして変わった気がした。
 訓練場に父さんが入ってきたときと同じだ。
 これが幹部クラスの魔力圧。腹の奥からぞわぞわっと、なんともいえない感覚が込み上げる。
 おれはぎゅっと唇を結ぶと、父さんの前に立った。
 父さんを尊敬する気持ちをたっぷり込めて、握った拳を胸に当てる。

 ――おれの気持ち、伝わるかな。

 父さんはそんなおれを黙って眺めていた。
 見定めるような表情だ。緊張する。
 父さんはしばらくそうした後、何かを懐かしむように目を細める。一呼吸置いてから、ふっと唇の端を上げ、力強い視線でおれを見た。

「~~っ!」

 父さんの答礼に、心臓が止まるかと思った。
 だって、かっこよすぎるだもん。
 おれと同じポーズのはずなのに、全然違って見えるのはあふれる覇気の差なのかな。圧倒されてしまいそうだったけど、おれは頑張って目を逸らさずに踏ん張った。

「……っ、ふぅ」

 父さんが腕を下ろしたのを確認してから、おれも腕を下ろす。
 無意識に息を止めてしまっていたのか、力を抜いた途端、身体に酸素が行き渡っていくのを感じた。

「大きくなったな、バン。立派になって嬉しいよ」

 父さんの太い腕に、ガシッと肩を抱かれる。
 いや、大きくなったっていっても、父さんに比べたらまだまだ小さいんだけどね。っていうかその腕、おれの太腿よりも立派なんだから、力加減は絶対に間違えないでほしい。

「……っ、へへ」

 なんて、どうでもいいことを考えて、にやけそうなのを誤魔化そうとしたけど、うまくいかなかった。
 だって、嬉しいに決まってんじゃん。こんなの。
 父さんが、だらしなく笑うおれのマスクを乱暴に剥ぎ取る。たぶん真っ赤になっているだろうおれの顔を見て、父さんはおれ以上に嬉しそうに笑った。

「――それで、オレに聞きたいことっていうのはなんだ?」

 ようやく本題に入る。
 おれと父さんは執務室の一番奥、入り口から見えない位置にあるソファーに二人並んで座った。
 ここは父さんの休憩兼仮眠スペースらしい。

「この前、少しだけ話したでしょ。触腕が生えたって……それに関係してることなんだけど」
「一度は生えたはずの触腕がうまく出せねえって言ってたやつか」
「そう。それと、父さんに見てもらいたいものもあるんだけど……そっちも触腕が生えないことには説明が難しくて」

 見せたいものというのは、首領様に噛まれて黒く染まった触腕そのものだった。
 あの日、医務室で首領様と会ったことは父さんたちに話してあった。言わなくても、首領様の強すぎる魔力の残滓ですぐにバレていたと思うし。
 でも、首領様にされたことについては何も話せていなかった。あと、例の怪しすぎる研究者みたいな幹部にされたこともだ。
 変な薬を飲まされて、死にそうだったところを首領様に助けられて――そのおかげで触腕は生えたけど、その触腕を首領様に噛まれたあげく、叫ばなかったご褒美にキス……されたなんて。

 ――これを全部、親に説明するとか絶対に無理でしょ!

 父さんたちに心配かけると思うし、何よりおれもまだこの出来事を消化しきれていなかった。
 でも、ちゃんと聞いておいたほうがいいこともある。

「――だからさ、まずは父さんに触腕を出すコツを教えてほしいんだ。父さんが実際にどうやってるかでもいいんだけど」
「コツ、なぁ」

 眉間に皺を寄せた父さんは、がしがしと頭を掻く。
 うーんと唸っているが、何も思いつかないみたいだ。

「普通はどうやって覚えるものなの?」
「オレの場合は、『最初から知ってた』っつうのが近いな。手足を動かすのと同じだ。やり方なんて考えたことがねえよ」

 それは、確かに言葉で説明するのは難しいかもしれない。
 じゃあ、どうしたらいいんだろう。

「考えても仕方ねえ。とにかく、やってみっか。触腕を出す感覚を覚えちまうのが、一番の近道だろうからな」
「いや……でもさ、感覚を覚えるってどうやって?」
「バン、服を全部脱げ」
「………………ふぇ?」

 言われたことを理解するのに、十秒かかった。
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