【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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16 ご褒美だと思ったけれど

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 ――っ、やばいかも……この感覚。

 口の中で溶けた魔石は、魔力を煮詰めて作った蜜みたいだった。舌に広がった甘さは、ふわっと意識がさらわれそうなくらい美味しい。
 でも、それは紛れもなく首領様の魔力の塊だ。
 触腕に咬傷を残されてから、首領様の魔力に影響されやすくなっているおれの身体は否応なく反応する。
 鼓動が速くなる。
 呼吸が乱れ、全身の体温が一気に上がる。

「ン、ぁあ……っ」

 強大な魔力に内側からなぶられる感覚に、身体はびくびくと小刻みに震えた。

 ――キスされたときと同じだ……気持ちいい。

 おれはその感覚を快感と捉えていた。
 首領様の声に乗った魔力が全身を貫いたときと同じだった。びりびりするんだけど、それが気持ちよくてたまらない。

 ――さっきの魔石ってもしかして、ご褒美だった?

 そうとしか思えなかった。
 こんなに気持ちいいの、それ以外考えられない。
 おれは首領様の魔力を余すところなく堪能しようと、うっとりとした気持ちで瞼を閉じる。

「もう、やめ……ひ、ぐぁああっ!!」

 しかし、そんな濁った悲鳴に邪魔された。
 驚いて目を開くと、七人の幹部候補生のうち一人が腰を抜かしたみたいに床に座り込んでいる。爪で喉を掻きむしりながら、首を激しく横に振っていた。
 そんなことになっているのは、彼一人じゃない。

「ぅ、ぁああああ!!」
「あぁ……熱い、あづいィ……ッ!」
「が、アぁ――ッ!!」

 悲鳴を上げてのたうち回っているのが、さっきの彼含めて四人。無言で耐えているものの、苦痛に顔を歪めているのが三人。
 おれ以外の七人は驚くくらい苦しそうだった。
 すぐ隣にいるレクセも、ぐっと眉間に皺を寄せて、血が滲みそうなくらい唇を噛み締めて堪えている。

 ――え、え……なんで?

 全員が同じように苦しんでいるのと、苦しみ始めたタイミングからして、原因はあの魔石以外考えられなかった。

 ――首領様の魔力が七人を苦しめているってこと? じゃあ、おれはなんで平気なんだろ。

 確かに身体の内側に首領様の魔力の熱は感じるけど、あんな騒ぐほどじゃない。気持ちよすぎてどうにかなりそう、っていうなら理解できるんだけど。

「ん……はぁ」

 体内に巡る首領様の魔力を意識したら、また気持ちよさの波がきた。
 やっぱり、これは苦しむようなものじゃない。
 他の皆を苦しめているのは、違うものなんじゃ――

「いひっ。アレを飲んで死ななかっただけじゃなく、まさか〈選別〉にまで残るなんてね。興味深いな、キミは」
「――っ」

 耳に吐息がかかるくらい近くから、不穏な言葉を囁かれた。
 その特徴的な笑い声をおれは知っている。
 勢いよく振り向くと、最初に視界に飛び込んできたのは黒と白のまだら模様の長髪。驚くおれに、にたぁっと愉しげに笑いかけてきた細身の男性はマッド・ビィだった。

「マッド・ビィ。貴方は相変わらず『待て』が苦手なようですね。まだ首領様による導きの途中です。下がりなさい」
「悪いね。興味深いものを見つけたら、いてもたってもいられなくてさ。いひひっ」

 イェスコル様が下がるように命じると、マッド・ビィは悪びれる様子なく笑顔で手を振って、おれの傍を離れていく。マッド・ビィは長い手足を持て余すような特徴的な歩き方で、大講堂の後方へと下がっていった。
 それを目で追っていたおれは、そこに他の幹部が全員揃っていることに気づく。

 ――いつの間に……?

 これだけ大勢の幹部が大講堂に入ってきていたのに、全く気がつかないなんて。
 幹部たちは物音を立てなかっただけじゃなく、気配も魔力圧も、俺たちにはわからないように完全に消していた。

「バン・クラードゥ。首領様の御前ですよ」
「……っ、申し訳ございません!」

 おれまでイェスコル様に注意されてしまった。
 大急ぎで前を向き直す。
 正面に視線を戻すと、玉座にどっかりと腰を下ろす首領様の脚が目に入った。

 ――やっぱり、おれの触腕の外殻……首領様の脚の外殻に似てる気がする。

 そんなことを考えたからか、身体をぐるぐると巡っていた首領様の魔力が触腕の根元に集まっていくのを感じた。

「……っ」

 やばい。これは、たぶんよくない。
 慌てて魔力を制御し直そうとしたけど、うまくいかない。
 腰に巻きつけていた触腕がゆっくりと動き出す。
 触腕はおれの身体から離れるのではなく、タイツ越しにおれの肌を優しく撫で始めた。

「……ん、ぁ……待って、あッ」

 ついさっきまで首領様の魔力に内側から気持ちよさを感じていたおれの身体は、外側から官能に対する反応も早かった。
 弾力のある触腕が纏う鱗状の硬い外殻。触腕がくねるたびに一緒に蠢くそれが、絶妙な触れ具合で肌を擦り、初めての感覚をおれに伝えてくる。
 タイツ越しというのもよくなかった。肌にぴったりと張りついたタイツは、感覚を鈍らせるのではなく、むしろ敏感にする。
 いろんな条件が重なった結果、おれは抵抗なんて一切できずに触腕の与える快感に酔いしれていた。

「あ……ぁッ」

 立ったまま、身悶える。
 触れているのは自分の触腕なのに、触腕から流れ込んでくるのは首領様の魔力だった。内側からも外側からも、じわじわと首領様の魔力に侵食されていっている。

 ――首領様……ガラディアーク様。

 心の中で何度も名前を呼びながら、視線を首領様へ向ける。
 口角のわずかに上がった首領様の口元が見えた瞬間、おれの中で歓喜と多幸感が一気に膨れ上がって、豪快に弾けたのを感じた。
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