【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

文字の大きさ
18 / 111

18 目のやり場に困るんだってば

しおりを挟む

 しばらくして、おれたちは再び大講堂へ呼び出された。
 首領様は先に退出してしまったみたいですごく残念だったけど、代わりに八人の幹部がおれたちを待っていた。
 たぶん、おれたちを指名した幹部だろう。

 ――全部で八人いる! よかった! ……けど、やっぱり父さんたちはいないかぁ。

 血縁者は同じ所属にならないって噂を聞いたことがあったから、なんとなくそんな気はしていたけど、それでも残念な気持ちにはなる。
 できるなら、二人の下で働いてみたかったし。

 ――あ……よかった。あの人もいない。

 八人の中にマッド・ビィがいないことに、ほっとする。あの人の下で働くのは、どう考えても無理だと思う。そもそもそうなった場合、五体満足でいられる気がしないし。
 おれは改めて、端から幹部の顔ぶれを確認した。

 ――蠍怪人のイェスコル様、蟷螂かまきり怪人のフィカ様、百足むかで怪人のレペディ様、ふくろう怪人のウラ様、山羊やぎ怪人のヤアドゥカ様……あとの三人は、おれの知らない幹部だ。

 ダーヴァロードの幹部は、支部に所属する人も含めると結構な数がいる。
 だから、おれも全員の顔と名前を把握できているわけじゃない。

 ――あの人、何の怪人だろう。

 イェスコル様とは反対側の端に立つ人が、なんだか気になって仕方なかった。
 背の高い、かなり雰囲気のあるイケメンだ。
 物憂げな表情だけど、この中の誰より目を引く綺麗な顔立ちをしている。艶やかな黒髪の内側のところどころに深い青紫色のメッシュが混ざっていて、それがその人の妖しげな美しさを引き立てていた。
 他の幹部は見た目でなんとなく、何の怪人かわかるけど、その人だけはパッと見た感じで判断がつかない。
 立派な外殻を纏っているから、幹部の中でも階級が高いことだけはわかるけど、それ以外に見た目から得られる情報はなさそうだった。
 ずっと目を伏せているので、瞳の色もわからない。
 一度くらい、こっちを見ないか期待したけど、その人が表情を動かすことはなかった。

「それでは〈選別〉の儀で選ばれた七名の所属を言い渡します」

 ――ん? ……七人?

 残ったのは八人じゃなかったっけ。
 ちらりと横を見る。人数を数えてみると、本当にオレ含め七人しかいなかった。

 ――おれに嫌味を言ってきたやつがいない……どこいったんだ? まさか……もう処分された?

 控え室の様子を見られていたってこと?
 そうだとしても、いつの間に連れていかれたんだろう。
 控え室から大講堂はそんなに離れていないのに、その間の通路で連れていかれたんだとしたら、ものすごい早業だ。

「次――ツィーガ・ラァ」
「はい」

 一人ずつ、名前を呼ばれる。
 呼ばれたら一歩前に出て、自分を指名した幹部の名前が読み上げられるのを待つ。
 誰が自分の従属する相手かわかったら、その幹部の前に移動して、ここにいる皆の前で忠誠を誓うのだ。

 ――やばい。すごく緊張するかも、これ。

 他の人の宣誓なんて、聞いている余裕はなかった。
 刻一刻と自分の番が近づいてくる。
 失敗しないように、間違えないように、やらかさないように――あれこれ考えすぎて、逆に頭が真っ白になる。
 心臓がぎゅうっと締めつけられるみたいに痛かった。

「――バン・クラードゥ」
「っ、はい!!」

 気をつけたおかげで声は裏返らなかったけど、思っていた以上に大きな声が出てしまった。
 おれは、慌てて一歩前に出る。

「幹部シディア・ラコンの前へ」

 初めて聞く名前だった。
 この場に、おれが名前を知らない幹部は三人いる。

 ――もしかして。

 その人がシディア様である確証なんてないのに、おれは迷うことなく一番端に立つ、気になって仕方なかったあの雰囲気のあるイケメンに視線を向けた。

「――!!」

 ずっと目を伏せていたその人が、まっすぐおれを見ていた。
 絶対にあの人がシディア様だ。間違いない。
 おれは逸る気持ちを抑えきれず、その人のもとに駆け寄る。
 忠誠を誓うために敬礼したまではよかったけど、宣誓の言葉を口にしようとした瞬間、なぜか急に声が出なくなってしまった。

 ――え……なんで。

 宣誓の言葉を忘れたわけじゃない。
 言うべきセリフはわかるのに、声がうまく出せなかった。空気が喉に引っかからず、音にならないのだ。

「あ、あの……」

 宣誓以外の言葉なら普通に話せる。
 それなのに、宣誓の言葉だけどうやっても言えない。変な汗が噴き出してくる。

「――ああ、そうか」

 シディア様が初めて声を発した。
 おれは、その声をどこかで聞いたことがある気がする。だけど、どこで聞いたのかは思い出せない。

 ――って、今はそんなこと考えてる場合じゃないって。

「すみません、おれ……」
「問題ない」

 シディア様は短くそう言うと、おれの唇に指先を押し当てた。
 触れた場所から、ピリッと弱い電流のような痺れが走る。

「ん……っ」
「これでいい――誓いを」

 至近距離で見るシディア様の瞳は、まるでオーロラみたいな不思議な色合いをしていた。
 その瞳をじっと見つめたまま、おれは口を開く。

「おれ、じゃなくて――わたしバン・クラードゥは、ダーヴァロード幹部シディア・ラコン様に忠誠を誓います!」

 ――い、言えた!

 シディア様が何かしてくれたおかげなのか、おれはきちんと宣誓することができた。
 安堵に口元を緩めていると、シディア様の手がおれの頭に触れる。

「――俺に尽くせ」
「っ!」

 その言葉を聞いて、おれはなぜか医務室で首領様に忠誠を誓ったときのことを思い出していた。


   ◆◆◆


「まさか、お前が〈選別〉に残るとはな」
「おれもびっくりですよ。びっくりしすぎて、訳がわからないうちに全部終わってました」
「……それ、大丈夫なのか?」

 驚いた顔の後、眉間に皺を寄せたのはラーギ先輩だ。〈選別〉から戻ったおれを見つけるなり、駆け寄ってきて背中をすごい力で叩かれた。
 叩かれた場所は、まだひりひりして痛い。

「つうか、お前……一か月でどんだけロッカーに物溜め込んでんだよ」

 正式に所属が決まって、すぐにやることになったのがロッカーに置いてあった荷物の移動だ。
 入団式の日から今日までたった一か月間だったけど、毎日お世話になったこの場所――下っ端戦闘員用のロッカーとお別れすることになったのだ。
 普通、下っ端戦闘員は所属が決まってもここを出ていく必要はないんだけど、〈選別〉に残ったおれは扱いが違うから、ここから移動しなきゃいけないらしい。
 おれの移動先はもちろん、シディア様の執務室だ。

「お前まじで無駄なもんが多いな……あ、食いもんは置いてっていいぞ。お前を世話してやった礼の代わりに、オレが全部食っといてやる」
「嫌ですよ! っていうか、お礼はちゃんと別で持ってきますって。こんなもので済ますわけないじゃないですか」

 おれがロッカーに詰め込んでいた食料は、家から適当に持ってきた小腹が減ったとき用のお菓子だ。
 そんなものを、お礼にするはずがない。

「お前そういうとこ、育ちがいいよな。冗談だよ。別に礼なんていらねーって。次からは、お前のほうが立場も上になるしな」
「よくないです! また、ちゃんと挨拶に来るので!」
「わーったよ。なんかあったら、いつでも顔見せに来い」

 ――しんどくなったら、いつでも来いってことかな。

 口は悪いし、すぐに手が出るラーギ先輩だけど、やっぱりすごく面倒見がよくて優しいと思う。
 おれが泣きそうになっているのに気づいたのか、ラーギ先輩は「ばーか」と言ってにやりと笑うと、おれの額を軽くこづいた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...