【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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18 目のやり場に困るんだってば

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 しばらくして、おれたちは再び大講堂へ呼び出された。
 首領様は先に退出してしまったみたいですごく残念だったけど、代わりに八人の幹部がおれたちを待っていた。
 たぶん、おれたちを指名した幹部だろう。

 ――全部で八人いる! よかった! ……けど、やっぱり父さんたちはいないかぁ。

 血縁者は同じ所属にならないって噂を聞いたことがあったから、なんとなくそんな気はしていたけど、それでも残念な気持ちにはなる。
 できるなら、二人の下で働いてみたかったし。

 ――あ……よかった。あの人もいない。

 八人の中にマッド・ビィがいないことに、ほっとする。あの人の下で働くのは、どう考えても無理だと思う。そもそもそうなった場合、五体満足でいられる気がしないし。
 おれは改めて、端から幹部の顔ぶれを確認した。

 ――蠍怪人のイェスコル様、蟷螂かまきり怪人のフィカ様、百足むかで怪人のレペディ様、ふくろう怪人のウラ様、山羊やぎ怪人のヤアドゥカ様……あとの三人は、おれの知らない幹部だ。

 ダーヴァロードの幹部は、支部に所属する人も含めると結構な数がいる。
 だから、おれも全員の顔と名前を把握できているわけじゃない。

 ――あの人、何の怪人だろう。

 イェスコル様とは反対側の端に立つ人が、なんだか気になって仕方なかった。
 背の高い、かなり雰囲気のあるイケメンだ。
 物憂げな表情だけど、この中の誰より目を引く綺麗な顔立ちをしている。艶やかな黒髪の内側のところどころに深い青紫色のメッシュが混ざっていて、それがその人の妖しげな美しさを引き立てていた。
 他の幹部は見た目でなんとなく、何の怪人かわかるけど、その人だけはパッと見た感じで判断がつかない。
 立派な外殻を纏っているから、幹部の中でも階級が高いことだけはわかるけど、それ以外に見た目から得られる情報はなさそうだった。
 ずっと目を伏せているので、瞳の色もわからない。
 一度くらい、こっちを見ないか期待したけど、その人が表情を動かすことはなかった。

「それでは〈選別〉の儀で選ばれた七名の所属を言い渡します」

 ――ん? ……七人?

 残ったのは八人じゃなかったっけ。
 ちらりと横を見る。人数を数えてみると、本当にオレ含め七人しかいなかった。

 ――おれに嫌味を言ってきたやつがいない……どこいったんだ? まさか……もう処分された?

 控え室の様子を見られていたってこと?
 そうだとしても、いつの間に連れていかれたんだろう。
 控え室から大講堂はそんなに離れていないのに、その間の通路で連れていかれたんだとしたら、ものすごい早業だ。

「次――ツィーガ・ラァ」
「はい」

 一人ずつ、名前を呼ばれる。
 呼ばれたら一歩前に出て、自分を指名した幹部の名前が読み上げられるのを待つ。
 誰が自分の従属する相手かわかったら、その幹部の前に移動して、ここにいる皆の前で忠誠を誓うのだ。

 ――やばい。すごく緊張するかも、これ。

 他の人の宣誓なんて、聞いている余裕はなかった。
 刻一刻と自分の番が近づいてくる。
 失敗しないように、間違えないように、やらかさないように――あれこれ考えすぎて、逆に頭が真っ白になる。
 心臓がぎゅうっと締めつけられるみたいに痛かった。

「――バン・クラードゥ」
「っ、はい!!」

 気をつけたおかげで声は裏返らなかったけど、思っていた以上に大きな声が出てしまった。
 おれは、慌てて一歩前に出る。

「幹部シディア・ラコンの前へ」

 初めて聞く名前だった。
 この場に、おれが名前を知らない幹部は三人いる。

 ――もしかして。

 その人がシディア様である確証なんてないのに、おれは迷うことなく一番端に立つ、気になって仕方なかったあの雰囲気のあるイケメンに視線を向けた。

「――!!」

 ずっと目を伏せていたその人が、まっすぐおれを見ていた。
 絶対にあの人がシディア様だ。間違いない。
 おれは逸る気持ちを抑えきれず、その人のもとに駆け寄る。
 忠誠を誓うために敬礼したまではよかったけど、宣誓の言葉を口にしようとした瞬間、なぜか急に声が出なくなってしまった。

 ――え……なんで。

 宣誓の言葉を忘れたわけじゃない。
 言うべきセリフはわかるのに、声がうまく出せなかった。空気が喉に引っかからず、音にならないのだ。

「あ、あの……」

 宣誓以外の言葉なら普通に話せる。
 それなのに、宣誓の言葉だけどうやっても言えない。変な汗が噴き出してくる。

「――ああ、そうか」

 シディア様が初めて声を発した。
 おれは、その声をどこかで聞いたことがある気がする。だけど、どこで聞いたのかは思い出せない。

 ――って、今はそんなこと考えてる場合じゃないって。

「すみません、おれ……」
「問題ない」

 シディア様は短くそう言うと、おれの唇に指先を押し当てた。
 触れた場所から、ピリッと弱い電流のような痺れが走る。

「ん……っ」
「これでいい――誓いを」

 至近距離で見るシディア様の瞳は、まるでオーロラみたいな不思議な色合いをしていた。
 その瞳をじっと見つめたまま、おれは口を開く。

「おれ、じゃなくて――わたしバン・クラードゥは、ダーヴァロード幹部シディア・ラコン様に忠誠を誓います!」

 ――い、言えた!

 シディア様が何かしてくれたおかげなのか、おれはきちんと宣誓することができた。
 安堵に口元を緩めていると、シディア様の手がおれの頭に触れる。

「――俺に尽くせ」
「っ!」

 その言葉を聞いて、おれはなぜか医務室で首領様に忠誠を誓ったときのことを思い出していた。


   ◆◆◆


「まさか、お前が〈選別〉に残るとはな」
「おれもびっくりですよ。びっくりしすぎて、訳がわからないうちに全部終わってました」
「……それ、大丈夫なのか?」

 驚いた顔の後、眉間に皺を寄せたのはラーギ先輩だ。〈選別〉から戻ったおれを見つけるなり、駆け寄ってきて背中をすごい力で叩かれた。
 叩かれた場所は、まだひりひりして痛い。

「つうか、お前……一か月でどんだけロッカーに物溜め込んでんだよ」

 正式に所属が決まって、すぐにやることになったのがロッカーに置いてあった荷物の移動だ。
 入団式の日から今日までたった一か月間だったけど、毎日お世話になったこの場所――下っ端戦闘員用のロッカーとお別れすることになったのだ。
 普通、下っ端戦闘員は所属が決まってもここを出ていく必要はないんだけど、〈選別〉に残ったおれは扱いが違うから、ここから移動しなきゃいけないらしい。
 おれの移動先はもちろん、シディア様の執務室だ。

「お前まじで無駄なもんが多いな……あ、食いもんは置いてっていいぞ。お前を世話してやった礼の代わりに、オレが全部食っといてやる」
「嫌ですよ! っていうか、お礼はちゃんと別で持ってきますって。こんなもので済ますわけないじゃないですか」

 おれがロッカーに詰め込んでいた食料は、家から適当に持ってきた小腹が減ったとき用のお菓子だ。
 そんなものを、お礼にするはずがない。

「お前そういうとこ、育ちがいいよな。冗談だよ。別に礼なんていらねーって。次からは、お前のほうが立場も上になるしな」
「よくないです! また、ちゃんと挨拶に来るので!」
「わーったよ。なんかあったら、いつでも顔見せに来い」

 ――しんどくなったら、いつでも来いってことかな。

 口は悪いし、すぐに手が出るラーギ先輩だけど、やっぱりすごく面倒見がよくて優しいと思う。
 おれが泣きそうになっているのに気づいたのか、ラーギ先輩は「ばーか」と言ってにやりと笑うと、おれの額を軽くこづいた。
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