【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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19 好きの温度差がつらい

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「……うう、重っ」

 荷物をぱんぱんに詰め込んだ箱を抱えて、本部の廊下を歩く。
 ロッカーより大きな箱を用意していたのに荷物があふれそうになっているのは、下っ端戦闘員の先輩たちがお祝いだと言ってあれこれくれたおかげだ。
 初日のやらかしもあったのに、ラーギ先輩以外の皆も本当に優しくて、すごく恵まれた環境だったと思う。

「シディア様の部下って、どんな人たちなんだろう……」

 幹部の下にはそれぞれ、その幹部を支える部下がいる。
 部下の人数は幹部によって様々で、十人程度の少数精鋭のところもあれば、百人近くいる大所帯のところもあるらしい。
 シディア様はなんとなく少数精鋭タイプなんじゃないかなって思っているんだけど、実際はどうなんだろう。

「ええっと……とりあえず、本部の受付に向かえばいいんだったよね?」

 幹部の執務室は、初日の新人が一人で辿り着ける場所じゃない。準備ができたら迎えを呼んでもらうため、本部の受付に声をかけるように指示を受けていた。
 受付は、本部の入り口すぐのところにある。
 そこにいる人は、〈階層管理人〉と呼ばれる人たちだ。
 階層管理人は各階層への取り次ぎ業務だけでなく、本部内のすべての階層を最適な状態に管理する業務も請け負っている。本部内のことを誰よりもよく知るスペシャリストということだ。
 ちなみに本部内でたまに出る迷子を助けてくれるのも、この人たちだ。
 ……お世話にならずに済むといいんだけど。

「お、バンくん。さっきぶり」
「あっ、ツィーガ」
「箱しか見えなかったから、箱が歩いてきたのかと思った」
「そんなに小さくないってば」

 受付前で、ツィーガに声をかけられた。
 話してみてわかったけど、ツィーガはかなり親しみやすい性格だ。そのおかげで、今日初めて会ったとは思えないくらい打ち解けていた。

「ツィーガは受付済ませたの?」
「うん、迎え待ちだよ。バンくんも受付で手続き済ませておいで。荷物は見といてあげるから」
「ありがと」

 ツィーガの足もとに荷物を下ろして、おれはいったん受付に向かう。
 物腰の柔らかい受付の人に名前と所属を告げると、迎えを呼ぶので近くで待つように言われた。

「……階層管理人の制服、かっこいいなぁ」

 階層管理人の制服は、ピタッと肌に張りつく素材でできたつなぎ・・・――いわゆるキャットスーツと呼ばれるコスチュームだ。
 おれが着ている下っ端戦闘員の全身タイツと形は似ているけど、大きく違っているのは素材。下っ端戦闘員のタイツはよくあるタイツ生地だけど、階層管理人の制服は革のような少し光沢のある素材でできていた。

 ――……えっちすぎ。

 悪の組織のコスチュームにボンデージみを感じるのは、おれだけじゃないはず。おれのフェチを刺激してくるのって、たぶんそういうとこだと思うんだけど。

「バンくんは、ああいう制服とか好きなの?」

 独り言を聞かれていたらしい。
 ツィーガが首を傾げて、おれのほうを見ていた。

「好きだけど……なんかそう聞かれると頷きにくい」
「あっはは、ごめん。僕がそういうの好きだからさ。同志だったらいいなと思って」
「え! そうなの!?」
「うん。制服ってかっこいいよね。あと、幹部の装備にも憧れるかな」

 意外なところに同志を発見してしまった。いや、発見されたのはおれのほうなんだけど。
 興奮のあまり、声が大きくなってしまう。

「ツィーガはどういうのが好き?」
「どういうのって?」
「肌にピタッと張りつく光沢感のある素材がたまらないとか、骨っぽい素材でできたごつごつの鎧に興奮するとか、普段は全身覆われてて見えないのに動いたときだけ関節の隙間から見える部分にドキッとするとか」
「んんん……ごめん。そういうふうには考えたことなかったかも」

 わかりやすくドン引きされてしまった。
 好きって言ったのに、なんで。

「ツィーガ・ラァ、迎えが到着したぞ」
「あ、迎えがきたから行くね」
「え……あ、うん」

 ――おれ、やらかした? やらかしたよね……うう。

 初めて同志に出会えたと思ったのに……去っていくツィーガの背中を見つめながら、おれはすんっと鼻を鳴らした。別に泣いてないし。
 そういえば、前世でも似たようなことがあった。
 よく悪役側を好きになるって話していた友人に『おれも同じ!』と好きなところを語ったら、さっきのツィーガとそっくりな反応を返されたのだ。

 ――……学習してないなぁ、おれ。

 でも別に珍しい性癖じゃないと思うし、おれのフェチはそこまで濃いとも思ってないんだけど。
 もっとすごい人なんかいくらでもいるし、おれなんか全然普通のはずだ。

「バン」
「……っ、ぇ、あ……シディア様?」

 呼ばれて振り返ると、目の前にシディア様が立っていた。
 てっきり、おれもさっきのツィーガみたいに受付の人に呼ばれるんだと思っていたのに、いきなり目の前に現れたシディア様にうまく反応が返せない。
 酸素が足りないときの魚みたいに、口をぱくぱく動かすことしかできなかった。

「案内する。ついてこい」

 ――え、シディア様が直々に? こういう迎えって、部下の人が来るんじゃないの?

 突然のシディア様の登場に戸惑いながらも、おれは急いで箱を抱えた。
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