【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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36 刺青は2種類あるらしい

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「小さいが、しっかり刻まれたようだな」

 自分の身体に現れた刺青を、おれは信じられない気持ちで見つめる。
 だって刺青は幹部クラスの怪人にしかないものだし、自分の肌には絶対に刻まれないものだと思っていたからだ。

「……シディア様の刺青と似てる」

 そんな言い方は失礼かと思ったけど、見れば見るほど、おれの肌に現れた刺青はシディア様のものとそっくりだった。

「俺が刻んだ刺青だからな。正真正銘、俺の刺青だ」
「え……どういうことですか? シディア様の刺青がどうして、おれの身体に?」

 普通、刺青というものは過剰な魔力が肌に模様として刻まれたものだ。
 他人の肌に刺青を刻むなんて、今まで聞いたことがない。

「刺青は二種類ある。己が魔力で刻むものと、所有者が魔力で刻むものだ」
「所有者……?」
「お前は俺のものだろう? これはその証だ」
「ん……っ」

 シディア様の指が、おれの刺青に触れる。制服越しだったけど、ピリッと静電気のような刺激に思わず声が出てしまった。
 腹筋が勝手にひくひく震えて、気持ちよくなってしまいそうなのをなんとか堪える。
 そんなおれの反応を愉しむように目を細めてこちらを見るシディア様の視線に、おれの身体の熱はじわじわと高められ続けていた。

「誰もがこれを見れば、お前が俺の所有物だとすぐにわかるな。嬉しいか? バン」
「っ……はい、シディア様」
「所有の刺青は、相手の同意と自覚があってこそ刻めるものだ。一方的には刻めん――そして、もう消すことは叶わん」
「え……あ」

 この刺青がそんなにも、とんでもないものだったなんて。
 呆然と自分の刺青を見下ろすおれの耳元に、シディア様が顔を近づけてくる。

「簡単に受け入れたこと、後悔するか?」

 おれはすぐさま、首を横に振った。

「しません!! ただ……こんなにもすごいものを刻んでいただけると思ってなかったから、驚いただけで!」

 思わず大きな声になってしまった。
 だって、後悔しているなんて勘違いされるのは絶対に嫌だし。

「でも、こんなものがあるなんて知りませんでした。両親にも聞いたことがなかったし……」
「危険を伴う行為だからな。普通は簡単にしない」
「えっ」
「まあ、お前は体質的に問題ないと思ったがな。お前は元々、魔力への感受性が高いのだろう。特に相性のいい魔力には引きずられる傾向にある」
「それ……どういうことですか?」

 どうやらおれのことを言っているみたいだけど、どれもおれ自身も知らないことだった。

 ――魔力への感受性ってなんのことだろう。魔力に引きずられる傾向って?

 考えてみたけど、特に心当たりはない。

「自覚がないのか?」
「……ないです」
「そうか。お前はあの場で気を失っていたんだったな」

 ――あの場……?

 シディア様がいつのことを言っているのか気になるけど、でも……これって聞いて大丈夫なことかな。
 これまでの人生で気を失った回数なんて、そんなに多くない――っていうか、ほとんどが組織を入団したあとに起きたことばかりだ。

 ――おれってダーヴァロードに入ってから気を失ってばっかりじゃない? それだけ身体に負担があることばっかりされてるせいなんだけど……その中で、魔力が関係してたことって……あっ。

 一つ思い当たることがあった。
 でも、これは聞くのが怖くて、何が起こったのか詳細を確認できていないことだ。
 もし、シディア様がその日のことを言ってるのだとしたら。

「それって、もしかして……」
「入団式のことだな」



   ◆◆◆



 入団式の日に起こった出来事を、シディア様から詳しく聞くことはできなかった。
 急な呼び出しが入ったからだ。
 仕事ならおれも手伝うと申し出たけど、今日は帰るよう言われてしまった。ついでに『入団式のことは両親に聞けばいい』とも。

「そんな気軽に聞けるなら、もっと早く聞いてるって……」

 おれの自宅は、ダーヴァロード本部から徒歩で迎える範囲にある。
 幹部は組織の所有する闇都ダークシティ一等地の敷地が与えられ、ほとんどがそこに邸宅を構えているからだ。
 おれの住む家は父さんが幹部昇進と同時に母さん(そのときはまだ恋人だったらしい)のために建てた、二人の愛の巣だった。

「ただいまぁ」
「おかえりなさい、バン」

 おれより先に母さんが帰っていた。
 いつも遅くまで帰ってこない父さんと違って、母さんの帰りが遅くなることはほとんどない。
 同じ組織に入ってわかったけど、それはめちゃくちゃすごいことだった。
 幹部の仕事量は、おれみたいな下っ端とは比べものにならない。父さんほどではないにしろ、残って仕事をしているイメージだ。

 ――母さんって本当に仕事が速いんだろうなぁ。

 おれも見習いたいと思うけど、悲しいかなおれは父さんに似てしまった気がする。

「どうしたの? 疲れた顔して」
「あー……うん。今日はいろいろあったからさ」

 本当にいろいろありすぎた。
 制服を作りにホニベラ様の工房に行ったのが、もう遠い昔のことのように思える。
 あれも今日のことだったんだな。

「幹部候補生は忙しいものね」
「おれは幹部候補生候補だけど……うん。やることはたくさんあるかな。覚えることもいっぱいあるし」
「今日は何をしたの?」
「朝からホニベラ様の工房で制服を作ってもらって、終わってからはシディア様のところに戻って……」

 工房で首領様に会ったのは、なんとなく言わないでおいた。別に口止めはされていないけど。
 あと、シディア様に刻まれた刺青のことも話すかどうか迷う。

 ――聞きたい気もするけど。

 入団式のこと以外にも、おれの悩みは尽きなかった。
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