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43 ガチャだったら虹色演出のやつ
しおりを挟む――OKされると、思ってなかった!!!
あんな無理な誘い、絶対に断られると思っていた。
部下の自宅で一緒に夕食――しかもその両親が自分と同じ組織の幹部とか、居心地が悪い気しかしないのに、シディア様はおれの誘いを快諾してくれた。
誘ったおれのほうが動揺しっぱなしだ。
自宅に向かう道をシディア様と一緒に歩いているのも、すごく変な感じがする。おれの少し後ろを歩くシディア様を、何度もちらちら見てしまう。
――シディア様の私服!! やばい!!
激レア案件じゃん。
シディア様はいつもおれより早く働き始めていて、帰りはおれより遅いから、見たことがあるのは幹部の制服姿だけだった。
私服も、制服とどことなく雰囲気は似ているけど、素材感の違いとか、外殻の有無とか、新鮮さを感じるポイントはいくつもある。
「かっこいい……」
「声に出ているぞ、バン」
「えっ!! 何言ってました? おれ」
完全に無意識だった。
おかしなことを考えていたわけじゃないから大丈夫だとは思うけど、シディア様が少し笑っているのが気になる。
「お前から見て、俺はかっこいいのか」
「はいっ、それはもちろん! かっこいいし、綺麗だし、おれの憧れです!!」
「憧れだけか?」
「え、と……?」
どういう答えを求められているんだろう。
シディア様を褒め称える言葉はあれこれ思い浮かぶけど、どれもシディア様の求めている言葉とは違う気がする。
「まだ自覚が足りないようだな」
「申し訳ありません……」
怒っている感じではないけど、シディア様の期待に応えられなかったのは悔しい。へにょっと沈んだ気持ちで俯いていると、シディア様の手がおれの頭に触れた。
「家、ここじゃないのか?」
「あっ、ここです!」
気づいたら、自宅の前だった。
シディア様はおれの家を知っていたのかな? 直属の部下の情報だし、ちゃんと把握していたのかもしれない。
「オクトスとアラネアは在宅か?」
「母さんはいますけど、父さんは……どうかなぁ」
夕食にシディア様を招待したって連絡したとき、母さんは『いつもより一時間くらい遅く帰ってきて』って言っただけだった。
母さんが父さんに連絡していれば帰ってきているかもしれないけど、今日の今日だし、さすがに無理かなとも思っている。
――母さんにも無理言っちゃったなぁ。
冷静になって考えてみると、こんないきなり夕食に客人を呼ぶって……あり得ないよね。
ごめんなさい、母さん。
「あの! おれ、準備できてるか確認してきますね」
「ああ」
シディア様には扉の前でいったん待ってもらって、おれは先に家の中へと入る。
「ただいま、母さん!」
「おかえりなさい、バン」
「オレもいるぞ」
「えっ、父さん! 珍しいね、こんな早い時間に帰ってるの」
「客人を招くのに、オレが不在っつうわけにはいかねえだろ」
母さんだけじゃなく、父さんも帰っていた。
一緒に食事の準備をしていたのか、二人ともお揃いのエプロンをしている。
おれが小さい頃、二人にプレゼントしたものだ。
「上がってもらって大丈夫?」
「ええ、平気よ」
「じゃあ、呼んでくる!」
駆け足で玄関へ戻った。
シディア様を父さんたちの待つ、ダイニング兼リビングへと案内する。
――わー……うちにシディア様がいるって変な感じ。
廊下から部屋へと繋がる扉を開いて、シディア様を先に中へ通した――そのときだった。
中から、ガタンッと何かがぶつかった音が聞こえる。
慌てて扉の隙間から覗くと、母さんが驚いた表情をしているのが見えた。
「――あッ」
「アラネア、必要ない」
「っ!」
慌てた様子の母さんの名前を静かに呼び、そう短く告げたのはシディア様だった。
母さんはシディア様の言葉に頷くと、すぐにいつもの表情に戻る。
――え、何? おれが見てないあいだに、何かあった?
きょろきょろと部屋の中を見回したけど、さっきと変わったところは見つけられない。
母さんの隣に立つ父さんも何があったかよくわかっていないのか、不思議そうな表情で母さんを見つめていた。
「シディア・ラコンだ。お招きいただき感謝する」
「オクトス・クラードゥだ。ダーヴァロードの幹部同士だっていうのに、会うのは初めてだな。息子が世話になっている」
「アラネア・クラードゥです。ようこそお越しくださいました。あの……シディア様とお呼びしても?」
「好きに呼ぶといい」
――あれ? 二人はシディア様と初対面なの?
同じ組織の幹部だし、どこかで関わりがあるものだと勝手に思い込んでいた。
幹部は大勢いるし、知り合いじゃなくても別におかしなところはないんだけど……じゃあ、さっきの母さんの反応はなんだったんだろう?
「もしかして、オレたちのほうが階級が下か?」
「そうだが気にしなくていい。俺のことはバンに招かれた、ただの客人と思ってくれ」
「あ……やっぱり、シディア様は上級幹部だったんですか?」
「ちょっと……バン」
気になったことを口にしたら、母さんが止めに入った。
ひょっとして、今って聞いちゃいけないタイミングだった? それとも、相手の階級って聞くこと自体アウトだったりするのかな。
「アラネア、気にするな。バンはいつもこうだ」
「……しかし」
「素直でいい子じゃないか」
「恐れ入ります」
――うう……なんかおれ、母さんに恥かかせちゃってない?
わたわたと、シディア様と母さんの顔を交互に見ていたら、シディア様がおれの肩に手をぽんっと置く。
「バン、俺の階級は――秘密だ」
「えー……でも、父さんたちよりは上なんですよね?」
「そうなるな」
だったら、自然と上級幹部ってことになるんじゃないの? まさか……特級幹部?
「バン。料理を運ぶから、シディア様を席に案内して。オクトス、手伝ってくれる?」
母さんはそう言うと、父さんを連れてキッチンへ下がる。
おれはいつも自分が座る場所の隣の席にシディア様を案内した。
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