【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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62 いろいろ大きな侵入者

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 ――背後を取られていたのに、全然気づいてなかった。

 相手は身体の大きな男性だった。
 ただ大きいだけじゃない。この侵入者は、父さんと変わらないくらい鍛えられた体躯をしていた。
 そこまで強く締められているわけじゃないのに全く動ける気がしないのは、的確に急所を押さえられているせいだ。
 少しでも抵抗する素振りを見せれば、おそらく簡単に落とされる。意識を奪われるだけならいいけど、これだけの実力があるなら、おれの命なんか簡単に奪えるに違いなかった。
 相手が戦闘に長けた人物なのは間違いない。

 ――いったい、何者なんだ……この人。

 振り返れば、顔くらいは確認できるかもしれない。
 でも、それが原因で口封じされるようなことになったら――そう思うと怖くて動けそうにない。

「ん? お前、ずいぶん小さくて細こっいな。もしかして子供か?」
「っ、ん……んむッ」

 子供じゃないし、と思わず言い返しそうになったけど、口を大きな手で塞がれているせいで、うまく言葉にできなかった。
 相手は緊張感のない声で「うーん」と唸っている。

「でも、怪人の気配には間違いないよなぁ? 腹からなんか生えてやがるみたいだし」
「――っ! んんっ」
「おいおい、暴れんなって言ったろ? あー、ここを触られんのが嫌だったのか? そりゃあ悪かったよ。人間のオレに、怪人の感覚はわかんなくてなぁ」

 ――え……人間?

 侵入者は信じられない事実を口にした。
 おれは唖然として動けなくなる。それを抵抗する気がなくなったと解釈したのか、口を塞いでいた手が離れていった。
 それでも羽交い締めにはされたままなので、逃げるのは難しい。

「人間、なの……?」

 話をしないほうがいいのかもしれないけど、気になって聞かずにはいられなかった。

「おう。こっちに連れてこられてから、あちこち弄られちまってはいるが、人間を辞めたつもりはないぜ。お前は怪人だよな?」
「……そう、だけど」

 侵入者なのに、気さくな話し方をする人だった。
 どことなく父さんと似た雰囲気があるせいで、警戒心が薄れてしまいそうになる。

「腑抜けた返事だな。もしかして半人前か? 確かに器と中身でチグハグな感じがすっけどよ。っつうかお前、ここがどういうとこかわかるか?」
「……どういう、とこ?」

 変な質問だった。
 ここがどういうとこって、誰がどう見たって書庫にしか見えないのに――どこにある書庫なのか聞くならまだわかるけど、どういうとこって?
 その疑問の答えはすぐに出た。

「ずいぶん真っ暗な場所だよな。お前の姿も見えないし……あの穴に落ちたせいか?」
「もしかして、見えてないの?」
「あん? お前には見えてるのか? っつうことは、あれか? オレに視力がバカになっちまったか?」

 侵入者の人には、ここが真っ暗な場所としか認識できていないみたいだった。すぐ目の前にいるおれの姿も見えていないってことは、相当な暗闇ってことだ。

 ――その感覚、おれも覚えがある。シディア様が目を貸してくれる前は、この書庫が暗闇にしか見えなくて……それと同じこと?

 断定はできないけど、その可能性はある。
 でもそうだったとして、おれはこの侵入者をどうしたらいいんだろう。
 今のところ、そんなに悪い人には思えないんだけど……でも、簡単に気を許すわけにはいかない。

「なあ少年。お前、名前はなんていうんだ?」
「バン、だけど」
「バンか。オレは赤染あかぞめってんだ」
「アカゾメさん……」

 馴れ合うつもりはなかったけど、名前を聞かれてついうっかり答えてしまう。
 でも、侵入者も名乗るとは思わなかった。

 ――この世界の人間の名前、初めて知ったけど……日本人の名前っぽい。

 ふと、普段はあまり思い出すことのない前世のことを思い出していた。

「お前はちゃんとオレの名前を呼べるんだな」
「……どういうこと?」
「オレの名前、怪人どもには発音が難しいみたいでよ。『アーメ』とか『ゾメ』とか言われることがほとんどなんだよ」
「そう、なんだ……」

 ――それって、おれに前世の記憶があるからだったりする? こういうのって、気をつけたほうがいいのかな?

 前世の記憶があることは誰にも話したことがない。
 記憶があるっていっても、おれが一番強く引き継いだのは前世の性癖だったし、それ以外に役に立つ記憶なんてほとんどないから、言う必要がなかったっていうのもある。
 前世の自分がなんていう名前のどういう人間だったのかも全く思い出せないくらい、おれの前世の記憶は曖昧だった。

「アカゾメさんは、怪人に攫われてきたの?」
「あー……オレの場合は、戦闘に負けて捕虜になったってのが正解だな」
「捕虜……そういう人もいるんだ」
「おう。オレが大人しく捕虜になる代わりに、部下を全員返してもらうっつう約束を直接交渉して取りつけたんだよ」

 どうやらアカゾメさんは、ダーヴァロードと戦っている人間側の組織の中で、それなりの立場にある人みたいだった。
 そうじゃないと、そんな交渉は成り立たないはずだし。

「それなのに……逃げ出してきたの?」
「ん? いや、逃げたつもりはないんだが……キツめの実験中に意識が引っこ抜かれる感じがして、気づいたらここにいたってだけで――っつうか、話しにくいな。この体勢」

 おれはまだ、アカゾメさんに羽交い締めされたままだった。
 きつく締められてるわけじゃないから、しんどいとか苦しいとかは全くないけど、確かに話しにくい体勢ではある。

「なあバン、腕は解くけど離れんのはなしにしてくれるか? オレにはお前の姿が見えないからよ。手首くらいは握らせてもらえると助かる」
「あ……うん」

 ――って、素直に頷いてどうするんだよ、おれ。

 アカゾメさんもアカゾメさんだ。
 おれはれっきとした怪人なのに、話しにくいって理由だけで拘束を解くなんて――まあ、おれなんてアカゾメさんの相手にもならないのかもしれないけど。

「おいおい……手首も細すぎだろ。バン、お前マジで子供じゃないんだよな?」
「ちゃんと成人してるし! ――って、何……その見た目」

 言い返しながら勢いよく振り返ったおれは、アカゾメさんの想像していなかった姿に驚いて固まった。
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