【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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73 火のないところに煙は立たぬ

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 何回セックスしても、全く慣れそうにない。
 初めてシディア様に抱かれた日から半月以上が過ぎていたけど、今でも同衾するときの緊張感は凄まじかった。
 挿入の有無にかかわらず、同じベッドに入るだけでおれの心臓は破裂しそうになるし、いざ抱かれるとなったら緊張で全身がかちこちになってしまう。
 シディア様に触れてもらえるのは嬉しいんだけど、それ以上に畏れ多いという気持ちが勝ってしまうせいで、まだまだ自分から積極的にシディア様を求めることはできなかった。

 ――シディア様、おれでちゃんと満足できてるのかなぁ。

 最近、新しく増えた悩みだった。
 それ以外にも、ダーヴァロード上層部のきな臭い噂とか、怪しげな実験をしている〈地下〉のこととか、今も戻ってこないラーギ先輩のこととか……考えなきゃいけないことは山ほどあるんだけど。
 そんな心配事だらけの状態でも、日々は変わらず過ぎていく。
 今日もいつもと同じように午前中の厳しい訓練を終え、レクセと一緒に食堂を訪れていた。

「…………はぁ」
「溜め息ばかりで鬱陶しいぞ、お前」
「ちょっ、そこは心配って言ってよ。レクセ」

 いつもどおり、おれに対して塩対応なレクセに苦情を言う。
 ぷくっと頬を膨らませて睨みつけたら、「そんな顔ができるくらい元気なやつを心配する必要ないだろ」と吐き捨てられてしまった。相変わらず優しくない。

「どうせまた、悩みの内容は話せないんだろ?」
「それは……そうなんだけど」
「なら心配するだけ無駄だ」

 そこまで言わなくていいと思う。
 だけど、話せないのは事実だ。
 おれの抱える悩みで、レクセに相談できることは少なかった。

 ――話せるとしたら、皆も噂してる上層部のきな臭い噂のことだけど……レクセは『根も葉もないただの噂だ』って、きっぱり切り捨ててたもんな。

 でもおれにはやっぱり、そんなふうに考えられなかった。
 だって、明らかに幹部会議の量が増えている。
 シディア様も最近は執務室を空けていることがほとんどで、自宅に戻る時間もどんどん遅くなっていた。
 噂どおり、ダーヴァロード内で何かが起こっているとしか思えない。

「そういえば、前にお前が気にしていた噂だが」
「っ……その噂がどうかしたの?」

 ちょうど考えていたタイミングで噂の話題を切り出され、おれは正面に座るレクセに向かって身を乗り出した。
 あまりの勢いに驚いたのか、レクセの眉間に皺が寄る。

「兄貴から興味深い話を聞いてな。気になったから、俺なりに調べてみたんだ。そうしたら――ただの噂とは思えなくなってきたんだよ」
「それって、いったいどんな……?」

 レクセは声を潜めつつも、周囲を気にしている。
 食堂内は賑やかなくらいざわついているし、誰もおれたちのことを気にしている様子はなかったけど、それでも周りのことが気になるみたいだった。

「ここじゃ話しづらい。場所を変えるか」

 レクセはそう言うと、食べ終わったトレイを持って席を立つ。
 おれは慌ててレクセの後を追った。



   ◆◆◆



 場所を、訓練用に貸し出されている個室へ移す。
 確かにここなら、他の人に話を聞かれる心配はない。
 本当に誰にも聞かれたくない話なのか、レクセは完全に扉が閉じるまで口を開こうとしなかった。

「兄貴によると、闇都ダークシティのエネルギー生産量が問題になるレベルまで減っているらしい」
「……どういうこと? それが噂とどう関係あるの?」
「話は最後まで聞け」

 いきなりエネルギーの話が始まって何がなんだかわからなかったけど、レクセの中では噂と繋がっている話らしい。
 とにかく、聞いてみるしかなさそうだ。

「兄貴は数年前から組織のエネルギー管理に関わる仕事を任されているんだ。その兄貴によるとここ最近、ダーヴァロードの〈地下〉で生産されているエネルギー量が目に見えて落ちているというんだ」

 そこまで説明されてようやく、この街を支えるエネルギーを生産しているのが、ダーヴァロードの〈地下〉だったことを思い出す。

 ――確か、そのエネルギーの原料は――人間。

 攫ってきた人間をなんらかの方法でエネルギーに変換しているのだと、話だけは聞いたことがあった。
 怪人にとって、人間はエネルギー資源だ。
 それを得るために戦っているといっても過言ではない。
 ダーヴァロードは人間側から見れば悪の組織だけど、こちらの世界に住む人々にとっては、なくてはならない重要な存在だった。

 ――前世で人間だったおれからすると、ちょっと複雑なところもあるけど。

 でも、それがこちらの人々にとって必要なことだというのは理解しているつもりだ。

「生産量が減った理由はわかってるの?」
「ああ。とある人間が生み出していたエネルギー量が減ったからだそうだ」
「とある人間……?」

 何やら含んだ言い方だった。
 復唱したおれの目を見て、レクセが頷く。

「その人間は数十年前に自ら志願してダーヴァロードの捕虜になった男で、敵対組織の首領だった人間だそうだ。その捕虜は、この数十年で何万人分に相当するエネルギーを一人で生み出してきたらしい。にわかには信じられない話だがな」
「その捕虜って……」

 おれには心当たりしかなかった。
 自ら志願して、捕虜になった人間。
 それに何十年ものあいだ、〈地下〉に囚われ続けて無事でいられる規格外の人間が、その人以外にいるとは考えられない。

 ――絶対にアカゾメさんのことだ。

 そうとしか思えなかった。

「どうした。何か心当たりでもあるのか?」
「ううん、なんでもない……続けて」
「その捕虜に何かあったのか、もしくは〈地下〉で何か起こったのかはわからないが――組織が今、〈地下〉に関係する大きな問題に直面しているのは間違いない」

 アカゾメさんに何かあったとは考えたくない。
 でも、〈地下〉で起こったなんらかの問題が組織を混乱させているのではないかというレクセの推測は、当たっているような気がした。
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