【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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74 二人の息子でよかった

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「〈地下〉で、何が起こってるんだろう……」

 書庫に戻って、今日も本に話しかける。
 レクセと話をした結果、気になることが増えただけだった。
 突如起こったエネルギー問題。
 ダーヴァロードの〈地下〉で何が行われようとしているのか、それが組織にどういう影響を及ぼすものなのか――どちらもおれが考えてわかることじゃないんだろうけど、考えずにはいられない。

「アカゾメさん、無事だといいな……それに、ラーギ先輩とツィーガも」

 実は、ラーギ先輩を〈地下〉に見送った次の日から、ツィーガも訓練に姿を現さなくなっていた。
 安否がわからなくなって、もう二か月以上になる。
 ツィーガは最後に会ったとき、〈地下〉で薬の実験に協力していると話していた。それだけに何かあったんじゃないかって心配になるけど、おれに確かめる方法はない。

「シディア様に聞いてみる? ううん……でも、シディア様も最近すごく大変みたいだし、おれまで面倒な話題を振るのはなぁ……」

 シディア様はなんでも頼れと言ってくれそうだけど、連日の幹部会議で疲弊しているシディア様に、こんなことを相談するのはさすがに気が引けた。
 家ではできるだけ仕事のことから離れてほしいし、おれはシディア様を癒す相手でありたい。ただでさえ手伝えることが少ないのだから、それくらいは頑張りたかった。

 ――まあ……それを仕事だとは思ってないけど。おれもシディア様に触れられて嬉しいし、抱かれるのはすごく幸せな気持ちになれるし。

 思い出すと、胸がきゅーっとなる。
 下半身に淫らな熱が集まりそうな気配を感じて、おれは慌てて首を横に振った。
 ここで発情するのはまずすぎる。

「あ……仕事といえば、この本を母さんのところに届けるように言われてたんだった」

 今日は珍しく、いつもとは違う仕事をシディア様から頼まれていた。書庫の本を三冊、おれの母さんに届けてほしいというものだ。

「母さんに直接会うの、久しぶりだな」

 シディア様の家で寝泊まりし始めてから、自宅には一度も帰っていなかった。
 それもあって両親とはしばらく会っていない。同じ組織で働いているのに、本部内で二人を見かけたこともなかった。
 通話はたまにしているけど、それだけだ。

「今から向かおっかな」

 おれは早速頼まれた本を三冊抱えて書庫を出ると、母さんの執務室がある階層を目指した。



   ◆◆◆



「バン、いらっしゃい」

 出迎えてくれた秘書さんに本を預けていると、執務室の奥から母さんがひょっこり顔を出した。
 きちんと敬礼しようとしたのに、その前にぎゅっと抱きしめられる。

「……母さん、ちょっと痩せた? ちゃんと食べてる?」
「あらやだ。心配するのは親の仕事だと思っていたのに、息子からそんなふうに言われるなんて」

 笑いながらそう返した母さんだけど、その顔には疲労が浮かんでいた。目の下にはクマもできてしまっているし、声にもあまり覇気がない。
 ここまで疲れた様子の母さんを見るのは初めてだ。

「大丈夫?」
「うーん……そうね。大変だけれど、そうは言っていられない状況だから――でも平気よ。オクトスも気にかけてくれているから」
「でも、父さんも同じくらい忙しいんじゃ……」
「忙しいけどよ。それを理由に、愛する妻を疎かにはしねえよ」
「えっ!? 父さん?」

 いきなり割り込んできた声にびっくりして振り返る。
 父さんはしたり顔で笑いながら大股でこちらに近づいてくると、おれの髪をがしがしと乱暴に撫で回した。

「どうして、ここにいるの?」
「私が呼んだのよ」
「バンが来てるっつうからよ。顔を見ておきたくてな」
「言ってくれたら、おれのほうから会いにいったのに……仕事は大丈夫なの?」
「アラネアの顔も見ておきたかったんだ」

 父さんはそう言うと、労わるような手つきで母さんの頬に手を添える。母さんもそんな父さんの手に、そっと自分の手を重ねた。

 ――相変わらず仲がいいなぁ……父さんたちを見てると、シディア様に会いたくなってきちゃう。

 久しぶりに両親に会えた嬉しさはもちろんあるけど、仲睦まじい二人を見ていると羨ましさも込み上げてくる。
 おれも、あんなふうにシディア様に触れたい。

「お前は変わりないか? バン」
「おれは元気だよ。シディア様にお世話になってるおかげでね」
「ずいぶんと可愛がられてるみてえだな」
「……っ」

 父さんの言葉に深い意味はないと思うけど、『可愛がる』という言葉に過剰反応してしまった。
 シディア様がおれに触れるときに『可愛がってやる』と、よく口にするせいだ。
 そのせいで、えっちな言葉にしか聞こえない。

 ――そういう意味で言ったんじゃないよね?

 父さんに揶揄っている様子はないので、たぶん違うと思う。
 おれは小さく咳払いをして、気持ちを切り替える。

「――父さんも、ちょっと痩せた?」

 父さんも会わないあいだに痩せた気がした。
 母さんみたいにクマはないみたいだけど、やっぱりかなり忙しいんだろうか。

「いやいや、オレは痩せたんじゃなくて絞ったんだよ。いざってときに、ちゃんと動けねえと困るからな」
「それって……近々、戦闘があるってこと?」

 そういう不安は心の中で留めておくつもりだったのに、気づいたときには遅く、考えていたことは口から出てしまっていた。
 声の震えに気づいた父さんが、おれの背中に手を置いて、ぽんぽんと優しく叩く。
 母さんもおれの手をぎゅっと握った。

「不安にさせたか?」
「……ごめん。それが仕事だってわかってるのに、変な反応して」

 幹部は多くの戦闘員を束ねるおさだ。
 組織のために戦うことが仕事なのはわかっているのに、それを不安がるような発言はよくなかった。

「謝んなよ、バン。家族なんだから、心配して当然だろ」
「……でも」
「そうよ。私たちだって、バンのことを心配しているのよ。立派な戦闘員になったあなたを誇りに思ってはいるけれど、それとは別の感情なの」
「それにな、こうやって自分を想ってくれる人のおかげで強くなれんだよ。もし、やばい状況に陥っても『絶対に帰ろう』と思えるしな。だから、無理にそういう気持ちを隠したり、なくしたりする必要はねえよ――ちゃんと伝えることこそ、オレは大事だと思う」

 二人の言葉は心強かった。
 親として、上司として、本当に尊敬できる二人だ。この二人の息子に生まれてよかったと心からそう思う。

「…………うん。そのとおりだね」
「おう」

 父さんは、頷いたおれと母さんを纏めて抱きしめた。
 力が強すぎて苦しかったけど、そのおかげであふれそうになっていた涙が引っ込んでいった。
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