【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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91 力の有効活用とオタクの早口

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 次の日もおれは、アオナさんと一緒に災厄防衛中央局カラミティガードセントラルの廊下を歩いていた。
 今日向かっているのは本部内にある会議室、そこにとある人たちを集めてもらったのだ。

「本当にいいの? その能力を、うちの組織の人間のために使うなんて」
「はい。おれも助けてもらったので。でも大変じゃなかったですか? 戦闘員のせいで毒に苦しんでる人に協力をお願いするのは。しかも、治すって言ってるのが怪人のおれだし」

 そう。アオナさんにお願いして集めてもらったのは、毒を操る戦闘員の攻撃を受け、今も後遺症に苦しめられている人たちだった。
 シロガネ先生からそういう人たちが他にいることを聞いて、おれから『治療させてほしい』とお願いしたのだ。

「そこまで大変ではなかったよ。皆、昨日の模擬戦を観ていたからね。その場に来れなかった人も、動画で見たと言っていたよ」
「えっ、動画なんてあるんですか?」
「ああ。模擬戦だけじゃなく、戦闘に関する動画はできるだけ残すことになっていてね。組織設立時からの決まりなんだ」
「それって、アカゾメさんの過去の戦闘も動画で残ってるってことですか?」
「もちろんあるよ。気になる? じゃあ、俺のおすすめをバンくんにも見てもらおうかな――と、着いたよ。この部屋だ」

 目的地である会議室に到着する。
 アオナさんが扉を開くと、中で待っていた人たちが一斉にこちらを見た。二十人くらいはいる。
 怪人スーツ姿のおれのことが気になるのか、視線のほとんどはおれのほうを向いていた。敵意はないみたいだけど、相手の緊張がひしひしと伝わってきて、おれまで緊張してきてしまう。

「皆さん、お待たせしました。それでは早速治療を開始したいと思います。どんな方法かは先にお知らせしたとおりですが、気になることがあればいつでも聞いてください――それじゃバンくん、始めてくれる?」
「はい! あの、今から少し見た目が変化しますけど、攻撃するつもりはないので安心してください!」

 どんな治療法かは先にアオナさんが全員に伝えてくれていたけど、おれが怪人化するところを見たら怖くなってしまう人がいるかもしれないので、ちゃんと前置きしておく。
 まず魔力を下腹部に集中させて、にょろりと触腕を生やした。そこからさらに魔力を全身に行き渡らせるとピキピキッと高い音を立てて、左耳の外殻が変形していく。
 昨日と同じように、左耳と左目が外殻に覆われた。

 ――うわ……皆、毒のどろどろが纏わりついてる。

 外殻越しに見ると、アオナさんの右太腿にあったのと同じどろどろが、集まった人たちの身体に纏わりついているのがわかる。
 位置や量は人によって違うけど、これじゃ絶対につらいはずだ。

「症状が酷そうな人から治療していいですか?」
「ああ、頼むよ」

 どろどろの量が多い人から治療していくことにした。
 怪人に近づかれるのが嫌な人がいないか心配だったけど、そんなことは全然なく、治療は驚くほどスムーズに進んでいった。
 どろどろはおれが触れるとあっという間に消える。
 治った感覚は本人にもすぐにわかるみたいで、中には笑顔でお礼を言ってくれる人もいた。

「――これで全員ですか?」

 治った人から退室してもらっていたので、最後の人を見送ると、部屋にはおれとアオナさんだけになった。

「うん、全員終わったよ。十九人分の治療が一時間もかからずに終わるとはね。もっとかかると思っていたのに」
「おれもびっくりしました。ただ触れるだけで相手の毒を取り除けるなんて……なんなんだろう、この力」

 本当によくわからない能力だった。
 シロガネ先生によると触れた毒を無効化しているわけじゃなくて、自分の身体に取り込んでから無効化しているらしいんだけど――おれの感覚じゃ、よくわからない。

「かなりの量の毒を取り込んだけど、バンくんの身体に異常はないかい?」

 アオナさんは途中にも何度か、同じ心配をしてくれていた。そのたびに『なんともないです』ってちゃんと言ったんだけど、やっぱり最後も同じことを聞かれる。
 返事をする前に念のため、身体におかしなところはないか確認していたおれは、手のひらにかすかな違和感があることに気づいた。

「……手から、何か出そうかも」
「どういうことだい?」
「言葉じゃうまく表現できないんですけど……何か出てきそうな気がするんです。出してみていいですか?」

 そうとしか表現できない感覚だった。
 アオナさんは戸惑いながらも頷いてくれたので、おれは自分の手に意識を集中させる。
 手のひらの窪んだ部分にゆらっと揺らめく陽炎のようなものが見えたかと思えば、そこに透明な液体がとぷんと現れた。

「え……水?」

 出てきたものを呆然と見つめていると、アオナさんが紙コップを持ってきてくれる。
 そこに出てきた液体を入れるように言われた。

「これ、しろがね先生に見てもらっていいかい? バンくんが嫌ならいいんだけど」
「見てもらってください。おれも、これがなんなのか気になるし」

 おれから出てきた謎の液体は、一度シロガネ先生に預けることになった。



   ◆◆◆



 その日の夕方、おれはアオナさんの私室に招待された。
 おれの部屋にアオナさんが遊びにくることは何度かあったけど、おれがアオナさんの部屋に招かれたのは今回が初めてだ。
 今日のお礼と労いだといって振る舞われた夕食はすべて、アオナさんが作ったものだった。前に好きなものの話をしたときに、おれが『食べるのが好き』と言ったのを覚えてくれていたらしい。
 料理はどれもすごく美味しくて、お腹がはち切れそうになるくらい食べてしまった。

「ごちそうさまでした! 美味しかったです!」
「バンくんは食べるのが本当に好きなんだね。美味しそうにたくさん食べてもらえて嬉しかったよ」

 アオナさんはそう言いながら、食後のお茶を淹れてくれる。
 華やかで香ばしい匂いがするお茶だった。

「バンくん、時間はまだ平気?」
「部屋に戻っても特にすることはないので平気ですけど、どうかしたんですか?」
「昼に話していた赤染さんの戦闘動画を、今から一緒に観るのはどうかと思ってね」
「えっ! 観たいです!!」

 ダイニングからリビングへ移動する。
 アオナさんの部屋には壁掛けの大型ディスプレイがあって、動画はそこに映せるらしい。アオナさんがリモコンを操作するとディスプレイに動画のサムネイルが、ずらりと並んで表示された。

「俺のおすすめからでいいかな?」
「はいっ! ぜひ!!」
「昨日バンくんの戦ってるのを見たときに、この動画のことを思い出したんだよ。君とよく似た戦い方をする怪人が出てくるんだ」
「おれとよく似た戦い方、ですか?」
「そう。かなり前に撮影された動画だから画質はあまりよくないんだけど、ぜひ見てほしくって――――あ、あった。これだ」

 映し出された動画は、確かに画質がよくなかった。
 それでも、そこに映っている人物がアカゾメさんだということはわかる。
 戦いはまだ始まっていなかった。

「赤染さんが手に持っているもの、あれが変身端末デバイスだよ。特務戦闘チームだけが扱える特別なものだ」

 アカゾメさんは、手に持った変身端末を自分の胸の前にかざす。

『――烈火牙装! 〈変身〉!!』

 そう声を張り上げた瞬間、画面が真っ赤になるくらいの閃光が走った。
 同時に風が激しい音を立てて渦を巻く。
 それらが一か所に集まるように収まると、画面の真ん中に立っていたアカゾメさんの姿がさっきまでと変わっていた。

「わあ、かっこよ!! 戦闘スーツの模様が炎みたいになってる。マスクもめちゃくちゃ凝ってるし最高なんですけど。目を覆ってる部分は真っ黒じゃなくて、光が反射すると赤に煌めいて見えるんだ……えー、こだわりすごすぎでは。あと口元の造形って牙モチーフかな? 全体的に獣っぽさがあるっていうか、野生みが強い感じなのアカゾメさんっぽさがあっていい! よすぎ! 超解釈一致!!」
「お? バンくん。君ってばもしかして、こういうの好きなのかな? オタクの早口になってるよ」
「!! わわっ…………そ、そうみたいです」

 興奮気味に早口で語ってしまっていたことに、指摘されるまで全く気づいていなかった。
 っていうか、自分の口からこんな言葉がすらすら出てきたことにも驚きだ。これも、おれの感覚に紐づく言動ってやつ?

「ははっ、そんなに慌てなくてもいいのに。俺もそっち側だから、熱量のある反応が聞けて嬉しいよ。俺はこういうのに憧れたおかげで、今ここにいるからね」
「えっ、そうなんですか!? アオナさんは揺るぎない信念があって、組織に入ったんだと思ってました」
「ある種では揺るぎないから間違いではないよ。あとこれは勘違いされてしまうのが怖いから、あまり口にも顔にも出さないようにしているのだけど…………実は俺、怪人の外殻にも惹かれるものがあるんだよ。あれをもっと近くで見たくて頑張っていたら、特務戦闘チームに選ばれてしまったくらいにはね」
「ぇええええ!?」

 意外すぎる告白だったけど、なぜかおれの心は激しく踊っていた。
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