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107 愛されるための下準備
しおりを挟む目を開けて一番に飛び込んできたのは、神々しさに輝いて見えるくらい美しく均整の取れた胸筋だった。
しっかりと鍛えられた張りのある筋肉が呼吸のたび上下するのが、やけに色っぽくてドキドキする。これが誰のものかわかっているから、そんなふうに感じるのかもしれないけど。
――シディア様の身体……やっぱりすごく綺麗だなぁ。
何度見てもそう思うのだから、本物だと思う。
こんな触れちゃいけない芸術品みたいな人に抱きしめられながら眠るなんて、本当に贅沢以外の何ものでもない。
しかも、それがたくさん愛されたあとだなんて。
あふれるほどシディア様を受け止めたおれの後孔は、まだ何かを咥え込んでいるような錯覚に陥るくらい、シディア様の形を覚えたままだった。
――ん? 違う……本当にまだ何か入ってる?
きゅっとお尻に力を入れても、しっかり閉じない感じがする。
信じられない感覚に一気に目が覚めたおれは、目をぱちぱちと何度も瞬かせた。
――え……なんで? シディア様はおれの正面にいるのに。
おれは今、シディア様と向かい合って抱きしめられる格好でベッドに寝転んでいる。
だから入っているのは、シディア様の昂りじゃない。
――じゃあ、いったい何が……?
強く抱きしめられていて身体は動かせないので、唯一自由に動かせる右腕を動かして、自分の後孔へ手を伸ばす。
「何も……ない?」
お尻の後ろあたりで手をぶんぶんと動かしてみたけど、そこには何もなかった。
でも、やっぱり何か入っている感覚がする。
「何を探しているんだ? バン」
「っ……あ、シディア様」
いつから起きていたんだろう。
そういえば、シディア様が眠っているかどうかちゃんと確認していなかった。胸筋を眺めていた記憶しかない。
顔を上げると、目を柔らかく細めてこちらを見つめるシディア様と目が合う。胸がきゅんと高鳴った。
「それで、何をしていたんだ?」
「あの……お尻に何か、入ってる気がして……いや、おれの気のせいかもしれないんですけど」
説明しているうちに自信がなくなってきて、慌てて付け加える。自分でもおかしいことを言っている気がするし。
シディア様はしばらく黙っておれを見つめたあと、ふっと口元を緩めた。
「――気のせいではないな。俺の外殻を入れてある」
「えっ……シディア様の、外殻を?」
聞き返したものの、あまりに衝撃的すぎて内容はほとんど理解できていなかった。
「ああ。ここを今より拡げる必要があるからな」
ここ――と言いながら、シディア様はおれのお尻の割れ目に指を滑り込ませる。
後孔の入り口を揺らすように刺激した。
「ん……ぁあッ」
「いい声だ。よさそうだな」
「っ……本当におれのお尻に、シディア様の外殻が……?」
「嘘などついてどうする。物足りなくなったら、いつでも言え。太さも長さも自在だからな」
「――ッ」
シディア様はそう言うと、後孔に触れていた手をあっさり離した。
「今すぐにでも抱きたいところだが――まずは食事だな。俺の魔力を喰らっても、腹は空くのだろう?」
それはそのとおりだった。
昨日の戦闘前の食事を最後に何も食べていなかったことを思い出す。身体が空腹を訴え始めた。
――って、待って。もしかして……シディア様の外殻をお尻に入れたまま、食事をしろってこと?
この流れは、そんな気しかしない。
どんなときでも食欲が落ちないのだけがおれの自慢だったけど、さすがにこの状態でいつもどおり食べられる自信はなかった。
食事は寝室まで運ばれてきた。
運んできたのは、シディア様が能力で作り出した〈影〉と呼ばれる人たちだ。
おれが直接見たことのある〈影〉は災厄防衛中央局で会ったシアさんだけだと思っていたけど、実は違っていたらしい。
「この人たちも、シディア様の〈影〉だったんですね」
こっちに戻ってきたおれを首領様の執務室まで案内してくれた、黒のロングコートにひび割れ模様入りの仮面をつけた人たち――その人たちも〈影〉だった。
――仮面の下ってどうなってるんだろう?
そこまでしっかり作り込まれているのか、それとも顔はないのか……ちょっと気になる。
「余所見をするな」
「わ……っ」
料理を並べる〈影〉さんたちを見ていたら、後ろからシディア様に腕を引かれた。長椅子に腰掛けていたシディア様の脚のあいだに座らされる。
「んぅ……」
座った拍子にお尻の中の外殻がぐっと押されて、声が我慢できなかった。
「あの……服を着ちゃだめですか?」
「どうせ、すぐ脱ぐのにか?」
「それでも、このまま食事をするのは落ち着かないというか……恥ずかしいというか」
「慣れろ」
勇気を出して尋ねたのに、その一言で終わってしまった。
ちなみにシディア様も裸だ。
でもおれと違って、シディア様は腰から下が外殻に覆われているので、すっぽんぽんじゃない。上半身は裸で下半身は異形――まるで神話にでも出てきそうな姿だった。
――魔神獣って『神』って言葉も入ってるし、あながち間違いでもないのかも。
魅力的すぎる姿はうっかり見惚れてしまうほどだ。
――そういえばこの外殻、興奮すると出てくるって前に言ってたっけ。
顔や態度に出にくいシディア様の感情を知るのは至難の業だ。今だって、冷静そうに見えるし。
だけどもし、これがシディア様の興奮度合いを表しているんだとしたら――シディア様が興奮を意識するだけで、おれまで気持ちが高まってくる。
「急に体温が上がったな。だが、これから食事だ。発情するのはもう少しあとにしろ」
シディア様には、おれの興奮が筒抜けだった。
食事の準備を終えて、〈影〉さんたちが退室していく。テーブルにはフルコースかと思うくらい、たくさんの料理が並べられていた。
「わあ、美味しそう!」
こんな状態で食べられるかなってさっきは思ったけど、そんな心配は必要なかったらしい。
シディア様が口元に運んでくれる料理をもぐもぐと美味しくいただく。
「やはり、お前は餌づけのし甲斐があるな」
「っ、これってやっぱり餌づけだったんですか?」
執務室で一緒に食事を取るときもよく、こうして食べさせてもらっていたけど……シディア様も餌づけの認識だったんだ。
「俺なりの愛情表現だ」
「愛情……」
その単語をシディア様の口から聞くのはまだ慣れなかった。
というか、恥ずかしさに身悶えそうになる。
「まだ照れるのか。あれだけ抱き合ったあとだというのに」
「それとこれは、別なんです」
「そういうものか」
ははっ、と笑った声がした。
慌てて振り返ると、シディア様が顔を綻ばせている。シディア様が声を上げて笑う激レアな瞬間を、ようやくこの目で見ることができた。
「わぁ……かっこいいと可愛いって同居できるんだ!」
「どういう意味だ? それは」
「シディア様が大好きってことです!!」
思ったことが、そのまま口からぽんぽん飛び出していく。
シディア様の無防備な笑顔にテンションが上がりきったせいで、感情がうまく制御できなかった。
「大好きです、シディア様!!」
「知っている。もとより求婚はお前からだしな」
「っ!! それは!!」
言い返そうとした瞬間、シディア様の指先がおれの顎をすっと持ち上げた。
柔らかく笑っていたはずの表情が少しずつ、おれだけを射抜く熱を帯びた視線に変わっていく。瞳のオーロラがいつもより鮮やかに揺らめいて見えて、胸がぎゅっと締めつけられた。
「それはそうとして――」
低く落ちた声に、ごくりと息を呑む。
「食事はまだ途中だというのに、そんな煽るようなことを言っていいのか?」
「煽るって……んあっ! 待って……ナカのが、大きくなって」
お尻に埋められたシディア様の外殻が急に大きくなった。
何もしなくても、存在をはっきりと感じられるくらいだ。みちみちとナカを容赦なく広げられていっているのがわかる。
「ん、んん……だめ、こんな……壊れちゃう」
「壊すわけがないだろう。これは壊してしまわぬための下準備だ。これから――我のすべてを受け入れるのだからな」
途中から、シディア様の声色が変わった。
全身に外殻の鎧を纏い、ガラディアーク様の姿に変化したからだ。
内側からの快感か、魔力圧への畏怖か――息が詰まり、身体がびくびくと小刻みに震え始める。
「さあ、バン。我にも愛させろ」
囁かれた声だけで、おれは軽く達してしまった。
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