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第48話:王太子視点
時間がちょっと前に戻ります。
―――――――――――――――
ある日、突然、指先に痺れを感じて、食事中にスプーンを落としてしまった。
皿に当たり床に落ちたスプーンは、中身が入っていたのでスープをまき散らしながら落ちた。
白いテーブルクロスと、俺の着ていた白いシャツに、うす黄色い粘性のある液体が飛び散ったのを見て、思わず舌打ちをする。
「まぁ、何をしているの?ヤコブ」
母が嫌そうな顔を隠しもしないで言う。
愛するフローラが『花の館』へ移動したために、数年ぶりに両親と食事をするようになったのだった。
フローラが王宮に居た時も、両親はフローラとの食事を拒否した。
厳密には王宮の使用人達が。
「王族と食事を出来るのは婚約者のみです。それか、他の貴族も招いて晩餐会でも開催しますか?それなら一緒に食事が出来ますよ」
初めてフローラを食堂に連れて行った時に彼女の分が無かったので文句を言ったところ、侍従長にそう反論されたのだ。
フローラの部屋で、フローラと二人で食事をするようになった。
俺の部屋でしようとしたら、「正式な婚約者にならない限り、王太子の部屋には入れません」と侍女長が許してくれなかった。
正式な婚約者でないから食堂で食事ができないのに、部屋にも入れられないのか?!
フローラが敷地内の小さな小屋へと追いやられた。『花の館』など呼び名だけで、花など全然無い質素な小屋なのだ。
「王太子様もフローラ様と一緒に食事をなさいますか?」
フローラが食事が不味いと文句を言って来たのでそれを侍従に伝えると、フローラはメイドと同じ食事だと知った。
それを俺と同じにするように命令したら、そのように聞かれたのだ。
「全てを一緒にお出ししますので、今のように温かいものや冷たいものが美味しいかは疑問ですが」
王宮と小屋は離れている。
そこまで食事を運ぶのだから、当然だろうな。
「俺は両親と食べるよ。そろそろ王になるために、父から色々話を聞かなければいけないからな」
俺はそう答えていた。
フローラと離れてから、俺はあっという間に痩せた。
侍医にはストレスだろうと言われた。
指先の痺れが出てから、すぐに立てなくなった。
フローラに会いに行けなくなり、彼女から会いに来るようになった。
自分で食事が出来なくなるのに、半年もかからなかった。
自分の思う通りに体が動かないのは、思った以上にストレスが溜まる。
俺はその苛立ちを言葉としてメイドや侍従達に、性欲としてフローラにぶつけた。
アンシェリーとの結婚式の時には、既にほとんど体が動かなかった。
声も出ず、呻くことしか出来ない。
生徒会役員だった、今は宰相補佐になったタイラーが俺を支える。
見栄えの為と言って、タイラーも新郎のように白い服を着ていた。
誓いの言葉もタイラーが答えた。
俺がいなければ、アンシェリーとタイラーの結婚式のようだった。
そもそもいつもは車椅子にのせられるのに、なぜ結婚式だけタイラーが支えたんだ!
車椅子をアンシェリーが押せば、二人だけで祭壇に並べただろうが。
いや、侍従が押して、下がれば良いだけだった。
そんな文句すら、もう俺は口にできなくなっていた。
これから初夜だ。
後継を作るのは王族、いや、貴族の義務だ。
アンシェリーはこれから、上手く動けない俺に奉仕して、俺の子供を産まなければいけない。
この後の事を考えて、少しだけ気が晴れた。
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ある日、突然、指先に痺れを感じて、食事中にスプーンを落としてしまった。
皿に当たり床に落ちたスプーンは、中身が入っていたのでスープをまき散らしながら落ちた。
白いテーブルクロスと、俺の着ていた白いシャツに、うす黄色い粘性のある液体が飛び散ったのを見て、思わず舌打ちをする。
「まぁ、何をしているの?ヤコブ」
母が嫌そうな顔を隠しもしないで言う。
愛するフローラが『花の館』へ移動したために、数年ぶりに両親と食事をするようになったのだった。
フローラが王宮に居た時も、両親はフローラとの食事を拒否した。
厳密には王宮の使用人達が。
「王族と食事を出来るのは婚約者のみです。それか、他の貴族も招いて晩餐会でも開催しますか?それなら一緒に食事が出来ますよ」
初めてフローラを食堂に連れて行った時に彼女の分が無かったので文句を言ったところ、侍従長にそう反論されたのだ。
フローラの部屋で、フローラと二人で食事をするようになった。
俺の部屋でしようとしたら、「正式な婚約者にならない限り、王太子の部屋には入れません」と侍女長が許してくれなかった。
正式な婚約者でないから食堂で食事ができないのに、部屋にも入れられないのか?!
フローラが敷地内の小さな小屋へと追いやられた。『花の館』など呼び名だけで、花など全然無い質素な小屋なのだ。
「王太子様もフローラ様と一緒に食事をなさいますか?」
フローラが食事が不味いと文句を言って来たのでそれを侍従に伝えると、フローラはメイドと同じ食事だと知った。
それを俺と同じにするように命令したら、そのように聞かれたのだ。
「全てを一緒にお出ししますので、今のように温かいものや冷たいものが美味しいかは疑問ですが」
王宮と小屋は離れている。
そこまで食事を運ぶのだから、当然だろうな。
「俺は両親と食べるよ。そろそろ王になるために、父から色々話を聞かなければいけないからな」
俺はそう答えていた。
フローラと離れてから、俺はあっという間に痩せた。
侍医にはストレスだろうと言われた。
指先の痺れが出てから、すぐに立てなくなった。
フローラに会いに行けなくなり、彼女から会いに来るようになった。
自分で食事が出来なくなるのに、半年もかからなかった。
自分の思う通りに体が動かないのは、思った以上にストレスが溜まる。
俺はその苛立ちを言葉としてメイドや侍従達に、性欲としてフローラにぶつけた。
アンシェリーとの結婚式の時には、既にほとんど体が動かなかった。
声も出ず、呻くことしか出来ない。
生徒会役員だった、今は宰相補佐になったタイラーが俺を支える。
見栄えの為と言って、タイラーも新郎のように白い服を着ていた。
誓いの言葉もタイラーが答えた。
俺がいなければ、アンシェリーとタイラーの結婚式のようだった。
そもそもいつもは車椅子にのせられるのに、なぜ結婚式だけタイラーが支えたんだ!
車椅子をアンシェリーが押せば、二人だけで祭壇に並べただろうが。
いや、侍従が押して、下がれば良いだけだった。
そんな文句すら、もう俺は口にできなくなっていた。
これから初夜だ。
後継を作るのは王族、いや、貴族の義務だ。
アンシェリーはこれから、上手く動けない俺に奉仕して、俺の子供を産まなければいけない。
この後の事を考えて、少しだけ気が晴れた。
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