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出会い
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しおりを挟む真っ黒な空。真っ黒な森。真っ黒な地面。
真っ黒な……人。
人が立っているなんて、気付くはずのない闇。
永遠の安住……死に場所を求めて彷徨っていた。
街の明かりどころか、空の明かりすらも届かない森の中。
家を出た時に満月を確認し、最後に綺麗な物が見れて良かったと、そう思って少しだけ幸せな気分になっていたはず。
「どうしてここへ?」
いきなり近くで聞こえた声に、男は足を止めた。
周りを見回すが、今までと同じ闇が我が物顔で辺りを埋めている。
まるで闇が話したかのように、低く響く声。
「誰だ!?」
死を覚悟していても、恐怖というものは生まれるようだ。
姿無き来訪者に、男は大声を張り上げた。
「ここは私有地ですよ」
懐中電灯の明かりが男を照らした。
安心させる為か、声の主が今度は自分を照らす。
闇より更に深い黒色の髪。
空虚にすら見える漆黒の瞳。
そしてなにより、その造形の美しさに男は息を飲んだ。
明かりがもう一度男の方へと戻る。
我を取り戻した男は、元来た道を戻る為に踵を返す。
「こんな夜遅くにどちらへ?」
笑いすら含んでいるように聞こえる声に、男は振り返り闇人を睨む。
「そっちが私有地だから出て行けっつったんだろ?」
喧嘩口調の男を見て、闇人は、今度は完全に笑った。
「まだ怒る元気があるなら大丈夫でしょう。しかし、街までは遠い。うちへいらっしゃい」
男の返事を聞くことなく、闇人は歩き始める。
誰が行くもんか! と男が思ったのは一瞬の事で、段々遠くなる光を見て不安になり、慌てて闇人の後を追って走り出した。
隣に並ぶと、闇人の背の高さに驚く。
男も決して小さい方ではないはずなのに、頭一つ上に顔がある。
不躾なくらい眺めていると、前を向いていた闇人の視線がフイに下りてきた。
「もう、死ぬ気はなくなりましたか?」
闇人の言葉に、男は顔に血が集まるのを感じた。
自殺しようと思っていたのがバレていたのだ。
「こんな深い森の中……そんな理由でもなければ人は来ません」
闇人は淋しげに笑った。
死神……じゃないか?コイツ。
男の頭に、そんな考えさえ浮かんできた。
そういえば、青いくらいに白い肌をしている。
それに人間離れしたこの綺麗さ。人外の生き物ならば、納得がいく。
「どうせ捨てる気だった命。私にくれませんか?」
闇人の足が止まった。
懐中電灯に照らされてるわけではないのに、闇人の顔がハッキリと判る。
微笑んだ口元は、いやに赤い色をしていた。
「私も、一人では淋しいのです」
男は闇人を見つめたまま、動けなくなっていた。
いや、動こうと思えば動けたかもしれない。
この闇人と一緒にいたい。そう思ってしまい、身体が動く事を拒否していた。
男の反応を了解と取ったのか、闇人がゆっくりと顔を近付けていく。
男の首筋に、闇人からのくちづけが降りた。
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