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第3章
畳の下の空洞
しおりを挟む朝の陽が窓から差し込み、昨日の出来事がまるで嘘のように思えた。
けれど澪の中には、あの「音」がしっかりと残っていた。
畳が軋む、あの湿ったような、乾いたような不気味な音が、耳の奥にこびりついている。
「この部屋、ちょっと畳剥がしてみる」
そう言ったのは康平だった。
澪の夫は、建築資材関係の仕事をしている。古い家の改修に慣れている彼は、あの八帖間を何かがおかしいと感じ取っていた。
朝食を終え、康平は作業用の手袋とバールを持ち出すと、八帖間の一角にしゃがんだ。
「こっちの畳、浮いてる。湿気かもな」
澪は黙って見ていた。昨夜のことは話していない。
音の正体を口にすれば、何かが壊れてしまう気がした。
バールを差し入れて畳を持ち上げると、裏には黒いシミが広がっていた。
畳の下、床板の一部が不自然にたわんでいる。釘も見当たらない。
康平がそれを慎重に外すと、薄暗い床下から、小さな木箱が姿を現した。
塗装は剥がれ、湿気で膨らみ、側面には墨で書かれた文字がぼんやりと浮かんでいる。
「……なんか書いてある」
康平がぼそりとつぶやいた。
箱を開けたその瞬間、澪は思わず息を呑んだ。
中に入っていたのは、濡れたような光沢を持つ日本人形。
白い顔、黒い瞳。ガラス玉のように硬く、こちらをじっと見返してくる。
人形の隣には、二つ折りにされた古い半紙。
康平がそれを広げると、くっきりと文字が現れた。
封じ こどもの なまえ
その字は滲み、所々が掠れている。だが、意味は明確だった。
まるでこの家に、名前を持った“何か”が封じられているように。
その瞬間、澪の背中にぞくりと冷たいものが這い上がった。
――この家の中に、“こども”がいる。
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