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「……犠牲になろうとしたのか……俺たちの為に」
「ディアナとして救いたかったの……!! あたしがこの国に来た意味はそうなんだって……だから……」
「お前は確かにディアナドラゴンだ。水を生み、今や人々にとって無くてはならない存在だ。……だがな」
ヘリオスはトエイを少し離すと、その両肩に手を置いた。その瞳には、今にも泣きだしてしまいそうなほどの悲しみを湛えていた。
「お前は今はディアナではなく、トエイだ。それも、このダイアンサス帝王ヘリオス・バシレウス・ダイアンサスの伴侶だ。…………それが…………、分かったら…………、二度と俺から離れるな……」
まるで、帝王としての傲慢な命令にも聞こえる言い方だが、そうではない。
懇願、されたのだ。
その時、トエイは初めて自分の愚かしい行為に気付き、瞳から大粒の涙を次々と流した。確かにヘリオスは、民を救い国を大きく豊かにすることが願いだ。
だがその未来図に、トエイ無くして何を喜べようか。
「あた……し……」
トエイは、そっと肩に置かれているヘリオスの手を握った。
腰から下は水に浸かり、炎天下だというのにすっかり冷えてしまっている。
「あたし……」
何を言えばいいのだろう。こんなに想ってくれている人に対して。
正直に言ってしまえば、この人は喜んでくれるだろうか。
「竜玉を取り出して……永遠に水を与えて……でも、あたしは死んじゃう……けど、怖くは……なかったの……」
嗚咽混じりに紡ぐ言葉も、ひとつひとつが必死で。ヘリオスもメナスも、それにじっと耳を傾けていた。
怖くはなかった。確かに怖くはなかった。
だが、あの最期の瞬間。
この指で光る指輪を見てしまった。
急に、怖くなった。
痛いぐらいに、気付かされたのだ。自分はもう、ヘリオス無しではいられない。だがもう目の前には死が迫っていて、取り返しはつかなかった。
なのに……!
「……今度は、ヘリオスがあたしの目を覚まさせてくれたね……」
「ああ……」
頬を赤らめて、穏やかに微笑むトエイに、ヘリオスは押さえきれない愛しさを以て、おそらく今まで人に見せたことが無いであろう、最高の笑顔を見せた。
そんな二人を見ても無表情を装うメナスだったが、複雑な思いでその抱擁を見つめていた。
何故、自分は助言などしてしまったのだろうか。
ここへ来たのは、この娘の亡骸を持ち帰る為。自らを地に還し国を救うと言い張るその決意を敬い、最期はせめてディアナの一族の元へ帰してやろうと考えたからだ。
普通ならば、これは最高の結末なのだろう。
種族を超え、王は愛する者の為に竜玉を捧げ救った、など、まるで童話の世界のようだ。だが、ヘリオスとトエイがこのまま生き、万が一子を成すようであれば、今度はディアナ種にとっての恥になる。
第一、世界の均衡を崩す第一歩を踏み出している。
ただでさえ混血による争いやしがらみが増えているこの世界なのに。いや、もちろん原因はそれだけではないのだが。
なのに、何故。
メナスは自分で自分の考えが分からないという、奇妙な思考の迷路に陥っていた。しかし、その答えを導きだすにはそう時間はかからなかった。
「……そうか……」
メナスは目を伏せると、その額に人差し指を押し当てた。
我もまた、魅せられたのだな。
それに気付いた時に彼は、愚かしいあの同族の気持ちを少し理解することが出来た。
前ダイアンサス王に協力し、ディアナとの子を成した同種。大層な恥さらしだと、当然のように制裁を加えたものの、今になって僅かな罪悪が胸に広がった。もしや、あの変り者の同種は、ディアナドラゴンを愛し救おうとしていたのではないか。
今となってはただの憶測にしかならないが、それでもメナスの迷宮思考を終止させるには十分な答えだった。
相反し、違うからこそ求める。
例えそこに未来が無くとも、終わりの無い闇夜の淋しさを埋めれるならば、ためらいなく求めてしまうのだろう。
竜も、結局はそんなものだ。
仕方なく、甘んじて受け入れるか。
メナスが思考を終えた時、いつの間にか二人は自分の前に立っていた。
「なんだ?」
「メナスも、此処にいようよ」
何を言いだすのかと思いきや。
まだ青白いトエイの顔を見ながら、メナスは助けを求めるようにヘリオスを一瞥した。
「俺は別に構わないが。居ならば、アインが助かるんじゃないか。あいつはマグナドラゴンの方の血が濃いだろうからな」
「そうなの?」
「多分な」
そういう意味で視線を送ったのではないのに、メナスは軽く舌を打つと彼らに背を向けた。
「我は人に属さぬ。何を思いそう言ったのかは知らぬが、これきりだ」
「……そっか」
だが、背を向けた裏で、メナスは軽く口端を上げていた。
人に求められることもそう悪い気分はしないのだな、と心で呟いた。
「この水は一体いつ止まるんだ?」
湧き出る水を見て、ヘリオスが二人に尋ねた。
「えっと……多分」
「永劫、湧き出るだろうな」
「何?」
「つまり、帰ったなら早速水路を建設しなければいけないということだ」
なんということか。水不足に悩んでいたというのに、今度はその多さに悩まされるとは。そうなると疎ましく思ってしまうのは、人間の悪い癖だ。
「ヘリオス、あたしも手伝うよ。すぐに出来るよ」
根拠の無い激励だとしても、今のヘリオスには十分だった。
心を洗い流してくれる存在の彼女が傍に居るならば、この国の未来はきっと、豊かなものになる。
彼はそう、まるで未来が見えているかのように、誰よりも強く確信した。
だが、世界はこの結末を許しはしなかった。
三人は帰路についた。
メナスが先を歩き、その後ろにトエイ、ヘリオスが続く。
眼前に首都が見えてきた時、何も言わず城を飛び出してきたらしいヘリオスは、早く帰らねばと更に急ぎだした。
そう心配するヘリオスを余所に、トエイの胸は希望に膨らんでいた。
帰ったら、まずは水路を確保して、この事態を皆に説明して。
そして……
そして。
光る指輪を見ながら、トエイは微笑んだ。
今なら、同族に感謝出来る。
この国に捨ててくれて、ありがとうと。
絵本で見たような白いドレスに包まれることを夢見ながら、トエイは指輪をはめた手を口元に持っていき、背を少し丸めながら微笑んだ。
服も靴もずぶ濡れだったが、よく見ると、傍らにいるヘリオスもずぶ濡れだ。
トエイはそれを笑いながら、高い位置にあるヘリオスの顔を見上げた、刹那。
小さく、だがやけに重い音がした。
すぐにはそれが何なのか分からなかった。
何かが荷物が落ちたような音だったのでトエイは視線を下へと移動させた。
だが、落ちたものは何も無かった。
代わりに、足元の水が真っ赤に染まっていた。
「……陛下が竜玉を取り出すの待っていましたよ。そうすれば陛下は、ただの人間ですからね」
この声は、ほとんど毎日耳にしていた声だ。
トエイは導かれるように顔を上げ、更に視線を移動させた。
認めたくない、現実に向けて。
「副官……さん」
ヘリオスの背中から胸にかけて、細い剣が真っすぐに貫かれていた。それを握る男は、いつも彼に付き従っていたあの男。
「マグナドラゴンには感謝しますよ。いい機会に首を突っ込んでくれたおかけで、反乱軍がその翼の裏に潜めたから……ね!!」
悲願叶ったりと言わんばかりに男は、勢い良く剣を抜いた。
抜くと、ヘリオスの体は糸が切れたように前へと揺らぎ、そのまま音を立てて倒れた。
端から見れば一瞬の出来事が、トエイの目にはやけにゆっくりと映っていた。
「さようなら殺戮王! 国もディアナ様も私の物だ!」
ヘリオスの体の真中心から、とめどなく鮮血が流れている。流れ出でた血は清らかな水の上を滑り、もやもやとした花のように広がっていった。
「トエイ……」
倒れる瞬間、ヘリオスは手を伸ばした。
だが、トエイはその手を掴むことが出来なかった。動けなかった。
彼は無情にも地面に叩きつけられ、赤い波紋は益々広がり、ここに、帝王の最期を飾った。
「下朗がァッ!!」
「ひいい!?」
直ぐにメナスがその男を討ったが、そうしたからといってもうどうにもならなかった。
トエイはヘリオスの傍にへたりと膝をつくと、開いたままだった彼の目蓋を、そっと伏せてやった。
最後の、最期で、世界はこの二人を否定した。
「ディアナとして救いたかったの……!! あたしがこの国に来た意味はそうなんだって……だから……」
「お前は確かにディアナドラゴンだ。水を生み、今や人々にとって無くてはならない存在だ。……だがな」
ヘリオスはトエイを少し離すと、その両肩に手を置いた。その瞳には、今にも泣きだしてしまいそうなほどの悲しみを湛えていた。
「お前は今はディアナではなく、トエイだ。それも、このダイアンサス帝王ヘリオス・バシレウス・ダイアンサスの伴侶だ。…………それが…………、分かったら…………、二度と俺から離れるな……」
まるで、帝王としての傲慢な命令にも聞こえる言い方だが、そうではない。
懇願、されたのだ。
その時、トエイは初めて自分の愚かしい行為に気付き、瞳から大粒の涙を次々と流した。確かにヘリオスは、民を救い国を大きく豊かにすることが願いだ。
だがその未来図に、トエイ無くして何を喜べようか。
「あた……し……」
トエイは、そっと肩に置かれているヘリオスの手を握った。
腰から下は水に浸かり、炎天下だというのにすっかり冷えてしまっている。
「あたし……」
何を言えばいいのだろう。こんなに想ってくれている人に対して。
正直に言ってしまえば、この人は喜んでくれるだろうか。
「竜玉を取り出して……永遠に水を与えて……でも、あたしは死んじゃう……けど、怖くは……なかったの……」
嗚咽混じりに紡ぐ言葉も、ひとつひとつが必死で。ヘリオスもメナスも、それにじっと耳を傾けていた。
怖くはなかった。確かに怖くはなかった。
だが、あの最期の瞬間。
この指で光る指輪を見てしまった。
急に、怖くなった。
痛いぐらいに、気付かされたのだ。自分はもう、ヘリオス無しではいられない。だがもう目の前には死が迫っていて、取り返しはつかなかった。
なのに……!
「……今度は、ヘリオスがあたしの目を覚まさせてくれたね……」
「ああ……」
頬を赤らめて、穏やかに微笑むトエイに、ヘリオスは押さえきれない愛しさを以て、おそらく今まで人に見せたことが無いであろう、最高の笑顔を見せた。
そんな二人を見ても無表情を装うメナスだったが、複雑な思いでその抱擁を見つめていた。
何故、自分は助言などしてしまったのだろうか。
ここへ来たのは、この娘の亡骸を持ち帰る為。自らを地に還し国を救うと言い張るその決意を敬い、最期はせめてディアナの一族の元へ帰してやろうと考えたからだ。
普通ならば、これは最高の結末なのだろう。
種族を超え、王は愛する者の為に竜玉を捧げ救った、など、まるで童話の世界のようだ。だが、ヘリオスとトエイがこのまま生き、万が一子を成すようであれば、今度はディアナ種にとっての恥になる。
第一、世界の均衡を崩す第一歩を踏み出している。
ただでさえ混血による争いやしがらみが増えているこの世界なのに。いや、もちろん原因はそれだけではないのだが。
なのに、何故。
メナスは自分で自分の考えが分からないという、奇妙な思考の迷路に陥っていた。しかし、その答えを導きだすにはそう時間はかからなかった。
「……そうか……」
メナスは目を伏せると、その額に人差し指を押し当てた。
我もまた、魅せられたのだな。
それに気付いた時に彼は、愚かしいあの同族の気持ちを少し理解することが出来た。
前ダイアンサス王に協力し、ディアナとの子を成した同種。大層な恥さらしだと、当然のように制裁を加えたものの、今になって僅かな罪悪が胸に広がった。もしや、あの変り者の同種は、ディアナドラゴンを愛し救おうとしていたのではないか。
今となってはただの憶測にしかならないが、それでもメナスの迷宮思考を終止させるには十分な答えだった。
相反し、違うからこそ求める。
例えそこに未来が無くとも、終わりの無い闇夜の淋しさを埋めれるならば、ためらいなく求めてしまうのだろう。
竜も、結局はそんなものだ。
仕方なく、甘んじて受け入れるか。
メナスが思考を終えた時、いつの間にか二人は自分の前に立っていた。
「なんだ?」
「メナスも、此処にいようよ」
何を言いだすのかと思いきや。
まだ青白いトエイの顔を見ながら、メナスは助けを求めるようにヘリオスを一瞥した。
「俺は別に構わないが。居ならば、アインが助かるんじゃないか。あいつはマグナドラゴンの方の血が濃いだろうからな」
「そうなの?」
「多分な」
そういう意味で視線を送ったのではないのに、メナスは軽く舌を打つと彼らに背を向けた。
「我は人に属さぬ。何を思いそう言ったのかは知らぬが、これきりだ」
「……そっか」
だが、背を向けた裏で、メナスは軽く口端を上げていた。
人に求められることもそう悪い気分はしないのだな、と心で呟いた。
「この水は一体いつ止まるんだ?」
湧き出る水を見て、ヘリオスが二人に尋ねた。
「えっと……多分」
「永劫、湧き出るだろうな」
「何?」
「つまり、帰ったなら早速水路を建設しなければいけないということだ」
なんということか。水不足に悩んでいたというのに、今度はその多さに悩まされるとは。そうなると疎ましく思ってしまうのは、人間の悪い癖だ。
「ヘリオス、あたしも手伝うよ。すぐに出来るよ」
根拠の無い激励だとしても、今のヘリオスには十分だった。
心を洗い流してくれる存在の彼女が傍に居るならば、この国の未来はきっと、豊かなものになる。
彼はそう、まるで未来が見えているかのように、誰よりも強く確信した。
だが、世界はこの結末を許しはしなかった。
三人は帰路についた。
メナスが先を歩き、その後ろにトエイ、ヘリオスが続く。
眼前に首都が見えてきた時、何も言わず城を飛び出してきたらしいヘリオスは、早く帰らねばと更に急ぎだした。
そう心配するヘリオスを余所に、トエイの胸は希望に膨らんでいた。
帰ったら、まずは水路を確保して、この事態を皆に説明して。
そして……
そして。
光る指輪を見ながら、トエイは微笑んだ。
今なら、同族に感謝出来る。
この国に捨ててくれて、ありがとうと。
絵本で見たような白いドレスに包まれることを夢見ながら、トエイは指輪をはめた手を口元に持っていき、背を少し丸めながら微笑んだ。
服も靴もずぶ濡れだったが、よく見ると、傍らにいるヘリオスもずぶ濡れだ。
トエイはそれを笑いながら、高い位置にあるヘリオスの顔を見上げた、刹那。
小さく、だがやけに重い音がした。
すぐにはそれが何なのか分からなかった。
何かが荷物が落ちたような音だったのでトエイは視線を下へと移動させた。
だが、落ちたものは何も無かった。
代わりに、足元の水が真っ赤に染まっていた。
「……陛下が竜玉を取り出すの待っていましたよ。そうすれば陛下は、ただの人間ですからね」
この声は、ほとんど毎日耳にしていた声だ。
トエイは導かれるように顔を上げ、更に視線を移動させた。
認めたくない、現実に向けて。
「副官……さん」
ヘリオスの背中から胸にかけて、細い剣が真っすぐに貫かれていた。それを握る男は、いつも彼に付き従っていたあの男。
「マグナドラゴンには感謝しますよ。いい機会に首を突っ込んでくれたおかけで、反乱軍がその翼の裏に潜めたから……ね!!」
悲願叶ったりと言わんばかりに男は、勢い良く剣を抜いた。
抜くと、ヘリオスの体は糸が切れたように前へと揺らぎ、そのまま音を立てて倒れた。
端から見れば一瞬の出来事が、トエイの目にはやけにゆっくりと映っていた。
「さようなら殺戮王! 国もディアナ様も私の物だ!」
ヘリオスの体の真中心から、とめどなく鮮血が流れている。流れ出でた血は清らかな水の上を滑り、もやもやとした花のように広がっていった。
「トエイ……」
倒れる瞬間、ヘリオスは手を伸ばした。
だが、トエイはその手を掴むことが出来なかった。動けなかった。
彼は無情にも地面に叩きつけられ、赤い波紋は益々広がり、ここに、帝王の最期を飾った。
「下朗がァッ!!」
「ひいい!?」
直ぐにメナスがその男を討ったが、そうしたからといってもうどうにもならなかった。
トエイはヘリオスの傍にへたりと膝をつくと、開いたままだった彼の目蓋を、そっと伏せてやった。
最後の、最期で、世界はこの二人を否定した。
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