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喉の奥から、絞りだされた声を拾う者はいない。だがトエイは淋しくなどなかった。己の末期に誰がいなくとも、この死がこの大地を未来へと繋ぐのだから。
ゆっくりと、その日その日で水を民に与えるならば、トエイの体に影響は無いだろう。
だがそれでは、現実的に考えて民全てに水が行き届くわけが無い。
どうしても王都を中心に水が供給される為、地方の環境は対して変わっていないのだ。
やがてそれは格差を産み、また国民に不満を募らせる。
それでは意味がない。
トエイが再起したのは、そんな新たな問題を生む為ではないのだ。
ディアナドラゴンとして、全てに平等に水を与えたい。
その、ただひたすらで純粋な願いの為なら、その身すら厭わない。
そうすると、もうずっと前に決めていたのだ。
おそらくは、枯渇したこの国をその目で見た時から。どう転がろうと、最期はこうすると決めていたのだ。その決意が叶った今、トエイはもう何の未練が無いかのように微笑んでいるのだった。
だが。
感覚の無い四肢の中、ひとつだけまだ己の意志とは反対の結末を望む部分があった。
なんとか瞳だけは動くようなので、トエイはその感覚を捜し当てた。
「あ……」
もう水の中に沈んでしまっている、だらんとした左手。その薬指に光る指輪。それが、やけに温かい。温もりが、決意を鈍らせる。
彼の腕の中に戻りたいと叫ぶ、自分を呼び起こす。
外しておくべきだったか。
トエイの瞳からはなんともいえない淋しさと共に涙が流れたが、水に包まれ同化してしまう。
瞳も、髪も、体も全てが水に浸された時、彼女は。
声にならない声を出して、泣いた。
「――トエイ!」
沈んだ彼女の体を引き上げながら、ヘリオスは気が狂いそうだった。
荒廃した大地に広がる水の流れの先を追い、やっと見つけたというのに、これはどういうことなのだ。彼の膝下あたりまで存在を広げている水が、今は邪魔で仕方ない。
「トエイ! トエイ……!」
昨日は、あんなに笑っていたのに。未来を夢見て眠りについたのに。
あまりの現実に、彼はその名を繰り返し呼ぶことしか出来ない。
「トエイ……」
水の中から引き上げた彼女はあまりに力無く、重力に引かれるままにまだ水中に戻ろうとしている。
ヘリオスはその体を思い切り抱き締め、まだ名前を呼び続けている。それよりもすぐに彼女を運び、適切な処置をしなければいけないだろうに。
まさか、そんな冷静な判断が本当に出来るだろうか。愛しくてたまらない人が、もうこんなに冷たくなっているのに。
「…………トエイ……」
『なあに? ヘリオス』
そう返ってくる筈の返事は、無い。真っ白になった唇に指先で触れてみても、その頬に手の平を添えてみてもまるで反応が見られない。
手が、冷たさに恐怖し小刻みに震えている。ヘリオスの手の熱がそれを無くそうとしているのに、まるで役に立たない。
だが彼はそれをそのまま受け入れることを良しとしない。
混乱し、悲しみに打ち拉がれる頭を無理矢理に屈伏させ、彼はその双眸を凛と開いた。
「死なせるものか……」
そう言ってはみるものの、その方法があるわけではない。だが彼は自らを奮い立たせる為に、言葉を呟き続ける。
「決して死なせない……」
トエイの指には、あの時渡した指輪がある。
「指輪を渡した以上、お前は俺の伴侶だ……。お前がそう決意したように、俺にも決意があるのだ!」
瞬間、その手の内に、彼女の体とはまた違う冷たさを彼は感じた。おそるおそる左手を開いてみると、今まで見たことの無いような奇妙な物がそこにあった。
それは先程トエイの胸の内より出でた玉(ぎょく)によく似ているが、大きさは随分異なる。
小さく、まるで頼りないが、ヘリオスはそれが何なのか本能で理解した。
「竜玉だな」
代弁したのは、彼の背後に現れた青年だった。
「混血とはいえ、貴様にも竜玉が存在するのは当然だ。それが現れたということは、お前は娘と近い種だ」
「マグナドラゴン…………メナス」
一体いつからそこに居たのか。気配に気付かぬ程取り乱していたのが事実だが、ヘリオスは半ば八つ当り気味に彼を罵った。
「また再び、この国を滅ぼすために来たのか?」
「侮るな小僧。口約束とはいえ、我はディアナの娘の意を蹴るような低俗な真似はしない」
「ならば、何故ここにいる?」
メナスは答えなかった。冷淡な瞳をただヘリオスに向けているだけで、次に口を開いた時に発せられた言葉も質問に対する答えではなかった。
「死なせたくないのならば、分け与えろ」
ヘリオスがすぐにはその意味を理解出来ないのは当然なのだが、メナスは侮蔑にも似た溜め息を吐いた。
「ディアナの娘がばらまいたのは己の竜玉だ」
それは竜の命。竜の心臓。唯一の弱点。それをばらまいた、と言うならば救う方法など皆無ではないか。と、言いたげに眉を寄せるヘリオスにメナスはすぐに言葉を足した。
「故、分け与えろ。お前の竜玉を。救いたいのだろう」
「俺の竜玉を……?」
「お前の中にディアナの血を濃く感じる。恐らく、お前の片割れはマグナの血を濃く引いているだろうな」
手の中に現れた玉を一瞥し、ヘリオスはそれを握り締めた。
「更に、お前には人の心臓がある。竜玉を分け与えたとて、死ぬことはない」
「本当に、それでトエイが助かるのか?」
「そこまでは知らん」
冷たく突き放すが、この自尊心の高い竜が、確信も何も無くこのようなことを教える筈がない。
色の無いトエイの顔を見つめながら、ヘリオスは目を細くした。そして、戸惑いがちにその手をトエイの胸元に近付けた。
すると、それを待っていたかのように竜玉は淡い光を放ち、ヘリオスの手からゆっくりと離れ始めた。
「っぐ……!?」
幻想的な光景とは正反対に襲いくる、体中の血管が千切れていくような激痛にヘリオスは驚嘆したが、行為をやめることは無かった。
目を覚ましてくれ。
お前のあの緩やかな笑顔を。
俺を未来へと導いてくれたその声を、もう閉ざすような真似はしないでくれ。
「トエイ……」
もう、お前無しのこの国など、考えられない。
民も、水ではなくお前を求めていることに気付いていたか?
枯れた大地を潤す水とは、お前そのものだと。
そこに存在するだけで、良いんだ。
愛して、いるから。
「……う……」
小さな呻き声を、ヘリオスは聞き逃さなかった。それが聞こえたときには、小さな竜玉はもうほとんどがトエイの体に入っていた。
しかし、まだ顔は白い。体は冷たい。
「……トエイ!」
名を呼べば助かるような気がして、彼は想いを込めて呼び続けた。
「トエイ!」
「……かはっ……」
ヘリオスがこれでもかと名を強く呼んだ時、トエイの肩が小さく跳ね、その口は開いて咳をした。すぐにひゅう、と息を吸う音がして、また咳を続けた。
体温が、戻ってきた。
手の平が熱い。
「……けほっ……」
苦しそうに息をしているが、病に苦しみそうするのとは違う。一度は切れた息を、もう一度吸い込み吐くという新たな行為に喜ぶ体の悲鳴だ。
やがて銀の睫毛はゆっくりと上下し始め、目蓋が重そうに開いた。
昨日見て、朝見失ったその瞳は、今確かにヘリオスに向けてしっかりと見開かれた。
「……え……?」
トエイはぼんやりとしたその視界の中に、ヘリオスを確認すると、じっと奇異な視線を向けてきた。更に、彼の背後にはマグナドラゴンとくれば、頭の整理がつかないのだろう。何かを言いたそうに口を開けているが、言葉にならない様子だ。
見兼ねてヘリオスが、優しく問い掛けた。
「……トエイ、分かるか?」
「……う、うん」
返事をしてみたものの、実は何も分かっていない。自分は確かに竜玉を拡散させ水を創りだし息絶えた筈なのに、何故か今、ヘリオスに抱かれている。
そのヘリオスも、いつもと様子が違う。長い髪は乱れているし、目が赤い。
一体何が起こったのか、と聞くまでもなかった。
ヘリオスはトエイの体に顔を埋め、子供がそうするように、強く不器用に抱き締めてきたのだ。
「……ヘリオス……」
ドクン、と脈打つ自分の中の「竜玉」。彼の、温もりと同じだった。
トエイは地に落ちていた自分の両手をよろよろとヘリオスの背中に回すと、今出せる精一杯の力を込めて、彼を抱き締めた。
「ごめ……なさ……。ごめんなさい……ごめんなさい……!」
ゆっくりと、その日その日で水を民に与えるならば、トエイの体に影響は無いだろう。
だがそれでは、現実的に考えて民全てに水が行き届くわけが無い。
どうしても王都を中心に水が供給される為、地方の環境は対して変わっていないのだ。
やがてそれは格差を産み、また国民に不満を募らせる。
それでは意味がない。
トエイが再起したのは、そんな新たな問題を生む為ではないのだ。
ディアナドラゴンとして、全てに平等に水を与えたい。
その、ただひたすらで純粋な願いの為なら、その身すら厭わない。
そうすると、もうずっと前に決めていたのだ。
おそらくは、枯渇したこの国をその目で見た時から。どう転がろうと、最期はこうすると決めていたのだ。その決意が叶った今、トエイはもう何の未練が無いかのように微笑んでいるのだった。
だが。
感覚の無い四肢の中、ひとつだけまだ己の意志とは反対の結末を望む部分があった。
なんとか瞳だけは動くようなので、トエイはその感覚を捜し当てた。
「あ……」
もう水の中に沈んでしまっている、だらんとした左手。その薬指に光る指輪。それが、やけに温かい。温もりが、決意を鈍らせる。
彼の腕の中に戻りたいと叫ぶ、自分を呼び起こす。
外しておくべきだったか。
トエイの瞳からはなんともいえない淋しさと共に涙が流れたが、水に包まれ同化してしまう。
瞳も、髪も、体も全てが水に浸された時、彼女は。
声にならない声を出して、泣いた。
「――トエイ!」
沈んだ彼女の体を引き上げながら、ヘリオスは気が狂いそうだった。
荒廃した大地に広がる水の流れの先を追い、やっと見つけたというのに、これはどういうことなのだ。彼の膝下あたりまで存在を広げている水が、今は邪魔で仕方ない。
「トエイ! トエイ……!」
昨日は、あんなに笑っていたのに。未来を夢見て眠りについたのに。
あまりの現実に、彼はその名を繰り返し呼ぶことしか出来ない。
「トエイ……」
水の中から引き上げた彼女はあまりに力無く、重力に引かれるままにまだ水中に戻ろうとしている。
ヘリオスはその体を思い切り抱き締め、まだ名前を呼び続けている。それよりもすぐに彼女を運び、適切な処置をしなければいけないだろうに。
まさか、そんな冷静な判断が本当に出来るだろうか。愛しくてたまらない人が、もうこんなに冷たくなっているのに。
「…………トエイ……」
『なあに? ヘリオス』
そう返ってくる筈の返事は、無い。真っ白になった唇に指先で触れてみても、その頬に手の平を添えてみてもまるで反応が見られない。
手が、冷たさに恐怖し小刻みに震えている。ヘリオスの手の熱がそれを無くそうとしているのに、まるで役に立たない。
だが彼はそれをそのまま受け入れることを良しとしない。
混乱し、悲しみに打ち拉がれる頭を無理矢理に屈伏させ、彼はその双眸を凛と開いた。
「死なせるものか……」
そう言ってはみるものの、その方法があるわけではない。だが彼は自らを奮い立たせる為に、言葉を呟き続ける。
「決して死なせない……」
トエイの指には、あの時渡した指輪がある。
「指輪を渡した以上、お前は俺の伴侶だ……。お前がそう決意したように、俺にも決意があるのだ!」
瞬間、その手の内に、彼女の体とはまた違う冷たさを彼は感じた。おそるおそる左手を開いてみると、今まで見たことの無いような奇妙な物がそこにあった。
それは先程トエイの胸の内より出でた玉(ぎょく)によく似ているが、大きさは随分異なる。
小さく、まるで頼りないが、ヘリオスはそれが何なのか本能で理解した。
「竜玉だな」
代弁したのは、彼の背後に現れた青年だった。
「混血とはいえ、貴様にも竜玉が存在するのは当然だ。それが現れたということは、お前は娘と近い種だ」
「マグナドラゴン…………メナス」
一体いつからそこに居たのか。気配に気付かぬ程取り乱していたのが事実だが、ヘリオスは半ば八つ当り気味に彼を罵った。
「また再び、この国を滅ぼすために来たのか?」
「侮るな小僧。口約束とはいえ、我はディアナの娘の意を蹴るような低俗な真似はしない」
「ならば、何故ここにいる?」
メナスは答えなかった。冷淡な瞳をただヘリオスに向けているだけで、次に口を開いた時に発せられた言葉も質問に対する答えではなかった。
「死なせたくないのならば、分け与えろ」
ヘリオスがすぐにはその意味を理解出来ないのは当然なのだが、メナスは侮蔑にも似た溜め息を吐いた。
「ディアナの娘がばらまいたのは己の竜玉だ」
それは竜の命。竜の心臓。唯一の弱点。それをばらまいた、と言うならば救う方法など皆無ではないか。と、言いたげに眉を寄せるヘリオスにメナスはすぐに言葉を足した。
「故、分け与えろ。お前の竜玉を。救いたいのだろう」
「俺の竜玉を……?」
「お前の中にディアナの血を濃く感じる。恐らく、お前の片割れはマグナの血を濃く引いているだろうな」
手の中に現れた玉を一瞥し、ヘリオスはそれを握り締めた。
「更に、お前には人の心臓がある。竜玉を分け与えたとて、死ぬことはない」
「本当に、それでトエイが助かるのか?」
「そこまでは知らん」
冷たく突き放すが、この自尊心の高い竜が、確信も何も無くこのようなことを教える筈がない。
色の無いトエイの顔を見つめながら、ヘリオスは目を細くした。そして、戸惑いがちにその手をトエイの胸元に近付けた。
すると、それを待っていたかのように竜玉は淡い光を放ち、ヘリオスの手からゆっくりと離れ始めた。
「っぐ……!?」
幻想的な光景とは正反対に襲いくる、体中の血管が千切れていくような激痛にヘリオスは驚嘆したが、行為をやめることは無かった。
目を覚ましてくれ。
お前のあの緩やかな笑顔を。
俺を未来へと導いてくれたその声を、もう閉ざすような真似はしないでくれ。
「トエイ……」
もう、お前無しのこの国など、考えられない。
民も、水ではなくお前を求めていることに気付いていたか?
枯れた大地を潤す水とは、お前そのものだと。
そこに存在するだけで、良いんだ。
愛して、いるから。
「……う……」
小さな呻き声を、ヘリオスは聞き逃さなかった。それが聞こえたときには、小さな竜玉はもうほとんどがトエイの体に入っていた。
しかし、まだ顔は白い。体は冷たい。
「……トエイ!」
名を呼べば助かるような気がして、彼は想いを込めて呼び続けた。
「トエイ!」
「……かはっ……」
ヘリオスがこれでもかと名を強く呼んだ時、トエイの肩が小さく跳ね、その口は開いて咳をした。すぐにひゅう、と息を吸う音がして、また咳を続けた。
体温が、戻ってきた。
手の平が熱い。
「……けほっ……」
苦しそうに息をしているが、病に苦しみそうするのとは違う。一度は切れた息を、もう一度吸い込み吐くという新たな行為に喜ぶ体の悲鳴だ。
やがて銀の睫毛はゆっくりと上下し始め、目蓋が重そうに開いた。
昨日見て、朝見失ったその瞳は、今確かにヘリオスに向けてしっかりと見開かれた。
「……え……?」
トエイはぼんやりとしたその視界の中に、ヘリオスを確認すると、じっと奇異な視線を向けてきた。更に、彼の背後にはマグナドラゴンとくれば、頭の整理がつかないのだろう。何かを言いたそうに口を開けているが、言葉にならない様子だ。
見兼ねてヘリオスが、優しく問い掛けた。
「……トエイ、分かるか?」
「……う、うん」
返事をしてみたものの、実は何も分かっていない。自分は確かに竜玉を拡散させ水を創りだし息絶えた筈なのに、何故か今、ヘリオスに抱かれている。
そのヘリオスも、いつもと様子が違う。長い髪は乱れているし、目が赤い。
一体何が起こったのか、と聞くまでもなかった。
ヘリオスはトエイの体に顔を埋め、子供がそうするように、強く不器用に抱き締めてきたのだ。
「……ヘリオス……」
ドクン、と脈打つ自分の中の「竜玉」。彼の、温もりと同じだった。
トエイは地に落ちていた自分の両手をよろよろとヘリオスの背中に回すと、今出せる精一杯の力を込めて、彼を抱き締めた。
「ごめ……なさ……。ごめんなさい……ごめんなさい……!」
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