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32  sideエグモンド~いの3番

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 何故だ。

 何故こうなってしまったのだ!?

 僕は一体何を間違えた?

 いや、何も間違えてはいないし全ては僕の計画通りだった筈!!

 だが結果僕は今危機に立たされて――――いる。



 第二王子の執務室より離れたここは王宮内にある大ホール。

 今夜の舞踏会の為に絢爛たる装飾が施されればだ。

 所々には立食形式での料理からデザート、そして飲み物までもが一級品であった。

 流石は王家主催の格式高い舞踏会なのだと、招かれた貴族達は口々に語っていた。

 そんな和やかな場の中でたった一人だけ落ち着きもなくそわそわと、状況に全く馴染む事の出来ない者がいた。

 その者の名はエグモンド。

 侯爵家の三男として生を受ければ王族とも姻戚関係のある公爵家へ間もなく婿入り予定。

 普通に、外野から見れば順風満帆で未来の約束された幸せ者よ……と思うのだがである。

 今現在進行形でエグモンドはとてもではないがこの世の春を謳歌してはいない。

 この世の春どころかだ。

 かち〇〇山の狸の如く彼の乗る泥船は今にも沈もうとしているのだから……。

 そう事の始まりは舞踏会場への入室より始まっていたのである。

 時間にして小一時間前――――。




 不味い、不味いな時間が思ったよりもと言うかだ。

 エリーゼを隠した部屋から大ホール迄、ああ公爵家の控室までの距離が遠い!!

 はあ、はあ、まさかこんなにも遠く離れた所へ転移するだなんて思ってもいなか、った。

 第二王子宮の近くと言えばだ。

 本宮よりもかなり離れた場所に――――っておいここは何処だ?

 
 ああまたか!!

 また迷子になってしまった。

 
 俺はぜーはーと両肩で大きく息をしながら這う這うの体で慣れない場所を只管ひたすらどこへ向かう……って勿論大ホール近くの控室だ。

 なのに一向に本宮へ近づく事が出来やしない。

 抑々王宮が広大過ぎるのがいけない。

 何でも広くて大きいのがいいってものでもないだろうが。

 何故に王宮の中に建物以外に庭園や鍛錬場等があるのは理解もしよう。

 どうして森や小川に畑と水車小屋もあったな。

 それらが何故に必要なのかを俺は問いたい!!


 そして何故誰もいない。

 いや、人はいたな。

 ごく偶~にすれ違う者がいた。

 だから道を尋ねたと言うのにだ。

 どうしてなのか一向に目的地へ辿りつけない!!


 このままでは俺のヤスミーンが一人で会場へ入る事となってしまう。

 婚約者のいる地味婚の女性が一人で入場なんてその様な辱めを受けさせる訳にはいかない。

 僕は未来の夫として桃の安全を護らなければ!!

 いやいや桃にと言うかこの状態ではメロンっぱいんの事も心配になってしまう。


 何時までもあの部屋へ……って、おい、あの部屋は何処にあったっけ?


 あ゛あ゛まさかのメロンぱいんの部屋までわかんなく〰〰〰〰⁉

 こ、この状況は非常に不味い。

 僕は迷子で身元もしっかりしているから程されるだけで済むだろう。

 だがメロン……エリーゼは完全にアウトだああああああああああああ。


 とは言え今から戻って彼女を連れて行くにしてもだよ。

 どの道を通ってきたのかが全くわからない。

 そしてこれからどう行けば舞踏会場へ辿り着くのかさえも分からない。

 
 一体どうすればいいのだ。

 一番いい方法は何とか控室へ辿り着けばだ。

 ヤスミーンへ協力して貰いエリーゼを救出して貰う?

 ああそうすれば問題は直ぐにでも解け――――?


 ギ、ギギギぃぃぃぃぃぃぃぃ。

 ガサガサ

 ずずずぅぅぅぅぅぅううん!!


 な、何?

 一体何の音なのだ?


 ずず

 ずずず

 ずずずずず


 決して音は大きくはない。

 でもだからと言ってひたひたとゆっくりと響く様でいて何かどうしようもなく不安に駆られてしまう音。

 一度後ろを振り向き何もない事を確認すればこの不安な気持ちも落ち着くだろう。

 変に緊張をするから胸がどきどきして不安になるのだからな。


 僕は念の為ゆっくりと深呼吸をする。

 一言言っておくがこれはあくまでも年の駄目だからだ。

 決して怖いとか恐怖を解消する為ではない。

 未来の公爵閣下が怖がりである筈がない!!


 そうして僕はゆっくりと後ろを振り返っ――――⁉

 どだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ。

 僕は声を上げる事も出来ずに呼吸を止めた……ショックで呼吸をする事も出来ないまま一目散に駆けだした。

 ああ全力出掛けだしたよ。

 途中で何度もこけそうになってもだ。

 何とかがくがくと震える足を叱咤激励し右左とそれだけを考え足をフル回転させていく。


 一体何がそうさせたのかって。

 
 振り向いた瞬間さっきまで回廊だった筈が何故か壁になっているだけではなくだ。

 その壁には何故か床に面した巨大なTV画面が置いてあった。

 当然電源は切れているって言うか画面は普通に真っ黒だった。

 なのに振り向いた瞬間真っ黒な画面よりびしょ濡れの黒い髪と青白い、何故か爪が鮮血の様に真っ赤に染まった細い女、ああ女だと思うのもが出てきたんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。

 
 その手と黒い髪を見た瞬間僕は気を失いそうになったけれどもだ。

 愛しいヤスミーンとエリーゼを泣かせる訳にはいかないと、ただそれだけを思って今現在進行形で走っている。

 向かう先は全くわからないのだが……。






「……ぁーぁー応答願います」
『な、何だって言うのだ!?』

「例の作戦こちらは問題なく遂行中です」
『れ、例の作戦……って言うかロメオお前変わってくれ。俺は今とてもそれどころではない!!』

『はいはいもしもーし、殿下は少々多忙につき報告は俺が受けるよいの3番』
「はい、ろの1番ですね。現在迷路作戦問題なしです。それからいの1番であられるあの世界では超有名な〇子先輩がノリノリで自前のTV画面を持参して応援に駆けつけて下さいました。目下対象者をじわじわと追い詰め途中に御座います」

『へぇ~〇子さんがねぇ。ホラー界では超多忙だって愚痴を零していたでしょ』
「ですが〇子先輩はヤスミーン様の大ファンなので、それ故今回無償で頑張りますとの事です。因みに私は追いつめた先でバックミュージックの担当を仰せつかっております」

『そりゃ面白そうだね。でも余りやり過ぎてはいけないよ。最後の止めはヤスミーン姫がしたいっておっしゃっておいでだったからね』
「勿論に御座いますわ。では以上現場よりの中間報告でした」

 はあ、バックミュージックとは言え私にあの様な高音が出るのかしら。

 まあもしでなければCDを流せば問題ないでしょう。

 そう、敵はもう直ぐ自滅必至。
 
 〇子先輩ガンバです。
 
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