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五章 ローレル迷宮編
あくうはしんかした
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発酵食品。
多くの食文化で存在する歴史あるこれらの食品は実に多彩で、独特だ。
世界でもチーズやヨーグルト、色々な酒……あとまあ色々。
日本だと納豆や味噌は言うに及ばず調味料の多くが発酵食品や発酵食品由来だったりする。
これまで亜空でも僕の記憶を頼りに試行錯誤が繰り返されてきた、いや繰り返されている。
そして「成功」の例も多い。
例えば納豆なんかは結構早い段階で成功してる。
思えば製法そのものはそこまで複雑でもない。
ただ……僕に報告が上がってくるまで、正確には巴に辿り着くまでに結構かかった。
あくまでも僕の感覚で、うんこれは納豆です、と言えるものは再現斑が長らくそれを失敗だと思った結果、こんなんできましたけどと上がってくる前に廃棄されてたんだ。
臭くて強い旨味と粘り。
とまあ端的に納豆の特徴は文字にされて情報は共有されたのに、程度というものまでは共有されなかった悲しい結果だった。
当然と言えば当然なんだけど、納豆は亜空でも好みは激しく別れる食品の代表になっている。
それは臭みや粘り、粒の大小(ひきわり含む)について様々な配合や発酵の試行がなされた今でも変わってない。
むしろ粒の大小は置いておいて、臭みと粘りと旨味をより強化しようとする一部の信者の挑戦は、食べられない人らにとっては悪魔の所業に見えているようで、中々に根深い。
チーズやヨーグルトについては正直僕はその作り方を知らなかったが、ツィーゲで手に入る情報の中で、女神の世界に元々あったバターを含む乳製品の製法の流用で何とでもなったようで、かなり早い段階で亜空に定着した。
ただ、どうも僕が食べなれていたとろけるチーズとか裂けるチーズ、プロセスチーズとかピザ用チーズとか。
そういうのとは味が違うんだよな。
ああいうのってどうやって作ってたんだろ。
一方で大苦戦したのが醤油、味噌、酢、日本酒、焼酎なんかだ。
前者の三つは似ているけど何か違う物が現状の上限になっていて、その先の完成品(僕が良く知っている味という意味で)に一向に辿りつけないまま類似品が次々出来上がる始末。
後者のお酒については、そもそも僕が完成品がこれだという味を断言できない。
日本酒なら甘口辛口芳醇淡麗、焼酎なら原料別の味の違い。
確かな判断基準がわかる訳ない。一度、やけにあっさりとした飲みやすい飲み口で炭酸の入った日本酒が出てきた時は、流石にこれは一般的な日本酒じゃないと断言できた。
けど変種として、例えばどぶろくのような場合も含めてソレが絶対に日本酒の枠にない、とまでは言えなかった。
どちらも大事な点は「基準」というヤツだった。
酒についても調味料についても、そう呼んで問題ない、という幾つかのものについては認定したのもある。
特に酒については巴が目をギラギラさせて僕のOKを待ってたし。
澪も和食に必須の調味料については、静かで控えめで三歩後ろから迫ってくる強めの圧を放ってきていた。
なまじ知っている分、調味料の方は中々これだと言ってあげられずにいる現状は申し訳なくもあり。
僕がそれを決めないと完成はしないし、その後の改良も始まらないんだから責任が重い、重すぎた。
「……ン」
だがそれも、終わったんだ。
味噌も醤油も酢も。
全て「らしい」物が見つかった。
それに加えて日本酒も何となく似たのがあった。
焼酎についても、今口にした透明なのは芋由来らしいけどストレートで飲んだ感じはオボロゲな記憶、下の痺れる感じと独特の風味と甘み、とも合致する。
これらと今までの認定品、試作品を組み合わせて軸をきちんと皆に示す事が出来れば亜空における日本の発酵食品の第一次再現プロジェクト完成は近い。
宣言しよう。
あくうはしんかした!
「これは芋焼酎で間違いない、と思う」
「まあ! ではこれで日本酒とニゴリザケ、焼酎も揃いました。素晴らしい収穫です」
「この酒ですが米や麦から作られているもの何かはありますか?」
今日は澪と二人でカンナオイ味紀行だ。
後はもうここで買い付けをして、ローレルでの用事も全部終わりだ。
調味料系は回り終えて大収穫だったが、お酒の方も大収穫。
流石は賢人が大暴れしてるローレルだ。
ファッションには色々と思うところもあったけど、食に関しては冒険どころかむしろ真摯に忠実に日本の味をこの世界でも再現しようと皆頑張ったみたいだ。
正直口にしてみるまで、そこまで思い入れも何もなかったんだけど、ふと目にして味見した黒豆の甘煮は最高だった。おせちに少しだけ入っているアレだ。
記憶にぴったりと合致する、完璧な黒豆だった……。
何故かポロっと涙が出た。
感動するような食べ物でもないし、大切な思い出に引っかかっているものでもないのに。
「どちらもございますよ。米、麦の焼酎もご存じとはお若いのに良く勉強してらっしゃる」
「焼酎を待ち飲んでいるお客様がおりまして。付け焼刃ではありますが何とか叩き込みました」
少しだけ嘘がある。
待ち望んでいるのは主に巴、そしてエルドワである。
今日は基本的に澪の案内で店を回っている。
歩きがてら気になった店に入ったりもしているけど道順としては澪にお任せで。
だから既に澪がクズノハ商会と名乗っていたのか。
立派な造り酒屋の番頭らしき人物が女連れの若造である僕に良く勉強してる、なんてお世辞を言う。
僕がここでした事を知っていて、クズノハ商会とライドウと僕が全て紐づけされていたら水戸黄門状態になっても不思議はないけど、丁寧で柔らかながらごく普通の接客で迎えられた辺り、それは無い。
もしくはご同業とだけ見抜いて仕入れとして使う気でいてくれるのか、と商人同士のご挨拶代わりだろうか。
だめだな、どうも商人が言う言葉だと一つ一つに裏の意図を気にしてしまう。
カンナオイでは焼酎よりも日本酒がメジャーだから焼酎の種類を聞いてくる客に、ただ愛想よく振舞っただけかもしれないのに。
「こちらが米でお勧めしているウカイ、そしてキシハカタラズでございます。麦の方は透明な方はヤソ、琥珀色のものは長期熟成させた三年物でサンカイドウとなります」
普通のお客さんとは少しずれた場所で腰を掛けて詳しい酒の説明を聞く。
キシハカタラズ?
サンカイドウ?
何だか聞いたような……。
酒の名前なんて洒落みたいのも沢山あるから気にしても意味ないか。
味は、どれもきついってのが正直な感想。
風味の違いはあるんだけど、このまま飲むのが普通なんかな焼酎。
「どれも香り高い。素晴らしいお酒ですね。私もファンになってしまいました」
ちなみに試飲は買い付けを前提にお願いしてる。
グラスに注いでもらったものをちびちびと味わって、四種類となるともちろん全ては飲めはしないのだけど。
澪はまるで猪口に注がれたかのように一息でカパッと飲み干す。
美味しそうな顔は見ていて僕にも相手にも伝わっているから嫌な顔はされない。
……。
ふと僕が残した盆のグラスを見る。
下げられる気配は無い。
スッと澪の方にずらしてやる。
八つのグラスが空になった。
「ありがとうございます!」
好感触を素直に喜んでいる。
まあそれなりの種類と量を買うのは確定だ。
その気配も熟練風の番頭は感じ取っているに違いない。
となれば僕らは上客だし、自然か。
「この長期熟成したものは色も美しいですね。ひょっとして他の酒で使っていた樽を使って熟成を行ったり?」
「!? ご同業の方とは思っておりましたが商人というだけでなく酒造に関わっておいでで?」
リミア王国だったかで見た蒸留酒の蔵を見た時に似たような事をしていたから色から見て一緒だったりして、とはったりをかけてみたら大当たりだったようだ。
外れても金払いの良い知ったかぶりをする扱いやすい商人、という設定になれるし警戒されるよりは良いだろうとやってみた事が上手く運んだみたい。
珍しく。
「リミアでの仕入れでそうした酒造のやり方があるのだと蔵の方に教えてもらいまして。私どもは商人ではありますがお酒は専ら仕入れて売る方で。作って売るこちら程に詳しくなど到底なれません」
さてどうかな。
これで秘蔵の一品とか変わり種の凄いのとか運ばれてきたりしないかな。
ここ、凄く立派な構えの造り酒屋だし店内の樽の種類も凄いし店員さん、小僧さんみたいな子も僕の対応をしてくれている番頭さんも他にも人数がいる。
それなりの店には間違いない。
日本酒が確かに多い様だけど、焼酎の種類もかなりある。
ほぼ芋米麦しか知らない僕としては賢人の偉業に期待してる。
「であれば、焼酎がご所望という事ですので味は先にお出しした芋のハオウ、コメのウカイ、麦のサンカイドウが最も自信をもってお勧めしているものにはなりますが、お時間がおありでしたら、幾つか変わりものもご紹介させて頂けますか?」
「是非。それから焼酎は私にはかなり強いお酒ですので、失礼でなければ割って飲めるよう水かお湯も頂けたら」
「失礼などと。焼酎は様々なカクテルにも使われておりますし水割りもお湯割りも一般的な飲み方でございます。特に香りを楽しまれるお客様ですと割って飲む方を好まれます方も。もちろん、一緒にご用意させていただきます」
ローレル万歳!
良かった。普通の飲み方みたいだ。
言葉で解説されて妙に納得したけど、確かに、水割りの方が香りがわかりやすいような気もする。
プロに説明してもらって単純に思い込みで感じてる、のか?
良いや、飲んでみて考えよう。
ちなみに芋のハオウは魔王からの名前だろうな、と思った。
どっちが美味しいかはいつか魔王を飲んだ時にわかる事、という事で。
「それは凄い。どんな物があるんでしょう」
「ゴマ、キノコ、カキ、ブドウ、トマト、チコリなどがございます。ああ、こちらのお客様に変わり焼酎三種とブドウ、トマトのをね」
「はい、ただいま!」
キノコにトマト!?
ブドウってワインになるんじゃないの!?
カキって牡蠣じゃなくて柿の方だよな?
やばい、思った以上に焼酎って沼なのかもしれん。
ゴマ以外色も味も想像ができん。
というかキノコ焼酎って何を使ってんだろ。
酒にする過程で毒が抜けるから毒キノコなんですよ、とかもあり得るのか?
フグの卵巣を漬けるアレみたいに。
チコリに至っては最早元がわからない。
野菜か果物かそれ以外かすら。
にしても、六種類か。
ちょっと飲み過ぎになる予感。
魔術で酔わないようにも出来るんだけど、お酒の味って酔うのも含めての味わいだもんな。
酔わない状態で飲んだら幾らでも飲めるというのは事実なんだけど、もの凄く味気ない。
何も賭けないポーカーや競馬、のようなものだろうか。
どう例えるべきか非常に悩む感覚だ。
酒を買う為に酒を味見している今、術は使うべきじゃない。
それははっきりわかる。
「お待たせしました!」
「ご苦労様。お待たせしましたお客様。こちら昨年ようやく形になりましたブレンドキノコの焼酎でコト――」
『おかえりなさいませ!』
「っ?」
早速キノコ焼酎を注ぎながら説明を始めた番頭さんだったが、店から一斉に上がった挨拶で言葉を切った。
されど酒はこぼさず。
見事に注ぎ口をクイと挙げてみせ、入口に目をやった。
僕もそれにつられて視線を店の入口へ。
息を切らせて店に駆け込んできたのは一人の男。
!?
高そうな絹の着物に、羽織っていたのは伊達半纏!?
黒地に金銀糸の刺繍、意匠は……百花繚乱か。
背の襟後ろに傾けられた白の徳利。
そこから背中一面に凄い種類の花々が流れ出しているかのような。
多分、一点もの。
彼は肩で息をしながら小僧さんから水を受け取り、一気にそれを飲み干す。
僕らと商談中だった番頭さんは同時に挨拶こそしなかったものの、伊達半纏の男の様子に唖然としていた。
「だ、旦那様。表口からだなんて一体何が……」
小さく驚きを口にする。
旦那様、か。
という事はあの御仁がこの店の主人か。
……え? まさか伊達半纏って商人の何らかの一張羅的なものか正装、とか?
冗談きっついよ?
「はぁはぁ……すぐに番頭さんたちを私の部屋に集めなさい、一大事ですよ!」
店を見渡し、ご主人が良く通る声で指示を出す。
店内がにわかに慌ただしくなる。
何か、事件か?
急いで部屋に向かおうと履き物を脱いだ店の主が商談中の僕らと番頭さんにちらりと目を向けた。
番頭さんは頷いて見せ、僕は軽く一礼。
澪も僕にならった。
僕は初見だけど、商談中の客である事はわかるんだろう、彼の方も即座に笑顔を浮かべ頭を下げ……ようとして止まった。
腰を折り片足を上げ、かつ笑顔で頭を下げかけた初老の男性が、そのまま凍った様に動きを止めた。
客観的には結構面白い格好になってますよ、ご主人?
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
そして奇声である。
おいおい、まさかとは思うけどここまで楽しく面白く「あくうはしんかした」と確信しながら街をぶらぶら出来ていたのは上げておいて一気に落とす布石だった?
もうカンナオイの事件は終わったでしょ!?
「旦那様!?」
フリーズが解けたご主人、履き物はそのままに片足は白足袋のまま僕らの方に全速力で駆け寄ってきた。
そして勢いそのままに投身からの土下座。
芸術的な、その、DOGEZAだ。
「し、失礼ですが御身はクズノハ商会、ライドウ様でいらっしゃいますでしょうか!?」
黄門的な展開来た。
大店のご主人だけあって情報網がしっかり張り巡らされていると見える。
今日明日くらいなら僕の詳細な情報は出回らないと思ってたのに、見通しが甘かった。
そして巴が羨ましがりそうな場面。
「おう……情報が早い」
「若様がいろはに、これからのウチとの付き合いをよろしく、みたいな事を申し付けましたから早まりそうだとは思ってましたけど。確かに早いですわね。ここの地獄耳具合はレンブラントと同じ位ですわね、若様」
澪はある程度予測していたみたいだな。
もうちょっと人前では言葉を選んで欲しいけどね。
いろはちゃんに何かを申し付ける、命令するなんて事をしたつもりはないけど……あれか?
あの情報とか特産物とか色々もらうから、とか。
用があれば出来るだけ対応するから呼んでね、とか。
あんなの社交辞令みたいなものだろうに。
将来の大国の実力者が確定してる人に商人の僕が命令なんてするかいな。
「この度は大黒級御用商人へのご就任、真におめでとうございます!」
「あら、若様おめでとうございます」
『!?!?』
妙な肩書と、それから何かを知ってそうな澪のしれっとした祝いの言葉。
番頭さん、いや店内の人全てが目を見開く。
だ、だいこくきゅーごようしょうにん?
ご主人は僕の混乱には気づかぬまま、無表情と化している僕を見上げ酒の入ったグラスにも目をやる。
「わたくしどものお店で酒をご覧いただきありがとうございます! 是非とも我々におもてなしの機会を与えて頂きたく、ささ、ささ、ささ!!」
ご主人が立ち上がりながら店の奥に僕を誘う。
というか、ささ、という度に番頭さんが増えて僕の周りを固めていく。
どこにいたの、おたくら!
「澪、何で距離を取るかな? おもてなしだぞう?」
「こちらの主人、若様を長く歓待するおつもりの様子。私もご一緒したいのま山々なんですけれど……」
「けれど?」
「少しばかり数軒前の店にくろま、いえ、聞き出し……。小用を残していたのも思い出しまして」
「いや澪もそこまで気に入ったのか黒豆」
意外だな。
どちらかといえば甘いのを好むのは巴と識。
黒豆の味だと巴の方が好きそうだけど、澪も?
「お、美味しかったです。でも、若様がそれよりも、アレを口にされた時にその、お喜びのご様子でしたから」
「……」
「美味しいお酒はいくらでもお買い求め下さいね。皆も喜びますし、お財布の方は如何様にも。予算は無しと巴さんからも言いつけられてますから」
「わかった。頑張るよ」
そうか僕の反応か。
尽くされてるな、本当に。
当たり前に、慣れて。
じゃダメだ。
報いないとな、澪に。
亜空の皆にも。
「ではライドウ様、色々とお話もしとう存じます。申し遅れましたが、わたくし、スギダマヤミドウと申します」
杉玉屋ミドウさん。
杉玉って酒蔵に秋になると出てくるアレだよな。
茶色になったら新酒出来ました、だったか飲み頃ですよ、だったか。
まんまか。
ミドウってのは御堂とかで苗字っぽいけど名前なのかね。
そんな事をつらつらと考えながら僕は結局その日の夜遅くまで宿にも亜空にも戻れず。
文字通りの下にも置かぬもてなしを受けたのでした。
多くの食文化で存在する歴史あるこれらの食品は実に多彩で、独特だ。
世界でもチーズやヨーグルト、色々な酒……あとまあ色々。
日本だと納豆や味噌は言うに及ばず調味料の多くが発酵食品や発酵食品由来だったりする。
これまで亜空でも僕の記憶を頼りに試行錯誤が繰り返されてきた、いや繰り返されている。
そして「成功」の例も多い。
例えば納豆なんかは結構早い段階で成功してる。
思えば製法そのものはそこまで複雑でもない。
ただ……僕に報告が上がってくるまで、正確には巴に辿り着くまでに結構かかった。
あくまでも僕の感覚で、うんこれは納豆です、と言えるものは再現斑が長らくそれを失敗だと思った結果、こんなんできましたけどと上がってくる前に廃棄されてたんだ。
臭くて強い旨味と粘り。
とまあ端的に納豆の特徴は文字にされて情報は共有されたのに、程度というものまでは共有されなかった悲しい結果だった。
当然と言えば当然なんだけど、納豆は亜空でも好みは激しく別れる食品の代表になっている。
それは臭みや粘り、粒の大小(ひきわり含む)について様々な配合や発酵の試行がなされた今でも変わってない。
むしろ粒の大小は置いておいて、臭みと粘りと旨味をより強化しようとする一部の信者の挑戦は、食べられない人らにとっては悪魔の所業に見えているようで、中々に根深い。
チーズやヨーグルトについては正直僕はその作り方を知らなかったが、ツィーゲで手に入る情報の中で、女神の世界に元々あったバターを含む乳製品の製法の流用で何とでもなったようで、かなり早い段階で亜空に定着した。
ただ、どうも僕が食べなれていたとろけるチーズとか裂けるチーズ、プロセスチーズとかピザ用チーズとか。
そういうのとは味が違うんだよな。
ああいうのってどうやって作ってたんだろ。
一方で大苦戦したのが醤油、味噌、酢、日本酒、焼酎なんかだ。
前者の三つは似ているけど何か違う物が現状の上限になっていて、その先の完成品(僕が良く知っている味という意味で)に一向に辿りつけないまま類似品が次々出来上がる始末。
後者のお酒については、そもそも僕が完成品がこれだという味を断言できない。
日本酒なら甘口辛口芳醇淡麗、焼酎なら原料別の味の違い。
確かな判断基準がわかる訳ない。一度、やけにあっさりとした飲みやすい飲み口で炭酸の入った日本酒が出てきた時は、流石にこれは一般的な日本酒じゃないと断言できた。
けど変種として、例えばどぶろくのような場合も含めてソレが絶対に日本酒の枠にない、とまでは言えなかった。
どちらも大事な点は「基準」というヤツだった。
酒についても調味料についても、そう呼んで問題ない、という幾つかのものについては認定したのもある。
特に酒については巴が目をギラギラさせて僕のOKを待ってたし。
澪も和食に必須の調味料については、静かで控えめで三歩後ろから迫ってくる強めの圧を放ってきていた。
なまじ知っている分、調味料の方は中々これだと言ってあげられずにいる現状は申し訳なくもあり。
僕がそれを決めないと完成はしないし、その後の改良も始まらないんだから責任が重い、重すぎた。
「……ン」
だがそれも、終わったんだ。
味噌も醤油も酢も。
全て「らしい」物が見つかった。
それに加えて日本酒も何となく似たのがあった。
焼酎についても、今口にした透明なのは芋由来らしいけどストレートで飲んだ感じはオボロゲな記憶、下の痺れる感じと独特の風味と甘み、とも合致する。
これらと今までの認定品、試作品を組み合わせて軸をきちんと皆に示す事が出来れば亜空における日本の発酵食品の第一次再現プロジェクト完成は近い。
宣言しよう。
あくうはしんかした!
「これは芋焼酎で間違いない、と思う」
「まあ! ではこれで日本酒とニゴリザケ、焼酎も揃いました。素晴らしい収穫です」
「この酒ですが米や麦から作られているもの何かはありますか?」
今日は澪と二人でカンナオイ味紀行だ。
後はもうここで買い付けをして、ローレルでの用事も全部終わりだ。
調味料系は回り終えて大収穫だったが、お酒の方も大収穫。
流石は賢人が大暴れしてるローレルだ。
ファッションには色々と思うところもあったけど、食に関しては冒険どころかむしろ真摯に忠実に日本の味をこの世界でも再現しようと皆頑張ったみたいだ。
正直口にしてみるまで、そこまで思い入れも何もなかったんだけど、ふと目にして味見した黒豆の甘煮は最高だった。おせちに少しだけ入っているアレだ。
記憶にぴったりと合致する、完璧な黒豆だった……。
何故かポロっと涙が出た。
感動するような食べ物でもないし、大切な思い出に引っかかっているものでもないのに。
「どちらもございますよ。米、麦の焼酎もご存じとはお若いのに良く勉強してらっしゃる」
「焼酎を待ち飲んでいるお客様がおりまして。付け焼刃ではありますが何とか叩き込みました」
少しだけ嘘がある。
待ち望んでいるのは主に巴、そしてエルドワである。
今日は基本的に澪の案内で店を回っている。
歩きがてら気になった店に入ったりもしているけど道順としては澪にお任せで。
だから既に澪がクズノハ商会と名乗っていたのか。
立派な造り酒屋の番頭らしき人物が女連れの若造である僕に良く勉強してる、なんてお世辞を言う。
僕がここでした事を知っていて、クズノハ商会とライドウと僕が全て紐づけされていたら水戸黄門状態になっても不思議はないけど、丁寧で柔らかながらごく普通の接客で迎えられた辺り、それは無い。
もしくはご同業とだけ見抜いて仕入れとして使う気でいてくれるのか、と商人同士のご挨拶代わりだろうか。
だめだな、どうも商人が言う言葉だと一つ一つに裏の意図を気にしてしまう。
カンナオイでは焼酎よりも日本酒がメジャーだから焼酎の種類を聞いてくる客に、ただ愛想よく振舞っただけかもしれないのに。
「こちらが米でお勧めしているウカイ、そしてキシハカタラズでございます。麦の方は透明な方はヤソ、琥珀色のものは長期熟成させた三年物でサンカイドウとなります」
普通のお客さんとは少しずれた場所で腰を掛けて詳しい酒の説明を聞く。
キシハカタラズ?
サンカイドウ?
何だか聞いたような……。
酒の名前なんて洒落みたいのも沢山あるから気にしても意味ないか。
味は、どれもきついってのが正直な感想。
風味の違いはあるんだけど、このまま飲むのが普通なんかな焼酎。
「どれも香り高い。素晴らしいお酒ですね。私もファンになってしまいました」
ちなみに試飲は買い付けを前提にお願いしてる。
グラスに注いでもらったものをちびちびと味わって、四種類となるともちろん全ては飲めはしないのだけど。
澪はまるで猪口に注がれたかのように一息でカパッと飲み干す。
美味しそうな顔は見ていて僕にも相手にも伝わっているから嫌な顔はされない。
……。
ふと僕が残した盆のグラスを見る。
下げられる気配は無い。
スッと澪の方にずらしてやる。
八つのグラスが空になった。
「ありがとうございます!」
好感触を素直に喜んでいる。
まあそれなりの種類と量を買うのは確定だ。
その気配も熟練風の番頭は感じ取っているに違いない。
となれば僕らは上客だし、自然か。
「この長期熟成したものは色も美しいですね。ひょっとして他の酒で使っていた樽を使って熟成を行ったり?」
「!? ご同業の方とは思っておりましたが商人というだけでなく酒造に関わっておいでで?」
リミア王国だったかで見た蒸留酒の蔵を見た時に似たような事をしていたから色から見て一緒だったりして、とはったりをかけてみたら大当たりだったようだ。
外れても金払いの良い知ったかぶりをする扱いやすい商人、という設定になれるし警戒されるよりは良いだろうとやってみた事が上手く運んだみたい。
珍しく。
「リミアでの仕入れでそうした酒造のやり方があるのだと蔵の方に教えてもらいまして。私どもは商人ではありますがお酒は専ら仕入れて売る方で。作って売るこちら程に詳しくなど到底なれません」
さてどうかな。
これで秘蔵の一品とか変わり種の凄いのとか運ばれてきたりしないかな。
ここ、凄く立派な構えの造り酒屋だし店内の樽の種類も凄いし店員さん、小僧さんみたいな子も僕の対応をしてくれている番頭さんも他にも人数がいる。
それなりの店には間違いない。
日本酒が確かに多い様だけど、焼酎の種類もかなりある。
ほぼ芋米麦しか知らない僕としては賢人の偉業に期待してる。
「であれば、焼酎がご所望という事ですので味は先にお出しした芋のハオウ、コメのウカイ、麦のサンカイドウが最も自信をもってお勧めしているものにはなりますが、お時間がおありでしたら、幾つか変わりものもご紹介させて頂けますか?」
「是非。それから焼酎は私にはかなり強いお酒ですので、失礼でなければ割って飲めるよう水かお湯も頂けたら」
「失礼などと。焼酎は様々なカクテルにも使われておりますし水割りもお湯割りも一般的な飲み方でございます。特に香りを楽しまれるお客様ですと割って飲む方を好まれます方も。もちろん、一緒にご用意させていただきます」
ローレル万歳!
良かった。普通の飲み方みたいだ。
言葉で解説されて妙に納得したけど、確かに、水割りの方が香りがわかりやすいような気もする。
プロに説明してもらって単純に思い込みで感じてる、のか?
良いや、飲んでみて考えよう。
ちなみに芋のハオウは魔王からの名前だろうな、と思った。
どっちが美味しいかはいつか魔王を飲んだ時にわかる事、という事で。
「それは凄い。どんな物があるんでしょう」
「ゴマ、キノコ、カキ、ブドウ、トマト、チコリなどがございます。ああ、こちらのお客様に変わり焼酎三種とブドウ、トマトのをね」
「はい、ただいま!」
キノコにトマト!?
ブドウってワインになるんじゃないの!?
カキって牡蠣じゃなくて柿の方だよな?
やばい、思った以上に焼酎って沼なのかもしれん。
ゴマ以外色も味も想像ができん。
というかキノコ焼酎って何を使ってんだろ。
酒にする過程で毒が抜けるから毒キノコなんですよ、とかもあり得るのか?
フグの卵巣を漬けるアレみたいに。
チコリに至っては最早元がわからない。
野菜か果物かそれ以外かすら。
にしても、六種類か。
ちょっと飲み過ぎになる予感。
魔術で酔わないようにも出来るんだけど、お酒の味って酔うのも含めての味わいだもんな。
酔わない状態で飲んだら幾らでも飲めるというのは事実なんだけど、もの凄く味気ない。
何も賭けないポーカーや競馬、のようなものだろうか。
どう例えるべきか非常に悩む感覚だ。
酒を買う為に酒を味見している今、術は使うべきじゃない。
それははっきりわかる。
「お待たせしました!」
「ご苦労様。お待たせしましたお客様。こちら昨年ようやく形になりましたブレンドキノコの焼酎でコト――」
『おかえりなさいませ!』
「っ?」
早速キノコ焼酎を注ぎながら説明を始めた番頭さんだったが、店から一斉に上がった挨拶で言葉を切った。
されど酒はこぼさず。
見事に注ぎ口をクイと挙げてみせ、入口に目をやった。
僕もそれにつられて視線を店の入口へ。
息を切らせて店に駆け込んできたのは一人の男。
!?
高そうな絹の着物に、羽織っていたのは伊達半纏!?
黒地に金銀糸の刺繍、意匠は……百花繚乱か。
背の襟後ろに傾けられた白の徳利。
そこから背中一面に凄い種類の花々が流れ出しているかのような。
多分、一点もの。
彼は肩で息をしながら小僧さんから水を受け取り、一気にそれを飲み干す。
僕らと商談中だった番頭さんは同時に挨拶こそしなかったものの、伊達半纏の男の様子に唖然としていた。
「だ、旦那様。表口からだなんて一体何が……」
小さく驚きを口にする。
旦那様、か。
という事はあの御仁がこの店の主人か。
……え? まさか伊達半纏って商人の何らかの一張羅的なものか正装、とか?
冗談きっついよ?
「はぁはぁ……すぐに番頭さんたちを私の部屋に集めなさい、一大事ですよ!」
店を見渡し、ご主人が良く通る声で指示を出す。
店内がにわかに慌ただしくなる。
何か、事件か?
急いで部屋に向かおうと履き物を脱いだ店の主が商談中の僕らと番頭さんにちらりと目を向けた。
番頭さんは頷いて見せ、僕は軽く一礼。
澪も僕にならった。
僕は初見だけど、商談中の客である事はわかるんだろう、彼の方も即座に笑顔を浮かべ頭を下げ……ようとして止まった。
腰を折り片足を上げ、かつ笑顔で頭を下げかけた初老の男性が、そのまま凍った様に動きを止めた。
客観的には結構面白い格好になってますよ、ご主人?
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
そして奇声である。
おいおい、まさかとは思うけどここまで楽しく面白く「あくうはしんかした」と確信しながら街をぶらぶら出来ていたのは上げておいて一気に落とす布石だった?
もうカンナオイの事件は終わったでしょ!?
「旦那様!?」
フリーズが解けたご主人、履き物はそのままに片足は白足袋のまま僕らの方に全速力で駆け寄ってきた。
そして勢いそのままに投身からの土下座。
芸術的な、その、DOGEZAだ。
「し、失礼ですが御身はクズノハ商会、ライドウ様でいらっしゃいますでしょうか!?」
黄門的な展開来た。
大店のご主人だけあって情報網がしっかり張り巡らされていると見える。
今日明日くらいなら僕の詳細な情報は出回らないと思ってたのに、見通しが甘かった。
そして巴が羨ましがりそうな場面。
「おう……情報が早い」
「若様がいろはに、これからのウチとの付き合いをよろしく、みたいな事を申し付けましたから早まりそうだとは思ってましたけど。確かに早いですわね。ここの地獄耳具合はレンブラントと同じ位ですわね、若様」
澪はある程度予測していたみたいだな。
もうちょっと人前では言葉を選んで欲しいけどね。
いろはちゃんに何かを申し付ける、命令するなんて事をしたつもりはないけど……あれか?
あの情報とか特産物とか色々もらうから、とか。
用があれば出来るだけ対応するから呼んでね、とか。
あんなの社交辞令みたいなものだろうに。
将来の大国の実力者が確定してる人に商人の僕が命令なんてするかいな。
「この度は大黒級御用商人へのご就任、真におめでとうございます!」
「あら、若様おめでとうございます」
『!?!?』
妙な肩書と、それから何かを知ってそうな澪のしれっとした祝いの言葉。
番頭さん、いや店内の人全てが目を見開く。
だ、だいこくきゅーごようしょうにん?
ご主人は僕の混乱には気づかぬまま、無表情と化している僕を見上げ酒の入ったグラスにも目をやる。
「わたくしどものお店で酒をご覧いただきありがとうございます! 是非とも我々におもてなしの機会を与えて頂きたく、ささ、ささ、ささ!!」
ご主人が立ち上がりながら店の奥に僕を誘う。
というか、ささ、という度に番頭さんが増えて僕の周りを固めていく。
どこにいたの、おたくら!
「澪、何で距離を取るかな? おもてなしだぞう?」
「こちらの主人、若様を長く歓待するおつもりの様子。私もご一緒したいのま山々なんですけれど……」
「けれど?」
「少しばかり数軒前の店にくろま、いえ、聞き出し……。小用を残していたのも思い出しまして」
「いや澪もそこまで気に入ったのか黒豆」
意外だな。
どちらかといえば甘いのを好むのは巴と識。
黒豆の味だと巴の方が好きそうだけど、澪も?
「お、美味しかったです。でも、若様がそれよりも、アレを口にされた時にその、お喜びのご様子でしたから」
「……」
「美味しいお酒はいくらでもお買い求め下さいね。皆も喜びますし、お財布の方は如何様にも。予算は無しと巴さんからも言いつけられてますから」
「わかった。頑張るよ」
そうか僕の反応か。
尽くされてるな、本当に。
当たり前に、慣れて。
じゃダメだ。
報いないとな、澪に。
亜空の皆にも。
「ではライドウ様、色々とお話もしとう存じます。申し遅れましたが、わたくし、スギダマヤミドウと申します」
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杉玉って酒蔵に秋になると出てくるアレだよな。
茶色になったら新酒出来ました、だったか飲み頃ですよ、だったか。
まんまか。
ミドウってのは御堂とかで苗字っぽいけど名前なのかね。
そんな事をつらつらと考えながら僕は結局その日の夜遅くまで宿にも亜空にも戻れず。
文字通りの下にも置かぬもてなしを受けたのでした。
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