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六章 アイオン落日編
真、配る
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何とも軍隊らしくない。
PRGのベテラン傭兵たちに軍としての戦い方を叩き込まれている出来立てほやほやのツィーゲ軍。
現状では個の戦力で勝るエース級の冒険者パーティを活用する事でアイオンと戦っているけど、ちゃんとした軍の編成は国家になろうとしているツィーゲには必要不可欠な要素だ。
仮に凄まじい知略だけで奇跡的に国家として独立したとしても、国としての形を維持するにはどうしたって戦力が必要になる。
いくら関係が良いといっても常に冒険者が戦争に積極的に協力してくれるとは限らないし。
滅ぼさない限りアイオンは隣に在る訳で、これから関係を少しずつ良くしていくつもりだったとしてもしばらくは小競り合いも続く。
という訳で軍の編成と育成は街の急務であり、僕も少しくらいはと鍛錬の様子を眺めに来たところ。
流石に現段階で全員分の統一された装備や制服などある訳もなく、街の外で冒険者とチンピラと用心棒と衛兵がごっちゃになって集団戦闘や進軍、隊の編成に役割の理解などなどを教わっていた。
「や、ライドウ君。おひさー」
「ヴィヴィさん。お久しぶりです」
「この度は最高に刺激的で新鮮で報酬が良い仕事をありがとう、ライドウさん」
「えっと……リョーマさん。ご無沙汰してました」
「リョーマはついでに断崖絶壁に金銀財宝が吊るされてる仕事、とも言ってたがね」
「……ノマさん、でしたよね。きつい仕事、ご苦労様です」
PRGの幹部数人が声を掛けてくれる。
さっき来たばかりの僕に気付くのが早い。
傭兵団を率いるヴィヴィさん、今回の仕事に凄く乗り気でいてくれるリョーマさん、それに軍師も担ってるらしいノマさん。
名高い傭兵団からこうして指導を受けられるのはこれからツィーゲ軍になっていく彼らにとってはかなりの幸運だろうな。
「どうです、ツィーゲの軍人志望者たち。最低限の基本は出来てると思いますが、その分我も強そうで不安も感じてるんですが」
「んー。細かな分析をしていけば練度を始め、まだまだだけど優秀なのは確かだね。若いだけの未経験君を形にするよりは随分と楽が出来そう」
ヴィヴィさんはそこそこ評価してくれているみたいだ。
練度はそれこそ軍人としての生活と訓練で身につけていくものだろうし、一朝一夕で備わるものじゃない。
今回はいきなりの戦争を乗り越える事を最優先にすべきだろうから、幾つかすっ飛ばしている要素も当然あると思う。
出来れば戦後その辺りまで何らかの形でフォローしてもらえると嬉しいよねえ。
「元冒険者は特に俺の様な専門性の高い兵士には向いている。今回の戦で出番があるかどうかはともかく、諜報と工作においては期待してくれて良いよ」
リョーマさんだ。
彼は自身と同じく工作や情報収集を担う部隊を育成してくれているらしい。
連携ももちろん重要な要素だけど、個人の技量や冒険者として培ったスキルや経験も比較的活かし易いのかもしれない。
「肝心の防衛戦については、申し訳ないがまだまだだ。最悪今回の戦争では指示に従って戦える事を最優先に鍛錬を進める事になるかもしれない。商人ギルドの重鎮たちには説明済みだが、君も知っておいて欲しい」
ノマさんは防衛部隊、今回の戦争で一番大きな役割を期待されている部分を引き受けてくれている。
冒険者はともかく、用心棒や衛兵はその辺りが得意そうだけど……一筋縄じゃいかないのか。
「指示に従って……皆さんが市街戦も見越して作戦を考えたり現地で指示を出したりするんですか?」
外壁を死守出来ればいいけど、それは流石に都合の良い考えだ。
壁に張り付かれたら、次は中での戦闘も考えなくちゃいけない。
市民の避難計画とか、どうなってるんだろ。
色々気になって、取り合えず市街戦になったらどうする予定なのか聞いてみた。
「市街戦?」
けど、ノマさんの答えは予想外の事を聞かれた、といった感じで。
「……ああ! ライドウ君はもしかしてそこの外壁で防衛戦をやる、と思ってる?」
「へ? ……ええ、まあ」
「なるほど、壁違いか」
ヴィヴィさんの指摘にノマさんが頷く。
しかし僕にはまだちょっと良くわからない。
壁違い、とは?
ツィーゲの外壁といえば一つしかない。
荒野側のアレはどう考えても違う。
「ライドウさん。レンブラント氏はこの壁まで軍を寄せ付ける気は全く無い」
「え?」
「ここからでは見えないが今頃遥か向こうに新生ツィーゲの外壁が出来ている頃だよ」
リョーマさんが丁寧に教えてくれた。
新しく、壁を作った?
戦争する為の防壁を、新しく!?
「わ、わざわざ戦争する用に、そこまで……?」
「? 違うよ、ライドウ君。新生ツィーゲの、外壁」
「新生?」
「そそ。パトリック=レンブラント、彼は今のツィーゲを都市国家でございと言うつもりなんてさらさら無かったみたいでね。新しく作った壁からこっちは全部、ツィーゲって『街』だ、と結構な土地もアイオンから分捕るつもりでいる。だよね、ノマ」
「……ああ。我々の策と練兵、冒険者たちの働き、それにライドウ殿の動き次第では……アイオン軍はツィーゲの街を見る事すら出来ず敗退する」
……。
ここから向こうの方向って言うと……多少の丘やら盆地状の地形やらがあるにしても基本的には平原が随分と続く
エリアだ。
黄金街道もかなり緩やかなカーブか直線で構成されてる。
そのどこかに壁を作って?
そこからこっちは全部ツィーゲ?
それなんて子供の喧嘩?
え、ええ?
通るの、そんなの。
というか、全部ツィーゲってどういう事?
「あははは、そりゃいきなり聞かされても混乱するよねえ」
その通りです、ヴィヴィさん。
私は今とてもよくわからない。
レンブラントさんの頭の中、どうなってんの?
「いや、それはおかしな話だよヴィヴィ。レンブラント氏はこの案をライドウ殿からもらったと話していたのだから。我々まで欺く必要はあるまいよ、ライドウ殿」
?
何のこっちゃ、です。
ノマさん、レンブラントさんが何を言ったと。
「ええっと……そんなぶっ飛んだ考え、レンブラントさんに一言も言った事は無い、つもりなんですが」
「しかし彼はライドウ殿からいっそコランもツィーゲとひとまとめにして巨大な街を作ってしまえば面白い、と聞かされたらしいが……?」
「コランと、ツィーゲ……」
確かに……いつだったか二つの街を繋げてしまえばどっちの街も便利になるし行き来も楽になる、みたいな事は口にしたような……してないような……。
でもそれが外壁で囲ったら全部ツィーゲなんて陣取りゲームみたいな発想になる?
ならんよね?
「覚えはありそうな雰囲気。へぇ、ライドウ君がね、そんな発想もするんだ。意外」
「現在進行形で外壁内のエリアに生息する魔獣や魔物は冒険者に駆逐させているし、彼は本気で外壁内を全て一つの超巨大な人の街として整備するつもりでいるぞ。価格が高騰し過ぎた土地の問題や、十分な農地の確保、範囲内の村や街を吸収する事での人口と労働力の獲得、区画整理の必要なくほぼ一から手掛けられる都市計画……と実現しさえすれば世界レベルの会心の一手になる。アレは実にとんでもない男だな、一介の商人とは思えん」
ノマさんの言葉に絶句する。
……界。
ある、あった。
それなりに遠いけど黄金街道の両脇から壁が展開されている。
あんな壁の作り方ありなのか。
誰もした事ないからやったもん勝ちなのか。
え……あそこからこっち側を全部……一つの街として整備する?
振り返る。
そこにはツィーゲの、今の外壁がある。
あそこから道が幾つも伸びて、家や畑が出来て、店も出来て……それがずっとあの壁まで続く?
全ての道はローマに通ず。
不意にそんな言葉が浮かんだ。
とんでもない。
いや、本当にこれはとんでもない。
「ライドウ君?」
「あの……黄金街道から両脇に展開された壁からこっちが、全部ツィーゲになる? 防衛戦はあそこでやるって事か……。マジか、そんなの、マジなのか……」
『……』
「ツィーゲの商人、凄いわ」
つくづく、凄い発想とそれを承認する柔軟な姿勢の両方に感嘆させられた。
「いや、ライドウ君?」
「はい?」
「なんで外壁の形状をばっちり言い当てられるの?」
「え、それは探知魔術……的なもので。確かに出来てました」
PRGの皆さんが微妙な視線で僕を見る。
「……あのライドウ殿の言う事だからな。きっと冗談ではないんだろうな」
「戦力だけじゃなくスキル一つでも戦争の形を変えるね、ライドウ君は」
「この距離でそんな真似をされたら工作兵や密偵はほぼ無力化される可能性もあるんだが」
そりゃもう月読様から賜った能力ですからね。
「それはさておき。壁が出来てるなら、遠征冒険者組はその向こうで動いてる訳ですか」
思ってたよりも遠くまで出てるな。
……荒野に比べたら楽勝って感じで動いてるのかと思いきや、一つ間違えると帰還が難しくなる可能性もあるじゃないか。
トア達なら大抵問題無かろうと思ってたけど……巴からも何も聞いてないし、多分生きてる、よね?
「そういえば、ギネビアさんが行方を眩ましたとか聞いたな」
「ああ、ビアの姐御な。いい加減レンブラント氏に言いくるめられて便利に使われるのに耐えられんくなったのだろう。ちょっと見で相性良くないのは明らかだったから」
「ビアさんかー。確かにあれは相性コテンパンって感じだったもんねー」
相性コテンパン、すか。
じっくり話した事は無いけれど……あの人はアズノワールさんと同じ脳筋族だと思う。
少し系統が違うにしろ、僕とも多少似ているような気がする。
よしわかった、更地にしてから考えよう。
みたいなね。
そして何より、行方を眩ましたと話題になりながら微塵も心配されてない所が凄い。
「あの人は今は何を頼まれてたんです?」
「ん? ビアさん? えっと、六夜さんから引き継ぎで万が一の時にアルパインってパーティの安全確保、だっけ?」
「うむ」
「アルパイン!?」
ヴィヴィさんとノマさんが確認するのを見て聞き逃せないワードが耳にかすり、聞き返す。
トアと愉快な仲間たちじゃないか!
「ま、あの人が一緒なら何が相手でも大丈夫。時々肉体言語が出てくるだけで根は真面目な人だからね、アルパインも大丈夫大丈夫、知らんけど」
無責任!
ヴィヴィさん、この人はフレンドリーだし明るいし、コミュ強感あるんだけどさ。
時々傭兵的なドライ感出てくる気がする。
本業の戦争関連以外は結構適当な人かも、とか思い始めてる。
んーそうか。六夜さん、今はアルパインから離れてたのか。
お祝い装備渡して満足した?
始まりの冒険者組はPRG以上に読めないんだよなぁ。
「僕が言うのも何ですけど、トア達もそれなりに運が悪い方ですから……多少心配だな」
「……なあ、ノマ。そろそろ聞いてみても良いかな?」
「良いんじゃないか? ライドウ殿はどうやら自分から教えてくれんようだし」
「?」
リョーマさんが何やらそわそわしている。
「あのさ、ライドウ君。その背中に背負ってるそびえ立つ荷物はなに?」
あ、忘れてた。
リョーマさんもヴィヴィさんの問いに何度も頷いている。
挨拶代わりの話のつもりが、つい話し込んじゃった。
失態だなー。
「物凄く気になってたんだが、ライドウさんが何事もなく話をしてるからどう尋ねたものかと」
「我々全員日陰になってるしな、見晴らしの良い野原で」
ここに来た本来の目的を忘れてた。
鍛錬してる皆に差し入れをしに来たんだ。
せっかく上手い事指導してるPRGの面々に会ったのに何をしてるんだ、僕は。
「すみません、すっかり頭から抜けてました。これ、皆さんに差し入れです」
ドス、と出来るだけ静かに荷を下ろす。
食べ物だからね、粗末に扱ってはいけない。
もういい加減に消費がね、追いつかなくなりそうだからね。
「それは、ありがとう。……軽食かな」
ヴィヴィさんが上を見上げながら、やや不安混じりで確かめてくる。
流石、正解だ。
「ええ、唐揚げです。鳥の揚げ物ですね」
「……だけ?」
「あ、もうそろそろ酒とお茶の差し入れも来ますので、鍛錬の区切りがついたら皆さんでどうぞ」
「何故に、揚げ物一種のみ……?」
「最近、ウチの澪がこのメニューにハマってまして。これ以上続くようなら、お店にも並べて……毎日差し入れもしようかと本気で悩んでます」
無くならない。
とにかく無くならない。
このままだと亜空どころかツィーゲの住民全員があいつの唐揚げを食べる事になるんじゃなかろうか。
これで下手に澪の唐揚げが気に入った人が出てきてしまうと結構まずい事になる。
澪……次のメニューにハマると唐揚げあんまり作らなくなるだろうからな。
厨房チームにレシピはきちんと保管するように伝えておこう。
「平和だな、クズノハ商会」
「……そう? 私はこの量の揚げ物を量産してる所を想像するだけで胸焼けしてくる」
「ところでこれ、どうやって中身を出せば?」
「ああ、これドワーフの力作で携行型唐揚げサーバー4Lサイズなんでここんとこの口を開けてもらって、横のスイッチを押しますと」
熱々の唐揚げたちが素敵な香りと共にゴロゴロ出てきた。
うん、誰もが認めるであろう技術の無駄使い。
いつまでも出来立ての最高の状態を保ちたいからと例の如く職人の迷走と暴走が帰結したのが、これだ。
ちなみにSサイズだと卓上にきちんと収まる。
なぜそこで満足できないのかエルダードワーフ。
用途だけを考えれば大量になるならマジックバッグを使えば良い。
それだと微妙な環境調整と時間経過を完全にゼロには出来ないとか何とか、もう云々。
最後に付け加えられた言い訳の、あとでかい見た目の方がテンション上がる、というのが本当の理由なんじゃなかろうかと思えてならない。
類似品の酒サーバー各種も同じノリだからね!
『……ゴクリ』
あまり嗅ぎ慣れていないお三方は見事に食欲をそそられてくれたみたいで一安心。
気に入ってもらって美味しく、そして沢山食べてもらいたい。
「それじゃあ僕はこれで。また何か動きがありましたら僕らにも事後でも良いので教えてください」
そう言って彼らと別れる。
!!
そうだ!
孤児院にも持っていこう。
あそこには食べ盛りの、しかも子どもが沢山いるじゃないか!
よし、じゃあ職業訓練? 的な何かがちゃんと行われているかどうかの視察という建前でお裾分けだ!
PRGのベテラン傭兵たちに軍としての戦い方を叩き込まれている出来立てほやほやのツィーゲ軍。
現状では個の戦力で勝るエース級の冒険者パーティを活用する事でアイオンと戦っているけど、ちゃんとした軍の編成は国家になろうとしているツィーゲには必要不可欠な要素だ。
仮に凄まじい知略だけで奇跡的に国家として独立したとしても、国としての形を維持するにはどうしたって戦力が必要になる。
いくら関係が良いといっても常に冒険者が戦争に積極的に協力してくれるとは限らないし。
滅ぼさない限りアイオンは隣に在る訳で、これから関係を少しずつ良くしていくつもりだったとしてもしばらくは小競り合いも続く。
という訳で軍の編成と育成は街の急務であり、僕も少しくらいはと鍛錬の様子を眺めに来たところ。
流石に現段階で全員分の統一された装備や制服などある訳もなく、街の外で冒険者とチンピラと用心棒と衛兵がごっちゃになって集団戦闘や進軍、隊の編成に役割の理解などなどを教わっていた。
「や、ライドウ君。おひさー」
「ヴィヴィさん。お久しぶりです」
「この度は最高に刺激的で新鮮で報酬が良い仕事をありがとう、ライドウさん」
「えっと……リョーマさん。ご無沙汰してました」
「リョーマはついでに断崖絶壁に金銀財宝が吊るされてる仕事、とも言ってたがね」
「……ノマさん、でしたよね。きつい仕事、ご苦労様です」
PRGの幹部数人が声を掛けてくれる。
さっき来たばかりの僕に気付くのが早い。
傭兵団を率いるヴィヴィさん、今回の仕事に凄く乗り気でいてくれるリョーマさん、それに軍師も担ってるらしいノマさん。
名高い傭兵団からこうして指導を受けられるのはこれからツィーゲ軍になっていく彼らにとってはかなりの幸運だろうな。
「どうです、ツィーゲの軍人志望者たち。最低限の基本は出来てると思いますが、その分我も強そうで不安も感じてるんですが」
「んー。細かな分析をしていけば練度を始め、まだまだだけど優秀なのは確かだね。若いだけの未経験君を形にするよりは随分と楽が出来そう」
ヴィヴィさんはそこそこ評価してくれているみたいだ。
練度はそれこそ軍人としての生活と訓練で身につけていくものだろうし、一朝一夕で備わるものじゃない。
今回はいきなりの戦争を乗り越える事を最優先にすべきだろうから、幾つかすっ飛ばしている要素も当然あると思う。
出来れば戦後その辺りまで何らかの形でフォローしてもらえると嬉しいよねえ。
「元冒険者は特に俺の様な専門性の高い兵士には向いている。今回の戦で出番があるかどうかはともかく、諜報と工作においては期待してくれて良いよ」
リョーマさんだ。
彼は自身と同じく工作や情報収集を担う部隊を育成してくれているらしい。
連携ももちろん重要な要素だけど、個人の技量や冒険者として培ったスキルや経験も比較的活かし易いのかもしれない。
「肝心の防衛戦については、申し訳ないがまだまだだ。最悪今回の戦争では指示に従って戦える事を最優先に鍛錬を進める事になるかもしれない。商人ギルドの重鎮たちには説明済みだが、君も知っておいて欲しい」
ノマさんは防衛部隊、今回の戦争で一番大きな役割を期待されている部分を引き受けてくれている。
冒険者はともかく、用心棒や衛兵はその辺りが得意そうだけど……一筋縄じゃいかないのか。
「指示に従って……皆さんが市街戦も見越して作戦を考えたり現地で指示を出したりするんですか?」
外壁を死守出来ればいいけど、それは流石に都合の良い考えだ。
壁に張り付かれたら、次は中での戦闘も考えなくちゃいけない。
市民の避難計画とか、どうなってるんだろ。
色々気になって、取り合えず市街戦になったらどうする予定なのか聞いてみた。
「市街戦?」
けど、ノマさんの答えは予想外の事を聞かれた、といった感じで。
「……ああ! ライドウ君はもしかしてそこの外壁で防衛戦をやる、と思ってる?」
「へ? ……ええ、まあ」
「なるほど、壁違いか」
ヴィヴィさんの指摘にノマさんが頷く。
しかし僕にはまだちょっと良くわからない。
壁違い、とは?
ツィーゲの外壁といえば一つしかない。
荒野側のアレはどう考えても違う。
「ライドウさん。レンブラント氏はこの壁まで軍を寄せ付ける気は全く無い」
「え?」
「ここからでは見えないが今頃遥か向こうに新生ツィーゲの外壁が出来ている頃だよ」
リョーマさんが丁寧に教えてくれた。
新しく、壁を作った?
戦争する為の防壁を、新しく!?
「わ、わざわざ戦争する用に、そこまで……?」
「? 違うよ、ライドウ君。新生ツィーゲの、外壁」
「新生?」
「そそ。パトリック=レンブラント、彼は今のツィーゲを都市国家でございと言うつもりなんてさらさら無かったみたいでね。新しく作った壁からこっちは全部、ツィーゲって『街』だ、と結構な土地もアイオンから分捕るつもりでいる。だよね、ノマ」
「……ああ。我々の策と練兵、冒険者たちの働き、それにライドウ殿の動き次第では……アイオン軍はツィーゲの街を見る事すら出来ず敗退する」
……。
ここから向こうの方向って言うと……多少の丘やら盆地状の地形やらがあるにしても基本的には平原が随分と続く
エリアだ。
黄金街道もかなり緩やかなカーブか直線で構成されてる。
そのどこかに壁を作って?
そこからこっちは全部ツィーゲ?
それなんて子供の喧嘩?
え、ええ?
通るの、そんなの。
というか、全部ツィーゲってどういう事?
「あははは、そりゃいきなり聞かされても混乱するよねえ」
その通りです、ヴィヴィさん。
私は今とてもよくわからない。
レンブラントさんの頭の中、どうなってんの?
「いや、それはおかしな話だよヴィヴィ。レンブラント氏はこの案をライドウ殿からもらったと話していたのだから。我々まで欺く必要はあるまいよ、ライドウ殿」
?
何のこっちゃ、です。
ノマさん、レンブラントさんが何を言ったと。
「ええっと……そんなぶっ飛んだ考え、レンブラントさんに一言も言った事は無い、つもりなんですが」
「しかし彼はライドウ殿からいっそコランもツィーゲとひとまとめにして巨大な街を作ってしまえば面白い、と聞かされたらしいが……?」
「コランと、ツィーゲ……」
確かに……いつだったか二つの街を繋げてしまえばどっちの街も便利になるし行き来も楽になる、みたいな事は口にしたような……してないような……。
でもそれが外壁で囲ったら全部ツィーゲなんて陣取りゲームみたいな発想になる?
ならんよね?
「覚えはありそうな雰囲気。へぇ、ライドウ君がね、そんな発想もするんだ。意外」
「現在進行形で外壁内のエリアに生息する魔獣や魔物は冒険者に駆逐させているし、彼は本気で外壁内を全て一つの超巨大な人の街として整備するつもりでいるぞ。価格が高騰し過ぎた土地の問題や、十分な農地の確保、範囲内の村や街を吸収する事での人口と労働力の獲得、区画整理の必要なくほぼ一から手掛けられる都市計画……と実現しさえすれば世界レベルの会心の一手になる。アレは実にとんでもない男だな、一介の商人とは思えん」
ノマさんの言葉に絶句する。
……界。
ある、あった。
それなりに遠いけど黄金街道の両脇から壁が展開されている。
あんな壁の作り方ありなのか。
誰もした事ないからやったもん勝ちなのか。
え……あそこからこっち側を全部……一つの街として整備する?
振り返る。
そこにはツィーゲの、今の外壁がある。
あそこから道が幾つも伸びて、家や畑が出来て、店も出来て……それがずっとあの壁まで続く?
全ての道はローマに通ず。
不意にそんな言葉が浮かんだ。
とんでもない。
いや、本当にこれはとんでもない。
「ライドウ君?」
「あの……黄金街道から両脇に展開された壁からこっちが、全部ツィーゲになる? 防衛戦はあそこでやるって事か……。マジか、そんなの、マジなのか……」
『……』
「ツィーゲの商人、凄いわ」
つくづく、凄い発想とそれを承認する柔軟な姿勢の両方に感嘆させられた。
「いや、ライドウ君?」
「はい?」
「なんで外壁の形状をばっちり言い当てられるの?」
「え、それは探知魔術……的なもので。確かに出来てました」
PRGの皆さんが微妙な視線で僕を見る。
「……あのライドウ殿の言う事だからな。きっと冗談ではないんだろうな」
「戦力だけじゃなくスキル一つでも戦争の形を変えるね、ライドウ君は」
「この距離でそんな真似をされたら工作兵や密偵はほぼ無力化される可能性もあるんだが」
そりゃもう月読様から賜った能力ですからね。
「それはさておき。壁が出来てるなら、遠征冒険者組はその向こうで動いてる訳ですか」
思ってたよりも遠くまで出てるな。
……荒野に比べたら楽勝って感じで動いてるのかと思いきや、一つ間違えると帰還が難しくなる可能性もあるじゃないか。
トア達なら大抵問題無かろうと思ってたけど……巴からも何も聞いてないし、多分生きてる、よね?
「そういえば、ギネビアさんが行方を眩ましたとか聞いたな」
「ああ、ビアの姐御な。いい加減レンブラント氏に言いくるめられて便利に使われるのに耐えられんくなったのだろう。ちょっと見で相性良くないのは明らかだったから」
「ビアさんかー。確かにあれは相性コテンパンって感じだったもんねー」
相性コテンパン、すか。
じっくり話した事は無いけれど……あの人はアズノワールさんと同じ脳筋族だと思う。
少し系統が違うにしろ、僕とも多少似ているような気がする。
よしわかった、更地にしてから考えよう。
みたいなね。
そして何より、行方を眩ましたと話題になりながら微塵も心配されてない所が凄い。
「あの人は今は何を頼まれてたんです?」
「ん? ビアさん? えっと、六夜さんから引き継ぎで万が一の時にアルパインってパーティの安全確保、だっけ?」
「うむ」
「アルパイン!?」
ヴィヴィさんとノマさんが確認するのを見て聞き逃せないワードが耳にかすり、聞き返す。
トアと愉快な仲間たちじゃないか!
「ま、あの人が一緒なら何が相手でも大丈夫。時々肉体言語が出てくるだけで根は真面目な人だからね、アルパインも大丈夫大丈夫、知らんけど」
無責任!
ヴィヴィさん、この人はフレンドリーだし明るいし、コミュ強感あるんだけどさ。
時々傭兵的なドライ感出てくる気がする。
本業の戦争関連以外は結構適当な人かも、とか思い始めてる。
んーそうか。六夜さん、今はアルパインから離れてたのか。
お祝い装備渡して満足した?
始まりの冒険者組はPRG以上に読めないんだよなぁ。
「僕が言うのも何ですけど、トア達もそれなりに運が悪い方ですから……多少心配だな」
「……なあ、ノマ。そろそろ聞いてみても良いかな?」
「良いんじゃないか? ライドウ殿はどうやら自分から教えてくれんようだし」
「?」
リョーマさんが何やらそわそわしている。
「あのさ、ライドウ君。その背中に背負ってるそびえ立つ荷物はなに?」
あ、忘れてた。
リョーマさんもヴィヴィさんの問いに何度も頷いている。
挨拶代わりの話のつもりが、つい話し込んじゃった。
失態だなー。
「物凄く気になってたんだが、ライドウさんが何事もなく話をしてるからどう尋ねたものかと」
「我々全員日陰になってるしな、見晴らしの良い野原で」
ここに来た本来の目的を忘れてた。
鍛錬してる皆に差し入れをしに来たんだ。
せっかく上手い事指導してるPRGの面々に会ったのに何をしてるんだ、僕は。
「すみません、すっかり頭から抜けてました。これ、皆さんに差し入れです」
ドス、と出来るだけ静かに荷を下ろす。
食べ物だからね、粗末に扱ってはいけない。
もういい加減に消費がね、追いつかなくなりそうだからね。
「それは、ありがとう。……軽食かな」
ヴィヴィさんが上を見上げながら、やや不安混じりで確かめてくる。
流石、正解だ。
「ええ、唐揚げです。鳥の揚げ物ですね」
「……だけ?」
「あ、もうそろそろ酒とお茶の差し入れも来ますので、鍛錬の区切りがついたら皆さんでどうぞ」
「何故に、揚げ物一種のみ……?」
「最近、ウチの澪がこのメニューにハマってまして。これ以上続くようなら、お店にも並べて……毎日差し入れもしようかと本気で悩んでます」
無くならない。
とにかく無くならない。
このままだと亜空どころかツィーゲの住民全員があいつの唐揚げを食べる事になるんじゃなかろうか。
これで下手に澪の唐揚げが気に入った人が出てきてしまうと結構まずい事になる。
澪……次のメニューにハマると唐揚げあんまり作らなくなるだろうからな。
厨房チームにレシピはきちんと保管するように伝えておこう。
「平和だな、クズノハ商会」
「……そう? 私はこの量の揚げ物を量産してる所を想像するだけで胸焼けしてくる」
「ところでこれ、どうやって中身を出せば?」
「ああ、これドワーフの力作で携行型唐揚げサーバー4Lサイズなんでここんとこの口を開けてもらって、横のスイッチを押しますと」
熱々の唐揚げたちが素敵な香りと共にゴロゴロ出てきた。
うん、誰もが認めるであろう技術の無駄使い。
いつまでも出来立ての最高の状態を保ちたいからと例の如く職人の迷走と暴走が帰結したのが、これだ。
ちなみにSサイズだと卓上にきちんと収まる。
なぜそこで満足できないのかエルダードワーフ。
用途だけを考えれば大量になるならマジックバッグを使えば良い。
それだと微妙な環境調整と時間経過を完全にゼロには出来ないとか何とか、もう云々。
最後に付け加えられた言い訳の、あとでかい見た目の方がテンション上がる、というのが本当の理由なんじゃなかろうかと思えてならない。
類似品の酒サーバー各種も同じノリだからね!
『……ゴクリ』
あまり嗅ぎ慣れていないお三方は見事に食欲をそそられてくれたみたいで一安心。
気に入ってもらって美味しく、そして沢山食べてもらいたい。
「それじゃあ僕はこれで。また何か動きがありましたら僕らにも事後でも良いので教えてください」
そう言って彼らと別れる。
!!
そうだ!
孤児院にも持っていこう。
あそこには食べ盛りの、しかも子どもが沢山いるじゃないか!
よし、じゃあ職業訓練? 的な何かがちゃんと行われているかどうかの視察という建前でお裾分けだ!
2,084
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気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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