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六章 アイオン落日編
進化、マ力の覚醒
海王は生まれつき特殊な進化能力を有している。
知識としてセル鯨さんから聞いてはいたものの、彼らの種族についての話はどこもかしこもツッコミどころ満載だからか内容はあまり記憶に残っていない事もある。
海王は冒険者がジョブを得て特殊な能力を身につけ成長する様に、自身が蓄えた経験と海熱によって個体毎に進化という爆発的な成長を遂げるのだそうだ。
僕らの前で直立不動の姿勢で頭を下げている二人、アンとチョビは冒険者を鍛えている最中にその爆発的な成長である進化に至り、その結果コラン近海に現在世界中のイワシが大挙してやってこようとしていると。
なるほど。
全くわからん。
世界中から集まってくるのがやばいのはわかる。
でも進化した事でどうしてそうなるのか、時々冒険者が説明に割り込んでは刃物のようなイワシとか鋭い短矢になったイワシとか意味の分からない事を口にしてくるし意味不明だ。
魔法の言葉「あーそういう事ね完璧に……」と流して済むならともかく、どうやら漁獲のレベルを超えて惨事になるかもしれないから対処が必要な雰囲気だ。
ちなみにイワシの海王二人が万能工具たるバールに見えたのは彼らが頭を下げていたからだ。
絶対に、うん全力で否定させてもらうけど絶対にイワシはそんな体の曲がり方はしない。
両足で立ってる時点でもう突っ込んでもどうしようもないとわかっていても、あの曲がり具合は指摘せずにはいられなかった。
「なるほどのう、お主らの進化でイワシ族の王的な存在になったがそれに気付かず迂闊に能力を発動させてしまったと」
「若気の至りでございました。既に眷属は移動を始めており我らへの祝意を述べぬ事には治まらぬという情けない有様でして」
「デモあの時は冒険者もかなり良いとこいってて進化も止む無しって雰囲気で……しょうがなかったとこあるっていうか」
彼らは強敵と認めたライバルとの戦いを通じてお互いを愛する気持ちを再確認し、気付けば高揚感のままに進化を遂げ新たに手にした最上位の召喚能力を行使していたらしい。
主に反省しながらしゃべってる男の方が通称アン、フルネームはアンドレ=サス。
ギャル風ながらアンに大人しく寄り添っている女の方は通称チョビ、チョビーレ=ペンス。
ちなみに赤くなったのはアン、黒くなったのはチョビだ。
派手になったのが男の方っってのは自然界アルアルな気がするな。
「ふぅむ、海王は実質海の統治者ゆえ成長によってはさような強力な能力さえ有する事もあるか」
真面目に話が出来てる巴が凄い。
コランの有力者も単なる大豊漁を超えた困った事態が来るようだと察し、普段から頼りにしてるクズノハさんに話振ってみんべ、となった模様。
「目覚めたばかりのマ力をまだ把握しきれておらず……この事態が上手く収束しましたら一刻も早く使いこなせるよう鍛錬に励む事を誓います」
「アンとだったら頑張れるしー、私も約束する、します。やれることあれば、それも何でもします」
マヂカラってなに?
魔力じゃない、何らかの力か?
「うむ。まあ任せておけ」
巴!?
任されるの早くない!?
「手立てをもう考え付かれたのですか? 流石は若様に巴様……」
僕を入れられても非常に困るとこだよ、そこは。
「伊達に海王と友誼を結んでおらんよ、クズノハ商会は。若様は海と陸の架け橋となられる覚悟なぞ、とうに出来ておったさ。で、じゃ。アンよ」
「はっ!」
「マヂカラとはなんじゃ?」
お前もわかってないんじゃないか。
威勢の良い言葉の着ぐるみで僕を大きく見せるってのは別に良いけどさ。
そっちの覚悟についてはもう出来てるから。
「これは失礼を。つい癖で略しておりました。マグネットヂカラの事にございます、巴様」
「磁力かい!」
そっちか!
思わず突っ込んでしまった。
なんで海の種族で磁力なんだよ……もう。
もうそれならいっそ鋼鉄サイボーグでマグネットパワー進化でもしてくれ。
さも当然にマグネット云々ってさ、海王の常識ってどうなってんだ。
「ジリョク……?」
「磁力……なるほど。差し詰め主らの体はN極とS極を示す訳か。はっ、識が喜びそうな進化じゃの」
赤と黒。
ああ。
いや、そうだっけ?
赤と青だったような気もする……。
「引き合い、弾き合うってヤツね。確かに識が好きそう。引力と斥力? だったかな」
識の勉強好きは僕なんかよりも遥かに上だ。
こないだどこから辿り着いたのかカーボンナノチューブが欲しいとかブツブツ言ってた。
僕の知識だと何か凄い繊維、だ。
多分識はもっと詳しく知った上で欲しがってる。
澪とかアルケーなら意外と説明されれば作れちゃうのかね、そういうのも。
「いやいやマグネなんちゃらと言われても困りましたが若の翻訳のおかげで儂などでも理解できました。特に今対処すべきではないともわかったのは実に大きい」
「お役に立てて何より。で、対策はどうするんだ?」
「? 簡単ではありませんか。アンとチョビを目指してやってくるイワシの群れが近海を埋め尽くすかもしれないというだけでございましょう?」
「だけ、で済まないから皆さん困ってるんだぞ?」
「元々眷属ですから動きをある程度コントロールさせ続けつつ、順次こやつらの方から挨拶に出向かせればよいではありませんか」
あ。
「ま、まさか我らの不始末に門を!?」
アンは恐縮しまくった口調で巴を凝視する。
その様子を心配そうに見ているチョビと、信じられないものを見る様な目で見つめるビルギットの人々。
彼らならツナとの付き合いや海王という種族、それから今のこの場のやり取りで蜃気楼都市とある程度の関係を疑うかもしれない。
かといってあの都市が彼らにとって確かな価値を持つ以上そこまでの心配はいらない。
情報をある程度開示した以上、新しい展開が生まれるのは仕方ないもんね。
巴や澪が亜空ランキングのトップの更に上だって事くらいは彼らに明かしても大丈夫だろうから。
「ま、致し方ないわさ。若が直々にとはいかぬが、儂が付き合うてやる。外洋を含めて大分回る事になりそうじゃが、途中でバテたなどとは言わせんからな?」
「勿体ないお言葉です! ありがとうございます!」
一斉にコランを目指してるイワシにこっちから転移を駆使して挨拶をして回るって作戦で解決するらしい。
当のコランの人々は何か話が上手くいってるっぽいぞ、クズノハ商会パネエ、みたいな空気でどよめいてる。
ビルギットは僕らに熱い視線を注いでる。
まービルギットはカプリさんとこ、カプル商会がスポンサーしてるみたいだから僕らがあまり干渉するのも暗黙の不文律に反するってもんだ。
一応もう少しだけコランにいてもらって、アンとチョビが落ち着いたくらいのタイミングでツィーゲに戻ってもらう位で良いかな。
アイオン王国が海方面から何か悪巧みする可能性はまだ頭の片隅に置いといたほうが良さげだ。
確かこのパーティには海に特化した、一人で軍に匹敵するジョブの人がいた筈。
巴や澪のファンクラブにまで忍び込もうとする連中だけに何をしてきてもおかしくない。
「さて、コランの方々。ツィーゲの冒険者と我らが友である海王の問題も今しがた解決の目途が立った」
『おお……!』
「聞けば酒や馳走の用意もあるとか。後の事は口の滑りを良くしてから皆々気楽に語らおうではないか。互いの友とより良き明日について、な」
巴から視線を向けられて頷く。
「造船やより遠洋を視野に入れた漁を始めてからのコランの話を直接聞けるのはとても嬉しいです。是非私どもと、そして親しく付き合っている商会にも協力させてください。まず――」
適度にリップサービスしつつ短めにまとめてコランの皆さんと移動。
和気あいあいといった感じで、イワシの件以外は特に問題もなく色々な話やお願いを聞けた。
僕らに直接というのもあれば、ツィーゲに求めるべき事に近いものまで。
幸いビルギットはアンとチョビが僕らからは遠ざけていてくれた。
余計な面倒になりそうだから、今ここではあまり突っ込まれたくないから助かる。
結構がっつり二時間ほどの顔合わせと昼食会を終え、巴と二人の海王は海に出かけて行った。
さて、識と学生への土産も適度に買った事だし。
僕も久々のロッツガルドに行きますか。
知識としてセル鯨さんから聞いてはいたものの、彼らの種族についての話はどこもかしこもツッコミどころ満載だからか内容はあまり記憶に残っていない事もある。
海王は冒険者がジョブを得て特殊な能力を身につけ成長する様に、自身が蓄えた経験と海熱によって個体毎に進化という爆発的な成長を遂げるのだそうだ。
僕らの前で直立不動の姿勢で頭を下げている二人、アンとチョビは冒険者を鍛えている最中にその爆発的な成長である進化に至り、その結果コラン近海に現在世界中のイワシが大挙してやってこようとしていると。
なるほど。
全くわからん。
世界中から集まってくるのがやばいのはわかる。
でも進化した事でどうしてそうなるのか、時々冒険者が説明に割り込んでは刃物のようなイワシとか鋭い短矢になったイワシとか意味の分からない事を口にしてくるし意味不明だ。
魔法の言葉「あーそういう事ね完璧に……」と流して済むならともかく、どうやら漁獲のレベルを超えて惨事になるかもしれないから対処が必要な雰囲気だ。
ちなみにイワシの海王二人が万能工具たるバールに見えたのは彼らが頭を下げていたからだ。
絶対に、うん全力で否定させてもらうけど絶対にイワシはそんな体の曲がり方はしない。
両足で立ってる時点でもう突っ込んでもどうしようもないとわかっていても、あの曲がり具合は指摘せずにはいられなかった。
「なるほどのう、お主らの進化でイワシ族の王的な存在になったがそれに気付かず迂闊に能力を発動させてしまったと」
「若気の至りでございました。既に眷属は移動を始めており我らへの祝意を述べぬ事には治まらぬという情けない有様でして」
「デモあの時は冒険者もかなり良いとこいってて進化も止む無しって雰囲気で……しょうがなかったとこあるっていうか」
彼らは強敵と認めたライバルとの戦いを通じてお互いを愛する気持ちを再確認し、気付けば高揚感のままに進化を遂げ新たに手にした最上位の召喚能力を行使していたらしい。
主に反省しながらしゃべってる男の方が通称アン、フルネームはアンドレ=サス。
ギャル風ながらアンに大人しく寄り添っている女の方は通称チョビ、チョビーレ=ペンス。
ちなみに赤くなったのはアン、黒くなったのはチョビだ。
派手になったのが男の方っってのは自然界アルアルな気がするな。
「ふぅむ、海王は実質海の統治者ゆえ成長によってはさような強力な能力さえ有する事もあるか」
真面目に話が出来てる巴が凄い。
コランの有力者も単なる大豊漁を超えた困った事態が来るようだと察し、普段から頼りにしてるクズノハさんに話振ってみんべ、となった模様。
「目覚めたばかりのマ力をまだ把握しきれておらず……この事態が上手く収束しましたら一刻も早く使いこなせるよう鍛錬に励む事を誓います」
「アンとだったら頑張れるしー、私も約束する、します。やれることあれば、それも何でもします」
マヂカラってなに?
魔力じゃない、何らかの力か?
「うむ。まあ任せておけ」
巴!?
任されるの早くない!?
「手立てをもう考え付かれたのですか? 流石は若様に巴様……」
僕を入れられても非常に困るとこだよ、そこは。
「伊達に海王と友誼を結んでおらんよ、クズノハ商会は。若様は海と陸の架け橋となられる覚悟なぞ、とうに出来ておったさ。で、じゃ。アンよ」
「はっ!」
「マヂカラとはなんじゃ?」
お前もわかってないんじゃないか。
威勢の良い言葉の着ぐるみで僕を大きく見せるってのは別に良いけどさ。
そっちの覚悟についてはもう出来てるから。
「これは失礼を。つい癖で略しておりました。マグネットヂカラの事にございます、巴様」
「磁力かい!」
そっちか!
思わず突っ込んでしまった。
なんで海の種族で磁力なんだよ……もう。
もうそれならいっそ鋼鉄サイボーグでマグネットパワー進化でもしてくれ。
さも当然にマグネット云々ってさ、海王の常識ってどうなってんだ。
「ジリョク……?」
「磁力……なるほど。差し詰め主らの体はN極とS極を示す訳か。はっ、識が喜びそうな進化じゃの」
赤と黒。
ああ。
いや、そうだっけ?
赤と青だったような気もする……。
「引き合い、弾き合うってヤツね。確かに識が好きそう。引力と斥力? だったかな」
識の勉強好きは僕なんかよりも遥かに上だ。
こないだどこから辿り着いたのかカーボンナノチューブが欲しいとかブツブツ言ってた。
僕の知識だと何か凄い繊維、だ。
多分識はもっと詳しく知った上で欲しがってる。
澪とかアルケーなら意外と説明されれば作れちゃうのかね、そういうのも。
「いやいやマグネなんちゃらと言われても困りましたが若の翻訳のおかげで儂などでも理解できました。特に今対処すべきではないともわかったのは実に大きい」
「お役に立てて何より。で、対策はどうするんだ?」
「? 簡単ではありませんか。アンとチョビを目指してやってくるイワシの群れが近海を埋め尽くすかもしれないというだけでございましょう?」
「だけ、で済まないから皆さん困ってるんだぞ?」
「元々眷属ですから動きをある程度コントロールさせ続けつつ、順次こやつらの方から挨拶に出向かせればよいではありませんか」
あ。
「ま、まさか我らの不始末に門を!?」
アンは恐縮しまくった口調で巴を凝視する。
その様子を心配そうに見ているチョビと、信じられないものを見る様な目で見つめるビルギットの人々。
彼らならツナとの付き合いや海王という種族、それから今のこの場のやり取りで蜃気楼都市とある程度の関係を疑うかもしれない。
かといってあの都市が彼らにとって確かな価値を持つ以上そこまでの心配はいらない。
情報をある程度開示した以上、新しい展開が生まれるのは仕方ないもんね。
巴や澪が亜空ランキングのトップの更に上だって事くらいは彼らに明かしても大丈夫だろうから。
「ま、致し方ないわさ。若が直々にとはいかぬが、儂が付き合うてやる。外洋を含めて大分回る事になりそうじゃが、途中でバテたなどとは言わせんからな?」
「勿体ないお言葉です! ありがとうございます!」
一斉にコランを目指してるイワシにこっちから転移を駆使して挨拶をして回るって作戦で解決するらしい。
当のコランの人々は何か話が上手くいってるっぽいぞ、クズノハ商会パネエ、みたいな空気でどよめいてる。
ビルギットは僕らに熱い視線を注いでる。
まービルギットはカプリさんとこ、カプル商会がスポンサーしてるみたいだから僕らがあまり干渉するのも暗黙の不文律に反するってもんだ。
一応もう少しだけコランにいてもらって、アンとチョビが落ち着いたくらいのタイミングでツィーゲに戻ってもらう位で良いかな。
アイオン王国が海方面から何か悪巧みする可能性はまだ頭の片隅に置いといたほうが良さげだ。
確かこのパーティには海に特化した、一人で軍に匹敵するジョブの人がいた筈。
巴や澪のファンクラブにまで忍び込もうとする連中だけに何をしてきてもおかしくない。
「さて、コランの方々。ツィーゲの冒険者と我らが友である海王の問題も今しがた解決の目途が立った」
『おお……!』
「聞けば酒や馳走の用意もあるとか。後の事は口の滑りを良くしてから皆々気楽に語らおうではないか。互いの友とより良き明日について、な」
巴から視線を向けられて頷く。
「造船やより遠洋を視野に入れた漁を始めてからのコランの話を直接聞けるのはとても嬉しいです。是非私どもと、そして親しく付き合っている商会にも協力させてください。まず――」
適度にリップサービスしつつ短めにまとめてコランの皆さんと移動。
和気あいあいといった感じで、イワシの件以外は特に問題もなく色々な話やお願いを聞けた。
僕らに直接というのもあれば、ツィーゲに求めるべき事に近いものまで。
幸いビルギットはアンとチョビが僕らからは遠ざけていてくれた。
余計な面倒になりそうだから、今ここではあまり突っ込まれたくないから助かる。
結構がっつり二時間ほどの顔合わせと昼食会を終え、巴と二人の海王は海に出かけて行った。
さて、識と学生への土産も適度に買った事だし。
僕も久々のロッツガルドに行きますか。
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※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です