月が導く異世界道中

あずみ 圭

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5巻

5-1

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   プロローグ


 僕、深澄真みすみまことと従者である元死霊リッチしきは、学園都市ロッツガルドの通りを歩いていた。
 洗練された石造りの街並みからは、ここに来る前にいた街ツィーゲにはない都会の匂いが漂う。
 ロッツガルドは沢山の都市の集合体。
 今いる中央都市を中心に、周辺には衛星のように多くの街が点在し、それぞれ特徴ある教育機関を有している。ちなみにここ中央都市にあるのは、唯一学園都市と同じ名前を持つロッツガルド学園。一番優秀な学生がつどうらしい。
 とにかく、まず入学希望者はみんなこの中央都市で試験を受け、能力や適性に応じた学校に入るというのがここの流れ。実際には適性や能力以外だけじゃなく財力や身分なんかも考慮されているんだろうとは思うけど。
 僕はツィーゲでお世話になったレンブラント商会の代表であるレンブラントさんの推薦を受け、この街で学園に入学するための試験に挑む予定だ。
 さすがは学園都市、様々な土地から人が集まるからか、並ぶ品物も、道行く人の服装も個性が強い。ツィーゲが数個は入ってしまいそうな広さもあって、飽きることなく散策にきょうじることができた。

「……」

 気になる光景が目に入り、ふと足を止める。

「どうかされましたか、ライドウ様」

 ライドウというのは僕の偽名だ。この街ではそう呼ぶよう識に話していた。

「何でもない、って言いたいところだけど。あれ」

 僕が目線で示す先には、四、五人の男に絡まれている女性の姿。弱者にいちゃもんつけている様子自体はこの異世界でも珍しいものではない。
 ただ、その弱者がヒューマンであるというのは珍しい。絶野ぜつやのベースみたいな特殊な環境ならともかく、ツィーゲ以降は見ていなかった。
 亜人がしいたげられているのは日常茶飯事なのだ。道中でもここでも、女神の教えが強く根付く場所ほど亜人は立場が低い。あのクソ創造神が言うには、亜人はヒューマンができるまでの失敗作であり、神の慈悲により世界に存在しているだけなのだから、完成形であるヒューマンに尽くすべきなんだそうだ。教えそのものがどうかしている。

「ああ、恐喝きょうかつか何かですか」
「どうだろう、あれはただのイジメじゃないか」
「イジメですか。ええ、そうも見えますね」

 識はあまり関心がなさそうだ。ま、異世界から来た僕が気にしすぎなんだろうな。
 そういえば、女神に会ったって話を識にしたとき、彼はそりゃあもう大騒ぎしていた。豊富なはずの語彙ごいが「信じられない、凄い、ありえない」以外なくなってしまったんじゃないかと疑うくらいそれらの単語を繰り返し、落ち着きなく歩き回ってた。
 ともえを介して僕の記憶に残る女神を見たときも、子供みたいなキラキラした目をしていたし。
 幸い、現状で映像作品にはハマってないようだ。妙な趣味を持たれても困るけど、異文化に触れて感じるところがあるのは考えてみれば当たり前のことだし、何らかの影響は出るかもしれない。そこは覚悟している。識がどう変化しても受け入れるさ。……BLにでも目覚めない限りは。

「ヒューマン同士のイジメってあまり見慣れなくてね。ちょっと見てくるよ」
「ライドウ様?」

 イジメられているのが女性だからじゃない。
 ただ、あの目が気になる。
 冷めているのでも、諦めているのでも、ゆがんでいるのでもない。あれは何なんだろうな。ちょっと気になった。

「おい、何とか言えよ!」

 僕達が近付いてきているのにも気づかず、少年は女性につっかかっている。
 識に目配せする。ヒューマンの言語がしゃべれず、筆談する必要がある僕にとって、話してくれる人がいるのは心強いことだ。

「あー、そのくらいにしなさい?」

 いやいや、どうして疑問形なんだよ。識、そこは格好良く言い切りなよ。

「……なんだ、お前ら」
「おいおい、この服見えないの? お前ら馬鹿なの?」

 馬鹿二人が何か言った。服? ああ、こいつらの服。同じ服着てるな。多分制服。学園の生徒なんだろう。色は何色かあるけどデザインがほぼ一緒だしな。
 だいたい予想はつく。

(殺していいですか真様)

 識が念話でストレートかつ物騒なお願いをしてくる。

(ちょ!?)
(馬鹿? この私に馬鹿? それとも……真様に? ああ、死刑ですね。わかりました)
(わかるな! そこはお前、ちょこっと痛い目を見てもらって、捨て台詞ぜりふ吐いて逃げてもらえればいいよ! いきなり殺さない! わかった!?)
(あおう。りょ、了解です)

 あおう、って識。彼でこの認識だとしたら……巴はまあ良いとして、みお、大丈夫かな? そこら中で殺してないと良いんだけど。巴が一緒なんだから無茶はしないと信じている。信じてるぞ!

「君達、とにかくせろ。殺さないから」

 彼らの制服を見ていて、ふと思う。異世界から来たの、ほんとに僕と勇者が最初なのかな。
 日本のブレザーに実に良く似ていた。偶然、なのか? 誰かが既に来たことがあって伝えられたって方が説得力あるような。
 学園の制服なんて全世界共通、とは思えないし。
 って。

(識、お前会話は苦手?)
(いいえ。ですが馬鹿の相手は苦手ですな)

 あ、そう。
 すさまじく喧嘩を売っているな。もしかしたら僕の同級生になるかもしれない人達なんだけど。
 制服を誇示こじしていたってことは、ここでは学生って結構偉いのか? 学生なんて普通は権力やお金を持ってないから、社会的な地位で言えば低いイメージだけど。
 だって、「この制服見えないのか? 僕は高校生だぞ?」なんて言ったら僕の常識だと間違いなく変人扱いされる。
 学園都市、なんて場所だとしても、街全体が学問や研究機関としての性質に特化しているわけだから、技術者とか研究者の地位が高くなるのは納得できるんだけどな。その卵に過ぎない学生なんて一山いくらだと思うけど。

「ふざけるなあ!!」

 少年の一人が叫ぶ。
 何やら手のひらに魔力がうにょうにょ集まっていく。魔術、か?
 凄くのんびりとした速度で、しかも大声で朗々ろうろうと放たれる詠唱。幼稚園のお遊戯ゆうぎ会じゃあるまいに。

[すまない。これは曲芸か?]

 何かショーでも始めるならこういう詠唱もありだろうけど、今は喧嘩の最中だ。
 だからこその純粋な疑問だったんだけど、どうやらこの発言は、彼らを本気で怒らせたようだ。物凄い勢いで睨まれてしまった。

(真様もやりますな)
(断じて誤解だ)

 識が土に属する、とある詠唱を終える。

「な! 速っ!」

 いやいや、普通の速さだろうに。さすがは学生、世の中を知らん。そんなざまだと戦場で怖い子供を連れた怖いお姉さんになます斬りにされちゃうぞ?
 カツン、と――識が持つ黒く輝く杖が地面を打つ。亜空にいるドワーフのエルドワが「間に合わせですが」と申し訳なさそうに識に渡した杖だ。結構な性能らしく、識は満足気に受け取っていた。
 四人、いや五人の個性のない悲鳴が往来おうらいに響く。
 学生らしき連中の足元から、識が魔術で生成した石の柱が突き出て彼らを空にご招待したのだ。イジメられていた女性は、石の牢獄にいるみたいだな。しまった、怖がらないように一言伝えておくべきだったかな。いきなり数十メートルの石柱に囲まれるというのは怖いことかもしれない。
 やー、見事にそびえ立っている。とりあえず、これは消そう。近所迷惑だから。周りの人も何事かと騒ぎ出しているしね。
 石柱にそっと触れる。
 組まれている魔術の構成を把握して逆走。コアになっている部分を見つけて闇で消す。
 初めから存在しなかったかのように五つの柱が消え去る。押し上げられて柱よりも上に吹っ飛んだ連中はどうするかな。一応魔術使えるみたいだし何とかできるのか? 僕と違って誰か一人くらいは風も扱えるよね。

「お見事、打ち消し魔術カウンタースペルの完成も間近ですな」

 だと良いけどね。識に曖昧な笑みを返す。知り合いの使った、知っている魔術を打ち消せてもなあ。

[君、大丈夫か。読めているなら、逃げてくれると有難い。君が奴らにいじめられている理由はわからないが、既に手を出してしまったので穏便おんびんにすみそうにない]
「え、あ」

 目の前の文字に驚く女性。給仕きゅうじさんかな、メイド服とは違うけど、エプロンやらフリルやらのパーツがそんな職業を連想させる。
 上空の男達を見て上を見ていたときに目の前に文字が出たから驚いちゃったのかな。
 ……彼女の目にあった妙な光はもう消えていた。……まあ別に良いか、単なる好奇心だ。

「私、助けてなんて」

 文字は読めるんだな。そうか。なら話もできるだろう。

[別に恩を着せるつもりはない。二度と会うことはないかもしれないし気にしなくて良い]
「……」
[早く行け]


「私、この先のゴテツ亭で給仕をしています。住み込みで働いていますから、いつか来てください。一応、お礼を」
[気が向いたら顔を出す]

 駆けていく女性。肩を隠すくらいの長さの、ウェーブのかかった髪が揺れていた。ゴテツ亭。軍鶏しゃも鍋でも出るのかね。落ち着いたら一回顔を出してみるか。全体的に薄味ではあるけど、この世界の料理は結構美味しいから楽しみだ。

「助けてもらった割には失礼な娘ですな」
「そう? いきなり対価もなく助けられたら、裏があるかもって疑う人もいるんじゃない? 誰かさんが注目を集める派手なこともしちゃうし」

 正義の味方がその辺を歩いている世界でもないんだ。疑り深く生きている人だっているさ。僕だってこっちに来てから大分すさんできてる気もするしな。

「派手、でしたか。殺さないよう、大人しい術にしたのですが」

 石の先がとがっていたら死んでいたぞ。大人しいか?

「どうせなら埋めた方が目立たなかったんじゃない?」
「そう言えば、あやつら頑張って踏みとどまっているみたいですな。いずれ力尽きると思うのですが……自殺志願でしょうか」

 そう言えば、上の彼らは必死な表情で浮遊の魔術を使っているようだけど……微妙に落ちてきているし、あのままだとその内に落下するだろう。

「……まさか、飛べないのか?」
「ならばただの豚ですね。次の人生が幸せであらんことを」
「……助けてあげて」

 僕の願いを小さく嘆息たんそくしながらも了承してくれた識が、少年達のものより強力な浮遊魔術を展開。連中を捕らえて落下速度を緩めて穏やかに地上へ帰還させ……なかった。最後に勢い良く落とした。識~。
 子供かよ!

「覚えてやがれーーーー!!」
「くっ!!」
「イ、イルムさん、待って下さい!!」

 あーあー。尻餅ついちゃって可哀相に。でも受身くらいはできないのか? 体育で習わないんだろうか。
 思うんだけど、ああいう捨て台詞ってこっちが覚えていて本当に良いのかね。絶対、あとで後悔すると思うよ。彼らが。

「……ライドウ様、差し出がましいとは存じますが。あのようなことに一々干渉されるのは如何いかがかと思います。あれは言わば社会現象のようなものです。根本からなくすことができない個々の現象に口を突っこむのは無意味です」
「識、無意味、ではないよ。僕はとりあえず満足したんだから。一応道楽みたいなものだって自覚はあるよ。でも、それを識が正したいなら僕を力ずくで黙らせて見せないとね」

 そう。別にイジメが許せないから止めに入ったんじゃないしな。あんな目をしていた理由に少し興味が湧いただけだ。

「……」
「別にイジメを全部なくしたいなんて思ってないし、やるつもりもないよ。今回のは気の向くままに行動しただけ」
「ライドウ様……」
「悪いね、勝手に動き回る主人で」
「いえ、出過ぎたことを申しました」
「さて、それじゃ僕の代わりにしっかり列に並んでくれた識のお疲れ様会をしよう。受付に並ばせた上に試験は三日後とか、どれだけ待たせるのかね入学試験ってのは」

 識が行列に並んで受付を済ませてくれたんだけど、肝心の試験はこれから更に三日後。
 今夜はこれから男二人で識の六日間にわたる苦行をねぎらう食事会。

「え?」

 僕の言葉に識は間の抜けた疑問の声を上げた。なぜ?

「……え? って何かな、識。試験は三日後なんだろう?」
「ライドウ様? 入学試験とは?」
「言葉通り学園に入学するための試験だけど?」

 レンブラント氏の推薦状と一緒にそのための書類を提出するため、列に六日も並んでくれたのは他ならぬ識自身じゃないか。

「いや、それはわかりますが」
「何がおかしいんだ?」
「ライドウ様は入学試験を受けられるつもりなので?」

 当たり前だろう。僕は頷いてみせる。

「よく聞いてください。ライドウ様が三日後に受けられるのは入学試験ではありません」

 へ?

「そもそも。教育機関への入学は大小の規模は違えど定期的なものです。随時受け付けしている学校など相当特殊です」

 だから、その相当特殊なマンモス学校がここじゃないのかい。普通に考えれば確かに年一回か二回くらいが普通かなあとか思うけどさ。
 大小合わせれば百にも届こうという学校を内包する規格外の場所なら、何があってもおかしくないだろう?

「ここでは今の時期、学生の募集はしていないのです、ライドウ様」
「なら、識は何の列に並んでたの?」
「職員採用試験の列です」

 しょ、職員!? 職員って就職ってこと!? 嘘ぉ!?
 さらっと何を言ってますか!?

「し、識!? 僕には一応商人ギルド所属の商人という、れっきとした職業があ、あるよ?」

 職を探しにここに来たのでは断じてないのですが!?

「ですが、レンブラント氏から渡された書類は、ライドウ様は戦術全般の教師として試験を希望する、という内容になっておりました」

 レ、レンブラントさぁぁぁぁぁん!?

「どうして書類の中身を見ておかしいって思わなかったのさ!?」
「ライドウ様が普通に学生になる方が異常かと。私は、ああそういうことだったのか、と自然に受け入れましたが?」

 おおお。レンブラントさん、あんた何考えてるんですか! 識もだよ、僕はまだ十七ですよ。先生なんてやれるわけないでしょうが!!
 封蝋ふうろうなんて無視して中身を見るべきだったか! でもわざわざ書類の内容を確認してもなあ。だって僕はこの世界の申請書類なんて商人ギルドでもらったものしか見たことがないし。

「推薦状……そうだ推薦状の内容は!?」
「ああ。推薦状は確か、ライドウ様は世界の果てでの実戦経験が豊富にあり、言葉に難はあるが意思の疎通は問題なく、得難い人材なので、このような時期ではあるが是非受け入れをお願いしたい、というような内容でしたな」

 このような時期ではあるが受け入れをお願いしたいって? 六日も列に並んでもらったってのに、今は採用の時期じゃないのか?
 ……もしかしてレンブラントさん、書類の種類ミスった? いや、あの人とモリスさんに限ってそれはないか。特にモリスさんは完璧執事っぽい。

「じゃあ、えっと。僕は三日後にセンジュツゼンパン? とかの教師になる試験を受けるわけ?」
「はい」

 識のあっさりとした肯定。
 センジュツゼンパンって何? 聞いたことない科目なんて教えられるわけがない。こりゃあさすがに試験は落ちるな。
 この世界について色々調べたいのが主で、商会を開きたいのが副で、学園の生徒はついでのついでだから、学園内に入れるなら先生でも生徒でもある意味どうでもいいけど。……それでも、やっぱ先生はないわ。先生って人を教え導く人だぞ?
 できるわけあるか。
 今から事務員とかに切り替えできないか聞いてみようかな。
 ――天を仰ぎたい気分で僕が酒をあおったのは、それから数刻後のことだった。



   1


 そんな識の衝撃告白から三日後。
 僕と識は試験を受けるため、ロッツガルド学園を訪れていた。
 あー、この感じ。
 これから試されるという、試験独特の緊張感が充満している。
 高校受験を思い出すね、これは。
 先生だろうが生徒だろうが、試験を受けるなら雰囲気も同じってことか……。
 気を取り直して目的の場所を目指して学園内を歩くも、その間、僕らに対して奇妙なものを見る視線が大量に送られてくる。
 いつもなら僕の容姿に対してのそれなんだけど、今回は多分、半分くらいは違うと思う。
 僕が異様に若いんだ。
 周囲は人でいっぱい、でもそこに同年代のヒューマンがいるかっていうとまったくいない。
 多いのは三十代から四十代の見た目の人だった。
 そりゃ、先生の試験なんだから当然といえば当然とも思える。

「いつも以上の視線の量。嫌になるね、本当に」
「ライドウ様はこの中で色々と異質な存在ですから……」
「だよね。学生みたいな子供がどこに紛れ込んできてるんだって感じだよね」
「随分と気にしておいでですね。実技の講師に求められるものは実力。ライドウ様なら全く問題などありませんよ」

 付き添いで来てくれている識が、モチベーションの低い僕をフォローしてくれる。

「実力……。戦術全般の、実力かあ」

 センジュツゼンパンとは、戦闘技術全般という意味合いの、要は実践的な戦いについて教える科目らしい。
 夕べ識に教えてもらった。
 科目云々うんぬん以前に、人に何かを教えるなんて出来る訳がない、と僕は思っている。
 異世界に来てしばらくの時間を過ごしてきたけど、僕が色々とおかしい存在であることはもう理解しているんだ。
 その僕が、普通の人に技術を教えるとか不可能だと思うんだよ。
 この科目が網羅もうらしている範囲は広いから、自分が得意とする分野で講義を行えるらしいんだけどさ。
 魔術ひとつとってもリッチとかに化け物扱いされたんだぞ、僕は。
 こんな悶々もんもんとした考えを抱いたまま三日を過ごして、それでも今日、一応試験に来たのは、推薦状を書いてくれたレンブラントさんへの義理立てだ。
 それがなかったら絶対に逃げてるね。
 お世話になってるレンブラントさんの顔を潰すような失礼はさすがにできない。
 試験に実力で落ちて駄目だったならともかく、試験そのものを受けないのはまずい。
 そのくらいは僕にもわかるわけで。
 もう一つの理由は、僕の代わりにずっと列に並んでくれていた識だ。
 彼は気にしないでくださいと言ってくれたけど、六日も並んでくれたその行為を無下むげに扱うのは申し訳なかった。

「私も以前、多少は人にものを教えたことがあります。講師の一つや二つ、なんとでもなります」
「……ですか」
「はい」

 識、なんでもう僕が合格することを前提にして講師の仕事の心配についてフォローしてるんだ。
 僕は今、試験を受けることに対して色々考えてるっていうのに……。

「まあ、事務の募集についても聞くけど。駄目でもやるだけはやるよ。心配させてごめん」
「ライドウ様が考えておられるよりもずっと、試験など易しいものかと存じますよ」
「だと嬉しいね」

 そんな雑談をしながら目的地に到着した。
 受付である。
 ふぅ……ついちゃったな。
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