月が導く異世界道中

あずみ 圭

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8.5巻

8.5-1

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 ――時は少しだけさかのぼる。
 これはく過ぎ去った夏、深澄真みすみまことと彼の生徒たちの過ごした一幕。
 きたる学園祭を前に、熱意とともに成長していく学生達。
 彼らに触発され、鍛錬たんれんに打ち込む真。その真が過ごす亜空あくうでの新たな出会い。


 これは深澄真と学生たちが送った夏休みのお話。





 ■亜空編


 1


 ロッツガルド学園は間もなく夏休みを迎える。
 僕、深澄真は本業のクズノハ商会を営むかたわら、この学園に教師として勤めてそれなりに忙しい日々を送っていた。
 夏休みに入れば僕としても時間ができるわけで、せっかくだから何か目標を決めて取り組みたいなんて思っているんだけど……。

「えっと、真君。それ正気で言ってる?」
「一欠片かけらの冗談も言ってないんだけど。何だよ、その目は」
「だって君が魔力を増やしたいって、既に僕よりはるかに多いじゃない。何? 魔力銀行でも始めるの?」

 目の前で盛大にお茶を噴いた失礼な銀髪の青年に僕は説明し直す。

「誰と貸し借りするんだよ。生憎あいにく僕にそういう趣味はない。それから、魔力を増やしたいんじゃなくて一度に使える魔力を増やしたいんだよ」

 ここは冒険者ギルド、マスターの部屋。
 名を変え、姿を変え、性別を変え、ずっとギルドに君臨している変態――じゃなかった、天才の上位竜『万色ばんしょく』のルトの部屋という事になる。
 今僕と向かい合わせで座ってる銀髪がルト。
 僕の従者、元上位竜のともえの記憶では、ルトは昔女だったようだけど、今はご覧の通りの美丈夫びじょうふだ。
 ある意味、僕以上に規格外の存在だと思う。

「……つまり、真君は一度の魔術行使に使える魔力の『量』を増加させたい?」
「そういう事。どんな練習すればいいか分からなくてな。巴やみおしきに聞いてもあんまり良いのがなくて」

 はっきり言ってしまえば、今のところこれといって効果的な訓練方法はない。
 魔力の最大値と同じく、長年の修練を積む過程でいくらか出力も増加する事があるらしいというだけ。それ以外の方法だと、いわゆる契約などで自分より上位の存在の眷属けんぞくとなる事でキャパシティを上げるというものがある。
 前者は即効性がなく、後者は契約の相手が見つからない。
 困ったもんだ。

「んー。どういう方法かは知らないけど、真君は……自分の魔力の最大値を増大させてるみたいだからなあ。それと同じように一度に行使できる魔力量も訓練で増やせるって思ってるんだろうけど――」
「いや、だってそれが出来なかったら術の威力を上げられないだろ? 普通の魔術師がやってる事でいいんだよ。巴達は多分難しく考えすぎてて、高度な方法ばかり探してるから良いのが浮かばないだけだろうし」
「普通の、ねえ。普通の魔術師が術の威力を上げる為にやる事って言ったら……」
「ああ、何をするんだ?」
「レベルを上げる」
「僕のレベル、一のままピクリともしないんだけど?」
「装備を整える」
「……」

 既に結構な装備をしている気がする。

「以上」
「おい」
「だって本当の事なんだよ。普通っていうか……真君以外の魔術師は、より優れた装備品を使う事で術の威力を上げるの。で、それ以上の威力や効果が必要ならレベルを上げて上位の術を覚える」
「上位の術かあ。覚えた術のアレンジとかじゃ駄目なのか?」
「基本的に魔術っていうのは、たとえば1~10みたいにあらかじめ術ごとに威力の幅が決まってるわけ。平均的な能力で使えば5の威力で、それより真君が言うところの『出力』が弱かったり、属性との相性が悪かったりすると減衰して1~4の間、逆に相性が良ければ増強されて6~10の間の威力って具合にね。どんなに術をアレンジしたって、その10は超えられないんだ」

 ルトは、それこそ教師よろしく僕に魔術の基礎をく。

「そもそも魔術を行使するための詠唱は、威力、範囲、効果を決めるものなわけで。真君の、ブリッドだっけ? あれは使い方がおかしすぎるよ。原型を留めてないくらいアレンジされて、威力も天井知らずに高められてる。ああいうアレンジは普通出来ないし、あそこまで真君の希望に添って組み替え出来るのが奇跡と言ってもいい」
「そこまで言うか……。僕はただ出力の部分を上げたいだけなんだけどな。今はどうにも効率が悪い感じがするんだ。そこさえ上げられれば、もっと上手く戦えるかなって」
「非効率的に感じられるのは単に君の最大魔力の方が高すぎるだけだよ……。確かにアンバランスではあるけれどね。普通、魔力の最大値と出力はある程度連動してるものだから。……で、その出力の事なんだけど、ここでさっきの『増やせると思ってるんだろうけど』ってところに話が戻る」
「……」
「本来ね、魔力の最大値もその出力も、生まれつきの才能なの」
「才能?」
「そう。それも自分ではどうしようもない才能。一生をかけても一割二割変えるのが精々せいぜいってほどのね」
「だけど、僕は魔力の最大値が上がってるみたいだぞ?」
「往来でそれを口走ったら、数日中に研究機関に収容されて実験台として切り刻まれるレベルだからね? 君なら心配いらないだろうけど」
「……マジで?」
「本気と書いてマジだよ」
「そっか、簡単に増えるもんじゃないのか……」
「実際どうやって増やしてるのか、僕だってすごく知りたいよ。教えてくれるならいくらでも払うよ? 金でも物でも人でもね」

 ルト……。
 お前もまあ恐い事言うよ。
 しかし、せっかく相談に来たけど無駄むだ足だったか。無理って事が分かっただけの結果になりそうだな。
 学生達が夏休みを迎えて、何となく僕も新しい課題に取り組まなきゃって気分にさせられてる今、絶好のテーマだと思ったのに。課題を考え直したほうがいいか?
 弓は日課だから、こういう期間限定の課題にはなり得ない。
 となると、後は防御力増強とかになるか。
 最近物騒な事も多いし、こっちももっと鉄壁にならないと不安だよなあ。

「んー、教えてって言われても、実際僕としては普通の事をしてるだけなんだけど。言わば日課?」
「それはまた……随分ずいぶんと革命的な日課だね。教えてもらえるのかい?」
「弓を引いてるだけだよ」
「弓?」
「そ。お前なら知ってるだろ? 弓道」
「名前くらいは知ってるけど。剣道とか柔道と違って今ひとつメジャーになれないアレでしょ?」
「ぶん殴るぞ、こら」

 何で他の競技と弓道を比較するんだよ。
 しかも駄目っぽい言い方しやがって。

「あ、あはは――ごめん、つい。僕の知る日本人ではあまりやってる人はいなかったねえ。野球とかサッカーとか剣道はそこそこいたんだけど」
「メジャーかどうかは競技の質には関係ないだろ。僕は真剣に打ち込んでるんだから、ほっといてくれ」
「本当にごめん。個人の嗜好しこうは自由だと思うよ、僕も。で、真君はその弓道のやり方で弓を引くと魔力の最大値がレベルアップするわけ?」

 僕の言葉がにわかには信じられないらしく、ルトは疑わしげな目を向けてくる。

「多分な」
「……やってみせてもらってもいい?」
「それはまあ、いずれ。正直、あんまり人に見られるのは好きじゃないし。ここじゃ部活ってわけでもないから」
「残念。まあ、その『いずれ』に期待させてもらうとするよ。はいこれ」

 ルトは心底残念そうに小さな溜息をつくと、唐突に数枚の紙片を差し出してきた。

「なんだ?」
「一応、魔力の出力を上げる修練法のリスト。期待しないでよ? ひと夏やったからってそうそう目に見えて上がるものでもないから。とりあえず確実なヤツって事で」
「おお! ありがとう、助かる!」

 何だよ、さんざん勿体もったいぶった割にはちゃんと用意してたのか。
 ま、有難く頂いておくけどね。

「いいよ、このくらい。しかし、君は講師であり商人でもあるわけで、夏休みだからってこれ以上何かを始めなくてもいいだろうに。まるで学生みたいに一生懸命だね」
「この世界に来て学生の身分を離れてからは、言ってみれば僕にとって毎日が日曜日みたいなもんだっただろ?」
「そう? 商人になったんだから、毎日が月曜日でもあるんじゃないの?」

 よりによって月曜日にたとえるかね。憂鬱ゆううつな気分になるじゃないか。

「まあ……そうとも言うけど。で、夏休みって響きが妙に新鮮に聞こえてさ。そういえば、夏休みの前はいつもソワソワして、何しようか楽しみで仕方なかったよなって、思い出しちゃったわけ」
「……」

 ふと、僕をなぐさめるかのようにルトの表情が優しげな色を帯びた。
 僕は別に、感傷的になってるんじゃなくて、ただ懐かしくなっただけなんだけど。

「ジン……あー、僕の生徒達を見てたらそんな懐かしい気分になってさ、急に色々やる気になってきたってだけ。懐かしむほど昔の事でもないから、僕自身も不思議だけどな」
「……良いんじゃないかな、そうやって昔を思い出すのも。いずれにしても、短い期間に集中して何かをやるってのは凄く有意義な事だ。君の夏休みが素敵すてきなものになる事を祈ってるよ。学園祭で君と会うのが楽しみだ」
「今はそういうプレッシャーも気持ちいいよ。じゃ、ありがとうルト。またな」

 そう言うと、僕は話を切り上げて席を立った。

「ああ。真君ならいつでも歓迎だよ」

 手を振るルトに見送られ、冒険者ギルドを後にする。
 決定的な情報こそもらえなかったけど、恒常的に出来る修練法は教えてもらえた。
 これはひと夏で効果が出るものではないらしいが、もっと長いスパンで続けてみてどのくらい成果があるか楽しみだ。
 外はまだ日が高く、夏の日差しが照りつけている。
 こんな中に出歩くのはちょっと気が滅入めいるが、早めに用事を済ませてしまいたい。
 次は……そうだ。
 学園の司書、エヴァさんに呼ばれてたんだ。確か面白い本を紹介してくれるとか。
 最近は何かと忙しい毎日を過ごしているが、なんだかんだで読書をする時間は作れていた。それに、つい手持ち無沙汰ぶさたになる時にも、本があると凄く助かる。
 エヴァさんのすすめてくれる本は外れも少ないからなお良い。
 時間の割合的に言ったら、この夏休みの間は亜空にこもるようなもんだから、僕としては彼女が本を貸し出してくれるのは非常に嬉しい。


 夏休みを迎え、学園からはすっかり人気ひとけが減っていた。
 とはいえ平時の活気には及ばないものの、帰省きせいの予定がない者、奨学生しょうがくせいで寮住まいの者など学園に通っている者はいる。
 この期間にも臨時講師が立ち上げる講義を取ったり自己鍛錬をしたり、自分なりにいのない一日を過ごそうとはげんでいる生徒も少なくないのだ。
 かく言う僕も、講義を受け持つ学生達から懇願こんがんされて予定外の臨時講義をやる羽目はめになっていた。
 今はもう僕も覚悟を決めてやる気だけど、最初は生徒の無駄な熱意にあきれたものだ。
 ……けれど、一部の学生たちにとっては、ここでの成績と身に付けた実力が将来に直結するわけで、学園の長期休暇は遊びの期間じゃない。
 つい、僕自身の高校二年の夏休みと比較してしまった。
 うん、無駄な熱意ってのは彼らに失礼だな。
 まばらな学生達とすれ違いながら学園内を歩き、目的の建物である図書館に辿たどり着く。
 さて、ここからは筆談に切り換えないと。

[エヴァさん、こんにちは]

 いつものように、魔力で吹き出しを作って呼びかける。
 人以外となら話せる僕の能力は自分でも凄いと思うし、亜空でも役に立ってるけど、こうして普通に人と話せないのは本当に不便だ。何とかならんのかなあ。

「ライドウ先生! お待ちしていました」

 落ち着いた雰囲気ふんいき眼鏡めがねの女性、エヴァさんがカウンター越しに満面の笑みで迎えてくれた。

[ギルドへの所用が長引きまして。遅れてしまい申し訳ありません]
「先生がご多忙たぼうなのは存じています。なんでも講義を担当されている生徒さんから夏休みもきたえて欲しいと頼まれたとか」
[ええ。皆やる気のある子達で。出来る範囲でですが応えてあげようかと。これも講師の務めですね]
「常勤の先生方は半数以上がバカンスや帰郷で学園を留守にされていますから。ライドウ先生のような方は珍しいですよ。私は……そういう方が好きですけれどね」
[ありがとうございます。ますますやる気が出ましたよ。それで、エヴァさん。お薦めの本が見つかったとか?]

 お世辞せじは軽く流して本題に移る。

「……はい。こちらです」
[これは本じゃなくて論文ですか? 古いもののようですね]

 エヴァさんから渡されたのは、きちんと製本された本ではなく、束ねた紙をじて簡易装丁そうていをつけたものだった。
 こういう本は僕も図書館で何度か目にした事がある。
 大抵は研究者が発表した論文だ。それも、大々的に知られているようなものじゃなく、各々おのおのが研究成果として発表してそのまま埋もれていったもの。
 だから、写本だとか製本だとかの機会が得られず、図書館に資料として保存だけされている。

「ライドウ先生は魔力の運用に興味をお持ちのご様子でしたから。ありきたりな本や論文では既にご存知かと思い、今回は変わり種をご用意させて頂きました」

 変わり種かあ。
 どっちかっていうと、王道なヤツが今は欲しかったりしたんだけど……。
 どれどれ……著者名のところには、以前目を通したどの教本でも見た事がない人の名前が書いてある。相当脇道わきみちれた人の論文かもしれない。
 タイトルは『魔力の物理干渉かんしょう、その可能性について。可視化の視点から』?

[魔力の物理干渉……ですか?]

 魔術によって干渉するんじゃなくて、魔力そのものを使うという事?
 へえ、主題が術じゃなく魔力という論文はなかなか珍しい。
 面白そうだけど、内容が全く予想できない。
 魔力の可視化については僕にも分かる。
 強力な魔術を詠唱すると、術の行使の為に魔力が体外に流れ出て奔流ほんりゅうとなっていく。それが全身から立ち上っていく際、その人固有の色をまとった魔力が他人の目にも見えるようになる。
 どんな色かはその人の特性、属性との相性とか得意な術の分類とかに依り、文字通り十人十色じゅうにんといろだとか。

「はい。これはとある研究者が生涯をかけて追い求めたテーマで、それはもう極めて独自性の高い理論を展開した、知る人ぞ知る論文です」

 つまり、一般人はまるで知らない、一部のマニアだけが知ってる論文って事ね。魔術の理論面ではまだまだ初心者のいきを出ない僕に、そんな専門的な内容が読めるかどうか。
 ただ、面白そうなタイトルではある。
 ルトからもらった修練法もあるし、これも休みの間に読み込んでみようかな。

[確かに興味をかれる論文です。これで夏休みの目標がまた一つ出来ました。ありがとうございます]
「夏休みの目標ですか? ライドウ先生、まるで学生のような事をおっしゃるんですね」

 エヴァさんが口元に手をあててくすくすと笑う。
 まあ立場こそ講師側だけど、生徒たちに混ざって学園という環境に身を置くと、つい自分も学生の立場で物を考えてしまう事がある。こっちに来る前は、僕だって普通に学ぶ側の人間だったんだから、こればかりは仕方ない。
 そんな僕だけど、基本的に夏休みの間は学園を離れて亜空で過ごすつもりだ。
 幾つか目標を決めて、腰をえてじっくり取り組みたい。出来れば、成果が見えるところまで頑張れたらいいと思ってる。
 当面の目標はルトの修練法による魔力の出力強化と、エヴァさんに借りたこの論文の読破ってとこで決まりだな。
 もちろん、休み中もエマ達から山のように届けられてくる報告とか相談には、対処しなくちゃいけない。これは目標ではなくてお仕事の方に分類すべき事だから別にして、と。
 ジンや他の生徒に負けない程度には、僕もステップアップしていかないとね。
 今のところジン達は講義で模擬戦をしてるミスティオリザードのアオトカゲ君にやられっぱなしだけど、最近の成長ぶりを見ると、ひょっとしたらこの夏の間に一度は撃破するかもしれないとも思える。
 ……そうなったら結構面白い事になりそうだな。

[ではエヴァさん、良い夏休みを。しばらくこちらに来る回数も減りますが、商会にいらして頂ければ相談事には応じられますので]
「お気遣きづかいありがとうございます。先生も良い夏休みを」

 わざわざ入口まで見送りに出て来てくれたエヴァさんに軽く一礼して、図書館を後にする。
 さあてと。
 それじゃ、亜空に戻って本格的に向こうの事をやろうかな!


 ◇◆◇◆◇


 ここは地球でも、女神が管理する異世界でもない場所。
 亜空。そう呼ばれている世界。
 亜空は名目上、僕の所有物という事になっている。
 ここに住む住民の皆にとっての認識では、「僕の国」って事で通ってるようだ。
 でも、僕からすればちょっと違う。僕達が住んでる今のこの「亜空」は、僕と契約する前から巴が持っていた能力で生み出された異空間――本来の亜空――が変質して出来たもの、いわば大半があいつの能力の産物だ。
 ……と思ってたんだけど、最近ではそうとも言い切れなくなってきたんだよね。
 確かに、この空間への出入りは僕でも出来るし、澪や識も多少の訓練さえ積めば出入り出来るようになる。言うまでもなく、巴は最初から出入り自由だ。
 前に一度、お互いに亜空への出入りを禁止した状態、許可した状態という条件付けをして、四人で出入りの可否を確かめた事がある。
 その結果、僕が禁止したら巴でさえ亜空に干渉できなかった。
 それでも、あいつが元々持っていた異空間としての亜空は今や別に作り出せるし、自在に操れるようだったけど。
 つまり、どうやらこの亜空と巴の能力は厳密には違うものになってしまっているようなのだ。
 ますますこの広大な場所は一体何なのか分からなくなってくる。
 区別しやすいように「亜空」って名前を変える事も考えたけど、巴の事だ……勝手に「OEDO(お江戸)」とか名付けられそうでそれも恐い。
 何にせよ、この亜空において僕が一番強い干渉能力を持っている事は確かだ。多分、巴との間の支配の契約も影響していると思うけど、その辺りの仔細しさいはまだ調べてない。
 まあいずれって話だ。
 とどのつまり、ここの住民たちは何か問題が生じると、僕や巴達に判断を求めたり裁可さいかを願ったりする事がかなり多いって事。正直、僕は王様なんてがらじゃないんだけど、すっかりそういう立場に祭り上げられてしまった。
 大家おおやさんくらいがちょうど良いんですけどね、ホント。
 夏休みの間はこっちに長くいると、実務の取りまとめ役となっているハイランドオークのエマに伝えたところ、待ってましたとばかりに各所から連日報告と相談の雨あられだ。
 日中なんて視察に次ぐ視察で、本当にあっちこっちに出ずっぱりである。
 幸い、商会の方には夏休みの間ロッツガルドの外に商談に出て基本的には留守にしてますよ、ってお知らせしてあるから、そっちは心配いらないけど。
 亜空には様々な種族が住んでいる。当然、全部面倒を見てたらキリがないので、種族内の事は自分たちで決めてしまって構わないと、言った上でこの有様だ。本当に全部やってたら、体がいくつあっても足りない大変さだとしみじみ思う。
 亜空ですらこんななんだから、世界を支配するとか言い出したら超重労働だと思う。今ヒューマンに戦争仕掛けてる魔王とかワーカホリックじゃなかろうか。
 僕からしたら正気とは思えないね。
 だって……雑務の処理に追われてるだけで、二週間も経ってるんだもの!
 つまり、大雑把に言うと休みの三分の一が終わってしまった事になる。
 この間に僕が出来た事と言えば、論文を読むのと魔力の出力向上についてルトから教わった修練を続けるくらいがせいぜい。まさに光陰矢こういんやのごとしだよ。
 まあ、論文は面白いし、何かをつかめそうな気がしている。
 修練の方は正直……そこまで効果が出てない。
 修練を始めたばかりの頃なら伸びしろがあるはずだから、もしかすると最初のうちくらいは上昇が目に見えて分かるかもと思ったけど、そんなに甘くなかった。
 これでも一応、あいつがくれた修練法のメモに書いてある三倍の量はこなしてるんだけどな……。ちょっとへこむよ。
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