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第二章 誇り高きルディラント
第四話 在りし日の名前③
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夕方には最後の仕事が待ち受けていた。
エルマからの依頼であり、仕事内容は――――
「……リシアお前……意外と不器用だな、実は……」
「言うな。そして見るな。今集中している」
「あぁそう……」
近く大きな祭りがあるということで、エルマがお披露目しようとしている繊細な木製のオブジェクトの仕上げを手伝うことだった。メインとなる巨大な竜のような生物を模したオブジェクトは、さすがに二人とも手を出せないので、周囲のエフェクトのような部分と台座の担当だ。総司も手先が器用な方ではないが、サリア曰く「センスがある」らしく、簡単な作業を着々とこなしていた。対照的にリシアは生来不器用なのか、それとも生真面目すぎるがゆえに大胆な作業が出来ないのか、一つの個所を彫るのに莫大な時間をかけていた。
エルマの工房は時計塔の低層階にあり、総司にとっては見るだけで楽しい道具で溢れていた。手で止めない限り延々と妙なリズムを奏でるベルや、ガチャガチャと勝手に動いては散らかった道具を整理し、なぜかまた散らかすという意味不明な行動を続けるブリキの人形などなど、摩訶不思議なアイテムが盛りだくさんだ。
しかし今やっている作業はあくまでも、なんの変哲もない彫刻刀で木彫りを進めるという地味極まりないものである。
「くっ……こ、この彫刻刀というやつはどうしてこう、思い通りに動かないのか……」
「エルマ様の説明聞いとけよ、そういう狭い箇所はこっちの刃先が細いやつでやるって話だろうが」
「え?」
「え、じゃねえよなんだその顔は。王妃の言葉を聞き逃す騎士がいるかよ」
「ふふふ」
クスクスと笑うサリアが一番手際が良かった。複雑な模様も華麗に彫っていくその姿を見れば、普段からエルマの趣味に付き合っていることが伺える。
「サリアはあれだな……今のところ出来ないことがないって感じだな。完璧超人だ」
「ええ!? いえ、そんなことは決して……」
「あっ」
「今あっつったかお前。なあ」
「いや」
「誤魔化せねえよ思いっきりミスってんじゃねえか!」
「大丈夫だ」
「何が? ねえ何が? どんどんひどくなってるよ怒られるよこれ!」
リシアがやらかした箇所をサリアが何とか修正し、総司は引き続き自分の担当個所を彫り進めていく。
「サリアなら、こういう作業も魔法で何とかなりそうだけどな」
「私にも得手不得手がありますから……しかしソウシは、魔法を万能の何でもできる奇跡だと思っていますか?」
サリアは微笑みながら問いかけた。
「まあ、そうだな。俺は力業しか出来ないけど、熟達した魔法使いなら何でもできそうだとは……」
「王の言っていた通り、あまり詳しくはないと。なるほど」
サリアは作業を続けながら、言葉も続ける。
「魔法について、誰かに習いましたか? つまり、魔法とは何たるかという意味ですが」
「精霊の力を行使する、みたいなことはリシアに聞いたな」
「子供が習う座学の範疇ですが」
リシアが補足すると、サリアは頷いて、
「正確には少し違います。魔法とは魔力を用いて精霊の行いを”真似る”ものなのです」
リシアがぴたりと手を止めた。
リシアは魔法の専門家ではないものの、普通に暮らす者たちに比べれば、戦いのさなかで使わなければならないこともあり、学習は欠かせなかった。
だが、サリアの言う説は聞いたことがなかったのだ。
「精霊とはリスティリアに生きる知性ある生命の上位存在であり、彼らと違って命に期限を切られている。有限な時間の中で、彼らの真似事をして生きている。そして稀にーーーー」
総司の姿に何を見たか、サリアは全て見透かしているかのように、言った。
「精霊の力そのものを操り、或いは彼らを仮初の姿に落とし込んで使役するような、破格の魔法の使い手が現れる。基本的には、選ばれた家系の中の、更に限られた者にしか扱えないものです」
「伝承魔法か……」
稲妻の魔女アレインを思い出す。彼女が総司との戦いで披露して見せた荒ぶる雷神の魔法はまさに、サリアの言葉に当てはまる。
多くの人々が精霊の行いを真似るだけという中で、アレインは精霊の力そのものを自在に操る。格の違いはその時点で明白だ。
「サリアも使えるんだろうな」
「ええ。すぐにお見せすることになるでしょう。明日あなた方には、海を渡ってもらわねばなりませんので」
「気が早いなぁガキども。まだ今日の仕事も終わっとらんというのに」
三人がばっと振り返ると、ランセムがニヤニヤしながら工房の入口に立っていた。
「うるさいッスよ。ちゃんとやってるんで」
「そりゃ当然だ。おぉ、お前さん見た目に似合わず器用なもんだな」
「一言余計なんだよなぁこのおっさん……」
「んー? おぅ、いやいや前言撤回だなこいつは! 何だこの辺の曲線は。見るも無残とはこのことだな。ミミズでものたうちまわったのか、ん?」
「だってよリシア」
「面目次第もございません……」
「……こりゃ失敬」
「おい俺には良いのかおかしいでしょ」
「そろそろお役御免ですか?」
サリアが聞くと、ランセムは首を振って、
「エルマが張り切って腕を振るっておるところだ。絶品というのは保証するが、難点が一つあってな。気合が入り過ぎるとなかなか完成せんのだ」
「エルマ様にはどうか、あまりに過ぎたもてなしは不要とお伝えいただければ……」
リシアが申し訳なさそうに頭を下げると、ランセムは手を振ってにやりと笑った。
「短い付き合いだがもうわかっとるだろう。むしろ逆だ。あれの楽しみを奪わんでやってくれ」
「……ありがとうございます」
「さて、まあ……手を止めて傾聴せよ、ガキども」
ランセムが手近な椅子に座ってそう言うと、三人ともが作業道具を置き、総司は床にあぐらをかき、リシアとサリアは立ち上がって姿勢を正した。
「お前たちがよく働いていたのは知っている。だがそれだけではない。マレット、ニーナ、ギウス、それに多くの街の民たち。伝え聞く限り、お前たちの評判はとても良かった」
「俺たちがよかったってよりは……」
「ええ、ルディラントの皆様のお人柄にとても助けられました」
「そんなことはわかっとる」
ランセムは千里眼のような、王の特権めいた力で、三人の行動をずっと見ていたのだろう。
「お前たちは下らん遣いを懸命にこなし、それがお前たちの自己満足にとどまることなく、多くの民に癒しと元気を与えた。簡単な仕事ではあるが、その姿が誰かの活力になっていった。不思議な魅力がある。お前さんたち二人ともに、他者を惹きつける何かがある」
急にむず痒いほど褒められて、総司は少し怪訝そうな顔をする。短い付き合いだが、らしくない、という想いが今ぴったり当てはまる。
「褒美だ。お前さんたちの旅路できっと答えが見つかる謎を一つ、教えてやろう」
「……謎……?」
「聞いて驚け。千年前に名を変えたのはシルヴェリアだけではない。この世界そのものも名を変えているのだ。しかも非常に短い期間で二度も。その後千年変わっておらん」
「リスティリアが!?」
「そんな話は聞いたことも……」
「千年前、女神と我らの距離は、今よりもう少し近かった。誰かが、或いは何かが名を変えさせたのだ。覚えておけよ、元の名を”スティーリア”。次の名を”ストーリア”。そしてそれから千年、リスティリアとして在り続けているのだ」
「なんでそんなことに……? 謎ばっかりだけど、一番謎なのは間の”ストーリア”だよな。それじゃダメだったのか?」
「さーてなぁ。その時何があったのかなんてことまでは、わしも知らんが。この世界が”ストーリア”の名を関しておったのは、わずかもわずか、数年にも満たない期間という話だが」
「……なぜ、その話を我らに……?」
リシアが混乱しながら聞くと、ランセムは真剣なまなざしでその問いに答えた。
「必要だと思ったからだ。なんの確証もないことだ、聞き流してくれて構わんが……おそらくお前さんたちの旅路は、女神を救う旅路であり、同時に……千年前を辿る旅路のように思えてならんのだ」
「……千年前、一体、何があったんだ? 多分知ってるんだよな?」
「昨日お前さんには話した通りだ」
総司の質問に、ランセムはゆっくりと首を振った。
「あとは、自分の目で確かめろ」
「……わかった」
夕食の席でも、ランセムが告げた世界の名の変遷を話題に出すことはしなかった。
エルマが運ぶ数々のルディラント伝統料理に舌鼓を打ち、昨日に引き続きランセムが良い具合に出来上がったところで、切り出したのは明日の話題だ。
「さて、十分に働いてくれたことだしな。明日はいよいよ、聖域に案内しよう」
「海岸までは私がともに参りましょう。その先へは残念ながら入れませんが」
「助かります」
砂嵐のような正体不明の防御に覆われた、ルディラントの離れ小島。王の特権を以てして見通すことのできない秘境に、オリジンが眠るかはまだわからない。
「その島にはほら、なんかないんスか? それこそ千年前からの伝説とか」
「ワクワクするような言い伝えの類はないんだがなぁ。一説では、昔は陸続きだったらしいがそれぐらいか」
「名前とかは?」
「単に聖域と呼んでおったが、別に公文書でも何でもない、とある庶民の記録を辿るとだ」
ランセムは機嫌良さそうな顔のまま、少しだけ遠い目をした。
「”真実の聖域”。そう呼ばれていた時代があったそうだ」
「真実の……」
「明日は早朝に発ちましょう。出発が遅くなると、到着はさらに遅れそうですから」
「……そりゃ当たり前では?」
サリアの言葉に、総司が不思議そうに返すと、サリアはクスクスと控えめに笑った。
「今日一日で、あなたたちはとても人気者になりましたからね。往来の多い時間帯に通りを抜けようとしても、きっと一筋縄ではいかないでしょうから」
昨日、エルマと共に大通りを歩いてきたリシアが、大変な荷物を抱えていたことを思い出す。ルディラントの人々の国民性がなせる業だ。
「今日は早く休んで、明日に備えなければなりませんよ」
サリアに促されて、総司とリシアが立ち上がると、ランセムが声を掛けた。
「あー、ソウシ。お前はちと残れ」
エルマからの依頼であり、仕事内容は――――
「……リシアお前……意外と不器用だな、実は……」
「言うな。そして見るな。今集中している」
「あぁそう……」
近く大きな祭りがあるということで、エルマがお披露目しようとしている繊細な木製のオブジェクトの仕上げを手伝うことだった。メインとなる巨大な竜のような生物を模したオブジェクトは、さすがに二人とも手を出せないので、周囲のエフェクトのような部分と台座の担当だ。総司も手先が器用な方ではないが、サリア曰く「センスがある」らしく、簡単な作業を着々とこなしていた。対照的にリシアは生来不器用なのか、それとも生真面目すぎるがゆえに大胆な作業が出来ないのか、一つの個所を彫るのに莫大な時間をかけていた。
エルマの工房は時計塔の低層階にあり、総司にとっては見るだけで楽しい道具で溢れていた。手で止めない限り延々と妙なリズムを奏でるベルや、ガチャガチャと勝手に動いては散らかった道具を整理し、なぜかまた散らかすという意味不明な行動を続けるブリキの人形などなど、摩訶不思議なアイテムが盛りだくさんだ。
しかし今やっている作業はあくまでも、なんの変哲もない彫刻刀で木彫りを進めるという地味極まりないものである。
「くっ……こ、この彫刻刀というやつはどうしてこう、思い通りに動かないのか……」
「エルマ様の説明聞いとけよ、そういう狭い箇所はこっちの刃先が細いやつでやるって話だろうが」
「え?」
「え、じゃねえよなんだその顔は。王妃の言葉を聞き逃す騎士がいるかよ」
「ふふふ」
クスクスと笑うサリアが一番手際が良かった。複雑な模様も華麗に彫っていくその姿を見れば、普段からエルマの趣味に付き合っていることが伺える。
「サリアはあれだな……今のところ出来ないことがないって感じだな。完璧超人だ」
「ええ!? いえ、そんなことは決して……」
「あっ」
「今あっつったかお前。なあ」
「いや」
「誤魔化せねえよ思いっきりミスってんじゃねえか!」
「大丈夫だ」
「何が? ねえ何が? どんどんひどくなってるよ怒られるよこれ!」
リシアがやらかした箇所をサリアが何とか修正し、総司は引き続き自分の担当個所を彫り進めていく。
「サリアなら、こういう作業も魔法で何とかなりそうだけどな」
「私にも得手不得手がありますから……しかしソウシは、魔法を万能の何でもできる奇跡だと思っていますか?」
サリアは微笑みながら問いかけた。
「まあ、そうだな。俺は力業しか出来ないけど、熟達した魔法使いなら何でもできそうだとは……」
「王の言っていた通り、あまり詳しくはないと。なるほど」
サリアは作業を続けながら、言葉も続ける。
「魔法について、誰かに習いましたか? つまり、魔法とは何たるかという意味ですが」
「精霊の力を行使する、みたいなことはリシアに聞いたな」
「子供が習う座学の範疇ですが」
リシアが補足すると、サリアは頷いて、
「正確には少し違います。魔法とは魔力を用いて精霊の行いを”真似る”ものなのです」
リシアがぴたりと手を止めた。
リシアは魔法の専門家ではないものの、普通に暮らす者たちに比べれば、戦いのさなかで使わなければならないこともあり、学習は欠かせなかった。
だが、サリアの言う説は聞いたことがなかったのだ。
「精霊とはリスティリアに生きる知性ある生命の上位存在であり、彼らと違って命に期限を切られている。有限な時間の中で、彼らの真似事をして生きている。そして稀にーーーー」
総司の姿に何を見たか、サリアは全て見透かしているかのように、言った。
「精霊の力そのものを操り、或いは彼らを仮初の姿に落とし込んで使役するような、破格の魔法の使い手が現れる。基本的には、選ばれた家系の中の、更に限られた者にしか扱えないものです」
「伝承魔法か……」
稲妻の魔女アレインを思い出す。彼女が総司との戦いで披露して見せた荒ぶる雷神の魔法はまさに、サリアの言葉に当てはまる。
多くの人々が精霊の行いを真似るだけという中で、アレインは精霊の力そのものを自在に操る。格の違いはその時点で明白だ。
「サリアも使えるんだろうな」
「ええ。すぐにお見せすることになるでしょう。明日あなた方には、海を渡ってもらわねばなりませんので」
「気が早いなぁガキども。まだ今日の仕事も終わっとらんというのに」
三人がばっと振り返ると、ランセムがニヤニヤしながら工房の入口に立っていた。
「うるさいッスよ。ちゃんとやってるんで」
「そりゃ当然だ。おぉ、お前さん見た目に似合わず器用なもんだな」
「一言余計なんだよなぁこのおっさん……」
「んー? おぅ、いやいや前言撤回だなこいつは! 何だこの辺の曲線は。見るも無残とはこのことだな。ミミズでものたうちまわったのか、ん?」
「だってよリシア」
「面目次第もございません……」
「……こりゃ失敬」
「おい俺には良いのかおかしいでしょ」
「そろそろお役御免ですか?」
サリアが聞くと、ランセムは首を振って、
「エルマが張り切って腕を振るっておるところだ。絶品というのは保証するが、難点が一つあってな。気合が入り過ぎるとなかなか完成せんのだ」
「エルマ様にはどうか、あまりに過ぎたもてなしは不要とお伝えいただければ……」
リシアが申し訳なさそうに頭を下げると、ランセムは手を振ってにやりと笑った。
「短い付き合いだがもうわかっとるだろう。むしろ逆だ。あれの楽しみを奪わんでやってくれ」
「……ありがとうございます」
「さて、まあ……手を止めて傾聴せよ、ガキども」
ランセムが手近な椅子に座ってそう言うと、三人ともが作業道具を置き、総司は床にあぐらをかき、リシアとサリアは立ち上がって姿勢を正した。
「お前たちがよく働いていたのは知っている。だがそれだけではない。マレット、ニーナ、ギウス、それに多くの街の民たち。伝え聞く限り、お前たちの評判はとても良かった」
「俺たちがよかったってよりは……」
「ええ、ルディラントの皆様のお人柄にとても助けられました」
「そんなことはわかっとる」
ランセムは千里眼のような、王の特権めいた力で、三人の行動をずっと見ていたのだろう。
「お前たちは下らん遣いを懸命にこなし、それがお前たちの自己満足にとどまることなく、多くの民に癒しと元気を与えた。簡単な仕事ではあるが、その姿が誰かの活力になっていった。不思議な魅力がある。お前さんたち二人ともに、他者を惹きつける何かがある」
急にむず痒いほど褒められて、総司は少し怪訝そうな顔をする。短い付き合いだが、らしくない、という想いが今ぴったり当てはまる。
「褒美だ。お前さんたちの旅路できっと答えが見つかる謎を一つ、教えてやろう」
「……謎……?」
「聞いて驚け。千年前に名を変えたのはシルヴェリアだけではない。この世界そのものも名を変えているのだ。しかも非常に短い期間で二度も。その後千年変わっておらん」
「リスティリアが!?」
「そんな話は聞いたことも……」
「千年前、女神と我らの距離は、今よりもう少し近かった。誰かが、或いは何かが名を変えさせたのだ。覚えておけよ、元の名を”スティーリア”。次の名を”ストーリア”。そしてそれから千年、リスティリアとして在り続けているのだ」
「なんでそんなことに……? 謎ばっかりだけど、一番謎なのは間の”ストーリア”だよな。それじゃダメだったのか?」
「さーてなぁ。その時何があったのかなんてことまでは、わしも知らんが。この世界が”ストーリア”の名を関しておったのは、わずかもわずか、数年にも満たない期間という話だが」
「……なぜ、その話を我らに……?」
リシアが混乱しながら聞くと、ランセムは真剣なまなざしでその問いに答えた。
「必要だと思ったからだ。なんの確証もないことだ、聞き流してくれて構わんが……おそらくお前さんたちの旅路は、女神を救う旅路であり、同時に……千年前を辿る旅路のように思えてならんのだ」
「……千年前、一体、何があったんだ? 多分知ってるんだよな?」
「昨日お前さんには話した通りだ」
総司の質問に、ランセムはゆっくりと首を振った。
「あとは、自分の目で確かめろ」
「……わかった」
夕食の席でも、ランセムが告げた世界の名の変遷を話題に出すことはしなかった。
エルマが運ぶ数々のルディラント伝統料理に舌鼓を打ち、昨日に引き続きランセムが良い具合に出来上がったところで、切り出したのは明日の話題だ。
「さて、十分に働いてくれたことだしな。明日はいよいよ、聖域に案内しよう」
「海岸までは私がともに参りましょう。その先へは残念ながら入れませんが」
「助かります」
砂嵐のような正体不明の防御に覆われた、ルディラントの離れ小島。王の特権を以てして見通すことのできない秘境に、オリジンが眠るかはまだわからない。
「その島にはほら、なんかないんスか? それこそ千年前からの伝説とか」
「ワクワクするような言い伝えの類はないんだがなぁ。一説では、昔は陸続きだったらしいがそれぐらいか」
「名前とかは?」
「単に聖域と呼んでおったが、別に公文書でも何でもない、とある庶民の記録を辿るとだ」
ランセムは機嫌良さそうな顔のまま、少しだけ遠い目をした。
「”真実の聖域”。そう呼ばれていた時代があったそうだ」
「真実の……」
「明日は早朝に発ちましょう。出発が遅くなると、到着はさらに遅れそうですから」
「……そりゃ当たり前では?」
サリアの言葉に、総司が不思議そうに返すと、サリアはクスクスと控えめに笑った。
「今日一日で、あなたたちはとても人気者になりましたからね。往来の多い時間帯に通りを抜けようとしても、きっと一筋縄ではいかないでしょうから」
昨日、エルマと共に大通りを歩いてきたリシアが、大変な荷物を抱えていたことを思い出す。ルディラントの人々の国民性がなせる業だ。
「今日は早く休んで、明日に備えなければなりませんよ」
サリアに促されて、総司とリシアが立ち上がると、ランセムが声を掛けた。
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