リスティリア救世譚

ともざわ きよあき

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第二章 誇り高きルディラント

第九話 二度目の探索はサリアと共に③

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「むしろお手柄だなサリア! まさかの展開だ!」
「いえ、すみません、別に狙ったわけではないのですが……」
 部屋の端かららせん状の階段を登る。その途中に襲い掛かってくる相手もおらず、意外と平和な時間が過ぎた。
「スヴェンはまだいねえな。どの辺にいるんだろう。やっぱり神殿の奥の方かね」
「無事だと良いんだがな……」
「殺しても死なぬ男です、その点は心配していませんよ」
 サリアが笑う。確かに、なんだかんだでドタバタコメディみたいな感じで生き延びていそうではある雰囲気だったが。
「サリアは年上の男が好みなんだな」
「だから! あれは王の世迷言です!」
「今更だな」
 リシアが笑うと、サリアは顔を赤くしたままで振り向いた。
「お二方こそ、若い男女二人きりの旅なのですから、何事かあるでしょうに。からかわれて困るのはそちらも同じでしょう!」
「いや別に。なあ?」
「ああ。特には」
「おかしいです! そんなきょとんとした顔をしていますけれどね、あなた達がおかしいですからね!」
 二人と打ち解けてきたのか、サリアは年相応の表情を見せてくれることも多くなった。年齢は総司とそう変わらない、多感な時期の少女である。
 スヴェンは肝心なところでふざけたり、どこか飄々とした雰囲気があるものの、年下の乙女の気を引くには十分なミステリアスさと頼りがいを感じさせる男だ。サリアが惚れるのも理解できる。ただでさえしっかりした女性であるサリアだからこそ、ああいう男に惹かれるのかもしれない。
「あーもう、周りを全く警戒していませんでした……ここは危険地帯なのですから、気を引き締めないと」
「でも結果オーライだったとはいえ、サリアだから。油断してたのは」
「うぐっ……」
「それに」
 随分と高いところまで登ってきて、未だ終わりの見えない階段を見上げ、今まで登ってきた階段を見下ろして、リシアが呟く。
「ここで何事か起きるとするなら、それは最悪の事態だろうな」
「またしても足場が崩れるか? 勘弁してほしいね」
「一周下まで落ちるだけなら大したことではないさ。一番怖いのは――――」
 リシアが軽口を叩こうとした瞬間、今やはるか下にわずかに見える、あの神獣の広間の床が、目も眩むほどの輝きを放った。
 赤い光、迸る漆黒の稲妻。総司たちがいる場所にまで届く絶大なる魔力の奔流。その力は、一度行き会えば間違うはずもない。
「まさか本当に、こんなところで―――――!」
「今度こそ来たか――――!」
 総司がリバース・オーダーを構えた。今から来るのは、総司がリスティリアに来てから出会った中でも最強の生命体――――!
「二日ぶりだな、ウェルステリオス!」
 真実の支配者 “ウェルステリオス”。女神の力を以てして倒すには至らなかった、神の化身である。
「状況が悪すぎる! こんなところで戦えるものか!」
「やるしかねえだろ」
 既にウェルステリオスの顔は、三人の目の前に迫っていた。あまりにも狭く、圧倒的に不利な空間。だが、触れられそうなほど近いこの距離であれば、総司の攻撃も確実に当てられる。
 先手必勝、先に撃たせれば負けの戦い。総司は蒼銀の魔力を纏い、すぐさま自身の持つ最強の一撃を――――
「……お前……?」
 ウェルステリオスの気配が、先日の初めての邂逅とはあまりにもかけ離れていて、総司は戦意を削がれた。
 その一瞬のスキを見逃さず―――――身を翻したサリアだけでなく、その場から動けなかったリシアも残し、ウェルステリオスの口がバクン、と総司を階段ごと食べた。
「……えっ?」
 目の前で起こったことが信じられず、サリアは間の抜けた声を上げる。ウェルステリオスはサリアとリシアに一瞥もくれることなく、ずるずると下へ下がっていってしまった。
「ッ……ソウシーーーー!」
 リシアがサリアよりも早く、中央の空間へと飛び出した。サリアもハッと我に返ってリシアの後を追う。
「そん、な……ソウシ! ああ、そんな……!!」
 二人が落下した先には、硬い床があるだけ。華麗に着地を決め、床を殴ってみても、魔力を流してみても、何事も起こらない。
「ソウシ!! あぁ、女神様、どうか……!!」
「くっ……!」
 リシアが周囲を見回し、地下へ続く通路を探す。
「どうにかしてウェルステリオスの元へ……! サリア、道を探そう!」
「で、でもソウシは食べられてしまって――――」
「かみ砕かれたわけでもあるまいし、タダで死ぬほど潔い男ではない!」
 リシアが力強く言った。リシアの表情もまた焦燥に駆られているものの、その目は本当にあきらめてはいない。サリアはすぐに頷いて、リシアと共に駆けだした。
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