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第三章 清廉なるティタニエラ
プロローグ 王女の手紙①
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カイオディウムは、反逆者ロアダークが千年前に大事件を引き起こすまでは、レブレーベントと非常によく似た国だった。王族を中心とする統制のとれた理想的な国家の一つであり、魔法と程よく発展した機械文明を生活に取り入れて、平和な日々を過ごしていた。
しかしロアダークの反逆があって以来、カイオディウムはその体制を一変させる。
世界中に牙を剥いた国として、カイオディウムはその誹りを一身に受け、王族は徐々に求心力を失っていく。カイオディウムは贖罪と祈りの国へと変貌し、唯一神である女神レヴァンチェスカを盲信する“女神教”がカイオディウムの民の間に広まり、時を追うごとにその信仰は高まった。
結果として、千年前以前は単なる宗教団体であり、人々の心のよりどころとしての機能しか持たなかった“ウェルゼミット教団”は、カイオディウムの民の、世界に対する懺悔の念を背景に、時を追うごとにその勢力を拡大していった。
そして千年が経った現在、カイオディウムはウェルゼミット教団が実権を握って頂点に君臨し、国同士の交流が盛んでないこのリスティリアにおいても、女神教を真に信仰するため、カイオディウムへ移り住む者が現れるほどの宗教国家へと成長した。
「これがカイオディウムの歴史です。ベル、貴女もよく知っていますね」
「もちろんです枢機卿猊下、心得ておりますとも!」
「……ベル?」
カイオディウムの実質的な最高権力者、フロル・ウェルゼミットは、すうっと目を細めて、目の前にいる少女を睨んだ。
フロル・ウェルゼミットは、美しい銀色の髪をシニヨンの形に編み上げて整えた、鋭くも端正な顔立ちのうら若き女性である。枢機卿という階級の呼び名、位置づけは、総司が元いた世界でいうところのそれと大きくは変わらないが、彼女はカーディナル・レッドなる緋色の服装ではなく、彼女によく似合う純白の聖職者服を纏っていた。共通点の多いリスティリアと総司の元いた世界だが、同じように見える発展の中でも、細かいところでやはり違いがある。ところどころに入る黒のラインが、そのデザインをより際立たせる。センスの良い木造りの椅子に腰かけ、本を片手に少女へと語り掛ける様は女性教員のようだ。
対する少女の方は、まるで「学生服」のような恰好をしていた。およそ宗教国家に属する女性の服装とは思えない、少しばかり露出の多い、一言で言えば「女子高校生」じみた服装だ。金髪のストレートロング、軽妙な口調、そして服装も相まって、彼女を的確に表現する言葉があるとすれば、それは「ギャル」という単語である。
「はいはい?」
「……まあ、良いでしょう。しかるに、何が言いたいかと言えば、あなたの服装や日々の態度、言葉遣い、その他諸々。およそ由緒正しきカイオディウムの歴史にそぐわぬ、軽率に過ぎるものであるということです」
「またまたぁ、今更そんなこと言いますぅ? これで何年あなたの近衛をやってると思ってんですか。仕事はバッチリ、ご満足いただけてますでしょ?」
「ベル」
「はいっ」
フロルの声色が変わり、少しトーンが低くなった。ベルと呼ばれた少女はピシッとわざとらしく姿勢を正した。
「貴女の主張はもっともです」
「おろっ……?」
「今更貴女に口酸っぱく言って直させたところで、どうせ数日後には元通り。それに仕事ぶりは確かですし、私も細かいことをとやかく言いたくはありませんが。しかしせめてスカートをもう少し長くしなさい。膝が見えるのは感心しません」
「でも下にちゃんと履いてます」
「そういう問題ではありません。司教たちからも何度苦情が届いていることか。信徒はもちろん、兵にも悪影響が出ます。良いですね?」
「……へーい」
「……はぁ」
どうせ聞き入れやしないのだ、とでも言わんばかりに、フロルはため息をついた。
「で、枢機卿殿。わざわざお部屋に呼びつけてまで、あたしにお説教したかったんですか? あたし今日一応、休日なんですけど」
「貴女の力を借りたいのです。客人に丁重にお帰り願うために」
「何それ。他国の使者? 別に王サマのところに行くぐらい良いじゃん。この前もどっかの国の騎士団長さんが来てたでしょ」
「レブレーベントのバルド・オーレン団長ですね。隣国の地位ある方の名前ぐらい覚えなさい」
「そうそう。結構カッコいいヒト。でもその時は何も言わなかったじゃないですか? なんでまた今回は」
「彼らが目指しているのが、このウェルゼミット教団だからです。私も知りませんでした。どうやって『下』から上がってきたのかわかりませんが……王への謁見で手を打つよう再三にわたって警告しましたが、どうしても譲らないもので」
「うわぁ、それで追い返すって暴君にも程がありません?」
「仕方ないでしょう。彼らの主張は我らの教義と真っ向から相反するもの。聞くに値しないのですから」
「……主張って?」
「彼らは『女神が今囚われの身となり、危機に瀕している。それを救うためにカイオディウムの助力が必要だ』と、そう主張しているのです」
ベルティナの表情がさっと変わった。
「へえ……面白いじゃん。聞いてあげればいいのに」
「ベル?」
フロルの眉が吊り上がって、また声のトーンが下がった。危険な兆候である。こういう時に選択を間違えると、数時間に及ぶお説教が開始される。それをよく理解しているベルはさっさと白旗を挙げた。
「女神様は常在であり健在、この世界を明るく照らす希望の光。リスティリアの民は全て、女神様の忠実なる下僕であります。それが囚われ脅かされているなどと……下賤な輩の想像力にはいつの世も困ったものですね」
「そうッスね~」
ベルは気のない声で同調する。
「そういう輩に教えを説くのが猊下のお役目じゃないんですか?」
「それに値しないと言いました」
「あっそう。なら良いんですけど。それじゃ、お仕事といきますか」
カイオディウムの首都ディフェーレスは、敬虔なる女神教信徒の間では「聖都」と呼ばれる。その全容は一言で言えば、「空に浮かぶ都市」だ。
大地が浮いているのではなく、全て造られた構造物で構成される巨大な塊と、その周囲に浮かぶ複数の衛星のような塊が、空を覆うほど巨大な都市そのものとなって、天空に浮かび上がっている。天に浮かぶ塊の細部に至るまでが、居住区を含め都市を十全に回すあらゆる機能のために使われている。それぞれは魔法によって作られた光の道で接続されており、人々はその道をほとんど自由に往来できる。その光は枢機卿以上の権限によりいつでも切り離すことが出来、反乱や異常事態といった有事の際に使用できるとして大きな抑止力の役割を担う。ウェルゼミット教団の本拠となる超巨大な大聖堂“デミエル・ダリア”を中心としており、光の道によって接続された複数の都市群から別の都市群へ移動する場合には、必ずデミエル・ダリアの前を通ることになる。
カイオディウム王家と王族に連なる一族は、その衛星のような都市群の一つに住まい、中央をウェルゼミット教団に渡している。その位置関係からみても、王家と教団のパワーバランスが見えるというものだ。
更に地上には、一般の信徒が住まう村が点々と広がっており、地上からデミエル・ダリアへ礼拝するための巡礼の道が通じている。ただし、大地に住む民は軽々にデミエル・ダリアに上がることは許されず、決まった礼拝の日や特別な事情がなければ、門番の許可が下りない。
大聖堂デミエル・ダリアは、レブレーベントの王家が住まうシルヴェンス城よりも巨大で、位の高い聖職者の居住地としての役割も兼ねている。その尖塔から見える景色は壮大で、カイオディウムの国土のほとんどを一望できる。
ベルが所属する聖騎士団も、デミエル・ダリア内部に詰めており、非常時に備えると共に暴動の鎮圧や魔獣の討伐を主任務とし、体制に対する反逆への対応など幅広く活躍する。天に住まう者たちと地上に住まう者たちの間には厳然たる地位の差があり、しばしばそれを不服として大きな抗議活動や暴動が起きることがあるが、聖騎士団の存在がその成功を許さない。リスティリアの国々は、それぞれに文明や魔法の発展に大きな違いがあるが、カイオディウムは国内ですら、天と地において生活そのものの差が著しい国だ。
「スティンゴルド」
「おっ! やあやあクレア、元気?」
神妙な面持ちでベル・スティンゴルドに声を掛けたのは、長身長髪の女性である。紫がかった長い髪を靡かせ、ベルとは対照的に白銀の鎧をがっちりと身に纏った、騎士然とした目つきの鋭い女性。
クレア・ウェルゼミット。フロル枢機卿の遠縁であり、教団を牛耳る一族に属するが、単なる聖職者ではなく騎士団の一員として働くことを選んだ変わり者。ベルが好んでちょっかいを掛ける相手でもある。
「フロルに説教をされていたのか」
「お説教ってほどでもないよぉ、ちょっと小言をね。しかもそれも本題じゃないし。お客様にお引き取り願うんだってさ」
「レブレーベントの団長殿か」
「え? そのヒトは王サマに会ってもう帰ったんでしょ? 結構前に。バルドさんだっけ」
「いや、今日来られているのもレブレーベントの騎士団長の一人だ。第三騎士団のアリンティアス団長。今はその任を解かれ、旅をしているとのことだが」
「へえ~、いっぱいいるんだね団長さんが。左遷されたのかな」
「流刑にしては自由な様子だったが、それにしても……」
クレアは呆れた様子で首を振る。
「妙な男と共に来られていたし、口から出てくるのは世迷言だ。あの男にたぶらかされて、どうでもいい任務を与えられて国外へ放り出されたのかもな」
「男! えー良いじゃん! 何それ、聞きたい!」
恋に恋するお年頃のベルがわくわくと目を輝かせる。クレアは厳しい顔で言った。
「一国の騎士団の一つを任された身で情けないことだ。感化されるな」
「お堅いなぁ。だからこそ良いんじゃん?」
ベルティナは途端に、来客に興味を持ったようだ。クレアはまた始まった、とばかり肩を竦める。
「任務を忘れるなよ」
「はいはい。ちょっとぐらい話す時間もあるんでしょ?」
「ないわけではないが、お前の本業ではない。間違えぬよう」
「へーい」
クレアと分かれ、しばらくベルは大聖堂デミエル・ダリアの回廊を歩く。
そして誰もいなくなった状態で――――ぽつりと呟いた。
「さーて、うまくいくかなぁ。座標、間違ってないと良いけど」
しかしロアダークの反逆があって以来、カイオディウムはその体制を一変させる。
世界中に牙を剥いた国として、カイオディウムはその誹りを一身に受け、王族は徐々に求心力を失っていく。カイオディウムは贖罪と祈りの国へと変貌し、唯一神である女神レヴァンチェスカを盲信する“女神教”がカイオディウムの民の間に広まり、時を追うごとにその信仰は高まった。
結果として、千年前以前は単なる宗教団体であり、人々の心のよりどころとしての機能しか持たなかった“ウェルゼミット教団”は、カイオディウムの民の、世界に対する懺悔の念を背景に、時を追うごとにその勢力を拡大していった。
そして千年が経った現在、カイオディウムはウェルゼミット教団が実権を握って頂点に君臨し、国同士の交流が盛んでないこのリスティリアにおいても、女神教を真に信仰するため、カイオディウムへ移り住む者が現れるほどの宗教国家へと成長した。
「これがカイオディウムの歴史です。ベル、貴女もよく知っていますね」
「もちろんです枢機卿猊下、心得ておりますとも!」
「……ベル?」
カイオディウムの実質的な最高権力者、フロル・ウェルゼミットは、すうっと目を細めて、目の前にいる少女を睨んだ。
フロル・ウェルゼミットは、美しい銀色の髪をシニヨンの形に編み上げて整えた、鋭くも端正な顔立ちのうら若き女性である。枢機卿という階級の呼び名、位置づけは、総司が元いた世界でいうところのそれと大きくは変わらないが、彼女はカーディナル・レッドなる緋色の服装ではなく、彼女によく似合う純白の聖職者服を纏っていた。共通点の多いリスティリアと総司の元いた世界だが、同じように見える発展の中でも、細かいところでやはり違いがある。ところどころに入る黒のラインが、そのデザインをより際立たせる。センスの良い木造りの椅子に腰かけ、本を片手に少女へと語り掛ける様は女性教員のようだ。
対する少女の方は、まるで「学生服」のような恰好をしていた。およそ宗教国家に属する女性の服装とは思えない、少しばかり露出の多い、一言で言えば「女子高校生」じみた服装だ。金髪のストレートロング、軽妙な口調、そして服装も相まって、彼女を的確に表現する言葉があるとすれば、それは「ギャル」という単語である。
「はいはい?」
「……まあ、良いでしょう。しかるに、何が言いたいかと言えば、あなたの服装や日々の態度、言葉遣い、その他諸々。およそ由緒正しきカイオディウムの歴史にそぐわぬ、軽率に過ぎるものであるということです」
「またまたぁ、今更そんなこと言いますぅ? これで何年あなたの近衛をやってると思ってんですか。仕事はバッチリ、ご満足いただけてますでしょ?」
「ベル」
「はいっ」
フロルの声色が変わり、少しトーンが低くなった。ベルと呼ばれた少女はピシッとわざとらしく姿勢を正した。
「貴女の主張はもっともです」
「おろっ……?」
「今更貴女に口酸っぱく言って直させたところで、どうせ数日後には元通り。それに仕事ぶりは確かですし、私も細かいことをとやかく言いたくはありませんが。しかしせめてスカートをもう少し長くしなさい。膝が見えるのは感心しません」
「でも下にちゃんと履いてます」
「そういう問題ではありません。司教たちからも何度苦情が届いていることか。信徒はもちろん、兵にも悪影響が出ます。良いですね?」
「……へーい」
「……はぁ」
どうせ聞き入れやしないのだ、とでも言わんばかりに、フロルはため息をついた。
「で、枢機卿殿。わざわざお部屋に呼びつけてまで、あたしにお説教したかったんですか? あたし今日一応、休日なんですけど」
「貴女の力を借りたいのです。客人に丁重にお帰り願うために」
「何それ。他国の使者? 別に王サマのところに行くぐらい良いじゃん。この前もどっかの国の騎士団長さんが来てたでしょ」
「レブレーベントのバルド・オーレン団長ですね。隣国の地位ある方の名前ぐらい覚えなさい」
「そうそう。結構カッコいいヒト。でもその時は何も言わなかったじゃないですか? なんでまた今回は」
「彼らが目指しているのが、このウェルゼミット教団だからです。私も知りませんでした。どうやって『下』から上がってきたのかわかりませんが……王への謁見で手を打つよう再三にわたって警告しましたが、どうしても譲らないもので」
「うわぁ、それで追い返すって暴君にも程がありません?」
「仕方ないでしょう。彼らの主張は我らの教義と真っ向から相反するもの。聞くに値しないのですから」
「……主張って?」
「彼らは『女神が今囚われの身となり、危機に瀕している。それを救うためにカイオディウムの助力が必要だ』と、そう主張しているのです」
ベルティナの表情がさっと変わった。
「へえ……面白いじゃん。聞いてあげればいいのに」
「ベル?」
フロルの眉が吊り上がって、また声のトーンが下がった。危険な兆候である。こういう時に選択を間違えると、数時間に及ぶお説教が開始される。それをよく理解しているベルはさっさと白旗を挙げた。
「女神様は常在であり健在、この世界を明るく照らす希望の光。リスティリアの民は全て、女神様の忠実なる下僕であります。それが囚われ脅かされているなどと……下賤な輩の想像力にはいつの世も困ったものですね」
「そうッスね~」
ベルは気のない声で同調する。
「そういう輩に教えを説くのが猊下のお役目じゃないんですか?」
「それに値しないと言いました」
「あっそう。なら良いんですけど。それじゃ、お仕事といきますか」
カイオディウムの首都ディフェーレスは、敬虔なる女神教信徒の間では「聖都」と呼ばれる。その全容は一言で言えば、「空に浮かぶ都市」だ。
大地が浮いているのではなく、全て造られた構造物で構成される巨大な塊と、その周囲に浮かぶ複数の衛星のような塊が、空を覆うほど巨大な都市そのものとなって、天空に浮かび上がっている。天に浮かぶ塊の細部に至るまでが、居住区を含め都市を十全に回すあらゆる機能のために使われている。それぞれは魔法によって作られた光の道で接続されており、人々はその道をほとんど自由に往来できる。その光は枢機卿以上の権限によりいつでも切り離すことが出来、反乱や異常事態といった有事の際に使用できるとして大きな抑止力の役割を担う。ウェルゼミット教団の本拠となる超巨大な大聖堂“デミエル・ダリア”を中心としており、光の道によって接続された複数の都市群から別の都市群へ移動する場合には、必ずデミエル・ダリアの前を通ることになる。
カイオディウム王家と王族に連なる一族は、その衛星のような都市群の一つに住まい、中央をウェルゼミット教団に渡している。その位置関係からみても、王家と教団のパワーバランスが見えるというものだ。
更に地上には、一般の信徒が住まう村が点々と広がっており、地上からデミエル・ダリアへ礼拝するための巡礼の道が通じている。ただし、大地に住む民は軽々にデミエル・ダリアに上がることは許されず、決まった礼拝の日や特別な事情がなければ、門番の許可が下りない。
大聖堂デミエル・ダリアは、レブレーベントの王家が住まうシルヴェンス城よりも巨大で、位の高い聖職者の居住地としての役割も兼ねている。その尖塔から見える景色は壮大で、カイオディウムの国土のほとんどを一望できる。
ベルが所属する聖騎士団も、デミエル・ダリア内部に詰めており、非常時に備えると共に暴動の鎮圧や魔獣の討伐を主任務とし、体制に対する反逆への対応など幅広く活躍する。天に住まう者たちと地上に住まう者たちの間には厳然たる地位の差があり、しばしばそれを不服として大きな抗議活動や暴動が起きることがあるが、聖騎士団の存在がその成功を許さない。リスティリアの国々は、それぞれに文明や魔法の発展に大きな違いがあるが、カイオディウムは国内ですら、天と地において生活そのものの差が著しい国だ。
「スティンゴルド」
「おっ! やあやあクレア、元気?」
神妙な面持ちでベル・スティンゴルドに声を掛けたのは、長身長髪の女性である。紫がかった長い髪を靡かせ、ベルとは対照的に白銀の鎧をがっちりと身に纏った、騎士然とした目つきの鋭い女性。
クレア・ウェルゼミット。フロル枢機卿の遠縁であり、教団を牛耳る一族に属するが、単なる聖職者ではなく騎士団の一員として働くことを選んだ変わり者。ベルが好んでちょっかいを掛ける相手でもある。
「フロルに説教をされていたのか」
「お説教ってほどでもないよぉ、ちょっと小言をね。しかもそれも本題じゃないし。お客様にお引き取り願うんだってさ」
「レブレーベントの団長殿か」
「え? そのヒトは王サマに会ってもう帰ったんでしょ? 結構前に。バルドさんだっけ」
「いや、今日来られているのもレブレーベントの騎士団長の一人だ。第三騎士団のアリンティアス団長。今はその任を解かれ、旅をしているとのことだが」
「へえ~、いっぱいいるんだね団長さんが。左遷されたのかな」
「流刑にしては自由な様子だったが、それにしても……」
クレアは呆れた様子で首を振る。
「妙な男と共に来られていたし、口から出てくるのは世迷言だ。あの男にたぶらかされて、どうでもいい任務を与えられて国外へ放り出されたのかもな」
「男! えー良いじゃん! 何それ、聞きたい!」
恋に恋するお年頃のベルがわくわくと目を輝かせる。クレアは厳しい顔で言った。
「一国の騎士団の一つを任された身で情けないことだ。感化されるな」
「お堅いなぁ。だからこそ良いんじゃん?」
ベルティナは途端に、来客に興味を持ったようだ。クレアはまた始まった、とばかり肩を竦める。
「任務を忘れるなよ」
「はいはい。ちょっとぐらい話す時間もあるんでしょ?」
「ないわけではないが、お前の本業ではない。間違えぬよう」
「へーい」
クレアと分かれ、しばらくベルは大聖堂デミエル・ダリアの回廊を歩く。
そして誰もいなくなった状態で――――ぽつりと呟いた。
「さーて、うまくいくかなぁ。座標、間違ってないと良いけど」
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