ジト目姫とのアイダガラ

arutara

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1章

3話 親友

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 (⋯なんか鳴って⋯電話⋯?)

 はじめは、ベッドの上で身をよじらせ、重いまぶたを上げながらスマホを探り当て電話に出る。

「おはよ」

 電話は一葉からであった。

「さっさと用意して学校来なさいよ」
「う~い」

 半分寝ているような声で返事をすると、この後二度寝するとにらんだ一葉は心底冷たい声で

「二度寝でもして遅れた日には...分かってるわよね」

 目が、覚めた。
 風邪ひきそうなくらいの冷たい声のおかげで、暖かな眠たい朝から身震いするような静けさの自室になってしまった。

「起きました。今完全に、これでもかと目が開いてます」
「そ、じゃあ学校でね」
 プツッ

「くぁ~っ」

 電話が切れると、あくびをしながらベッドを出て制服に着替える。
 時間は7時15分、SHR(ショートホームルーム)開始が8時35分、十分に身支度をする時間があり、なんなら余裕でSHRの20分前には教室につける。
 時間ギリまでダラダラしなければ。

 (頭上がらんわ⋯)

 一葉には感謝しかない。
 目覚ましを何度かけても、朝起きた時には目覚ましを止めた記憶どころか鳴った記憶すらないのだ。
 マジで。
 一葉に起こしてもらわなければ、遅刻をどれだけ量産していたことだろうか。
 朝ごはんを食べながらそんなことを考えていると、弟のつぐが起きてきた。

「兄ちゃん、またいちねぇに起こしてもらってんの?自分で起きなよ」
「おはようの前にそれ言っちゃう?」

 やなガキに育ったと心から思う。

「継、お兄ちゃんを正論で殴っちゃ可哀想よ」

 継の正論パンチも痛いけど、母さんのボディブローも強烈ですよ。
 うちの家族は、愛犬まで含めて一葉が大好きなので世話をやかれている話になると、小言を言われるが正論なだけに何も言えない。
 こういう時は、さっさと食べて家を出る。
 いつもより早いが、遅いよりはいいだろう。
 家から学校までの通学路が好きだ。
 学校までの道がほぼ全て下り坂で、自転車で猛スピードで下る風が気持ちいいのだ。
 ちらほらうちの制服を着た生徒がいる。
 いつもなら信号待ちの自転車で道が通れないくらいにうちの学校はチャリ通の生徒が多いが、早く出たおかげでそんな様子は無い。
 学校につき駐輪場に自転車を停めていると、聞きなれた声が聞こえてきた。

「よーっす、珍しく早いなーいぬー」
「伏つけろ伏」

 俺の名前を唯一「犬」と(たまに)呼ぶ中学からの相方とも言える友達、饗原あいはらあずまだった。
 東は中学から一緒、つまり俺と一葉が幼なじみということをこの学校でただ1人知っている人物だ。
 高校では2年と、今年の3年で同じクラスになった。
 東とは、中学に同じ部活に入ったことをきっかけに仲良くなり、2人で映画や服を見に行ったり、朝からカラオケに入って夜に出たこともあった。
 割と馬鹿なことをした記憶もある。
 顔は間違いなくイケメンの部類に入る。
 故に

「東くん、おはよ~」
「おはよ~」

 モテるのである。
 朝から女子に「東くん、おはよ~」「おはよ~」なんて女子二人から言われるくらいだからな。
 いやまぁそれくらいなら普通だと思うかもしれないが、その女子、俺と東の同じクラスなのである。
 何が言いたいかと言うと、俺には目もくれず東だけにしか目がいっていなかったのである。
 周りから見たら東と俺2人にあいさつしたように見えるが、違うな。

 (俺の観察眼を舐めるなよ)

 嫉妬?してませんよ、もちろん。別に空気のように扱われたなとか思ってないけど

「はじめー行くぞー」
「ん?おう」

 2人になったところで愚痴でも漏らすように

「東ほんとモテるよな、マジで羨ましいよクソが畜生」
「おぉ、最後ら辺本音出てるぞ?」
「大丈夫、わざとだから」
「余計にダメだわ⋯てゆーかさ⋯」
「?」
「お前さっき⋯女子に空気みたいに扱われてたな(笑)」

 なるほど戦争がお望みか

「オーケー戦争クリークだ」
「俺には、力をくれる嫁がいる!!」
「ME TOO」
「俺、2次元だけじゃなくて、現実リアルにも彼女いるけど、大丈夫そ?」
「おい、俺の勝ち目もう無くなったじゃねぇか、てか現実リアル出すなよ」
現実リアル彼女も嫁だからな」
「クソが、一生勝てる気がしない」

 この俺たちのアホな日常会話からわかるように、俺はもとより東も俺に引けを取らないオタクなのである。
 もともと、東はアニメや漫画が好きでオタクの才能があったので、中学時代にこちら側に引きずり込んだだけなので、このイケメン陽キャがオタクなのは俺のせいでは無い。
 元々片足沼に入ってたので、両足と言わず全身沈めただけなので悪くない⋯はずだ。

「一生ってお前、それは絶対に⋯」

 と東が何か言いかけた時

「朝からどんな会話してるのよ⋯」

 聞き覚えのある声と、後ろからでもわかるこのジト目であろう視線

「あっ、稲海おはよう」
「おはよう饗原くん」
「はよー、一葉」

 やっぱり一葉だった
 いつ後ろにいたのだと聞きたくなるくらい気配がなかった気がする

「はじめ今日、日直でしょ。忘れる前に日誌取ってきた方がいいんじゃない?」
「あーそっか今日俺かぁ、職員室入るの苦手なんだよなぁ⋯」

 などと弱音を吐いていると

「頑張れ高3」
「見た目は高3、中身は少年、てか東も人の事いえないだろ」
「まあな」

 謎に誇らしげな東を後にし職員室へ向かう
 そして、
 他のクラスメイトもまだ来ていない教室に2人、一葉と東の会話が静かに響く

「饗原くん⋯」
「ごめん、会話の流れで口滑った、今度から気をつけるよ」
「こっちこそごめんなさい、私のわがままにつきあわせて⋯」
「いーんだよぉ、はじめには幸せになって欲しいしな!」

東は、一葉のある秘密に気づきそれを、という約束を一葉としていた。
その秘密とは、

一葉が、ということをバレないようにするものである

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