転生者同士のゲームが始まったが俺は早々にこの世界に住むことを決めました。

イナロ

文字の大きさ
83 / 109
第三章

すまない。

しおりを挟む
 一気に力を込める。

 「ガぁ~~~クぅ~~~!!」
 「……ルアン?」

  力を込める手前でルアンの大きな声が聞こえた。
  後ろを振り向くと、目の前にルアンがいた。

  サラがいつの間にか近づいていたようだ。
  ルアンの距離は目と鼻の先だ。

  俺は只々ルアンを見るしか出来なかった。
  なぜならばルアンがポロポロと涙を流していたからだ。

 「うわぁ~~~。ガクがこわいぃ~~~」
 「……ルアン」
 「ダメなの!! ガクはわらってないとダメなの!! いっしょにあそんでくれないとダメなの!! グスン。ダメ……なの。……わらってないと……だめなの。うわぁ~~~」

  魔力を止めた。

  痛い。

  身体が痛んじゃない。

  心が。

  心がえぐれる程に痛い。

  俺は一体何をしているんだ。
  自分の怒りに身を任せ、あまつさえ大切な子を泣かせてしまった。

  俺がやった事はルアンを言い訳にしてダルダに八つ当たりしたに過ぎないじゃないか。

 「うぅ~~~。ガク~~。うわぁ~~~~」
 「……ごめんな。ルアン。俺がバカだったよ……」
 「ガグぅ~~~~」
 「よしよし。今日は一緒に寝ような」
 「うぅ~~。きょうはサラクとねるの……」
 「……うん。……そうか」

  解せぬ。

  あ、身体が徐々に痛み出した。
  メッチャいて~。

 「サラもごめんね」
 「いえ、ガクさんが行かなければ私が行ってました」

  周りがざわざわしている。

  やり過ぎたな。

 「通してください!」
 「邪魔だ!!」

  出入口から人をかき分けて二人ほど入って来た。
  その入って来た人達は全身鎧を身に纏い、マントをして剣を腰に携えている。

  見るからに騎士だ。

  二人いる騎士の一人がダルダに近づいた。

 「ダルダさん。私はあれ程こういった強引なやり方はいつか、こういう目に遭うと言いましたよね? 何でするんですか? バカなんですか? 金さえあれば全てが許されると勘違いしてるんですか?」
 「だ、だずけ……」

  鎧で顔が見えないが、おそらく女性がダルダを叱っている。

  騎士のもう一人が後ろで頭を抱えている。

  ……俺、身体が痛いから帰って良いかな?
  ガチで内臓がヤバイ気がする。

 「……うぅゲハァ……」
 「ガクさん!? 今、回復を!!」

  スゲ~。
  口から血が出るので演出で実際には出ないと思ってから以外に感動が大きいな。

  だが、スゴイ量だな。
  リットルレベルで出血している気がする。

  目眩が……。

 「がく~。だいじょうぶ~」

  サラが俺を回復してるからルアンが俺の膝の上に乗って俺の体調を気遣ってくれる。
  なんて天使……。

 「問題ないぞ~」
 「そうなの~?」
 「あぁ! 元気だ」
 「じゃ~。あそぼ~」

  今の今で遊びですかい!?
  うちの姫は随分と気分屋だな。

 「だめですよ。ルアン。今のガクさんは絶対安静です」
 「だめなの~?」
 「だ、ダメです」

  揺らいでらっしゃいますな~。

 「あ~すまない。一応、事情を聞きたいんだが……」

  もう一人の騎士はどうやら男性のようだ。
  しかし、声が若いな~。

 「あ、良いですよ」
 「おぉ~。すまない」

  騎士が俺の目の前に座る。
  随分と軽い騎士だな。
  フレンドリーって言った方が良いのか?

 「俺の名前はエンドル。騎士見習いだ」
 「俺はガク。あいつをあんなにした張本人だ。処罰なら俺だけにしてくれ」
 「ガクさん!?」
 「あっはっはっは。随分と熱い男だな、君は」

  エンドルは笑い出して、ヘルムを取った。

 「騎士がヘルムを取るって行為は敵意は無いって事を意味するんだ。つまり、俺に敵意はない」
 「そうなのか?」

  サラに目線を向けると頷いたので、嘘を付いていないようだ。

 「まぁな。途中から外で見ていたが、殺してなきゃ問題ないさ」

  殺す前に止めろよ。

  ……まぁ、あの時はルアンかサラの声にしか反応しなかったと思うけど。

 「君は自分の正義を貫いた。誇って良い。大切な者を罵られて怒れるのは素晴らしい事だ」
 「はぁどうも」

  熱い男だ。

  エンドルと名乗る騎士は年齢にして二十三ぐらいの好青年って感じだがどこかチャライ感じが見え隠れするな。
  髪は結構短髪だが逆立ってる。

  金髪イケメンかよ。爆発しやがれ。

  それか顎が割れれば良いのに。

 「その子が今回の騒動の中心か」
 「……だ~れ?」
 「ん? 俺の名はエンダルだ。よろしくな嬢ちゃん」
 「じょうちゃんちが~う。ルアンはルアン。よろしく~」

  おや?
  エンダルが停止している。

 「おい。ガクよ」

  いきなり呼び捨てか。

 「なんだよ。エンドル」
 「この子は……可愛いな」

  ……フッ。

 「分かるか。見る目のあるヤツだ」
 「一瞬、天使かと思ってしまった。将来が末恐ろしいぜ」

  将来?
  はっはっは。
  何を言ってるのならな。
  ルアンは嫁に出さないぞ?

 「どうしたの~?」
 「エンダルがルアンの事、可愛いって。良かったな」
 「えへへ~。……ありがとう」
 「「グハァ!?」」

  か、可愛すぎる……。

 「何やんの? エンダル」
 「何やってるんですか? ガクさん」

  恐ろしい。
  よし。ファンクラブ作ろう。

 「ん? シャルル。ダルダの説教は?」
 「終わった。ケガは骨数本って感じで軽傷だから放置してきた」

  もう一人の鎧騎士の女の人はシャルルと言うのか。
  声的にエンダルと同い年ぐらいか?

  骨数本って軽傷なのか?

 「で? エンダルは何してるの?」
 「妖精と話してた」
 「ハァ? とうとう頭がおかしくなったの?」
 「いやいや。……ほら?」

  そうか。
  ルアンの姿をエンダルが遮って見えないのか。

  俺の膝の上を指して、シャルルがエンダルを避けるようにして膝の上で女の子座りしているルアンを見る。

 「え? ほ、本物?」
 「ん? うちの娘だ」

  俺に聞かれたからそう答えた。

 「私の娘でもあります」
 「えへへ~」

  後ろからサラも娘発言をした。

  ルアンも嬉しそうだ。

 「え? え?」

  混乱しているな。

 「道中で保護したんだ。だが、ルアンは俺たちの家族だ」
 「あ、そういうことね」

  真面目さんか?
  それとも残念さんか?

 「お前もヘルム取って自己紹介したらどうだ?」
 「そうだね。けど、ここじゃ人目があるわ。……君の身体が大丈夫なら場所を移動したいのだけど?」

  俺は後ろにあるサラの方を見る。
  頷くサラ。

  俺の身体は大丈夫そうだな。

 「分かりました。移動しましょう」
 「このお店の前にあった馬車は君たちのかしら?」
 「そうです」
 「では、私たちが運転しよう。君たちは荷台に乗ってくれる?」
 「分かりました」

  エンダルは俺がシャルルと話してる間にヘルムを装着した。
  移動する時は持ってたら邪魔だしな。

  視界は狭まらいのだろうか?

  俺たちが動くと人混みが勝手に分かれる。
  野次の中に数人本気でルアンを狙ってるヤツの視線を感じる。

  まぁ、俺が気が付くって事はサラは居場所も分かるって事だ。
  手を出したらぶっ飛ぶだけだな。

  それに目の前に騎士がいるんだ。
  堂々と盗るヤツはいないだろう。

  外に出て馬車の荷台に乗る。

 「乗った? 動くかすわよ?」
 「あ、はい」

  サラに回復をしてもらったが、痛みが消えない。
  むしろ痛みが強くなている。

  おそらく、痛みすら感じない傷から激痛を生じる傷に昇格しているのだろう。
  俺にとっては地獄だが、重傷から軽傷に移行している証だろう。

 「あなたがダルダにあの傷を負わせたのよね?」

  手綱を握ったままシャルルは俺に質問する。

 「そうだ。俺がやった」
 「殺す気だったのよね?」
 「あぁ」

  間違いなく殺す気だった。
  今もあいつがふざけた事を言ったら同じ事をしてしまうと思う。

 「そう。でも、あの人はそこそこ常識人よ」
 「そうなのかもな」

  特に心のこもってはいない。

 「今は冷静じゃないから後でまた話すわ」
 「そうしてくれ」

  あいつの話はイライラしてくる。
  カルシュウムが足りなのか?

  サラは一生懸命回復に専念してくれている。

  ルアンは疲れたのか、コックリコックリとボートを漕ぎだしている。
  大きな声をだして大泣きして俺が心配かけて疲れたのだろう。

 「ルアン。寝ていいよ」
 「うん……。おやすみ……ガク、サラク」
 「おやすみ、ルアン」
 「おやすみなさい、ルアン」
 「スゥ~~……」

  バックからハンカチを取り出してルアンに被せる。

  ありがとうな、ルアン。
  良い夢を見てくれよ。

 「ルアンちゃん寝ちゃったか~」

  エンダルが惜しそうに声を漏らす。

  ちゃん付けだと?
  いいじゃないか。

 「どこに向かってるんですか?」

  サラがシャルルに話しかけた。

 「騎士の宿舎よ。あそこなら場所もしまえるし、休む場所もある。何より静かよ」
 「そうですか」

  沈黙が訪れる。

 「……ねぇ。そこのアナタ」
 「え? 俺?」
 「違うわよ。女の方」
 「私ですか?」
 「そうよ!」

  なんだろう。
  シャルルが怒っている。

 「あまり大きな声を出さないで下さい。ルアンが起きちゃうじゃないですか」
 「……ならアンタも私たちに向けるのを止めなさいよ」

  向ける?
  何を向けてるんだ?

 「そうだぜ? いくらなんでもそんなに向けられると気持ち的に良い気がしない」
 「そうよ」

  どいう事だ?

 「サラ、どういう事?」
 「アンタ気が付かないの? その子、私たちにスゴイ殺気を向けてるのよ」
 「……」
 「サラ……」

  ……サラもルアンの事で怒っているのか。
  当たり前か。

  俺はサラの手を握った。

 「ガクさん……」
 「サラ、深呼吸するんだ。張りつめた糸をゆっくりと緩めるように……」
 「はい」

  サラは目を閉じ、数回深呼吸をした。

 「サラ、大丈夫だから」
 「……分かりました」

  馬を操縦する為に前に座ってる二人が明らかにほっとしたような声を上げた。

 「なんて殺気よ。手がまだ震えてるわ」
 「俺なんて手汗ヤバイぜ」
 「自慢にならないわよ。バカ」

  スゴイな。
  サラの殺気を受けて平然としているなんて。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...