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この果物もおいしいよ、こっちは酸っぱくてこれは甘いかも、と遥陽に世話を焼くのが楽しい、嬉しい。
ちょっと昔に戻ったみたい。
遥陽がもう無理、お腹いっぱい、と止めるまで同じことをずっと繰り返していた。
「大丈夫?美味しかった?」
「うん、美味しかったです、ありがとうございます」
アンヌさんの方を向き、頭を下げる遥陽。
慌てたアンヌさんも大丈夫です、お気になさらず、と頭を下げる。
アンヌさんはこれからどうするのかな、と思って、確認すると、今から片付けて、空いてる部屋で休むとのこと。
そうだよな、何時かはわからないけど真夜中だもんな。
こんな時間まで付き合わせてしまって申し訳ない。
どうせおれたちも今からまた寝たら遅くまで起きないだろうし、アンヌさんにも朝はゆっくりして欲しいとお願いしておいた。
因みに片付けの手伝いは却下された。
「まだ体調が完全に良くなった訳ではないでしょう、ゆっくりおやすみ下さい、後でまた見に行きましょうか?」
「大丈夫!ちゃんと寝まあす」
「はいおやすみなさいませ」
従者というよりは、身内が注意するような、そんな声色だった。だからすっごく嬉しくなってしまって、アンヌさんに手を振って厨房を後にした。
「ね、アンヌさん良いひとでしょ」
「良いひとっていうか……理想のおばあちゃんみたい」
「そーなの!そうそうそう、最初疑ったことに罪悪感あるくらいなんだ」
「うん……」
考え込む遥陽の腕を取って、くっついて歩く。
嫌がる素振りもないから、そのまま部屋に戻って、ベッドに腰掛ける。
眠れそう?と訊くと、こくりと頷かれた。
お腹も満たされて、もう一眠りだ。遥陽の隈だってまだ消えてない。
「明日なんか用事ある?」
「……知らない。勉強とかじゃないかな」
「大事な用がなければゆっくりしてていいかな」
「優希のこと以外で大事な用事なんてないよ」
「ふへへ、なんか口説き文句みたい」
笑いながらベッドに潜る。
遥陽の首元までしっかり布団を掛けて、おやすみ、と伝える。
本当はまだお喋りしてたかったんだけど、既に遥陽がうつらうつらしてるものだから。よっぽど疲れがたまってたのだろう。
もにゃもにゃと、まだ寝ない、とは言うけど舌が回ってない。思わず笑ってしまう。
それに対して遥陽もちょっと笑って、おやすみ、と言いながらおれの手をぎゅっと握って、そのまま目を閉じた。
かわいい。相変わらずかわいい。
ジルがおれのことをかわいいかわいいと言うけれど、やっぱりかわいいのは遥陽の方だ。
ジルの目が悪いのか好みやセンスが悪いのか。
それともただのリップサービスか。
……だめだ、ジルのことを考えるともやもやしてしまう。
今はあのきらきらした顔を忘れて、すやすやと寝ているかわいい遥陽のことを考えて眠ろう。
うん、かわいい。
大きな瞳を閉じててもわかる、他が整っているから。
以前の、柔らかなほっぺたも早く戻ってきますように。
遥陽が健やかに笑える日が早く来ますように。
いつもと同じように、早くおれと、笑えますように。
◇◇◇
寝過ぎたかもしれない。
でも流石に頭がすっきりしている。
うううん、と軽く伸びをして、隣の遥陽を見る。
起こしちゃったかな、と思ったけど、まだ寝息を立てている。
赤ちゃんみたいな寝顔がかわいい。
んああ、癒される、ここに来てやっと人に癒された瞬間かもしれない。やっぱり遥陽がかわいくてかわいくてたまらん。
ジルだってこんな天使の寝顔を見たらおれなんかじゃなくて毎日遥陽にかわいいかわいいと囁いちゃうだろう。
……何を考えてんだおれは。
なんでジルが出てきた?なんでジルが遥陽の寝顔を見る前提?
本気でジルがおれのことをかわいいと思ってるとでも?
ちょっと自分のことを良く考え過ぎでは?
ここでのおれはただの不吉な黒猫のような、物珍しい生き物ってだけで、こんな天使と一緒にしていい訳では……
「……ゆき?」
「ひえ」
「おはよ……?」
「おっ、おはよ!ごめん、起こしたよね、まだ寝ててもいいよ!」
「んーん、起きる……ふふ」
「?」
「朝から優希のかわいい顔見れてしあわせ……」
んんんん、遥陽の方がかわいい、絵画にしちゃいたいくらいかわいいのに!
もぞもぞして、んん、とちょっと伸びをして、欠伸もひとつ。
少しぼさぼさになった柔らかい髪を手櫛でさっととかして、またおれの方を見てにこっと笑う。
隈が大分ましになった。
心做しか、肌もつやつやしてるような。
「……ちょっとは元気、出た?」
「うん!いっぱい寝れたし!すっきり!」
「良かった……」
「あのさ……」
「うん?」
もじもじする遥陽に先を促すと、また一緒に寝てくれる?と訊かれて、そんなもの、当たり前のように頷くに決まってるじゃないか。
ぱあっと笑顔になった遥陽はそりゃもうかわいい、国宝。おれが王様なら閉じ込めちゃうね。
「何時だろ」
「もうお昼くらいかな」
「いつもならアンヌさんたちが声掛けに来てくれるんだけど……流石に今日はゆっくりさせてくれてるのかも」
「……そっか」
「あ、こっちきて、こっち」
「?」
きょとんとする遥陽の腕を引いて、窓辺に駆け寄る。
眩しい。
窓を開けて、新鮮な空気を部屋の中に入れた。
「綺麗でしょ、中庭!後で散歩でもしようよ」
「……いいのかな?」
「いいよ、おれが許す!」
「あは、うん、いいね、僕も外、出たいや」
目映い光に包まれて笑う遥陽が、とても綺麗だった。
ちょっと昔に戻ったみたい。
遥陽がもう無理、お腹いっぱい、と止めるまで同じことをずっと繰り返していた。
「大丈夫?美味しかった?」
「うん、美味しかったです、ありがとうございます」
アンヌさんの方を向き、頭を下げる遥陽。
慌てたアンヌさんも大丈夫です、お気になさらず、と頭を下げる。
アンヌさんはこれからどうするのかな、と思って、確認すると、今から片付けて、空いてる部屋で休むとのこと。
そうだよな、何時かはわからないけど真夜中だもんな。
こんな時間まで付き合わせてしまって申し訳ない。
どうせおれたちも今からまた寝たら遅くまで起きないだろうし、アンヌさんにも朝はゆっくりして欲しいとお願いしておいた。
因みに片付けの手伝いは却下された。
「まだ体調が完全に良くなった訳ではないでしょう、ゆっくりおやすみ下さい、後でまた見に行きましょうか?」
「大丈夫!ちゃんと寝まあす」
「はいおやすみなさいませ」
従者というよりは、身内が注意するような、そんな声色だった。だからすっごく嬉しくなってしまって、アンヌさんに手を振って厨房を後にした。
「ね、アンヌさん良いひとでしょ」
「良いひとっていうか……理想のおばあちゃんみたい」
「そーなの!そうそうそう、最初疑ったことに罪悪感あるくらいなんだ」
「うん……」
考え込む遥陽の腕を取って、くっついて歩く。
嫌がる素振りもないから、そのまま部屋に戻って、ベッドに腰掛ける。
眠れそう?と訊くと、こくりと頷かれた。
お腹も満たされて、もう一眠りだ。遥陽の隈だってまだ消えてない。
「明日なんか用事ある?」
「……知らない。勉強とかじゃないかな」
「大事な用がなければゆっくりしてていいかな」
「優希のこと以外で大事な用事なんてないよ」
「ふへへ、なんか口説き文句みたい」
笑いながらベッドに潜る。
遥陽の首元までしっかり布団を掛けて、おやすみ、と伝える。
本当はまだお喋りしてたかったんだけど、既に遥陽がうつらうつらしてるものだから。よっぽど疲れがたまってたのだろう。
もにゃもにゃと、まだ寝ない、とは言うけど舌が回ってない。思わず笑ってしまう。
それに対して遥陽もちょっと笑って、おやすみ、と言いながらおれの手をぎゅっと握って、そのまま目を閉じた。
かわいい。相変わらずかわいい。
ジルがおれのことをかわいいかわいいと言うけれど、やっぱりかわいいのは遥陽の方だ。
ジルの目が悪いのか好みやセンスが悪いのか。
それともただのリップサービスか。
……だめだ、ジルのことを考えるともやもやしてしまう。
今はあのきらきらした顔を忘れて、すやすやと寝ているかわいい遥陽のことを考えて眠ろう。
うん、かわいい。
大きな瞳を閉じててもわかる、他が整っているから。
以前の、柔らかなほっぺたも早く戻ってきますように。
遥陽が健やかに笑える日が早く来ますように。
いつもと同じように、早くおれと、笑えますように。
◇◇◇
寝過ぎたかもしれない。
でも流石に頭がすっきりしている。
うううん、と軽く伸びをして、隣の遥陽を見る。
起こしちゃったかな、と思ったけど、まだ寝息を立てている。
赤ちゃんみたいな寝顔がかわいい。
んああ、癒される、ここに来てやっと人に癒された瞬間かもしれない。やっぱり遥陽がかわいくてかわいくてたまらん。
ジルだってこんな天使の寝顔を見たらおれなんかじゃなくて毎日遥陽にかわいいかわいいと囁いちゃうだろう。
……何を考えてんだおれは。
なんでジルが出てきた?なんでジルが遥陽の寝顔を見る前提?
本気でジルがおれのことをかわいいと思ってるとでも?
ちょっと自分のことを良く考え過ぎでは?
ここでのおれはただの不吉な黒猫のような、物珍しい生き物ってだけで、こんな天使と一緒にしていい訳では……
「……ゆき?」
「ひえ」
「おはよ……?」
「おっ、おはよ!ごめん、起こしたよね、まだ寝ててもいいよ!」
「んーん、起きる……ふふ」
「?」
「朝から優希のかわいい顔見れてしあわせ……」
んんんん、遥陽の方がかわいい、絵画にしちゃいたいくらいかわいいのに!
もぞもぞして、んん、とちょっと伸びをして、欠伸もひとつ。
少しぼさぼさになった柔らかい髪を手櫛でさっととかして、またおれの方を見てにこっと笑う。
隈が大分ましになった。
心做しか、肌もつやつやしてるような。
「……ちょっとは元気、出た?」
「うん!いっぱい寝れたし!すっきり!」
「良かった……」
「あのさ……」
「うん?」
もじもじする遥陽に先を促すと、また一緒に寝てくれる?と訊かれて、そんなもの、当たり前のように頷くに決まってるじゃないか。
ぱあっと笑顔になった遥陽はそりゃもうかわいい、国宝。おれが王様なら閉じ込めちゃうね。
「何時だろ」
「もうお昼くらいかな」
「いつもならアンヌさんたちが声掛けに来てくれるんだけど……流石に今日はゆっくりさせてくれてるのかも」
「……そっか」
「あ、こっちきて、こっち」
「?」
きょとんとする遥陽の腕を引いて、窓辺に駆け寄る。
眩しい。
窓を開けて、新鮮な空気を部屋の中に入れた。
「綺麗でしょ、中庭!後で散歩でもしようよ」
「……いいのかな?」
「いいよ、おれが許す!」
「あは、うん、いいね、僕も外、出たいや」
目映い光に包まれて笑う遥陽が、とても綺麗だった。
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