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「おはようございます……」
そろそろと厨房に向かうと、食事の準備をしてるアンヌさんに、イレーヌさんとリンダさん。更には何故かモーリスさんもいて、アンヌさんしか把握してなかった遥陽が隣で固まっていた。
遥陽に三人を紹介して、三人にも遥陽を紹介する。
こんなところに神子様が!?とびっくりする三人に苦笑いした。
「いやー、今日の料理は張り切らなきゃってアンヌさんが言うから俺も手伝いにきたんですけど……なるほどなー、張り切るわけだ……俺が呼ばれたのもそれか」
「呼ばれた?」
「昨晩、ジル様にここに泊まれと」
「えっ急にごめんなさい」
「いや俺の仕事だからそれは構わないんですよ、ただ理由は何も言わなかったんでねえ」
つまり隣にはモーリスさんが泊まっていたと。
アンヌさんといい、重ね重ね申し訳ない。
ていうか、モーリスさんいたならアンヌさんおれたちを見てなくても良かっただろうに。安心させる為にいてくれたのかな。
「お食事はもうお部屋へお持ちしても?」
「あっお願いします!」
「おふたりはどうぞお部屋でお待ち下さいね、今日はお手伝いは不要ですよ」
最初に釘を刺されて、笑って誤魔化す。
どうにもふんぞりかえれないんだよな、日本人だからかな、気にしちゃうの。
「部屋で待っとけって」
「あ、うん」
また遥陽の腕を引いて歩く。昨晩と同じことしてる、と笑ってしまった。
「張り切ってるんだって。ご馳走だな」
「そんなにたくさん出てくるかな……残しちゃったらどうしよう」
「おれも気になってた、捨てるのかな、お手伝いさんとかが食べるのかな、折角なんだから皆で食べればいいのになー」
「まあ貴族や王族と従者が同じテーブルにつくことはないんだろうね」
「めんどくせー世界だよなあ、ファンタジーってかっこいーけど、そうゆー階級制度とか、差別とかやだ」
「……優希がそう言ってくれると安心する」
おれもだ。
知らない世界で、自分の常識が通用しない世界で、おれと遥陽、ふたりの感覚が一緒なのがすごく安心する。
「あ」
部屋の前にふたりの影。足がぴたりと止まった。
ジルとティノだった。遥陽の腕を掴む力が強くなる。
「ユキ」
「……なに」
遥陽を後ろに庇いながら、強い口調になってしまう。
少し近付いてきたジルの足も止まった。
ふたりともやっぱり困った顔してる。
「遥陽は返さないからね」
「優希?」
「遥陽を大事に出来ないとこになんか、絶対!」
昨夜遥陽が寝落ちてからのやり取りだったから、遥陽からしたら急に噛み付くおれに驚いてるようだった。
でも今遥陽を表に出したくなかった。
まだちょっと眠れて、ちょっと食事が出来るようになっただけ。まだ全快じゃない。
まだまだゆっくりしてもらわなきゃ困る。
「……悪かった」
「聞かないったら!」
「ユキ、話をさせてほしい」
「やだ!」
「……ふたりともすまない、俺たちもどうにかしたいんだ」
「……」
表情は本当に悪そうな顔をしてるんだけど。
でも本音がわからない。
どうせ王族の大人なんて隠すのが上手いんだ、おれたちみたいなよくわかってない奴等とは違って。
「……ユキに拒絶されると辛い、少しでいい、話をさせてくれないか」
膝をついて、おれの手を取るジル。
悔しいことに、そんなことをされるとちょっと揺れる。だって別にジルが嫌いなんじゃない。
寧ろその、おれのことに関しては色々気にしてくれてるのはわかるんだけど、どうしたって遥陽のことは切り離せない。
「……じゃあ、ご飯くるまで、ちょっとだけ。でも遥陽には近付かないで」
「ああ、ありがとう」
安堵したジルはちょっとかわいかった。
……かわいいってなんだ、こんなでかい男に。おれこの世界にきて色々歪められてないか。
でもティノにはまだ警戒心解かないからな!
「遥陽大丈夫?」
「え、あ、うん」
「おれの傍居てね!」
「うん」
不安なんだろうな、それでもにこっと笑う遥陽に、おれがしっかりしなければ!と思うのだった。
◇◇◇
「ではまず言い訳がございましたらどうぞ」
「……」
席について、最初に振ったのはティノへ。
折角ゆっくり出来るのに長々下らない話をする気はないのだ。さっさと終わらせて美味しいご飯を食べてゆっくりのんびりしてやる。
「申し訳ない……」
「何がですか?」
「……ハルヒへの待遇が」
「はい」
「優希のもだよっ」
「いやおれは今は結構その……まあ、遥陽と比べると」
折角遥陽が庇ってくれたけど、遥陽の待遇を聞いた後だと、おれって結構自由にやらせてもらってるんだなって気付いたんだよね。
そりゃ殺されるかも、こわいこわいって怯えて生活してたけど、騒いだお陰でジルやモーリスさんが夜はいてくれるし、アンヌさんがすきな食事を作ってくれて、イレーヌさんとリンダさんも仕事の合間に結構構ってくれる。
勉強だって強制されることはなく、自分がこの国での生活に困るからってのと、暇潰しに本が読みたいからって自主的にやってるだけ。
外は簡単に出して貰えないけど、この館内ならどこに入っても自由だし、中庭でのんびり出来るし、一日怠惰に寝てても何も言われない。
……あれ、結構な高待遇ではないか。
そろそろと厨房に向かうと、食事の準備をしてるアンヌさんに、イレーヌさんとリンダさん。更には何故かモーリスさんもいて、アンヌさんしか把握してなかった遥陽が隣で固まっていた。
遥陽に三人を紹介して、三人にも遥陽を紹介する。
こんなところに神子様が!?とびっくりする三人に苦笑いした。
「いやー、今日の料理は張り切らなきゃってアンヌさんが言うから俺も手伝いにきたんですけど……なるほどなー、張り切るわけだ……俺が呼ばれたのもそれか」
「呼ばれた?」
「昨晩、ジル様にここに泊まれと」
「えっ急にごめんなさい」
「いや俺の仕事だからそれは構わないんですよ、ただ理由は何も言わなかったんでねえ」
つまり隣にはモーリスさんが泊まっていたと。
アンヌさんといい、重ね重ね申し訳ない。
ていうか、モーリスさんいたならアンヌさんおれたちを見てなくても良かっただろうに。安心させる為にいてくれたのかな。
「お食事はもうお部屋へお持ちしても?」
「あっお願いします!」
「おふたりはどうぞお部屋でお待ち下さいね、今日はお手伝いは不要ですよ」
最初に釘を刺されて、笑って誤魔化す。
どうにもふんぞりかえれないんだよな、日本人だからかな、気にしちゃうの。
「部屋で待っとけって」
「あ、うん」
また遥陽の腕を引いて歩く。昨晩と同じことしてる、と笑ってしまった。
「張り切ってるんだって。ご馳走だな」
「そんなにたくさん出てくるかな……残しちゃったらどうしよう」
「おれも気になってた、捨てるのかな、お手伝いさんとかが食べるのかな、折角なんだから皆で食べればいいのになー」
「まあ貴族や王族と従者が同じテーブルにつくことはないんだろうね」
「めんどくせー世界だよなあ、ファンタジーってかっこいーけど、そうゆー階級制度とか、差別とかやだ」
「……優希がそう言ってくれると安心する」
おれもだ。
知らない世界で、自分の常識が通用しない世界で、おれと遥陽、ふたりの感覚が一緒なのがすごく安心する。
「あ」
部屋の前にふたりの影。足がぴたりと止まった。
ジルとティノだった。遥陽の腕を掴む力が強くなる。
「ユキ」
「……なに」
遥陽を後ろに庇いながら、強い口調になってしまう。
少し近付いてきたジルの足も止まった。
ふたりともやっぱり困った顔してる。
「遥陽は返さないからね」
「優希?」
「遥陽を大事に出来ないとこになんか、絶対!」
昨夜遥陽が寝落ちてからのやり取りだったから、遥陽からしたら急に噛み付くおれに驚いてるようだった。
でも今遥陽を表に出したくなかった。
まだちょっと眠れて、ちょっと食事が出来るようになっただけ。まだ全快じゃない。
まだまだゆっくりしてもらわなきゃ困る。
「……悪かった」
「聞かないったら!」
「ユキ、話をさせてほしい」
「やだ!」
「……ふたりともすまない、俺たちもどうにかしたいんだ」
「……」
表情は本当に悪そうな顔をしてるんだけど。
でも本音がわからない。
どうせ王族の大人なんて隠すのが上手いんだ、おれたちみたいなよくわかってない奴等とは違って。
「……ユキに拒絶されると辛い、少しでいい、話をさせてくれないか」
膝をついて、おれの手を取るジル。
悔しいことに、そんなことをされるとちょっと揺れる。だって別にジルが嫌いなんじゃない。
寧ろその、おれのことに関しては色々気にしてくれてるのはわかるんだけど、どうしたって遥陽のことは切り離せない。
「……じゃあ、ご飯くるまで、ちょっとだけ。でも遥陽には近付かないで」
「ああ、ありがとう」
安堵したジルはちょっとかわいかった。
……かわいいってなんだ、こんなでかい男に。おれこの世界にきて色々歪められてないか。
でもティノにはまだ警戒心解かないからな!
「遥陽大丈夫?」
「え、あ、うん」
「おれの傍居てね!」
「うん」
不安なんだろうな、それでもにこっと笑う遥陽に、おれがしっかりしなければ!と思うのだった。
◇◇◇
「ではまず言い訳がございましたらどうぞ」
「……」
席について、最初に振ったのはティノへ。
折角ゆっくり出来るのに長々下らない話をする気はないのだ。さっさと終わらせて美味しいご飯を食べてゆっくりのんびりしてやる。
「申し訳ない……」
「何がですか?」
「……ハルヒへの待遇が」
「はい」
「優希のもだよっ」
「いやおれは今は結構その……まあ、遥陽と比べると」
折角遥陽が庇ってくれたけど、遥陽の待遇を聞いた後だと、おれって結構自由にやらせてもらってるんだなって気付いたんだよね。
そりゃ殺されるかも、こわいこわいって怯えて生活してたけど、騒いだお陰でジルやモーリスさんが夜はいてくれるし、アンヌさんがすきな食事を作ってくれて、イレーヌさんとリンダさんも仕事の合間に結構構ってくれる。
勉強だって強制されることはなく、自分がこの国での生活に困るからってのと、暇潰しに本が読みたいからって自主的にやってるだけ。
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……あれ、結構な高待遇ではないか。
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