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「でっっか!」
「ユキ様、こっちですよ」
お城なんて、前の世界でも写真やテレビで何回も見たし、日本のお城は修学旅行で見学にも行ったことがある。
その時よりもインパクトが強い。横にでかい。すっごい。
これ土足で入っていいものなんだろうか、そう悩んでしまうくらい綺麗だった。きらきらしてる。こんなとこに住んでるから王族もきらきらしてるんだろうか。掃除大変だろうな。
「緊張してます?」
「……してる。ここでも髪隠した方がいい?殺される?」
「大丈夫でしょう。気になります?」
「うん、なんか見られてるような」
「そりゃあ目立ちますからね」
やっぱりこの黒髪は目立つらしい。
そこら辺を歩いてる従者も明るい髪色だもんな……
髪を隠してもいいんだけど、外ではなく城内では怪しくてかえって目立つような気がして悩んでしまう。
ジルの執務室は遠いか訊くと、少し歩くという。
広いもんな、なんか学校とか役所とか思い出してしまう。全然違うと言えば違うんだけど。
「挨拶とかした方がいいひとがいたら教えてね」
「はい」
「あ、どうも……」
「メイドですよ」
「頭下げられたからつい……」
「ユキ様は擦れ違うひと全員に挨拶しそうですね」
「これが普通だったんだよ」
こっちの世界がわけわっかんないんだよ。
なんか偉そうにしてるのは違うだろうしさ。どんな顔して城内歩けばいいかわかんないんだもん。
向こうでは家族ともだち先生、目が合ったひとに会釈くらいはしたし、それが良い子ちゃんだと思ったこともない。
「ふふ」
「な、なに?やっぱりおかしい?浮く?お城には不釣り合いかな」
一応今日もジルに貰った服着てきたんだけど。
モーリスさんが笑ってしまう程おかしいだろうか。
「いえ、小さな子がお使いにきたようで……きょろきょろしたりおどおどしたりしてかわいらしいと思って」
「確かにきょどってるけど子供ではない……」
「ジル様にも見せてあげたいですねえ」
いえ今からそのジル様に会いに行くんですがね。
でもそのジルもすぐかわいいかわいい言うから……
……今日も言うだろうか。なんか今更になって焦ってきた。
忙しそうだったし、おれ、邪魔じゃないだろうか。
何も考えずにきてしまったけど、お茶の時間~なんて言って、仕事中のジルにそんな時間はあるのだろうか。
というか忙しくさせてる張本人おれでは?どの面下げて休憩しよ!なぞ言えるのだろうか。
「ユキ様?足を止められて……どうされました、疲れましたか?」
んな訳あるか、これくらいの距離で疲れるとか赤ちゃんか。
こちとらやばくね気まずくね?って冷や汗かいとるんじゃい。
「やっぱりその……おれ、邪魔じゃあ」
「そんなことないですよ」
「ここここれ、モーリスさん渡してくんない?」
「ユキ様がお渡しした方が喜びますよ」
「考えれば考える程おれ邪魔じゃんて思って……」
「ここまで来てユキ様を帰らせて俺が持ってく方がジル様怒りますよ」
「……怒る?」
「ええ、なので責任持ってジル様に渡しにいきましょうね、もうすぐそこですからね」
煽ってるのかなんなのか、モーリスさんは子供に言うように腰を曲げて諭してくる。
知ってんだ、おれ、モーリスさんがいじわる……お茶目だってこと。
でも断られてしまったことは仕方がない。
城に行こうと言い出したのはモーリスさんだけど、それに乗ったのはおれだ、腹を括るしかない。
「……もしかしてあの部屋?」
「そうです、よくおわかりになりましたね」
わかるよそりゃあ。
大きな扉の前に、兵士みたいな見張りがついてんだもん、絶対お偉いさんが中にいるやつだって。
あー、でもこれやっぱり絶対空気重いやつ~……
そんなまた日和ってるおれを置いて、モーリスさんがその兵士みたいなひとに話し掛けていた。
やばい、心の準備が出来る前にご対面になってしまう。
「ジル様、モーリス様が来られました」
「今忙しいと伝えてくれ」
「聞こえてますけど急用ですよ~」
切り捨てるようなジルの声に、モーリスさんの少しふざけたようなのんびりした声が返される。
ジルは今どんな顔をしているのだろうか。
足の止まったおれを呼んで、中へどうぞ、とモーリスさんに促された。
「ユキ!」
「えっと……お邪魔だと思うんですけど……どうも……」
恐る恐る入ると、びっくりしたような顔のジルが大きな机の向こうにいた。
怒っては……ないようだけど。
「どうした?何かあったか?」
「いえ……きゅ、急用とかじゃないんです、けど……」
「なんだ、モーリスじゃなくてユキが来たと言ってくれたら歓迎したのに」
「いやそんなお手を煩わせる程じゃ……」
「こっちにおいで」
「へあ」
応接間にありそうな立派な机とソファに呼ばれた。
……話をする時間はあるのだろうか。
「あの、仕事の邪魔じゃあ……」
「丁度休憩を取ろうと思ってたんだ」
さっきは忙しいって……それが本音か気遣いかはわからないけど。
でもおれが見る限りジルは嬉しそうな顔をしている、ので、怒ってはなさそうだ。
「これ……軽く食べられたらって。多目に作ってきたから、後で会えたら遥陽にも……自分で渡せたら一番いいんだけど、会えなさそうならジルから渡して貰えたら」
「ありがとう、……アンヌからかな?」
「……一緒に作ったやつ、です」
籠の中を覗いたジルがぱっと嬉しそうに笑った。俺のすきなものだ、って。
アンヌさん、そんなことまでは言ってなかった。ジルは甘いものすきだとは言っていたけど。
……ちょっと嵌められた気分だ。
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