【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

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「この国に呪いってそんなによくあるの?稀な話?」
「よくある話ではないのかも知れないが、稀な話でもないかな、生業にしてる者もいるし」
「そういうの取り締まらないの」
「場合によっては捕まえるよ」
「ふうん……キャロルの呪いは誰がとかわかってるの」
「キャロルのものはそういうものではないんだ」
「?」

 ひとつ確認するとひとつ訳のわからないことが増えていく。
 頭がパンクしそうだ。

「うちが呪われてるんだ」
「うち……王族がってこと?」
「誰かが必ず呪われる、今はキャロルってことだな」
「キャロルの前にもいたってこと?ジル達もそうなるの?」
「いや、呪われた者が亡くなったら新しく呪われるんだ、そういう意味で神子を召喚するのもある」
「でもさっき、呪いはじっくり解いていくって……治らない訳じゃないって……」

 背中がぞわりとした。
 知らないひとならともかく……いやちょっと見掛けただけで顔もよく見えなかったけど、それでもあの、あんなに小さな女の子が亡くなるとか考えたくもない。

「この呪いだけは別かな、例外もあると言っただろう、キャロルが死ぬまで解けることはないし、キャロルが亡くなれば誰かが呪われる、それは俺かもしれないし、弟達かもしれないし、父かもしれないし、誰かの産まれた子になるかもしれない」
「……」
「でもハルヒがきてくれたからそんなに気にすることはないんだ、完全に呪いが解けなくても、キャロルの体調は普通の子と変わらなくなってきた、たまに発作のように出てくるだけだ」

 それでも苦しんでる子がいることに変わりはないけど。
 その中で皆は今出来ることをしてるということ。
 ……おれも何か出来たらいいのに。遥陽にしか本当に何も出来なさそうだけど。

「キャロルも甘いものがすきなんだ」
「……?」
「また何か作ってくれないか」
「……!うん!」

 簡単なものだけど、何かお使いを頼まれた気分だった。
 そうだ、遥陽もジルも忙しいならおれも何か出来ることをしよう。
 お茶くらいはまた皆で出来るかもしれない。
 鑑定もしてもらって、もしかしたら何か役に立てるかもしれない。立てない可能性もあるけど。
 でも話はたくさん聞けた。
 キャロルが頑張ってるんだ。おれだけ文句言ってる場合ではない。

 確かに腹立つことも理不尽なことも多くて、これからも文句や泣き言のひとつも言いたくなるし、実際吐き出すだろう。
 それでも、何か……その、何かの道が見えた気がする。
 おれもしっかりするんだ、遥陽みたいに、周りを見なきゃ。

「キャロルっておれが会うことは出来るの?」
「キャロルと?」
「うん、ほら、遥陽ともなかなか会わせて貰えなかったじゃん」
「……すまない」
「や、だから、王女様とは会わせんぞー!とかならないのかなって。だって呪いのこと内緒なんでしょ?おれにはだめだ!とかならない?」
「いや、ユキが会ってくれたら嬉しいよ、話も合いそうだ」
「……」

 それはつまりおれが同じくらいのレベルってことか?こどもってことか?
 ちょっとむっとすると、そんなかわいい顔をして、と頬を撫でられた。……かわいい顔か?

 正直、ジルのこのあたたかな手がすきだ。
 大きくて、少し骨っぽい手が、だいじなものを触るかのように優しく触れる。
 少しくらい、強く触ったって怪我をしたり傷がつく訳でもないのに、柔らかいもの、壊れやすいものを触るかのような。
 それがなんだか嬉しくて、心地よくて。
 もしかして、キャロルにもこうやって撫でたりするんだろうか。

「ふふ」

 いいお兄ちゃんじゃないか。つい笑ってしまう。
 呪いがかかってても、こうやって触れてあげるんでしょう?そういうひとでよかった。
 危ないから近付かないとか、そんな冷たいひとじゃなくてよかった。

「何笑ってるの?」
「うん?いや、キャロルにもこう……撫でたりしてるのかなって」
「……」
「キャロルかわいい?」
「……かわいいよ」
「いいなあ」

 ひとりっ子だったから、お兄ちゃんも妹も、そういう感覚がわからない。
 遥陽が弟みたいといえば弟みたいなものなのかな。
 歳の離れた妹はそれはそれはかわいくて、かわいがってくれるお兄ちゃんはそれはそれは素敵に見えることだろう。微笑ましい。

「……キャロルにはこんな気持ちにはならないよ」

 どんな、と訊くことが出来なかった。
 酷く熱っぽい視線だったから。心臓がどき、とした。
 ……おかしい。ジルはおかしい。
 そんな顔でおれを見るなんておかしい。こんな……こんな、何も取り柄がないやつを。

「俺もひとつ訊きたかったんだ」
「な、なにを……」
「ハルヒとは恋仲なのかな」
「こいなか」

 どんなやばいことを訊かれるのか身構えてると、斜め上のことを訊かれて拍子抜けしてしまう。
 それにしても恋仲って。

「ともだちだよ、幼馴染。もう兄弟みたいなものだよ」
「兄弟とはキスしないだろう?」
「あ」

 思わず自分の唇に触れてしまった。
 そうだ、おれ、遥陽とキスしたんだ。
 あの、綺麗な形の、艶々した柔らかい唇と。あの時は少し乾燥していたけど。
 ちょっと……舌も触れたんだよな、と思い出して、顔が熱くなってしまう。
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