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「大丈夫?湯あたりしてないか」
「してないよ、全然」
風呂上がり、部屋まで戻りながら心配してくるジルに過保護だなあと思う。
お風呂で引き留めて長話になったのを気にしてるみたいだ。
風呂上がりだと躰が熱くなっちゃって、顔が紅くなってしまうのも心配されてるのかな。
でも、歩ける?抱いて行こうか?とまで言われて、流石にジルの目が心配になる。
ジルにはおれがどれだけか弱くみえてるというのだ。
薄暗い廊下を歩きながら、そういえばお城は眩しい程明るかったのを思い出す。
昼と夜の差を考えても、この別館は暗いと思う。
これが普通ならわかるけど、お城があれだけ明るいならこっちも明るくしたらいいのに。
部屋は明るく出来るし、ほぼおれしかいないんだからそんなに廊下を明るくしても勿体ないけど。
「この部屋で寝るのも久し振りの気分だ」
部屋に入って、ベッドに腰掛けながらジルが言う。
おれは早々にベッドに飛び込んでしまい、こちらからジルの顔は見えない。なのに笑顔なんだろうなとわかる。嬉しそうな声を出すから。
「最近は遥陽優先だったからなー」
とはいってもたかだか数日だ。先日、ジルが視察でいなかった日数より短い。
会ってはいたから、そんなに喜ぶ程かな、と思ってしまう。
「ねえ、遥陽は何で今朝急いで戻されたの?昼は呼んだひとは助かったって聞いたけど、そんなに急ぎだった?」
「……」
考えるように黙り込んで、それからやっとジルはこっちを向いた。
思わずびくりと肩が震えた。
ジルの表情が思ってたものではなかったから。暗い。
……まずいことを訊いてしまったか。
「呪いだよ」
「……呪い?」
これまた思ってもなかった単語だった。
いや、遥陽も言っていた。あの時は詳しく訊けなかったけど、本当にあるんだ、呪い。
そりゃ魔法とかあるならあったっておかしくない。でも、ゲームや漫画で慣れたおれの頭には、魔法って、戦う為に使ったり、生活を豊かにするきらきらするもので、呪いと聞くと、どうしてもどろどろしたものを想像してしまう。
その暗いイメージは間違ってはないのだろうけれど。
「病気や怪我はまあ……段階はあれど比較的早く治せるものなんだ、神子には」
「うん?」
「ただ、呪いはそうはいかない。例外はあるが治せない訳ではないよ、じっくりじっくり解いていくんだ」
「なるほど……?」
わからん。
「最近は少し落ち着いていたけど、今朝はまた酷くなったらしくてね、抑えることも今はハルヒ頼りなんだ、すまなかった」
「おれに謝られても……」
「楽しい時間を邪魔しただろう」
「……これからは何回でも会えるなら、もういいよ」
流石にその為に苦しんでるひとを放っておけなんて言えない。
遥陽に再会する前なら毒吐くくらいはしたかもしんないけど。
「それで、その呪われたひとって誰なの」
「……」
ジルの顔が曇る。日和ったおれは、すぐに言いたくないなら言わなくていいけど、と言ってしまう。
そんな顔をさせたい訳じゃない。誰かと知ったところでおれがどうにかできる訳ではなく、言ってしまえばただの好奇心なのだ、その為に言い辛いことを聞きたい訳ではない。
「妹だ」
「……?」
妹。
式典にいた、あの小さい王女様だろうか。
モーリスさんは王子達のように、第何王女と言わなかった。だから王女様はひとりしかいないと思っていた。もしあの子が呪われているとしたら、まだ大分幼い……小学校にも上がらないくらいの子に見えた。
顔はよく見えなかったから、顔色とかもわからなかったけど。
「妹って、式典にいた子?」
「そうだ、ハルヒのおかげで大分良くなった。ハルヒが来るまで、歩けなくなっていたんだ」
「そんなに……」
罪悪感。
遥陽と会えなくて文句を散々言った。理由を教えてくれたら良かったのに。そしたらあんなにティノを睨まなかったのに。
いやでも遥陽はあんなに窶れてたんだから、辛いことが多かった筈だ、やっぱりそこは怒ったままでいよう。
でも、それでもあんなに小さな女の子に、あの子のせいで、と思うことはしたくない、出来なかった。
「言ってくれたら良かったのに」
「すまない」
「おれに出来ること……なんてないけど、我慢くらいはするからさ、そういうの、教えてほしい」
「ユキに我慢をさせたい訳ではないよ、でもありがとう」
「妹さんのお名前は?」
「キャロルだ」
「……キャロルに何か出来る訳ではないけど、遥陽には何か出来ると思うからさ、何かあったらちゃんと言ってね」
笑ってみせると、ジルがほっとしたような表情になった。
この話、本当はあんまりしちゃだめなやつだったのかもしれない。
そりゃそうか、王女様が呪われてるなんて大きな声で言える話じゃない。
「呪いの話って内緒?」
「ああ、知ってるのは限られてるかな」
「アンヌさんとモーリスさんは?」
「話してある」
意外なのか、納得も出来るような。
ただの従者、でも、ジルにとってはそれ以上に信頼できるひとなのだろう。
その中におれも入れたのが少し誇らしい。
「してないよ、全然」
風呂上がり、部屋まで戻りながら心配してくるジルに過保護だなあと思う。
お風呂で引き留めて長話になったのを気にしてるみたいだ。
風呂上がりだと躰が熱くなっちゃって、顔が紅くなってしまうのも心配されてるのかな。
でも、歩ける?抱いて行こうか?とまで言われて、流石にジルの目が心配になる。
ジルにはおれがどれだけか弱くみえてるというのだ。
薄暗い廊下を歩きながら、そういえばお城は眩しい程明るかったのを思い出す。
昼と夜の差を考えても、この別館は暗いと思う。
これが普通ならわかるけど、お城があれだけ明るいならこっちも明るくしたらいいのに。
部屋は明るく出来るし、ほぼおれしかいないんだからそんなに廊下を明るくしても勿体ないけど。
「この部屋で寝るのも久し振りの気分だ」
部屋に入って、ベッドに腰掛けながらジルが言う。
おれは早々にベッドに飛び込んでしまい、こちらからジルの顔は見えない。なのに笑顔なんだろうなとわかる。嬉しそうな声を出すから。
「最近は遥陽優先だったからなー」
とはいってもたかだか数日だ。先日、ジルが視察でいなかった日数より短い。
会ってはいたから、そんなに喜ぶ程かな、と思ってしまう。
「ねえ、遥陽は何で今朝急いで戻されたの?昼は呼んだひとは助かったって聞いたけど、そんなに急ぎだった?」
「……」
考えるように黙り込んで、それからやっとジルはこっちを向いた。
思わずびくりと肩が震えた。
ジルの表情が思ってたものではなかったから。暗い。
……まずいことを訊いてしまったか。
「呪いだよ」
「……呪い?」
これまた思ってもなかった単語だった。
いや、遥陽も言っていた。あの時は詳しく訊けなかったけど、本当にあるんだ、呪い。
そりゃ魔法とかあるならあったっておかしくない。でも、ゲームや漫画で慣れたおれの頭には、魔法って、戦う為に使ったり、生活を豊かにするきらきらするもので、呪いと聞くと、どうしてもどろどろしたものを想像してしまう。
その暗いイメージは間違ってはないのだろうけれど。
「病気や怪我はまあ……段階はあれど比較的早く治せるものなんだ、神子には」
「うん?」
「ただ、呪いはそうはいかない。例外はあるが治せない訳ではないよ、じっくりじっくり解いていくんだ」
「なるほど……?」
わからん。
「最近は少し落ち着いていたけど、今朝はまた酷くなったらしくてね、抑えることも今はハルヒ頼りなんだ、すまなかった」
「おれに謝られても……」
「楽しい時間を邪魔しただろう」
「……これからは何回でも会えるなら、もういいよ」
流石にその為に苦しんでるひとを放っておけなんて言えない。
遥陽に再会する前なら毒吐くくらいはしたかもしんないけど。
「それで、その呪われたひとって誰なの」
「……」
ジルの顔が曇る。日和ったおれは、すぐに言いたくないなら言わなくていいけど、と言ってしまう。
そんな顔をさせたい訳じゃない。誰かと知ったところでおれがどうにかできる訳ではなく、言ってしまえばただの好奇心なのだ、その為に言い辛いことを聞きたい訳ではない。
「妹だ」
「……?」
妹。
式典にいた、あの小さい王女様だろうか。
モーリスさんは王子達のように、第何王女と言わなかった。だから王女様はひとりしかいないと思っていた。もしあの子が呪われているとしたら、まだ大分幼い……小学校にも上がらないくらいの子に見えた。
顔はよく見えなかったから、顔色とかもわからなかったけど。
「妹って、式典にいた子?」
「そうだ、ハルヒのおかげで大分良くなった。ハルヒが来るまで、歩けなくなっていたんだ」
「そんなに……」
罪悪感。
遥陽と会えなくて文句を散々言った。理由を教えてくれたら良かったのに。そしたらあんなにティノを睨まなかったのに。
いやでも遥陽はあんなに窶れてたんだから、辛いことが多かった筈だ、やっぱりそこは怒ったままでいよう。
でも、それでもあんなに小さな女の子に、あの子のせいで、と思うことはしたくない、出来なかった。
「言ってくれたら良かったのに」
「すまない」
「おれに出来ること……なんてないけど、我慢くらいはするからさ、そういうの、教えてほしい」
「ユキに我慢をさせたい訳ではないよ、でもありがとう」
「妹さんのお名前は?」
「キャロルだ」
「……キャロルに何か出来る訳ではないけど、遥陽には何か出来ると思うからさ、何かあったらちゃんと言ってね」
笑ってみせると、ジルがほっとしたような表情になった。
この話、本当はあんまりしちゃだめなやつだったのかもしれない。
そりゃそうか、王女様が呪われてるなんて大きな声で言える話じゃない。
「呪いの話って内緒?」
「ああ、知ってるのは限られてるかな」
「アンヌさんとモーリスさんは?」
「話してある」
意外なのか、納得も出来るような。
ただの従者、でも、ジルにとってはそれ以上に信頼できるひとなのだろう。
その中におれも入れたのが少し誇らしい。
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