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モーリスさんが、今日は泊まろうかと訊いてくれた。少し考えて、ジルはさっき何も言わなかったな、今日来れないとか……だから後で来るだろうなと考えて、大丈夫だと返す。
ジルが来るまで一緒に待ってくれると言ってくれたけど、わざわざ遥陽とセルジュさんを呼びにきたくらいだ、食事会だかパーティだかは知らないけど、何時にこっちに来るかはわからない。
そんな時間まで待たせる訳にもいかないし、そろそろおれもここに慣れてきた。
自分の力にも多少自信がついてしまい、そうそうおれを殺すことなんて出来ないぜ!とも考えてしまった。
モーリスさんもアンヌさんもゆっくり休んで下さい~、なんて玄関まで送って、部屋に戻ってからはたと気付く。
……今日来れないとは言わなかったからジルは来るだろうな?
いや普通逆では?
後で来るよと言わなかったということはジルはもう今日来ないのでは?
「あ……」
気付いた瞬間口が閉じられなくなった。
やらかした。
モーリスさんはもう帰ってしまった。
数時間くらいひとりでも大丈夫だもんね~という強気だった心が萎んでいく。
ここに来て初めてこの別館にひとりきり。
この広い館にひとりきり。
背中がぞわ、とした。
さっきまでのおれの強気はなんだったんだ。
エーンこわい!って言ってしまえたら楽なんだろうな、でも誰に言える訳でもなく、その恐怖は呑み込む。
大丈夫、いつかこんなことは来るとわかってた。
あれだけ魔力も使ったことだし、多分すぐに眠くなる。さっさとベッドに入って寝てしまえ。
って思うじゃん。
こういう時に限って眠れないんですよね。
いつもならまだ眠れてない時間。だけどなんなの、今まで散々魔力のせいで寝落ちしてきたのに、眠ってしまいたい時に限って眠れないなんて。
「んんんう~!」
ベッドの上で唸りながらごろごろじたばたするけど、そんなことしたところで何にもならない。
お城に行って、眠れないからジル一緒に寝て、って言う?出来るか。キャロルでもしないわ。
モーリスさんのとこに行って、やっぱり泊まってくださいって言う?どれも現実的じゃない。
「……ホットミルク」
そうだ、眠れない時は、あっためた牛乳に蜂蜜を入れて、と起き上がって、ドアノブに手をかけたところで、その手を止めてまたベッドに飛び込んだ。
こわいこわいって思ってる中、ひとりで厨房になんか行けるか!
「……はあ」
嫌だって断ったけど、おれこそお城に部屋を作って貰った方がいいんじゃないか。
そっちの方が、皆面倒じゃなくなるんじゃないか。
……でももうおれはこの別館に愛着を持ってしまったし……こわがりながらいうことじゃないけど。
ロザリー様の残したこの場所で、ジルを受け入れるのも、勝手に満足している。余計に手放したくなくなってしまった。
「……ジル」
「なあに」
「……!?」
一瞬都合のいい幻聴かと思った。それくらいのタイミングだった。
少し照れたように、なんかばたばたしてるなと思ったら、名前を呼ばれたので……と言う。
……ちょっと前から扉の前にいたってこと?
ぶわ、と顔が熱くなったのがわかった。
我ながら、名前を呼んだ声は甘えを含んでいたとわかる。
それを、聞かれてしまった。
「モーリスは?」
「か、帰りました……」
「そうなんだ」
「あ、ちが、いやそうだけど、えっと、おれが帰れって言ったっていうかだからモーリスさんは悪くなくて」
「いや別に責めてるんじゃなくて」
ぎし、とベッドに腰掛けたジルは、寂しかったら呼んでもいいんだよ、と言った。
あー、キャロルと同じ扱いじゃん、と気付いて、少し落ち着いた。
「なにやってるかわかんないしそんな簡単に呼べないよ……や、そうじゃなくて、今日来るかどうかわかんなくて」
「来れない時は伝えるよ、ユキはまだひとりで寝るのこわいだろう?」
言い方。
理由はともかく、それはものすごいこわがりのこどもみたいだ。間違ってないといえば間違ってないけど、でも。
「ホットミルク作ってこようか?」
「そこから聞いてたの……」
「猫みたいでかわいいなと思って」
どうする?と訊くジルに、頭を横に振る。
ジルが来たからもうこわくない。そしたらすぐに眠くなる筈。
「……一緒にいてくれた方が、寝れる」
なんでこんなにおれは地雷を踏み抜くのが上手いんだろう。
自分でいやだいやだだめだと言うくせに、近くにいるとすぐジルに頼ってしまう。
なんで婚約者なんているんだろう。
いつ婚約者と会ってるんだろう。
もしかして、正式に結婚するまで一緒に寝たりは出来ないのかな。
だからそれまではおれで発散したりするのかな。
いやなのに、だめなのに、なのに、ジルの顔を見ると、触れられると、こうやってすぐにどうでも良くなってしまう。
今だけでもいい、優しくしてほしい、今だけは他のひとのことなんか考えないで、おれだけ見ててほしい。
汚くてずるい考え方なのに止まらない。
さっきまでなんともなかったんだ、だから、ジルがおれの前にくるのが悪いんだ。
こんなに、ジルのことばっかり考えちゃうのは。
躰が、熱くなってしまうのは。
ジルが来るまで一緒に待ってくれると言ってくれたけど、わざわざ遥陽とセルジュさんを呼びにきたくらいだ、食事会だかパーティだかは知らないけど、何時にこっちに来るかはわからない。
そんな時間まで待たせる訳にもいかないし、そろそろおれもここに慣れてきた。
自分の力にも多少自信がついてしまい、そうそうおれを殺すことなんて出来ないぜ!とも考えてしまった。
モーリスさんもアンヌさんもゆっくり休んで下さい~、なんて玄関まで送って、部屋に戻ってからはたと気付く。
……今日来れないとは言わなかったからジルは来るだろうな?
いや普通逆では?
後で来るよと言わなかったということはジルはもう今日来ないのでは?
「あ……」
気付いた瞬間口が閉じられなくなった。
やらかした。
モーリスさんはもう帰ってしまった。
数時間くらいひとりでも大丈夫だもんね~という強気だった心が萎んでいく。
ここに来て初めてこの別館にひとりきり。
この広い館にひとりきり。
背中がぞわ、とした。
さっきまでのおれの強気はなんだったんだ。
エーンこわい!って言ってしまえたら楽なんだろうな、でも誰に言える訳でもなく、その恐怖は呑み込む。
大丈夫、いつかこんなことは来るとわかってた。
あれだけ魔力も使ったことだし、多分すぐに眠くなる。さっさとベッドに入って寝てしまえ。
って思うじゃん。
こういう時に限って眠れないんですよね。
いつもならまだ眠れてない時間。だけどなんなの、今まで散々魔力のせいで寝落ちしてきたのに、眠ってしまいたい時に限って眠れないなんて。
「んんんう~!」
ベッドの上で唸りながらごろごろじたばたするけど、そんなことしたところで何にもならない。
お城に行って、眠れないからジル一緒に寝て、って言う?出来るか。キャロルでもしないわ。
モーリスさんのとこに行って、やっぱり泊まってくださいって言う?どれも現実的じゃない。
「……ホットミルク」
そうだ、眠れない時は、あっためた牛乳に蜂蜜を入れて、と起き上がって、ドアノブに手をかけたところで、その手を止めてまたベッドに飛び込んだ。
こわいこわいって思ってる中、ひとりで厨房になんか行けるか!
「……はあ」
嫌だって断ったけど、おれこそお城に部屋を作って貰った方がいいんじゃないか。
そっちの方が、皆面倒じゃなくなるんじゃないか。
……でももうおれはこの別館に愛着を持ってしまったし……こわがりながらいうことじゃないけど。
ロザリー様の残したこの場所で、ジルを受け入れるのも、勝手に満足している。余計に手放したくなくなってしまった。
「……ジル」
「なあに」
「……!?」
一瞬都合のいい幻聴かと思った。それくらいのタイミングだった。
少し照れたように、なんかばたばたしてるなと思ったら、名前を呼ばれたので……と言う。
……ちょっと前から扉の前にいたってこと?
ぶわ、と顔が熱くなったのがわかった。
我ながら、名前を呼んだ声は甘えを含んでいたとわかる。
それを、聞かれてしまった。
「モーリスは?」
「か、帰りました……」
「そうなんだ」
「あ、ちが、いやそうだけど、えっと、おれが帰れって言ったっていうかだからモーリスさんは悪くなくて」
「いや別に責めてるんじゃなくて」
ぎし、とベッドに腰掛けたジルは、寂しかったら呼んでもいいんだよ、と言った。
あー、キャロルと同じ扱いじゃん、と気付いて、少し落ち着いた。
「なにやってるかわかんないしそんな簡単に呼べないよ……や、そうじゃなくて、今日来るかどうかわかんなくて」
「来れない時は伝えるよ、ユキはまだひとりで寝るのこわいだろう?」
言い方。
理由はともかく、それはものすごいこわがりのこどもみたいだ。間違ってないといえば間違ってないけど、でも。
「ホットミルク作ってこようか?」
「そこから聞いてたの……」
「猫みたいでかわいいなと思って」
どうする?と訊くジルに、頭を横に振る。
ジルが来たからもうこわくない。そしたらすぐに眠くなる筈。
「……一緒にいてくれた方が、寝れる」
なんでこんなにおれは地雷を踏み抜くのが上手いんだろう。
自分でいやだいやだだめだと言うくせに、近くにいるとすぐジルに頼ってしまう。
なんで婚約者なんているんだろう。
いつ婚約者と会ってるんだろう。
もしかして、正式に結婚するまで一緒に寝たりは出来ないのかな。
だからそれまではおれで発散したりするのかな。
いやなのに、だめなのに、なのに、ジルの顔を見ると、触れられると、こうやってすぐにどうでも良くなってしまう。
今だけでもいい、優しくしてほしい、今だけは他のひとのことなんか考えないで、おれだけ見ててほしい。
汚くてずるい考え方なのに止まらない。
さっきまでなんともなかったんだ、だから、ジルがおれの前にくるのが悪いんだ。
こんなに、ジルのことばっかり考えちゃうのは。
躰が、熱くなってしまうのは。
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