【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

文字の大きさ
116 / 161

116*

しおりを挟む
 食事も終わって、部屋に通された。
 当然のようにジルの部屋におれも入る。
 誰もいない別館じゃないんだから、ひとのたくさんいるホテルの部屋なんてひとりでも大丈夫なのに。
 でも今はひとりになるのが少しこわかったし、ジルと居たかったから、別の部屋だよ、なんて言われなくて良かった。
 毛布を捲って、ほら、早く寝よう、と言うジルに背後から抱き着く。
 ……自分から、こんな、誘うなんてことしたことないから、心臓がばくばくする。

 ジルはやたらおれを甘やかすし、甘い言葉を繰り出すけど、いつでもやらしいことをする訳ではない。
 おれの躰のことを気にしてくれるし、そういう雰囲気じゃない時に手を出したりとかはしない。
 それはだいじにされてるようで、嬉しくて、ありがたい話ではあるんだけど、でも少し、さみしいと思う時もある。
 おれじゃそこまでの魅力はないのかな、そんな気にはならないのかなって。
 疑う訳じゃないし、実際こんなちんちくりんに発情する程魅力があるかと問われるとそんな訳ないなって納得しちゃうんだけど。

「……疲れたでしょう、体調も崩すかもしれない。すぐにハルヒを呼ぶことも出来ないし、今日は寝よう?」
「……うん」

 そう言われて、やだ、抱いて、なんて言えなかった。
 断られた羞恥心を呑み込んで、のそのそとベッドに上がると、すぐにジルも横に入ってくる。
 薄暗い部屋の中、オレンジのランプが揺れていて、ジルの顔がよく見える。
 優しくおれを見詰めるその顔に堪らなくなって、だめだ、やっぱり抱かれたい。
 抱き締めるだけじやなくて、深いところでジルを感じたかった。
 だって、一週間しかない。
 たったの一週間。
 一週間で、もうジルとは会えなくなってしまう。

 ぐい、とジルの頭を寄せて、唇をあわせる。
 そんな子供のようなキスに、それでもジルは瞳を丸くして、それからもう一度、だめだよ、寝よう、とあやすように言う。
 そんなんが聞きたいんじゃない。ジルは、おれと、したくない?

「やだ……」
「ユキ?」
「疲れてない、やだ、ジル、しよ」
「ユキ……」
「だめ?ジルはいや?帰るまで待たなきゃだめ?それとももうずっとだめ?」
「……いやなんかじゃないよ」
「じゃあしよ、ね、おねがい」

 恥ずかしいことを口にしてるのはわかってる。
 でも言わなきゃジルは手を出してくれないと思ったから。
 情けなくてみっともなくて、それでも、一週間しかないから、だから、だから。
 ジルを覚えておきたい、ずっと、忘れたくない。

「ジルう……」
「……わかったから、ね、泣かないで」
「うん……うん、う、っ、うんっ……」

 とうとうしゃくりあげたおれにジルが負けた。
 おれに覆い被さるように起き上がって、先程の拙いキスが嘘のように深いものをくれた。

「っ、う、は……んッ」

 頭がぼおっとする。
 忘れたくないのに、すぐに溶けてしまう。
 熱い舌がおれの口の中を舐めて、動いて、おれのものを絡めとられる。
 合間に熱い息が漏れて、口の端から溜まった唾液が流れていく。
 それをごくんと飲み込んで、それでもまだ足りなくて、ジルの首に腕を回す。
 ちゅくちゅくと音を立てて、何度も唇を重ねあわせて、角度をかえて、何度も。

「んう、ふぁ」

 耳許を擽られて、髪を梳かれて、ジルの頭が浮く頃にはもうキスだけで出来上がってしまう。

「ッは、ぁ、ふ、ふく、脱ぐ……」
「待ってね」
「じ、自分で」
「俺にさせて」

 さっきまで断られてたとは思えないほど熱っぽい声でジルが囁く。
 単純だから、そんなことで胸がきゅんと高鳴る。
 良かった、ジルもやる気になってくれた。

「部屋の中はあたたかいけど、脱ぐのは下だけにしておこうか」
「んッ……」

 どうせ捲られる訳で、そんなの意味はないんじゃないかとも思うけど、でも言われるがままに頷いておく。そんなことで興を削いでしまいたくない。
 確かに部屋はあたたかいけど、それは外と比べてであって、脱いでしまえば少しひんやりとした空気を感じる。
 もじ、と足を閉じると、ジルの笑う声がする。

「寒い?」
「……さむい」
「大丈夫、すぐあつくなるよ」
「うん……ッあ、」

 胸元にぬるりとしたものを感じて視線を下ろすと、ジルの頭がおれの胸元にあった。
 ……な、え、舐め、えっ、舐めてる!?えっ、なんで、なんで!いや、前もあったけど、少し、だったし!

「なんっ、え、なんでっ、そんなとこっ……ッひ」

 ジルの歯が当たる。
 うそ、そんなとこ舐め、え、ゆ、指じゃなくて?
 混乱する。
 いや、だって当然赤ちゃんじゃなくて、いや、女のひとならわかるんだけど、おれ胸なんかなくて、でも男でも触られたら気持ちいいのはもう身をもって知ってて、でもまさかそんな、舐めたりするのが普通だなんて考えたことなくて。

「っン……!」
「いや?」
「~……ッ、や、じゃないっ」

 もう意地だった。じゃあ止めようか、なんて言われない為の。
 指でされた時のようなじんじんとする熱さはなくて、この間の、香油を塗られた時みたいな、ぬるぬると掴みどころのない感じがあって、でもその時より熱くて、歯を立てられると腰が跳ねてしまう。
 気持ちいいってことなんだろうか。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...