【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

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 ジルはというと、なんというか、不思議な感じだった。
 正直、なんだかんだ言ってキャロルみたいにかわいがってくれるんだと思っていた。
 あんまり意地悪言わないようにとも言っておいたし。
 本来は優しいひとなんだけど、ほんのちょっと、壁がある。

 アランにも、ジルとロザリー様がそっくりに見えるようで、基本的にはおれにべったりしてるものの、気になって仕方ないようだ。
 仲良くしてくれればいいのに、と思ってジルにお願いしたこともある。
 お互い、表面上は仲良くしてるんだけど、どこか踏み込めないようで……こればかりは時間が解決するしかないのかな、と少しさみしい。

 そして驚いたことに、と言ったら怒られるかな、おれの次に懐いたのはシャノン様にだった。
 アラン曰く、性格がとても似ているようで……
 自ら出向いていくアランに、キャロルの時のような強硬手段に出ないでいいシャノン様は優しく出迎えて色々話をするらしい。
 魔女としての知識は残っているアランに、シャノン様はやることが増えて大忙しだ、呪いの話はおいておいても、色んな薬が作れるかもしれない、と喜んでいた。

「子供はいらないと思ってたけど、これはかわいいわね……」

 そうぽつりとシャノン様が呟いた言葉に、おれはそれからずっと怯えている。


 ◇◇◇

「……ひ、久しぶり、だね」
「ユキをずっとアランに取られていたからね」
「へへ……」

 ここに来てからずっとおれと寝ていたアランだったけど、今日はなんとキャロルとお泊まりだ。
 大丈夫かな、とはらはらしていたんだけど、先程入った連絡でははしゃぎ疲れてもう眠ってしまったらしい。
 かわいい、こっちにキャロルを泊まらせた時もはしゃいでたもんな、子供だってお泊まりといった非日常にははしゃいでしまうものだ。

 ……そんな訳で、ジルとふたりきりの夜が久し振り。
 なんだか緊張してしまう。だってこんなの、期待するじゃん、ねえ?
 ジルだって視線が熱っぽい。こんなの絶対やるじゃん、するじゃん、めちゃくちゃお風呂で綺麗に躰を洗ってしまった。

 さあ寝ましょうか、という時間になって、ぎこちない動きでベッドに上がってしまう。
 本当に久し振り。アランが来るちょっと前に強請ってつけてもらった痕が消えてしまう程。
 ちょっと残念だと思ったんだけど……アランがお風呂に入る時に怪我したの、と心配してくるから、ちょっと、その、もうつけてもらうのは恥ずかしいかな……特に足とか、そんなとこは……
 見られないと思ってたのにまさかこんなことになるなんて思わなくて……なんか、遥陽に見られるより恥ずかしい思いをする羽目になるなんて思わなかった。

「明日、は」
「……ゆっくり出来るよ」
「ごめんね、なんかおれたちのせいで……ばたばたさせちゃってたよね」
「構わないよ、どんな仕事だって、ユキを失うことに比べたら」

 後処理やらなんやらで、ジルにはいちばん迷惑を掛けた。
 お陰でめちゃくちゃ忙しそうで、おれがここでアランやキャロルや遥陽と遊んでる間に仕事三昧。
 それでも夜はここに来てくれた。そして朝早くにまたお城に戻っていく。
 おればっかりこんなにのんびりしていていいのだろうか。
 この国に留まれるのなら、何か仕事を貰った方が……何か出来るのかと言われたら事務仕事ひとつ出来ない元学生なんですけど。

「また何か考えてる……アランのこと?」
「え、いや、ちが、い、忙しそうだなって……おれも何か手伝えないかなって」
「……ユキがここに居てくれるのがいちばん安心する」
「そうじゃなくてえ……」
「そうだな、じゃあ前みたいに……何かお菓子でも作って持ってきて、仕事中の話し相手になってよ」
「……ジルの邪魔すんなって怒られちゃう」
「怒られないよ、やる気でるし」
「そお?」

 じゃあ行こうかな、なんて我ながらちょろい。
 だってすきなひとの真剣な顔って格好良く見えるもんじゃん……いやジルはまじで顔がいいんだけど、そんな話じゃなくて。

「でも」
「えっ」

 ぐいと顔を上げられて、視線があう。
 それにふ、と視線を和らげて、ジルは瞳を細めた。

「未来の俺より今の俺を見て」
「へあ……う、うん……」

 未来の自分に焼きもち妬いちゃうの、ときゅんとしてしまう。
 あーもう、そういうとこ、かわいい。
 素直に、おれのこと、すきなんだな、って思っちゃうのが照れくさくて、嬉しくて。
 ああもうほんとに、

「しあわせ……」
「早いよ」
「だって……っん、」

 おれの言葉が終わる前に、ジルの唇が重なる。
 熱くて、少し甘い。
 瞳に自分の顔が映ってるのが恥ずかしくて、そっと閉じた。
 それが合図のように、ぬるりと舌が入ってきて、口の中いっぱいに動き回る。
 舌先でつついて、上顎をなぞり、おれの舌を引きずり出して吸う。
 軽いキス以外は暫くお預けだったから、久し振りの深いキスだけでもう腰が抜けてしまいそうだった。

「ん、ふ、っう……ンん」

 震える手でジルの服の裾を掴む。
 指先に力を入れることで、こんなことで達しないよう我慢する。
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