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にゃーん、という鳴き声と共に、泣いてる!という幼い声が響いた。
振り返ると、三匹程猫を抱いたアランが真っ青になっている。
おかえり、と言いかけたおれに、猫を床に置いたアランが走り寄り、ベッドへ飛び込んできた。
「ユキ泣いた!なんで!」
「大丈夫大丈夫、もう終わった、泣き止んだよ」
「ジル泣かした!」
まあジルも原因でもあるけど。
「俺じゃないよ、アランのせいだよ」
「えっ」
「ちょっとジル、アランを苛めないでよ」
「……ユキ、僕のことやになった……?」
「ああほらもう、なってないよ、なってない、えっと、ほら、あっ、そう、き、急にアランが消えたからさみしいな~って!戻ってきてよかったなって!」
「……急にいってごめんなさい」
「うん、心配しちゃうから次からはもうちょっと話してからにしようね」
「……心配する?僕を?」
「……するよ、心配」
「ほんと?」
「ほんとほんと、ちゃんと帰ってきてくれて良かった、ね、おかえり」
じい、とおれを見て、それからへにゃっと笑ったアランはそのままおれの肩に頭を寄せる。
……嬉しそうだ。
子供の頃のロザリー様に依存して、それからずっとロザリー様のことだけ考えて、でもロザリー様とはその内なかなか会えなくなって、こうやって、年上の……正確には年上じゃないんだけど、年上のひとに甘えられることなんてなかったんだろう。
自分がしっかりするしかなかったんだよな。
背中を撫でながら、朝ごはん食べよっか、と言うと、耳元でうん、とかわいらしい声がした。
ジルは遥陽とアランにちょっと意地悪しちゃうな、遥陽は理解出来る年齢だけど、アランは本気にしちゃうからあんまり意地悪しないよう言い含めなきゃ。
アランにはジルを嫌ってほしくないし。
皆からたいせつにされてほしいし。
……捻くれて育たないように、というのもあるけど、ロザリー様が願ったように、しあわせな日々を過ごしてほしいから。
「……使い魔って何食べさせたらいいんだろ」
「ふつうの猫のごはんでいい」
「そか」
ほらジルも行こ、と言うと、少し拗ねたような顔でベッドから降りる。
笑ってしまう、遥陽もだけど、こんな小さい子にもそんな妬いちゃうなんて。
「ジル」
「うん……?」
名前を呼んで、こっちを向かせて、振り向いたジルの首元を掴んで寄せると、軽く唇を重ねた。
アランはおれの肩にぐりぐりと頭を寄せてるから見えてない、と思う。
「ユキ……」
「……お腹空いちゃったな、今日何かなあ」
「誤魔化し方もかわいい……」
「んもー!ご飯いくよ!」
どうやらちゃんと機嫌はなおったようだった。これくらいで機嫌が良くなるなら安いもんだ。
……まあおれだってしたかったし。
◇◇◇
その日からおれたちの生活は変わった。
アンヌさんは、おれの時でも孫扱いだったのに、更に小さなアランにはそれはもう甘くて甘くて、アランのすきそうなものは片っ端から作ってくれたし、猫のごはんまで完璧だった。
モーリスさんはおれの護衛より、元の仕事に戻ることが多くなった。それでも暇を見つけてはおれの様子をみに……アランと遊びに来てくれた。兄弟の多いモーリスさんは子守りも完璧だった。
セルジュさんは数日お城にいて様子を見てくれていたが、どうやら大丈夫そうとのことで帰っていった。また様子を見に来ますね、と残して。
シャノン様はアランに興味津々で……魔女の知ってる話を教えて、と色々話を聞き出し、隙あらば何かしらの研究に繋げようとしてる。
遥陽は遥陽で何故かアランに張り合おうとするけど、ジルと違い素直に飲みこんでしまう子供相手に罪悪感が沸いてしまったのか、結局仲良くしてくれてる。天使が子供と戯れるのは……ありがとうございます、尊いです。
そして心配していたキャロルとは、とても上手くいっているようで。
お互いともだちが出来たことに喜んでいるようだった。
庭に招待して、デコレーションだけお手伝いをしたケーキを食べて、走り回り、部屋に飾るのとお花を摘み、大人にはよくわからない話で盛り上がり、電池が切れたようにこてんとふたりして眠りこけてしまう。
その日以来、王妃様の許可が降りやすくなったのか、キャロルはこっちによく来るし、アランもキャロルの部屋に遊びに行くことが増えた。
王妃様達が少し城を空ける時はお泊まりを許される始末だ。
勿論王様と王妃様には挨拶がてら話は通してある。
色んな意味で怒られても追い出されても仕方がないと覚悟を決めて会いに行ったというのに、拍子抜けする程ふたりはおれとアランを受け入れてくれた。
……おれだけでももっと早く挨拶に来るべきだった。
ジルもほらね、と当然のような顔をしていたけど、ふたりがこんなに友好的ならそれも教えてほしかった、びびってたのが馬鹿みたいじゃないか。
寧ろ遥陽のついでに来たおれに対する扱いを謝られたし、本当に帰らなくて大丈夫かとも確認された。帰るといってもおれを帰らせることが出来るのは多分アランだけなんだけど。
魔女であるアランも、今のアランならとあっさり。
……どうやらロザリー様から話を聞いたことがあるようで、ふたりとも、これがその、と瞳を細めてアランを見ていたのが印象的だった。
振り返ると、三匹程猫を抱いたアランが真っ青になっている。
おかえり、と言いかけたおれに、猫を床に置いたアランが走り寄り、ベッドへ飛び込んできた。
「ユキ泣いた!なんで!」
「大丈夫大丈夫、もう終わった、泣き止んだよ」
「ジル泣かした!」
まあジルも原因でもあるけど。
「俺じゃないよ、アランのせいだよ」
「えっ」
「ちょっとジル、アランを苛めないでよ」
「……ユキ、僕のことやになった……?」
「ああほらもう、なってないよ、なってない、えっと、ほら、あっ、そう、き、急にアランが消えたからさみしいな~って!戻ってきてよかったなって!」
「……急にいってごめんなさい」
「うん、心配しちゃうから次からはもうちょっと話してからにしようね」
「……心配する?僕を?」
「……するよ、心配」
「ほんと?」
「ほんとほんと、ちゃんと帰ってきてくれて良かった、ね、おかえり」
じい、とおれを見て、それからへにゃっと笑ったアランはそのままおれの肩に頭を寄せる。
……嬉しそうだ。
子供の頃のロザリー様に依存して、それからずっとロザリー様のことだけ考えて、でもロザリー様とはその内なかなか会えなくなって、こうやって、年上の……正確には年上じゃないんだけど、年上のひとに甘えられることなんてなかったんだろう。
自分がしっかりするしかなかったんだよな。
背中を撫でながら、朝ごはん食べよっか、と言うと、耳元でうん、とかわいらしい声がした。
ジルは遥陽とアランにちょっと意地悪しちゃうな、遥陽は理解出来る年齢だけど、アランは本気にしちゃうからあんまり意地悪しないよう言い含めなきゃ。
アランにはジルを嫌ってほしくないし。
皆からたいせつにされてほしいし。
……捻くれて育たないように、というのもあるけど、ロザリー様が願ったように、しあわせな日々を過ごしてほしいから。
「……使い魔って何食べさせたらいいんだろ」
「ふつうの猫のごはんでいい」
「そか」
ほらジルも行こ、と言うと、少し拗ねたような顔でベッドから降りる。
笑ってしまう、遥陽もだけど、こんな小さい子にもそんな妬いちゃうなんて。
「ジル」
「うん……?」
名前を呼んで、こっちを向かせて、振り向いたジルの首元を掴んで寄せると、軽く唇を重ねた。
アランはおれの肩にぐりぐりと頭を寄せてるから見えてない、と思う。
「ユキ……」
「……お腹空いちゃったな、今日何かなあ」
「誤魔化し方もかわいい……」
「んもー!ご飯いくよ!」
どうやらちゃんと機嫌はなおったようだった。これくらいで機嫌が良くなるなら安いもんだ。
……まあおれだってしたかったし。
◇◇◇
その日からおれたちの生活は変わった。
アンヌさんは、おれの時でも孫扱いだったのに、更に小さなアランにはそれはもう甘くて甘くて、アランのすきそうなものは片っ端から作ってくれたし、猫のごはんまで完璧だった。
モーリスさんはおれの護衛より、元の仕事に戻ることが多くなった。それでも暇を見つけてはおれの様子をみに……アランと遊びに来てくれた。兄弟の多いモーリスさんは子守りも完璧だった。
セルジュさんは数日お城にいて様子を見てくれていたが、どうやら大丈夫そうとのことで帰っていった。また様子を見に来ますね、と残して。
シャノン様はアランに興味津々で……魔女の知ってる話を教えて、と色々話を聞き出し、隙あらば何かしらの研究に繋げようとしてる。
遥陽は遥陽で何故かアランに張り合おうとするけど、ジルと違い素直に飲みこんでしまう子供相手に罪悪感が沸いてしまったのか、結局仲良くしてくれてる。天使が子供と戯れるのは……ありがとうございます、尊いです。
そして心配していたキャロルとは、とても上手くいっているようで。
お互いともだちが出来たことに喜んでいるようだった。
庭に招待して、デコレーションだけお手伝いをしたケーキを食べて、走り回り、部屋に飾るのとお花を摘み、大人にはよくわからない話で盛り上がり、電池が切れたようにこてんとふたりして眠りこけてしまう。
その日以来、王妃様の許可が降りやすくなったのか、キャロルはこっちによく来るし、アランもキャロルの部屋に遊びに行くことが増えた。
王妃様達が少し城を空ける時はお泊まりを許される始末だ。
勿論王様と王妃様には挨拶がてら話は通してある。
色んな意味で怒られても追い出されても仕方がないと覚悟を決めて会いに行ったというのに、拍子抜けする程ふたりはおれとアランを受け入れてくれた。
……おれだけでももっと早く挨拶に来るべきだった。
ジルもほらね、と当然のような顔をしていたけど、ふたりがこんなに友好的ならそれも教えてほしかった、びびってたのが馬鹿みたいじゃないか。
寧ろ遥陽のついでに来たおれに対する扱いを謝られたし、本当に帰らなくて大丈夫かとも確認された。帰るといってもおれを帰らせることが出来るのは多分アランだけなんだけど。
魔女であるアランも、今のアランならとあっさり。
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