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暫く理解するのに時間を使ったポールは、結局理解を諦めたらしい。
普通に生きてきた元十五歳には捻くれた男性同士の恋愛だとかいざこざには疎いのだ。そうであってほしい。
「ぼく、何にもお役に立てなくて……」
最終的には自分を下げることで話を切り替えてきた。
慌ててそんなことないよ、と言ったけれど、そもそも勝手に彼を頼りにしてきた俺たちが悪いのだ。彼が気に病むことではない。
「剣術もまだまだだし、勉強も全然……魔法だって」
「あっあっあ、泣くなって、違う違う、そうだよな、俺たちが来るの早過ぎたんだよな~!」
「泣きたい訳じゃない、んですけど、まだ十歳だから……」
「躰に精神引っ張られるんだよな、わかるわかる~!」
十歳だろうと十五歳だろうと自分たちより幼いことに変わりはない。俺は歳下を泣かせて喜ぶ趣味はないんだ、焦ってしまう。
歳下どころか普通にこどもだ、中身が十五歳は。
「そうですよ!ほら、ポールはこの国じゃなくても隣国を助けることはもう決まってますし……この国だって聖女さまと一緒に助けられることたくさんあるじゃないですかあ、王子にしか出来ないことありますよ、僕たちのフォローお願いしますね、ねっ」
「そうそう、ゆりちゃん結構暴走型だからさ、ポールが見ててくれたら助かるなあ、頻繁にここには来れないし」
ええっ、明日から来てくんないの、と今度はゆりちゃんからクレームが入る。
当たり前でしょ、作戦も纏まったことだし、頻繁にお城になんて来る訳にいかない。
一応この国の為でもあるけど、悪いことは悪いことをするんだ、俺たちは。
魔法を使って目立ちにくくしたり記憶を消したりはしても、自分たちの記憶をも消す訳ではない。一応罪悪感というものを持ち合わせてるんですよ。
「じゃあシャルルさんたちが泊まってるとこ行ってもいい?」
「ゆりちゃん目立つからなあ、俺みたいに認識阻害掛けられるならいいよ」
「出来ないのわかってて言ってるでしょ、いじわる」
「すぐ終わりそうでしょ?サキュバスの話だと。そうしたら堂々とゆりちゃんに会いに来るよ」
今度はゆりちゃんがまた頬を膨らませて拗ねる。ポールよりも少しばかり年上なだけで、ゆりちゃんも十分こどもだ。
無理をさせることに勿論心配も不安もあるけれど、でも頼りにしてるのも事実だ。
ゆりちゃん、聖女さま、お願いです、どうか早期解決を。
◇◇◇
サキュバスたちの活躍は見事だった。
三日もすれば噂が立ち、一週間も経てば謎の奇病が流行ってると大騒ぎだ。
北の方での騒動よりよっぽど早い。それも当然、サキュバスたちがフル稼働してるからだ。
夜な夜なひとを誑しこみ、真夜中に夢の中にお邪魔する。
やる気のあるサキュバスはたまに昼にまで出掛ける始末。
いちばん働かせてしまうのがサキュバスたちだ、本人たちが幾ら精気を吸うのは寧ろご褒美だと言っても、俺たちが全く気にしない訳にもいかないだろう。
そう思っていたけれど、日に日に肌を艶々させていく彼女たちに、本当に心配はいらなかったようだ。
サキュバスにとって精気は食事、栄養である。
魔力は飛んだり夢に入ったり、記憶を消したり相手を誘惑したりとアクションを起こす為に使うもの。
なので精気を吸ったらそれで終わり、という訳ではなく、色艶は良いもののそれなりに疲れて帰ってくる彼女たちに魔力をあげるのが俺たち。
俺と莉央くんが血を与え、治癒担当として怜くんとゆりちゃんを置いたけれど、聖女さまを頻繁にこちらに置いとく訳にはいかない、出来るだけこっちに来ないようにも言い渡している。
結果怜くんが俺と莉央くんとを行ったり来たりする羽目になってしまった。
怜くんとしてはゆりちゃんをこちらに寄越さないことに関しては納得している。その方が良いとも。
ただそれはそれとして、莉央くんの傍に行くことが不満のようだ。
「いや、わかるんですよ、ゆりちゃんがいたって僕はシャルルさんにしか近付きませんなんてそんな我儘言えないし、女性が苦手とはいえ女子高生をあのエロいのに近付ける訳にもいかないし!」
「エロいの」
「なんか知らないんですけど、血ィ吸われてる時とか治癒してる時とかエロいんですよあのひとお!」
「えっ俺は?」
「……どちらかというと注射されてる時に近い」
「なんでだよ」
この街に特に用事がある訳ではないので、日中は皆で集まってることが多い。
それはサキュバスたちに血をやったり治癒をしたりの効率もあるし、怜くんの強い要望でもあった。
因みにその間、ソフィとリアムはゆりちゃんからの差し入れを食べたり遊んだりお昼寝をしたりしている。完全に俺たちの癒し要員である。
まあノエはというと俺にべったりなことが多いけれど。
サキュバスが血を吸ってる間も、怜くんが治癒してる間も、俺の腕や背にしがみついたり膝に乗ったりして、じい、とその場面を見ているのだ、なんだか恥ずかしい。
莉央くんのように色気がないと言われる様子も、注射されてる時のようなかおを見られるのも。
サキュバスたちは「坊ちゃんが見てる……♡」と悦んでいた。♡をつけるな、俺たちで羞恥プレイするな。
普通に生きてきた元十五歳には捻くれた男性同士の恋愛だとかいざこざには疎いのだ。そうであってほしい。
「ぼく、何にもお役に立てなくて……」
最終的には自分を下げることで話を切り替えてきた。
慌ててそんなことないよ、と言ったけれど、そもそも勝手に彼を頼りにしてきた俺たちが悪いのだ。彼が気に病むことではない。
「剣術もまだまだだし、勉強も全然……魔法だって」
「あっあっあ、泣くなって、違う違う、そうだよな、俺たちが来るの早過ぎたんだよな~!」
「泣きたい訳じゃない、んですけど、まだ十歳だから……」
「躰に精神引っ張られるんだよな、わかるわかる~!」
十歳だろうと十五歳だろうと自分たちより幼いことに変わりはない。俺は歳下を泣かせて喜ぶ趣味はないんだ、焦ってしまう。
歳下どころか普通にこどもだ、中身が十五歳は。
「そうですよ!ほら、ポールはこの国じゃなくても隣国を助けることはもう決まってますし……この国だって聖女さまと一緒に助けられることたくさんあるじゃないですかあ、王子にしか出来ないことありますよ、僕たちのフォローお願いしますね、ねっ」
「そうそう、ゆりちゃん結構暴走型だからさ、ポールが見ててくれたら助かるなあ、頻繁にここには来れないし」
ええっ、明日から来てくんないの、と今度はゆりちゃんからクレームが入る。
当たり前でしょ、作戦も纏まったことだし、頻繁にお城になんて来る訳にいかない。
一応この国の為でもあるけど、悪いことは悪いことをするんだ、俺たちは。
魔法を使って目立ちにくくしたり記憶を消したりはしても、自分たちの記憶をも消す訳ではない。一応罪悪感というものを持ち合わせてるんですよ。
「じゃあシャルルさんたちが泊まってるとこ行ってもいい?」
「ゆりちゃん目立つからなあ、俺みたいに認識阻害掛けられるならいいよ」
「出来ないのわかってて言ってるでしょ、いじわる」
「すぐ終わりそうでしょ?サキュバスの話だと。そうしたら堂々とゆりちゃんに会いに来るよ」
今度はゆりちゃんがまた頬を膨らませて拗ねる。ポールよりも少しばかり年上なだけで、ゆりちゃんも十分こどもだ。
無理をさせることに勿論心配も不安もあるけれど、でも頼りにしてるのも事実だ。
ゆりちゃん、聖女さま、お願いです、どうか早期解決を。
◇◇◇
サキュバスたちの活躍は見事だった。
三日もすれば噂が立ち、一週間も経てば謎の奇病が流行ってると大騒ぎだ。
北の方での騒動よりよっぽど早い。それも当然、サキュバスたちがフル稼働してるからだ。
夜な夜なひとを誑しこみ、真夜中に夢の中にお邪魔する。
やる気のあるサキュバスはたまに昼にまで出掛ける始末。
いちばん働かせてしまうのがサキュバスたちだ、本人たちが幾ら精気を吸うのは寧ろご褒美だと言っても、俺たちが全く気にしない訳にもいかないだろう。
そう思っていたけれど、日に日に肌を艶々させていく彼女たちに、本当に心配はいらなかったようだ。
サキュバスにとって精気は食事、栄養である。
魔力は飛んだり夢に入ったり、記憶を消したり相手を誘惑したりとアクションを起こす為に使うもの。
なので精気を吸ったらそれで終わり、という訳ではなく、色艶は良いもののそれなりに疲れて帰ってくる彼女たちに魔力をあげるのが俺たち。
俺と莉央くんが血を与え、治癒担当として怜くんとゆりちゃんを置いたけれど、聖女さまを頻繁にこちらに置いとく訳にはいかない、出来るだけこっちに来ないようにも言い渡している。
結果怜くんが俺と莉央くんとを行ったり来たりする羽目になってしまった。
怜くんとしてはゆりちゃんをこちらに寄越さないことに関しては納得している。その方が良いとも。
ただそれはそれとして、莉央くんの傍に行くことが不満のようだ。
「いや、わかるんですよ、ゆりちゃんがいたって僕はシャルルさんにしか近付きませんなんてそんな我儘言えないし、女性が苦手とはいえ女子高生をあのエロいのに近付ける訳にもいかないし!」
「エロいの」
「なんか知らないんですけど、血ィ吸われてる時とか治癒してる時とかエロいんですよあのひとお!」
「えっ俺は?」
「……どちらかというと注射されてる時に近い」
「なんでだよ」
この街に特に用事がある訳ではないので、日中は皆で集まってることが多い。
それはサキュバスたちに血をやったり治癒をしたりの効率もあるし、怜くんの強い要望でもあった。
因みにその間、ソフィとリアムはゆりちゃんからの差し入れを食べたり遊んだりお昼寝をしたりしている。完全に俺たちの癒し要員である。
まあノエはというと俺にべったりなことが多いけれど。
サキュバスが血を吸ってる間も、怜くんが治癒してる間も、俺の腕や背にしがみついたり膝に乗ったりして、じい、とその場面を見ているのだ、なんだか恥ずかしい。
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