【完結】人魚姫は今世こそ結ばれたい

鯖猫ちかこ

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「ええっ、ヤダ、きゃーっ、そんでそんで!?やーだ、おめでとー!」

 女子は恋バナがすきなものだ。一般的に、だけど。
 週明け、朝イチにまた佐倉に拉致られ、もう買わないとお互い決めた筈のいちごミルクを渡された。恋バナには似合うかなと思って!とそれはもう良い笑顔で。

 話したんでしょ、どうだった?と訊かれて、まあ当然全部は話せない訳で、かいつまみながら話をした。
 きらきらした笑顔が眩しい。
 皇輝が王子様なら佐倉もお姫様で、ふたりともそりゃあもうそこにいるだけで眩しいのに、ちょっとサービスをすればそれだけで周りが見蕩れてしまう。その綺麗な顔を惜しげもなく僕だけに向けてくれる。

「やっぱり王子様だとは思い出してなかったかあ」
「そーみたい、もういっそ思い出さない方がいいかもとか思っちゃって」
「でもそれはらはらしない?さっさと思い出して貰った方が……一発ぶん殴っとく?」
「そんな壊れたテレビ理論で思い出すなら今まで結構チャンスあったんじゃないかな」
「えー、コーキそんなポカしなさそうじゃない?なんかむっかつくぅ」
「……」

 なんだか段々佐倉のイメージが変わってきたぞ?いや僕は結構すきだけどね?
 ひとによっては結構びっくりされるんじゃないかな、今までのイメージがね?

「あっ、それより皇輝に言われてびっくりしたんだけど」
「なーに?」
「あ、こんなこと聞いていいのかな、デリカシーないんじゃないかな」
「何よ、気になっちゃうじゃん、言ってよ~」
「えっと、その、皇輝とその、付き合う振りする理由なんだけど」
「あー、あたしが女の子がすきかも、ってやつ?」
「……そうそれ」

 もし本当なら触れていいところかわかんなくて。
 僕だって皇輝がすきなんだからそこに性別でどうこういうつもりはない。けどだから、確認しておいた方がいいこともあると思った。

「うーん、正直そこはコーキを動かす為に盛ったところもある」
「盛った……?」
「わかんないんだよね、恋愛対象が」
「……へ」
「やー、何となくぼんやりはあるのよ、仲良いカップル羨ましいな、とか。でもやっぱりその、あたしが誰かとお付き合いするイメージがないの」
「?」
「告白されても揺れないの。すきになれないなって。だからもしかしたら女の子も有り得るかなって。でも一番胸につっかえてるのは、あたしが昔とってしまった人魚姫ちゃんの恋心だったんだよね、そこをまずどうにかしなきゃ、あたしも前に進めないんじゃないかって」

 だからこないだ言ったでしょ、早くふたりにくっついてほしいって、といたずらっぽく笑う。
 前回はそういうものなんだ、と思ってたけど、勝手なもんだな、自分がしあわせになると、自分も何かしなくちゃと思ってしまう。

「あっでもほんとに!ほんっとーにね!すぐ誰かと付き合いたい訳じゃないの!あたしだってお姫様だったんだからね、ロマンチックな恋愛したいしー、ちゃんとすきになったひとと付き合いたいの、だからそのひとが見つかったらアオくんにも手伝ってもらうからね!それまでは見守っててよね」
「……うん」
「まああたし前世が前世だけあってかわいいでしょ、あたしさえその気になれば勝てるのよ」
「何に」

 にまっと笑って、お茶が飲みたいわね、と言った佐倉は、お淑やかなお姫様のイメージとは最高にかけ離れてて、僕は更に彼女のことがすきになった。

「あっそうそう、あとひとつ、お願いがあるの」

 小首を傾げて、長い髪を揺らしながら手を合わせた佐倉が、甘えたようにお願いをしてきた。
 どんなやばいお願いを?と身構えたのだが、たいしたことないお願いに、簡単に頷いてしまったのだった。


 ◇◇◇

「……仲良くなり過ぎでは?」
「いやー、話すと佐倉面白くて」
「だからって授業までサボるか?」
「一応疑われないように皇輝には連絡入れたじゃん」

 皇輝が拗ねた。かわいい。にやにやしちゃう。
 結局お互いと僕のカムフラージュも兼ねて、まだ皇輝と佐倉は付き合ってる振りをするらしい。
 確かに皇輝と佐倉なら周りは文句のつけようがない。
 お互い周りに寄ってくる人達に辟易してた訳で、付き合ってる振りだけでその煩わしさがなくなってすっきりしているらしい。

 実際僕は佐倉の件から、皇輝を呼び出してほしいと頼まれることが全くなくなった。
 この状態は僕等にとってウィンウィンの関係って訳だ。
 僕と佐倉の関係は皇輝がいることで、まさか僕を佐倉が選ぶ筈はないと見られてるお陰で、佐倉とふたりで仲良く話してても変な噂が立つことはない。
 皇輝と佐倉の仲を取り持ってるくらいに思われてるのだろう。
 まあいいのだ、周りがなんと言っても。
 本当のことは自分達が把握してればそれで良い。

「お前かわいいんだから、佐倉が変な気起こすかもしれないだろ」
「……いや僕女子じゃないから」

 ていうか僕じゃなくて佐倉の方が変な気を起こすのか。
 あのキャラならなくはなさそうでちょっと面白い。僕が相手ってのは色んな意味でないけど。

「笑ってんじゃないよ、俺は心配してるのに」
「だって絶対ないし」
「……普通付き合いたてで心配しない方がおかしいだろ」

 本当に絶対ないことなんだよ、なのにやだ、きゅんとしちゃうじゃないの。
 自分が皇輝がモテることばっかり心配してたからかな、僕に執着を見せる皇輝に嬉しい、なんて思っちゃう。
 やり過ぎは駄目なのわかってる。でもちょっとくらい、優越感というか、愛されてるなあって思いたいじゃん。
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