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打ち上げに誘われたのを、用事があるからと断り、皇輝とふたり電車に揺られて帰る。
佐倉は置いてきた。先輩と存分にいちゃ……お話して来ると良い。
問題は皇輝だ。
目に見えてぶすくれている。
「ご飯どうする~?買って帰る?食べてく?」
「……」
「今日おばさんいる~?」
「……いたら呼んでない」
「……」
で、ですよね~……なんで自ら墓穴掘ってんの僕。
いや、行為が嫌なわけじゃないよ、恥ずかしいけど、でも嫌じゃない。恥ずかしいけど。
昨日誘われた時点でわかってたようなことだし。そもそも慣らしていくからって言われてたことだし。
でも電車の中で想像することではない。
「あんな派手な男と知り合いなんて聞いてない」
「や、知り合いっていうか……そう、そう!落し物拾って貰っただけだし、ほら、スマホ見る?連絡先とかも知らないよ」
「碧面食いだし……」
「バンドマンって皆イケメンだね!や!違う!皇輝のがかっこいーから!」
「……」
「……」
皇輝ってこんなわかりやすく拗ねるんだ。
かわ……めんどくさ……んんん、違う違う、僕結構愛されてるんだなあ。
「あっほら、次降りるよ、ほら!」
まだ暗い顔をしてる皇輝を引っ張って駅を出る。
なんで僕じゃなくて皇輝がここまでテンション下がるんだ。
僕なんて魔女見つけちゃったんだぞ、内心焦るのは僕の方なのに、なんで前世を思い出さない皇輝がこんななるんだよ。
……そういえば、佐倉もなんも気付いてなかったな、と思って気付く。そうか、お姫様は魔女に会ってないもんな。
物語として魔女の存在は知ってても、前世で会ってないからお互い気付いてないのかも。
それならあのひとが佐倉に変なことを言う心配もない。
うん、どうせそんなに会うこともないひとだ。
大学に上がっても、あの辺のサークルに近寄らなければ多分関わることもない人種だ。
「ねえ、今日皇輝のご飯食べたいな、久し振りに」
「……」
「オムライス作ってよ」
「……かわいいもんチョイスするなよ」
「オムライスは人数がいると面倒くさくてなかなか作って貰えないんだよお」
「はあ……うん、わかった、買い物してくか」
「うん!ありがと!」
皇輝を担ぎつつ、自分のリクエストも通す。なかなかやるな僕。
スーパーで家にないものやお菓子を買って、笑顔で皇輝の家に向かう。内心は心臓ばくばくいってるんですけど。
どうせやらしいことするなら、変なことに気を取られないでほしい。優しくしてほしい。僕のことだけ気にしててほしい。
いや僕のこと気にしてくれてるんだけど。
「お邪魔しまーす」
「ん」
鍵を開けてもらって、広い玄関で靴を脱ぐ。1週間ぶり。
誰もいない家に入ると、余計に心臓がうるさくなってきた。
意識し過ぎだってわかるけど、でもやることだってわかってる訳で、何も考えてませんよって顔が出来ない。
なんでこんなえっちな頭になってしまったんだろう。皇輝が悪い。
「……風呂とメシ、どっち先にする?」
「えっと……えーっと、どっちでも……あ、ご飯炊かなきゃだからお風呂が先、かな」
あー!お風呂ってだけでもやらしいことに繋がってしまうー!
もうだめだ、僕の頭、もうだめだ。
「いや、米は俺、朝食べたからそれの残りがある、ふたりぶんはある筈、先に食う?」
「あっ、そっ、そう……じゃあ先に食べよっか!お腹空いたしなー」
「あんだけ食べたのに」
「あれはお昼前だったから!消化した!」
動揺してる僕とは反対に、落ち着いてきた皇輝は笑いながら袋から買ったものを取り出していく。
腕捲りをして、手を洗って、フライパンとまな板を用意して。
母さんが料理するのと同じようなことをしてる筈なのに格好良いと思っちゃうのは何でだろう。
腕前もレパートリーも、どう考えたって母さんの方が上手いのに。
「ゆっくりしてていいぞ」
「んーん、見てる」
「……見てるなら手伝いして」
「お皿とかは出すね~」
サラダなんかはない。オムライスだけどんと作る男の料理だ。
スープだけは前日家政婦さんが作っていったものがある。
それも温めながら、卵を焼く皇輝の手際を見ている。
簡単なものなら作れるけど、毎日料理をする訳でもなく、オムライスだけ腕を磨いた訳でもない皇輝がふわとろのオムレツを作れる訳もなく、綺麗に薄焼き卵で包める訳でもない。
半熟のスクランブルエッグみたいなものをチキンライスに乗せて完成だ。
それに対して文句はない。皇輝が作ってくれたことが嬉しいんだから。
「ハート描こうか?」
「ん、描け」
「……冗談なんだけど」
「いや、描け」
「嫌がると思ったのに~」
「中は塗らなくていいぞ、ケチャップ多くなる」
「文句多い~」
ぶつぶつ言いながらも、ちょっと歪んだハートを描きあげる。
皇輝にケチャップを渡して、僕のにも描いて、と言うと、苦笑いしながらも、僕より上手にハートを描いてくれた。こんなことでもときめいてしまう、僕の弱い心臓。あー嬉しい。
「いただきまーす」
「どうぞ」
「ん~おいしー」
「おばさんと比べたら全然だけど」
「でも僕皇輝の作ったのすきだよ」
「……どうも」
「あっ照れてる」
たまらん、すき。もう、なんでこんなに皇輝は僕をときめかせるのが上手いんだろう。
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