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「んッ、ン……んんう……ぅぐ、あ、ゆーまさん……っあう、ゆ、っま、さんっ……」
名前を呼んだって、その分早く来てくれる訳ではない。
そんな魔法のようなものはない。わかってるけど。
名前を呼ぶのが落ち着く。どきどきもしてしまうけど、それでもそれがいちばん落ち着く。それしかないから。
大丈夫、今から来る、絶対来る、来るって言ったから来る。
そう自分を納得させる為に、何度だって名前を呼ぶ。
「ゆうまさんっ……」
「んー、はい、お待たせしました」
「あえ……」
「ごめんね、遅くなったね……もうとろっとろだ」
「ゆーまさん……」
「そうだよ、悠真さん」
「ゆぅまさ……」
元々ちゃんと防音性の高い部屋だった。そうしてもらった。声、我慢出来ないから。
でもだからといって、いつも悠真さんが入ってきたことにも気付かない。
それだけ頭がぼおっとして、回ってないのだと思う、けれど。
においはこんなにするのになあ。なんで気付かないんだろう。
「あ、あ、え、あ、服……」
「ん?あ、そう、これ、和音がクリスマスにくれたやつ。似合ってる?」
「う、うん、うんっ……あッ、に、あっ、て、う……」
「今する話じゃないか、ごめんね」
おれのどろどろになった指先に触れて、なぞるように指を滑らせて、ぎゅうと握った。
ぐち、と水音が鳴って、あ、悠真さんの手を汚してしまった、とわかってるのにその手を離せない。
視線も体温もあつくて、悠真さんだっておれのにおいにあてられてんのがわかる。
そう、ここにはおれしかいないんだから、おれを見てもらわないと困る。
「この服、着たままがいい?」
「んッ、ん、着て、てっ……」
「でも汚しちゃうよ」
「いいからあっ……」
「これね、今日一日着てたんだよ、在宅だったからスーツに着替えてないの」
「へ……」
「いいの、汚しちゃって。汚したら洗わなきゃいけないよ」
「え、え、っう、え……?」
それはつまり、えっと、その、それは、おれが送った時の下心が戻ってくるということなのだろうか。
その、一日着た服を、貸してもらえるということなのだろうか。おれに?全部?
「ほ、ほしい……」
「そしたらどうしたらいいと思う?わかる?」
「ぬい、ぬいで……」
「そう。その先は?」
「ほし、あ、う、ちょうだい……」
「……いーよ」
ちょっと待ってね、と落ちてたタオルでおれと悠真さんの汚れた手を拭って、悠真さんが服を脱ぐ。
インナーも、下着以外、全部。
瞬間、ぶわ、と甘いにおいが広がって、心臓が煩くなる。
悠真さんのだ、悠真さんのにおいがついた服。それから目の前に悠真さん。
「う、あ……」
ぎゅうっとその服を抱き締めて、においを吸いたいけれど、今それをしたら、腕も腹もどろどろのおれはまた汚してしまう。
取っておきたい、ひとりの時まで。悠真さんが帰るまで。
今は悠真さんがいるから、我慢出来る。
我慢、したくないけど、出来る。後の為に、我慢する。
「なあに、取っとくの、そう、いいの、我慢出来る?」
「がまん、する、でき、る……」
「そうだね、今は俺がいるもんね?」
「ん、んう……っ」
堪えるように頷くと、じゃあ汚れないように取っておこうか、と脱いだばかりの服を綺麗に畳んで、おれの手の届かないところに置かれてしまう。
自分でそうすると言ったくせに、あ、と声が出た。取り上げられたような気持ちになってしまって。
悠真さんからしたら、好意で届かないとこに仕舞ってくれたというのに、不満の声を上げてしまった。
「……やっぱり服がいい?」
「ちが、ご、ごめん……なさい」
「謝ってほしい訳じゃないの。今は俺がいるからいいでしょ?」
「……」
「ほら、かわいく、うん、っていうとこだよ」
「……ん、ゆうまさんがいるから、いい……」
甘えてしまう。でもそれは、悠真さんがそうさせてる。
服のかわりに、悠真さんにくっついていい、そういう意味で受け取った。
腕を伸ばして、悠真さんの胸元に頭を置く。
どきどきした、心臓が、爆発しそうなくらい。煩いとか、もうそんなんじゃなくて、もっと大きな音。
違うよって言われる前に、おれはそう取ったんだから今更訂正するなというように、先に行動に移した。
悠真さんは何も言わず、払い除けず、おれの頭を撫でる。
勝ったと思った。
少なくとも今晩は、くっついてたって文句は言わせない。
「ン……は、う」
背中を撫でるのではなく、指がなぞっていく。ぞわぞわとして、ぞくぞくして、腰が揺れる。
耳元で悠真さんの低く笑う声がして、頭がくらくらする。
悠真さんは背中に指先で触れているだけ。
それなのにおれが勝手に、気持ちよくなってるだけ。
「んっ、ん、あ、んッ……ふ、あ」
「……気持ちいい?」
「あ、ぅ、ん、っき、もちい……っう」
「和音、俺のお腹で気持ちよくなっちゃうの、……えっちでかわいい」
悠真さんのお腹が硬くて、そこに自分のものを擦り付けてしまっていた。
そんなとこで、悠真さんを使って……自慰行為をするおれに、悠真さんは甘い声で何度かかわいい、と言った。
そんなみっともない行為を。
そうわかっていても、ヒート中の躰は止まらなかった。
名前を呼んだって、その分早く来てくれる訳ではない。
そんな魔法のようなものはない。わかってるけど。
名前を呼ぶのが落ち着く。どきどきもしてしまうけど、それでもそれがいちばん落ち着く。それしかないから。
大丈夫、今から来る、絶対来る、来るって言ったから来る。
そう自分を納得させる為に、何度だって名前を呼ぶ。
「ゆうまさんっ……」
「んー、はい、お待たせしました」
「あえ……」
「ごめんね、遅くなったね……もうとろっとろだ」
「ゆーまさん……」
「そうだよ、悠真さん」
「ゆぅまさ……」
元々ちゃんと防音性の高い部屋だった。そうしてもらった。声、我慢出来ないから。
でもだからといって、いつも悠真さんが入ってきたことにも気付かない。
それだけ頭がぼおっとして、回ってないのだと思う、けれど。
においはこんなにするのになあ。なんで気付かないんだろう。
「あ、あ、え、あ、服……」
「ん?あ、そう、これ、和音がクリスマスにくれたやつ。似合ってる?」
「う、うん、うんっ……あッ、に、あっ、て、う……」
「今する話じゃないか、ごめんね」
おれのどろどろになった指先に触れて、なぞるように指を滑らせて、ぎゅうと握った。
ぐち、と水音が鳴って、あ、悠真さんの手を汚してしまった、とわかってるのにその手を離せない。
視線も体温もあつくて、悠真さんだっておれのにおいにあてられてんのがわかる。
そう、ここにはおれしかいないんだから、おれを見てもらわないと困る。
「この服、着たままがいい?」
「んッ、ん、着て、てっ……」
「でも汚しちゃうよ」
「いいからあっ……」
「これね、今日一日着てたんだよ、在宅だったからスーツに着替えてないの」
「へ……」
「いいの、汚しちゃって。汚したら洗わなきゃいけないよ」
「え、え、っう、え……?」
それはつまり、えっと、その、それは、おれが送った時の下心が戻ってくるということなのだろうか。
その、一日着た服を、貸してもらえるということなのだろうか。おれに?全部?
「ほ、ほしい……」
「そしたらどうしたらいいと思う?わかる?」
「ぬい、ぬいで……」
「そう。その先は?」
「ほし、あ、う、ちょうだい……」
「……いーよ」
ちょっと待ってね、と落ちてたタオルでおれと悠真さんの汚れた手を拭って、悠真さんが服を脱ぐ。
インナーも、下着以外、全部。
瞬間、ぶわ、と甘いにおいが広がって、心臓が煩くなる。
悠真さんのだ、悠真さんのにおいがついた服。それから目の前に悠真さん。
「う、あ……」
ぎゅうっとその服を抱き締めて、においを吸いたいけれど、今それをしたら、腕も腹もどろどろのおれはまた汚してしまう。
取っておきたい、ひとりの時まで。悠真さんが帰るまで。
今は悠真さんがいるから、我慢出来る。
我慢、したくないけど、出来る。後の為に、我慢する。
「なあに、取っとくの、そう、いいの、我慢出来る?」
「がまん、する、でき、る……」
「そうだね、今は俺がいるもんね?」
「ん、んう……っ」
堪えるように頷くと、じゃあ汚れないように取っておこうか、と脱いだばかりの服を綺麗に畳んで、おれの手の届かないところに置かれてしまう。
自分でそうすると言ったくせに、あ、と声が出た。取り上げられたような気持ちになってしまって。
悠真さんからしたら、好意で届かないとこに仕舞ってくれたというのに、不満の声を上げてしまった。
「……やっぱり服がいい?」
「ちが、ご、ごめん……なさい」
「謝ってほしい訳じゃないの。今は俺がいるからいいでしょ?」
「……」
「ほら、かわいく、うん、っていうとこだよ」
「……ん、ゆうまさんがいるから、いい……」
甘えてしまう。でもそれは、悠真さんがそうさせてる。
服のかわりに、悠真さんにくっついていい、そういう意味で受け取った。
腕を伸ばして、悠真さんの胸元に頭を置く。
どきどきした、心臓が、爆発しそうなくらい。煩いとか、もうそんなんじゃなくて、もっと大きな音。
違うよって言われる前に、おれはそう取ったんだから今更訂正するなというように、先に行動に移した。
悠真さんは何も言わず、払い除けず、おれの頭を撫でる。
勝ったと思った。
少なくとも今晩は、くっついてたって文句は言わせない。
「ン……は、う」
背中を撫でるのではなく、指がなぞっていく。ぞわぞわとして、ぞくぞくして、腰が揺れる。
耳元で悠真さんの低く笑う声がして、頭がくらくらする。
悠真さんは背中に指先で触れているだけ。
それなのにおれが勝手に、気持ちよくなってるだけ。
「んっ、ん、あ、んッ……ふ、あ」
「……気持ちいい?」
「あ、ぅ、ん、っき、もちい……っう」
「和音、俺のお腹で気持ちよくなっちゃうの、……えっちでかわいい」
悠真さんのお腹が硬くて、そこに自分のものを擦り付けてしまっていた。
そんなとこで、悠真さんを使って……自慰行為をするおれに、悠真さんは甘い声で何度かかわいい、と言った。
そんなみっともない行為を。
そうわかっていても、ヒート中の躰は止まらなかった。
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